グリーン成長戦略をご存知でしょうか。
建築業においても、このグリーン成長戦略への取り組みが求められています。
この記事ではグリーン成長戦略の概要と制度内容、建築業が取り組むべき施策について解説していきます。
目次
グリーン成長戦略とは
グリーン成長戦略の正式名称は、2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略です。
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量と、植林や森林管理、再生可能エネルギーなどを通じて得られる吸収量をトータルでゼロにする取り組みです。
政府は2020年10月に、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする目標を掲げました。
そのために、産業政策や成長が期待できる産業分野においてどのような取り組みをすれば良いか、実行計画をまとめたのがグリーン成長戦略です。
目的
地球温暖化の防止をはじめ、2011年に起こった東日本大震災による原発事故を受けて、原発依存度の低減も必要になっています。
そのため、再生可能エネルギーの促進や省エネルギー技術の導入を推進することが必要です。
再生可能エネルギーや省エネルギーをグリーンエネルギーとし、グリーンエネルギーの導入と拡大により、経済成長へとつなげることが目的です。
14分野の野心的な目標
グリーン成長を目指すべき分野として、特に14分野が指定され、それぞれの目標が掲げられています。
14の分野と主な目標を見ていきましょう。
洋上風力・太陽光・地熱
洋上風力は、2040年までに3,000万kW~4,500万kWの導入を目指します。
次世代型太陽光発電を普及させることで、2030年までに発電コスト14円/kwhへ低減し、さらなる普及や使いやすさを目指します。
次世代型地熱発電技術を開発することも目標です。
水素・燃料アンモニア
水素導入量を2030年までに最大300万トン、2050年までに最大2,000万トンに増やし、燃料アンモニアの生産拡大に向け、製造プラントの新設など安定的に供給できる体制を構築していきます。
次世代熱エネルギー
2050年までに都市ガスをカーボンニュートラル化するといった目標が掲げられています。
原子力
2030年までに、高温ガス炉での水素製造技術を確立することが目標です。
自動車・蓄電池
2035年までに新車販売において、電動車の割合100%を目指します。
2030年までに車用蓄電池の製造能力を100GWh、家庭・業務・産業用蓄電池の累積導入量を約24GWhにするのが目標です。
半導体・情報通信
2040年までにカーボンニュートラル達成を目指します。
船舶
2028年までに温室効果ガス排出ゼロのゼロエミッション船の商業運航実現を目指します。
物流・人流・土木インフラ
全国で20港以上をカーボンニュートラルの湾口にすること、電動車には高速道路で奨励金を付与すること、土木インフラで電動、水素、バイオなど革新的建設機械を普及させることが目標です。
食料・農林水産業
2040年までに次世代有機農業の技術を確立すること、2050年までに農林水産業全体で化石燃料使用による二酸化炭素排出量をゼロにすることが目指されます。
航空機
電池、モータ、インバーターなどのコア部分を段階的に電動化することが目標です。
カーボンリサイクル・マテリアル
低濃度・低圧の排ガスから二酸化炭素を分離・回収する技術の開発を目指します。
また、2050年までに人工光合成によるプラスチックを既製のプラスチックと同じ価格水準にすることも目標です。
住宅・建築物・次世代電力マネジメント
省エネ基準適合率を向上させるための規制的措置の導入、中高層建築物における木造化の促進、分散型エネルギービジネスを促進などが目指されます。
資源循環関連
2030年までに、植物由来のバイオプラスチックを約200万トン導入することを目指します。
ライフスタイル関連
二酸化炭素の排出量を観測・モデリングできる技術の開発をはじめ、省エネやデジタル化、シェアリングによりカーボンニュートラルのライフスタイルを普及することが目標です。
5つの政策
政府は2050年にカーボンニュートラルを目指し、予算、税制、金融、規制改革・標準化、国際連携などの政策を通じて、企業の技術開発や設備投資などさまざまな取り組みを支援していくことを目指しています。
グリーン成長戦略の14分野の課題解決のために取り組む事業者を支援するグリーン成長枠と呼ばれる補助金の予算確保やグリーン税制、グリーンファイナンスをはじめ、2050年の目標達成に向けて、今後もさまざまな政策を投入する見込みです。
建築業において求められる施策
では、グリーン成長戦略のもと、建築業においてどのような施策を講じていくことが求められるのでしょうか。
以下で挙げる、高機能省エネ住宅、高機能な設備・建材、エネルギー管理と快適化、木造建築の普及の4つの分野が主な施策です。
高機能省エネ住宅
ゼロエネルギー住宅・建築物(ZEH・ZEB)やライフサイクルカーボンマイナス(LCCM)住宅の推進が求められます。
ゼロエネルギー住宅とは省エネ機器の利用や再生可能エネルギーの創出を通じて、住宅における1年間のエネルギー消費量をゼロにする住宅のことです。
太陽光発電の設置や省エネ給湯器の設置、HEMSの設置による管理なども求められます。
ライフサイクルカーボンマイナス(LCCM)住宅は建材の仕入れから建築、暮らし、廃棄に至るまで二酸化炭素の排出量の収支をマイナスにする住宅のことです。
建築業においては環境に優しい建材の仕入れをはじめ、植林など森林資源の保護、廃材のリサイクルなどが求められます。
高機能な設備・建材
業界全体を通じて断熱サッシなどの建材やエアコンなどの省エネ基準の強化、性能評価制度・表示制度をよりわかりやすくすることが目標です。
建築業では、ハイスコアの高機能建材や設備の積極利用が求められます。
省エネ、断熱性能が高い建材や設備を用いて建築することで、建物の省エネ化や二酸化炭素排出量の低減が求められるということです。
エネルギー管理と快適化
太陽光発電や蓄電池、電気自動車などの導入によって電力需要のピークシフトに取り組むことや創エネや省エネに適応できる環境整備が必要です。
また、HEMSなどIoTやAIなどの最新技術を用い、光熱費ゼロや大幅な低減を目指すことが求められます。
木造建築の普及
現在、低層住宅の約8割が木造なのに対し、非住宅・中高層建築物では木造は1割未満に過ぎません。
木造建築物に関する技術の普及と人材育成を図るとともに、先導的な設計・施工技術の導入支援を行い、非住宅・中高層建築物においても木造建築の普及を図ることを目指します。
近年、防災などの観点から木造住宅のRC住宅化の動きも見られましたが、今後は中高層ビルも含め、環境に優しい木造建築化が求められることになります。
高機能省エネ住宅に関する記事はこちら
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まとめ
グリーン成長戦略とは温室効果ガスの排出量低減に向け、国を挙げて取り組むものです。
14分野の野心的な目標を設定し、予算、税制、金融、規制改革・標準化、国際連携の5つの政策が用意されています。
建築業において求められる施策として、高機能省エネ住宅、高機能な設備・建材、エネルギー管理と快適化、木造建築の普及が挙げられます。