ウッドショックの現状~3つのショックが建築業に及ぼす影響と今後~

ウッドショックの現状

今から建物を建てようとされている方が、一番気がかりなのは、建築価格がどこまで高騰するのかという点ではないでしょうか?昨年5月ごろから本格的に始まったウッドショックも、今年に入ると落ち着くと言われつつ、あまり下がっていないですし、さらに、アイアンショックやオイルショックの影響で、建築資材価格のほとんどが20%前後上昇、4月5月に値上げを発表する住宅設備メーカーや大手ハウスメーカーもたくさんあり、資材が手に入りにくく、完成予定が遅延することも多々ある状況です。この記事では、ウッドショックをはじめとする、3つのショック、最新情報をお伝えします!

ウッドショックとは?

昨年の5月ごろから本格的に始まったウッドショック建築用木材の供給が、需要に追いつかないことで起こった「木材価格の高騰・急騰」を示す言葉で、1970年代に発生した「オイルショック」になぞらえてこのように呼ばれています。これによる建築コストが高騰着工の遅れという状況も含め、「ウッドショック」と言われています。

ウッドショック

日本の経緯

昭和30年頃は実は日本の木材供給率は95%ありました。
しかし、木材の輸入の自由化が始まって、海外から安価な木材が大量に供給されるようになり、その結果、日本の木材需給率は初めて50%を下回りました。
これを境に、日本の住宅様式、つまり住宅規格も、欧米化が進んでいきます。

当然ながら大量供給で、安価な海外の木材を使う方が住宅価格も抑えられるため、海外産の需要が高まり続け、それに伴い日本の木材需給率は低下する一方となりました。
そして、平成15年ごろに日本の木材需給率は20%を下回りました。そんな経緯もあり、日本は、コロナウイルス流行の前からずっと海外から木材を輸入している状況なのです。

日本の木造建築で使われている柱の約6割、梁や桁、横架材の約9割は、輸入に頼っている状況で、日本で使われている原木の丸太は、約70パーセントがアメリカ産のものです。

コロナウイルスの影響で、アメリカからの輸入が減少したこともあり、昨年5月ごろから本格的に輸入木材が不足し、木材単価が大幅に上昇しました。輸入木材の減少から、日本の国産材の需要も高まり、輸入木材のみならず国産木材価格も急高騰してきています。

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ウッドショックによる木材価格は?

ウッドショックにより、木材価格はどう変化しているのでしょうか?

スギ

ウッドショックが起こる前:一立方メートル当たり約13000円程度で取引

2021年9月ごろ:18000~20000円ぐらいで取引(約40%値上がり)

ヒノキ

ウッドショックが起こる前:一立方メートル当たり約18000円程度で取引

2021年9月ごろ:30000~35000円ぐらいで取引(約80%値上がり)

木材写真

その後も高騰が進み、今年に入って去年の今頃の2倍近くに上昇しているのが現状です。
今後の木材価格の先行きを見通す指針の1つに「シカゴマーカンタイル取引所の木材先物取引価格」があります。それによると、去年の5月にピークになった後、いったん8月ごろに下がりましたが、年末からまた上昇が始まっています。
アメリカ国内の低金利住宅ローン政策の中、新型コロナで郊外に家を建てたい等住宅需要が高まり、住宅の着工件数も増加傾向でした。去年10月ごろには一度落ち着いたものの、今はまた、再度上昇して、ピークに迫る勢いになっています。

こうしたアメリカの動きの後、日本の木材価格は、数か月後に影響を受ける傾向にある為、今年の1月ごろに国内の木材製品価格は若干下がりましたが、このままアメリカの木材需要が高まり続ければ、それに伴い日本の木材価格も上昇していくことが予測されます。
※国内の木材流通統計調査 農林水産省はこちら

輸入木材が不足する原因

ウッドショックの原因である、輸入木材の不足ですが、なぜこのようなことが起こっているのでしょうか?4つの視点で解説します。

① アメリカと中国に木材の多くが流れてしまっている

アメリカはコロナ後の経済も回復しつつあり、また、リモートワークの普及から、郊外に家を建てる建築ラッシュが起きています。中国も同じく景気回復とともに住宅需要が高まってきています。その為、大量に輸入する2つの国に木材の多くが流れている状況です。そんな中で、日本は世界の木材市場で買い負けることが多くなってきたようです。

② 新型コロナウイルスによる日本への物流ルートの減少

新型コロナウイルス感染予防のため、世界各国でロックダウンが起こり、世界を結ぶ物流が著しく減少しています。木材を輸入するためには、コンテナが必要です。しかしながら、ネットショッピングの利用者数も増加し、コンテナ不足に陥っています。また、コロナウイルス流行による巣ごもり傾向から、物流に携わる作業員の減少も物流に大きな影響をもたらしています。
その影響も受け、日本に木材が入りにくくなっています。

③ カナダやアメリカでの豪雨や竜巻

日本へ木材を多く輸出してくれるカナダでの虫害被害や、カナダ・アメリカで、豪雨竜巻が頻繁に起こっており、木の伐採が困難な状況となっており、さらに鉄道や道路が被害を受けて物流が滞ってしまっています。

④ ロシアのウクライナ侵攻による影響

ロシアのウクライナ侵攻による影響も大きいです。 面積ベースで世界の約2割の森林を有する森林大国ロシア。ロシア政府は経済制裁の報復措置として2022年3月7日、日本を含む48の国と地域を「非友好国」に指定、2022年3月10日、通信機器や鉄道車両など200品目以上の輸出を22年末まで禁止すると発表しました。

さらに、日本を含む非友好国に対しては一部の木材や木材製品の輸出も停止するとしました。対象となるのは、チップ状の木材(輸出品物の関税番号であるHSコード4401.21および4401.22)、粗木材(同44.03)、化粧張り用単板や合板用単板など(同44.08)です。ロシアが、輸出を全面的に禁止した為、ロシアの丸太を中国で加工し、日本に輸出するというルートも断たれてしまいました。その為、床材や色々な下地に使われる合板の価格も急激に高騰してきています。

国際的な資金決済網である、国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの大手銀行が排除されたこと、EUがベラルーシからの木材輸入を制限したことなどによって、欧州でも木材需給が逼迫する恐れが出てきます。

欧州から日本への輸出量が減れば、2021年に発生した木材高騰「ウッドショック」と同じ構図になります。このことから、第二次ウッドショックが懸念されています。

森林
また、国際的な森林認証である「PEFC認証」と「FSC認証」が、22年3月上旬に相次いで、ロシア産とベラルーシ産の木材への認証を一時的に停止すると発表しました。

PEFC本部は、ロシアおよびベラルーシ原産の木材はすべて「紛争木材」であり、したがってPEFC認証製品に使用できないことを明らかにしました。
(PEFCによる「紛争木材」の定義:武装集団、あるいは、武力紛争に関与する文民政権またはその代表者によって取引された木材であり、その目的が紛争の永続化、または個人的利益のために紛争状態を利用することの場合)

森林管理の認証を行う国際機関FSC(森林管理協議会、本部:ドイツ・ボン)は、ロシア産木材のFSC認証を一時停止ベラルーシ産木材に関してはFSC認証を取り消すとしました。
FSC認証材を取り扱う事業者は2022年4月8日までに、両国で生産された木材の取り引きを停止しなければなりません。4月8日以降は、両国産木材および木材製品のFSC認証が認められず、ロゴを表示することができなくなります。

FSC認証

木材や木材製品でFSC認証の取得には、適切な森林管理のみならず、加工・流通に至るまでサプライチェーン全体で適切な管理が求められます。認証を受けた木材や、印刷物や紙、家具等の木材製品にはFSCのロゴを表示することができるのです。FSCは、今回のウクライナ侵攻を受け、ロシアとベラルーシ産の木材を「サステナブルではない」と判断したというわけです。

このことも、今後のウッドショックに影響を与える可能性があります。

建築業界に影響する3つのショック

建築業に影響を及ぼしている、3つのショックについてご説明します。

ウッドショック

木材価格の高騰・急騰のこと。上に詳しく記載。

アイアンショック

鉄を使う建材全般の値上がりのことを言います。
中国で、去年から鉄鉱石の需要が拡大しており、高値で大量に買い取っている現状です。キッチン、窓サッシ、エアコンなどの設備関係、屋根や外壁に用いられる、ガルバリウム鋼板、基礎補強の鉄筋、釘、固定ボルト等までが20~30%値上がっている状況です。

オイルショック

コロナによる景気低迷が世界的に回復しつつある中で、原油の需要が急激に高くなったにもかかわらず、原産国での生産が追いつかないことによる原油価格の急上昇している状況にあります。その影響で、様々なものを運搬する際の燃料費や石油を使って作る樹脂製品全般の値上がりが起こっています。ガソリン単価の上昇もその一つです。

物を運ぶための物流コストの上昇のみならず、石油を使って作られる、水道配管やお風呂の浴槽、雨樋、樹脂系の断熱材、石膏ボード、ビニールクロスなどの様々な建築資材の値段が高騰している現状にあります。

この3つのショックが重なり合って、木材や鉄、運搬費、石油製品の価格が上昇し、日本の建築業界に大きな影響を与えているのです。

また、落ち着く兆しが見えない為、各住宅メーカーも今年4月から、10~40%値上げを発表しているところも多くあります。大手ハウスメーカーのみならず、周りの工務店等も坪5万円程度の価格改定を検討しているという話もあります。しばらく、建築価格は上昇傾向と考えておくべきでしょう。着工の遅れや、部分的に資材が揃えられず完成が遅れる、入居できたとしても、一部の設備は後から設置する等ということも多いのが現状です。

今後の日本の木材需給はどうなっていくのか

では、様々な原因から輸入ルートが激減した昨今、日本の木材需給はどうなってゆくのでしょうか?
日本の山は、戦後に植栽されたものが多く、十分に成長しており、伐採して利用することが可能で、現在の日本の山には木材資源は潤沢にある状況です。

ウッドショックの影響もあり、国産の木材に着目する動きが出てきており、一時期20%を下回っていた日本の木材需給率は、35%にまで回復してきている現状にあります。今後もその傾向は、徐々に高まっていくことが予測されます。
しかしながら、今度は国産木材への需要もどんどん高まってきており、国産木材価格も高騰してきている現状があります。

  • 施工管理システム

ウッドショックの対策

現在進行中のロシアのウクライナ侵攻の影響もあることから、ウッドショックはこれから先も続く可能性が高い為、木材価格が高騰しても受注数を減らさないように取り組むことが大切です。
では、具体的な対策とはどういったものなのでしょうか?

顧客管理の徹底

建築業のように大量生産ができない製品を扱っている場合、顧客管理の徹底をすることで、既存顧客にリピーターになってもらうことが大切です。
また昨今では、市場にたくさんの製品があふれているため、新規顧客を獲得する方がリピーターを作るよりも高いコストが必要となってくるとされています。
このような状況もあって、顧客管理の徹底は必要不可欠といえます。

自社の顧客はどのような属性で、どのようなニーズを持っているのか、住宅を建ててから、どのくらいの年数が経過しているのかといった情報を、漏れなく管理することで、それぞれの顧客に適切なタイミングで最適な提案をすることが可能となります。
顧客のニーズに沿った提案をすることで、顧客満足度が向上し、良好な関係構築やリピートにつなげていくことができるでしょう。

DX化での生産性向上

IT技術を活用したシステムやツールなどを利用してビジネスを変革できる、「DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)化」に取り組むことで生産性の向上が図れます。結果、コスト削減につなげることが可能になります。DXは決して難しいことではありません。

例を挙げると、モデルハウスからの集客だけでなく、Webサイトを充実させインターネットからの集客に取り組む、SNSやブログなどを活用し、自社の情報を積極的に発信するといったこともDX化の一つです。
最近では、スマートフォンを利用して情報収集に取り組む人も多いため、Webサイトを構築する時は、スマートフォンでも見やすいデザインにすることもポイントです。その他、業務管理ツールを導入して情報を一元管理することもDX化です。

業務管理ツールは各社から展開されていて、顧客情報や見積作成、工事・施工管理や工程表作成、受発注管理、入出金管理など業務に関するあらゆる情報を集約することが可能になります。必要な情報にアクセスしやくなるため、業務効率化を実現できます。

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コスト改善

標準原価を見直し、コスト改善に取り組むことは、無駄な出費を抑え、木材価格の高騰への対応に繋がります。
具体的に、標準原価と実際原価の差異を分析し、標準原価のどの部分に問題があるのかを明確にしたうえで、対策の検討を行います。例を挙げると、資材調達の変更、工法の見直しといったことです。

誰でも簡単に操作できる!『建築業向け管理システム アイピア』

建築業向け(リフォーム・工務店)管理システム アイピア

アイピアは建築業に特化した一元管理システムであり、顧客情報、見積情報、原価情報、発注情報など工事に関する情報を一括で管理できるため、情報集約の手間が削減されます。 さらに、アイピアはクラウドシステム。外出先からでも作成・変更・確認ができます。


まとめ

この記事ではウッドショックの原因、ウッドショックを含む3つのショックや、日本の木材需給について解説しました。新型コロナウイルスの流行、ロシアのウクライナ侵攻をはじめ、様々な要因が影響しあっていることから、今後の見通しも立ちにくく、ウッドショックが長引く可能性は非常に高いです。これからの動向に注意が必要です。それと同時に、現状にあるウッドショックの対策として、今、自社でできることを考え、取り組むことも非常に大切となってきます。

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AIPPEAR NET 編集部

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