建設業で働いている人を見ると、従業員の大半が男性を占めている企業も多いのではないでしょうか。
実際、現場では重たい資材を運ぶことも多く、体力面の観点から男性が多く雇用されているのは事実です。
しかし、そのような建設業界でも活躍する女性はたくさんおり、今まで以上に積極的に女性を雇用しようという動きが出ています。
この記事では、なぜ建設業に女性が少ないのか、女性採用に向けて企業が取り組むべきことや、女性が活躍している職種を中心に解説していきます。
目次
なぜ建設業界には女性が少ないのか
最近では女性の社会進出が進んでいますが、残念ながら建設業界ではさほど増えていません。
ひと昔前に比べたら少しずつ増えてきてはいますが、それでも他の業界と比べて割合は男性がほとんどです。
増えない理由の一つとして、女性が働きやすいと感じる環境が整っていないことも挙げられます。
ここでは、建設業において女性の雇用が増加しない要因を解説していきます。
建設業の現状
建設業では、ほかの業種に比べ女性の割合が少ないのが現状です。
しかし、近年では女性の雇用を増やそうという動きもあり、継続就業に関する制度を導入している企業も94.5%と増えています。
育児休業制度や介護休業制度を設けている企業も増えており、どちらも80%以上の企業が実施しているため、働きやすい環境に変わりつつあります。
建設業の技術職へ就いている女性の人数は、平成26年度は11,000人でしたが、令和元年に入ると22,000人と2倍に増加しました。
技術者だけでなく技能者も増え、これまで87,000人だったところから110,000人へ増加しています。
女性の割合が少ない要因
建設業に従事する女性の割合が少ない原因はいくつか考えられます。
ここからは、その要因を以下の3つに焦点を当てて解説していきます。
- 女性用の設備が少ない
- 育休・産休制度が整っていない
- 従業員の意識の低さ
女性用の設備が少ない
これまで男性従業員が圧倒的多数を占めていたため、そもそも現場に女性専用のトイレや更衣室がありません。
トイレは皆一緒に使わなければならないですし、水洗ではない場合も多いです。
加えて、女性専用の更衣室がない場合は、着替えられる場所を探さなければならないため、大変です。
まずは働きやすくするためにも、最低限の女性用の設備は必要です。
育休・産休制度が整っていない
女性従業員の割合が少ないために、育休制度や産休制度が整っていない企業が多くあります。
力のある若手の女性が建設業で働きたいと思っていても、長い目で今後の人生を考えた時に、育休・産休制度が整った業界を選ぶことも多いでしょう。
また育休制度がなかったり、人材不足により育休が取りにくい環境である場合は、例え女性が出産後も現場に復帰したいと思っていても、それができなくなってしまいます。
育休や産休制度がまだ整っていない企業では、まず制度づくりが必要です。
従業員の意識の低さ
女性用設備が少なかったり、育休制度や産休制度が整っていない背景には、これらが必要であるという認識がそもそも業界内に無い、という問題があります。
建設業界は、今深刻な人材不足の問題に直面しています。
人材が建設業から離れていくことを防ぐためにも、あらゆる人にとって働きやすい職場環境の整備は喫緊の課題であると言えます。
これまで建設業の現場では男性従業員が多数を占めてきた経緯から、女性を雇用することに対して後ろ向きな企業も多いようですが、このような後ろ向きな姿勢が人材不足を招く一因であると捉えることもできます。
柔軟性や多様性の意識をもって、人材の雇用のために環境を整えることも、建設業において必要とされています。
建設業の人員不足に関する記事はこちら
女性採用に向けて企業が取り組むこと
積極的に企業が女性の採用に取り組むことが、現状を変えるには必要です。
ここからは、女性採用に向けて企業が取り組むべきことについて解説していきます。
国土交通省による取り組み
国土交通省でも、もっと女性が働きやすいようにと、『もっと女性が活躍できる建設業行動計画』や『けんせつ小町活躍推進計画』など、さまざまな取り組みを行っています。
労働面で女性を特別扱いして働きにくい環境を作らない、女性が安心して働けるようにトイレや更衣室の整備するといったことも行っています。
ほかにも、時短勤務やフレックスタイム制なども取り入れる働き方を導入するなど、その取り組みの種類もさまざまです。
建設キャリアアップシステムを活用した女性の定着促進も行い、国土交通省でも予算を確保して女性が働きやすいように動いています。
助成金の利用
建設業では、事業主に対して助成金もあります。
女性の雇用を積極的に行うための助成金も充実していますので、上手に利用しましょう。
例えば、『若年・女性建設労働者トライアルコース』や『若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース』があります。
中でも『若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース』では、事業主経費助成、事業主団体経費助成、推進活動経費助成といくつかの助成もあります。
たとえば、女性用のトイレや更衣室を自社ですべて費用を支払い設置するとなると大変ですが、助成金があるので積極的に利用すれば負担金も減るでしょう。
各制度の整備
表向きは、女性が働きやすいように産休や育休を取り入れている風に見せていても、実際は圧力があり取りにくい企業も存在します。
そのような職場では、女性に働きたい意思があっても、継続的に働き続けることはできません。
まずは見せかけの制度ではなく、実際に気持ち良く取得できるように産休や育休を整備しましょう。
女性従業員が満足しているかどうかしっかりと確認を行い、制度がしっかりと実行されているか定期的にチェックも必要です。
職場の環境を整える
今まで男性が中心に働いていたため、女性専用のトイレや更衣室を持っている企業はほとんどありませんでした。
そのため、近くにあるトイレを使いにくいと感じた女性が、コンビニを探してそこまで着替えをしに行く事案もありました。
今は大手企業をはじめ、女性も安心して働けるように職場の環境を積極的に整える企業が増えています。
助成金も使用できるので、現場環境を上手に整えていくと良いでしょう。
建設業の補助金・助成金に関する記事はこちら
女性が活躍しているおすすめの職種
建設業にもさまざまな職種があり、女性が活躍できるものも多いです。
ここからは、女性が実際活躍しているおすすめの職種をいくつか紹介していきます。
建築士
建築士は重い資材を運ぶなど体力勝負ではないため、活躍している女性も多いです。
女性の利用が多い施設などの設計では、特に女性の建築士による設計に期待されています。
どこかの企業に所属しなくても、建築士の資格があれば独立して安定した仕事も可能です。
そのため、結婚や出産後に自分のペースで仕事を続けたい方にとっては、選択肢が広がる職種です。
建築積算士
建築積算士も現場で直接働くわけではなく、体力に自信のない方も活躍できる職種です。
建物を建てる際に、どの程度の費用がかかるのか建築費用を計算するのが建築積算士の業務です。
特別に資格がなくても働けますが、資格取得を考えている場合、公益社団法人日本建築積算協会認定の資格も可能です。
経験を積んでいき信頼度も上がっていけば、年収もアップします。
インテリアデザイナー
インテリアデザイナーもおすすめの職種です。
女性のライフスタイルに合わせて働きやすいのも特徴です。
企業で従業員として働くだけでなく、ある程度スキルを身につけて独立もできます。
建設業だけに限らずデザイン業でも活躍ができ、幅広く働けるのもおすすめです。
専門の資格はありませんが、インテリア設計士やインテリアコーディネーターを取得して活躍しても良いでしょう。
リフォームプランナー
古くなってきた住宅をリフォームしたい、もっと使い勝手が良い間取りにしたいという要望に応えるのがリフォームプランナーです。
リフォームプランナーは、お客様の希望を聞き、さらに現場でもしっかりと確認をします。
今は古い住宅をきれいにしたいという要望は近年増加傾向にあるため、需要の高い職種です。
CADオペレーター
CADオペレーターも女性におすすめな職種で、資格がなくても働けます。
しかし、建設業で活躍するにはある程度知識がないと、入社してから覚えるのも大変なため、建築CAD検定の資格を持っておくと良いでしょう。
知識のスキルだけでなく、人との関わりもあるためコミュニケーションスキルも磨いておく必要があります。
建築業向け業務管理システム『アイピア』
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まとめ
建設業界に女性が少ない大きな原因は、働きにくい環境です。
まだ男性の人数が多く、女性用の設備が少ない、育休や産休制度が整っていないなど課題が多く残っています。
まず企業として、助成金なども上手に活用しながら各制度の整備や職場の環境を整えることも重要です。
国土交通省でも積極的に女性採用へ向けて取り組んでいるため、企業としても課題に取り組みましょう。
女性を採用するメリットも多く、男性視点だけでは気が付かなかったことも見えて、人材不足へも対応できるようになります。
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