不同沈下とは？【建築用語】発生要因や影響、対策方法について解説

建物の傾きや壁のひび割れといった不具合の原因として、近年あらためて注目されているのが「不同沈下」です。
不同沈下は地盤が部分的に沈下することで発生し、住宅や建築物の安全性・資産価値に大きな影響を及ぼします。

しかし、原因や仕組みが分かりにくく、異変に気づいたときには被害が進行しているケースも少なくありません。
本記事では、不同沈下とは何かという基礎知識から、発生する原因、建物への具体的な被害、そして有効な対策方法までを分かりやすく解説します。
これから家を建てる方はもちろん、建築・不動産に関わる方や、現在の建物に不安を感じている方にも役立つ内容です。

不同沈下とは？

不同沈下とは地盤沈下が均等でない状態を指します。

その原因は土壌の不均一性や建築物の過重負荷にあります。
この問題は建築物に亀裂や傾斜などの影響を及ぼし、安全性の低下を招く可能性があります。

地盤問題への正しい理解は、構造物の耐久性と安全性を確保する上で欠かせません。

法規に基づく不同沈下対策の重要性

地盤の沈下は、建築物の安全性に直結するため、日本の法律においても厳しく規定されています。

この法的背景から、不同沈下は単なる地盤の問題ではなく、建物の安全と資産価値を守るための重要な課題です。
適切な地盤調査と対策の実施は、法律で定められた責任を果たす上でも不可欠です。

不同沈下の原因と影響

不同沈下とは、地盤の不均等な沈下を指し、自然現象や人為的要因によって引き起こされます。

これらの要因により地盤沈下が起こると、建築物の損傷、ドアや窓の歪み、配管の破裂などの問題が生じ、安全上のリスクが高まります。
対策方法としては、盛土や地盤改良などが必要となりますが、これらの作業を行うには専門的な調査が必須です。

自然現象による不同沈下

自然現象による不同沈下は、地震や洪水、干ばつなど自然の力が地盤に働きかけることで生じます。
特に、地震は地盤の密度や構造に大きな変化をもたらし、一部分だけが沈下することがあります。
洪水や干ばつは土壌の湿度を変化させ、これにより土壌が収縮・拡張し不均一な沈下を引き起こします。

人為的要因による不同沈下

不同沈下は、自然現象に加えて、人為的要因も大きく関与しています。
開発活動がその一例であり、市街地拡張や新たな工業地帯の確立などに伴う土地の造成は、地盤を不均等に圧縮させる原因となります。
また、農業用水や工業用水、生活用水としての地下水の汲み上げは、地下の空洞を生み、地盤沈下を加速させることが知られています。

不同沈下が建築物に与える影響

不同沈下が建築物に与える影響は、構造的な安全性と機能性に関わる深刻な問題を引き起こします。
例えば、床のひび割れは、不均等な地盤の沈下により建物の一部が他の部分よりも速く沈むことで生じます。

これは建築物の外見だけでなく、その強度にも悪影響を及ぼし得ます。
また、扉や窓の閉まり具合が悪くなると、使用上の不便さだけでなく、防犯上のリスクも高まる可能性があります。
不同沈下は、建物の耐久性を低下させ、最終的には安全な生活空間を脅かす要因となり得ます。

不同沈下の診断

不同沈下は建物や道路の一部が周囲に比べて不均一に沈下する現象であり、構造物に重大なダメージを及ぼす可能性があります。
その原因を特定するためには、専門の診断技術が不可欠です。地表面の測量や地下の探査を行い、土壌の状態や水分量を調査することで、地盤の不均衡を詳細に把握します。

不同沈下の検出方法

不同沈下の検出には、複数の地盤調査技術が利用されます。
その中で代表的な検出方法には、レベル測量と地震波探査があります。

検出方法（１）　レベル測量

レベル測量は、土地の微妙な高低差を精密に測定することで、不均一な沈下を特定します。
この方法では、専用の測量器具を使用して地表面の変動を検知し、その差異を計測します。

検出方法（２）　地震波探査

地震波探査は、地盤の硬さや地層の性質を把握するための技術です。
この方法では、地表や地下に振動源を設置し、その振動によって発生する地震波の伝播速度を計測します。

不同沈下の対策方法

不同沈下は建物や構造物に深刻な影響を及ぼす可能性があり、その対策は非常に重要です。
ここでは、不同沈下を防ぐための効果的な対策方法を詳しく解説します。

対策方法（１）地盤改良工法

地盤改良工法は、家を建てる際に不同沈下を防ぐための重要な対策の一つです。
この工法は、地盤の強度を改善し、構造物が安定するようにサポートします。
地域ごとの地盤の特性に応じて適切な方法を選ぶことが大切です。
地盤改良には、主に以下のような方法があります。

これらの工法を適切に選択し施工することで、不同沈下のリスクを大幅に減少させることが可能です。

地盤改良のトレンドと複合的な対策

近年、地盤改良工法においては、単に強度を高めるだけでなく、環境への配慮も重要なトレンドとなっています。

従来のセメント系固化材を使用する工法は安価ですが、地下水への影響（六価クロム溶出リスク）や、改良体を撤去する際の残土処分が課題となることがあります。
このため、天然砕石パイル工法や、低残土・非セメント系の鋼管杭工法など、より環境負荷の少ない工法が選択肢として普及しています。

また、地盤が複雑な層構造を持つ場合、表層改良と柱状改良を組み合わせるなど、複合的な地盤改良が行われるケースも増えています。
建物の荷重や地盤の特性を詳細に解析し、最適な工法を複数組み合わせることで、より確実な不同沈下防止を目指します。

対策方法（２）基礎補強

基礎補強は、家を建てる際に重要なポイントです。
地盤の性質や地面の状態によっては、不同沈下が発生しやすく、これが建物の損傷を引き起こす可能性があります。
不同沈下を防ぐためには、適切な基礎補強が欠かせません。
基礎補強の方法には、耐震補強、地盤改良、パイル工法などがあり、これらの技術を駆使して建物の安定性を確保します。

対策方法（３）予防メンテナンス

不均一な地盤沈下は建物に深刻な損傷をもたらす可能性があるため、地域の地盤調査を行い、その結果に基づいて適切な対策を講じることが不可欠です。

まず、建物の基礎部分や周囲の地盤の状態を定期的にチェックし、異常がないか確認します。
また、雨水の排水システムや排水路の整備も重要です。
水は地盤を弱める原因となり得るため、適切な排水が求められます。
さらに、建物の荷重バランスを保つための調整も行います。
建物の傾きやひび割れが見られた場合は、早急に専門家に相談し、適切な対策を講じることが重要です。

不同沈下に関するよくある質問

ここでは、「不同沈下に関するFAQ」におけるよくある質問とその答えについて簡潔にご説明します。

不同沈下は修正可能か？

不同沈下とは、建物の基礎が均等でなく沈むことで生じ、これは修正可能です。
主な修正方法には地盤改良があり、注入工法や杭打ち工法などが有効です。
地盤の状況を詳細に診断した後、最適な方法を選択し、専門家による精密な作業が必要です。

早期発見と適切な措置が、修正成功の鍵となります。

保険は適用されるのか？

不同沈下による損害が住宅保険でカバーされるかどうかは、保険の種類と契約内容によって大きく異なります。
特に新築住宅の場合、「住宅瑕疵担保履行法」に基づき加入が義務付けられている「住宅瑕疵担保責任保険（瑕疵保険）」が重要な役割を果たします。

専門家に相談するタイミング

不同沈下が疑われる兆候を感じた際は、速やかに専門家相談が重要です。
特に、建築物の歪み、床の傾斜、ドアの閉まりが悪いなどのサインが見られる場合、対策時期を逸する前に地盤工学のエキスパートに診断を求めるべきです。
これにより、適切な対策を迅速に実施でき、さらなる被害の拡大を防げます。

まとめ

本記事を通じて、不同沈下とは地盤の不均一な沈下を指し、建物に様々な問題を引き起こす地盤問題の一つであることをご理解いただけたかと思います。
この問題への対策としては、建築前に十分な地盤調査を行う、適切な基礎工法を選択する、定期的な建物の点検を行うなどが挙げられます。
不同沈下への対策は、専門家と連携し、正しい理解に基づいて行うことが重要です。

建築業向けの管理システム「アイピア」