建築業界で近年注目されているのが、建築コスト管理士です。
建築コスト管理士の第一号が誕生したのは2006年であり、比較的新しい資格制度だといえます。
そのため、資格取得者がまだ少なく、取得できれば業界で有利に働くかもしれません。
そこで今回は、気になる仕事内容や年収をはじめ、試験概要や難易度について徹底解説していきます。
建築コスト管理士とは
建築コスト管理士とは、建築に関するコストマネジメント業務ができる高度な専門知識と技術を有するプロフェッショナルとして認定された資格者です。
担当する業務は、建設プロジェクトの企画・構想から維持・保全、解体にいたる建築のライフサイクル全般にわたります。
公益社団法人日本建築積算協会が制定した受験資格を満たし、毎年実施されている試験に合格したうえで、認定を受けなくてはなりません。
仕事内容
建築コスト管理士の有資格者の仕事内容は、勤務する会社で与えられる職務内容によります。
一般的な担当業務は以下の通りです。
- 構造計画や外装や設備の方式について、プロジェクト案を検討することや複数の案を提案すること
- 性能比較や見積書の作成、施工費の算定や必要部材の数量積算を設計の初期段階から実施すること
- 予算と照合して設計内容の調整や変更などを行うこと
年収
次に、建築コスト管理士の年収を確認しましょう。
地域や会社の規模、経験などにもよりますが、400万円〜800万円ほどが年収の相場です。
建築コスト管理士が出来た理由とは?
1980年代に入り、ただ工事費を積み上げて計算するだけでは、適切なコストを算出できないという問題が指摘されるようになりました。
これに対応するため、1990年代には総合建設会社(ゼネコン)や大手設計事務所がコストマネジメントの重要性を認識し、組織的に取り組むようになりました。
このような背景の中で、設計の初期段階からのコスト管理の重要性が広く理解され、専門的な資格の創設が検討されました。
2005年1月に建築コスト管理士認定事業がスタートし、2006年4月1日に初の資格者が誕生しました。
建築積算士との違い
建築積算士とは、建築生産プロセスの工事費の算定について高度な専門知識と技術を有するプロフェッショナルです。
もっとも、数量を算出して、工事費を積上げ算定する積算業務だけでは、適正なコストを導き出せないという課題が、業界内で認識されるようになりました。
そこで、設計の初期段階から継続的にコストマネジメントを行う人材が必要とされ、建築コスト管理士という資格が新たに誕生することになりました。
建築コスト管理士は、建築積算士の知識や技術をベースに、さらにプロジェクト全体をマネジメントできる資格です。
建築コスト管理士になるには
建築コスト管理士になるには、学科試験と短文記述試験を受け、合格しなくてはなりません。
また、この試験を受けるためには、5年以上の建築関連業務の経験を積むか、一級建築士または建築積算士の資格を得て登録や更新などの条件を満たす必要があります。
以下で試験について詳しくご紹介します。
試験概要
試験は、択一式の学科試験と短文記述試験が1日で行われます。
学科試験は2時間30分で、2024年度は12:50〜15:20で開催されます。
問題は4肢択一式で、60問が出題されます。
短文記述試験は2時間で、2024年度は学科試験の後、15:40〜17:40で行われます。
問題数は5問で、200文字以内の短文で、端的かつ正しく解答することが求められます。
試験範囲
「新☆建築コスト管理士ガイドブック」の第 1章~第4章と、「建築積算士ガイドブック」のうち第6章~第8章および第10章が試験範囲となります。
ガイドブックは公益社団法人日本建築積算協会のサイトから申し込んで購入するか、Amazonのストアでも購入可能です。
試験日程
試験日程は、公益社団法人日本建築積算協会が発表しますが、例年10月下旬頃です。
受験の申込期間は例年6月〜9月初旬頃です。
なお、2024年度は試験日が2024年10月27日(日)、申し込みは2024年6月3日(月)〜9月6日(金)です。
試験地
札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡・鹿児島・沖縄の全国9都市9会場です。
受験資格
次のいずれかに該当すれば、建築コスト管理士の受験ができます。
- 一級建築士に合格して登録を行っている
- 建築積算士の称号を取得後、1回以上の更新登録をしている
- 建築関連業務を5年以上経験している
なお、建築関連業務には、建築士法で定められた大学院修了課程の期間も含めることが可能です。
合格率はどれくらい?
公益社団法人日本建築積算協会の「建築コスト管理士認定事業による試験実施結果」によると、最近5年間の合格率は次の通りです。
2019年 | 82.6%(受験者数155人・合格者数128人) |
---|---|
2020年 | 67%(受験者数182人・合格者数122人) |
2021年 | 63.3%(受験者数221人・合格者数140人) |
2022年 | 47.9%(受験者数288人・合格者数138人) |
2023年 | 54.8%(受験者数292人・合格者数160人) |
近年、合格率が低下傾向にあり、試験の難易度が上がっているように感じられます。
しかし、試験が難しくなっているかどうかは、受験者数の増加にも注目する必要があります。
受験者が増えることで、勉強時間が不十分な人や経験が浅い人も増えている可能性があります。
そのため、合格レベルに達していない受験者が増えているだけかもしれません。
必ずしも試験の難易度が上がっているわけではなく、十分に勉強すれば合格することは可能です。
建築コスト管理士の試験難易度は?
年度によって変動はありますが、建築コスト管理士試験の合格率は平均で約60%です。
この合格率は比較的高いとされ、試験の難易度が低いと考えられています。
しかし、試験内容は単なる基礎知識にとどまらず、建築業界での実務経験や実際の建築プロジェクトでのコストマネジメントに関する専門的な知識が求められます。
計画的に勉強し、試験対策を徹底することが重要です。
建築業の資格に関する記事はこちら
建築コスト管理士試験の勉強方法
では、建築コスト管理士試験に合格するためにはどうすれば良いのでしょうか。
合格するための勉強方法をご紹介します。
ポイントは、出題範囲となるガイドブックを熟読することと、過去問を解くことです。
ガイドブックを熟読する
建築コスト管理士試験の出題範囲は、「新☆建築コスト管理士ガイドブック」の第1章〜第4章と、「建築積算士ガイドブック」の第6章〜第8章および第10章です。
出題範囲が決められているので、これ以外の内容が出題されることは基本的にありません。
そのため、ガイドブックを購入し、指定された範囲をしっかりと読み込むことが重要です。
細部までしっかりインプットすることで、試験に向けた準備が整います。
過去問を解く
出題範囲となるガイドブックを熟読して、内容をインプットしたら、それが本当に頭に入っているか、アウトプットをして確認しましょう。
過去問題と解説が公益社団法人日本建築積算協会のサイトに公開されているので、繰り返し解くのがおすすめです。
全問スムーズに解けるようになるまで繰り返し練習することで、理解が進みます。
単に一度解いたら終わりにするのではなく、全問正解できるまで繰り返すことが効果的です。
このようにすることで、試験でしっかりと得点できる力が身につきます。
積算システムに関する記事はこちら
まとめ
建築コスト管理士は、公益社団法人日本建築積算協会が制定した資格です。
建設プロジェクトの企画・構想から維持・保全、解体にいたる建築のライフサイクル全般にわたり、コストマネジメント業務ができる高度な専門知識と技術を有するプロフェッショナルです。
仕事内容は、プロジェクトの企画や検討、見積書の作成や施工費の算定、予算との調整などが挙げられます。
建築積算士の知識や技術をベースに、さらにプロジェクト全体をマネジメントできます。
年収の相場は、400万円〜800万円ほどです。
建築コスト管理士になるには、毎年実施されている試験に合格し、認定を受ける必要があります。
過去問が公開されているので、試験準備をしっかりして挑みましょう。
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