持続可能な社会の実現や防災・減災、スマートシティの構築に向けて、建設・都市開発分野における学術研究と技術開発の役割はかつてないほど高まっています。大学などの教育・研究機関では、最新のデジタル技術(BIM/CIM、AI、ロボティクス等)と土木・建築学を融合させた最先端の研究が進められており、次世代の業界を背負う人材の育成拠点としても注目を集めています。本記事では、建設・都市開発に関連する先進的な学部・学科を擁し、最先端の研究に取り組む全国のおすすめ大学・研究プロジェクトをご紹介します。
大学による建設・都市開発分野の研究事例
東京大学 空間計画研究室

引用元:http://urbandesign100.k.u-tokyo.ac.jp/
東京大学 空間計画研究室では、都市の持続可能性とQOL向上を目指す都市デザイン・都市計画の研究を推進しています。
研究の核となるのは、データや先進技術を活用したスマートシティ構想やコンパクトシティ、公共空間のマネジメントに加え、東京の代表的な都市デザイン事例を集積・体系化したデジタルアーカイブプロジェクト「東京のアーバンデザイン100選」などの実践的な取り組みです。
単なる理論研究にとどまらず、地域社会の課題解決に向けた「公・民・学」連携による都市デザイン手法や、エリア価値を高める空間運用の仕組みを具体的に検証・構築しています。
テクノロジーと人間中心の空間デザインを融合させ、気候変動や人口減少といった社会変化に対応する次世代都市モデルの創出に取り組んでいます。
大阪大学 大学院工学研究科

引用元:https://www.cfi.eng.osaka-u.ac.jp/fd-research/
大阪大学 大学院工学研究科は、将来世代に持続可能な社会を引き継ぐための新たな社会システムおよび技術デザイン手法を開拓・研究しています。
研究の最大の軸となるのは、将来世代の視点や意向を現在の意思決定プロセスに反映させる学術アプローチ「フューチャー・デザイン」の理論深化と社会実装です。気候変動やインフラ劣化、資源循環といった時間軸の長い課題に対し、「現代世代の利益」偏重を乗り越える評価・デザイン手法の構築に取り組んでいます。
具体的には、自治体の都市計画マスタープランや環境計画・カーボンニュートラル施策へのFD導入、企業の研究開発(R&D)戦略・新規事業提案における将来ニーズの可視化、さらに水道インフラなどの持続可能な維持管理計画の検証など、幅広い領域で産学官共創の実践研究を展開しています。
高度な理論・データ分析(システム思考や参加型アセスメント)と現場での実践を融合させることで、時間軸を組み込んだ新たな社会工学の確立と持続可能なイノベーション創出に貢献しています。
東北工業大学 建築学部建築学科 許 研究室(環境・設備系)

公式サイト:https://www.arch.tohtech.ac.jp/laboratory/lei/
東北工業大学建築学部建築学科 許研究室では、BIM(建築情報モデリング)技術を活用した設備設計に関する研究を行っています。給排水・空調設備設計および省エネルギー計算の基礎を学び、BIM技術を活用した次世代の環境・設備設計のあり方を提案しています。また、BIMツールの活用と建築設備設計・火災避難安全計画との連携について研究しています。さらに、調査や実測に基づいて、自然エネルギーの活用、ZEBの実現、省エネルギー対策、そして快適な居住環境の構築に向けた実践的な取り組みを行っています。
【主な研究テーマ】
- BIM技術を活用した建築設備設計に関する研究
- BIM技術を活用した避難シミュレーションに関する研究
- 建物における省エネルギー対策の調査・提案
- 快適な居住環境づくりに関する研究
- 東北地域における温暖化の実態調査
3年次では、上記のテーマに関する設備設計・環境づくりの基礎的な知識を習得し、特にBIMの基礎知識、建築設備図面の書き方や環境シミュレーションツールの使い方などを学びます。
4年次では、各自が主体的に研究を遂行し、その集大成として卒業研究の成果を纏めます。

東京都市大学 都市生活学部

公式サイト:https://toshiseikatsu-gakubu.jp/
東京都市大学・都市生活学部について(教授:西山敏樹)
東京都市大学・都市生活学部は、我々の都市生活の質的向上を目指し、必要なビジネス・政策・デザインおよび関連技術を横断して学べる日本でも唯一のユニークな社会科学系の学部です。
「都市のライフスタイル」、「都市のマネジメント」、「都市のデザイン」、「都市のしくみ(システム)」の四領域を柱にし、それらを融合させながら生活者視点で都市の経営・政策・空間づくりまでを包括的に研究・教育しております。
社会科学的な調査手法からCAD等のディジタルデザイン手法、都市シミュレイション手法までを文系学部でも学ぶ点が大きな特徴です。文理を融合させて現実的な視座で都市を研究します。
バリアフリーやユニヴァーサルデザイン、モビリティデザイン、コミュニティデザイン、インテリアデザイン等、都市生活を豊かなものにするための様々なデザイン手法を学ぶことが出来、従来型の工学的都市研究とは異なる特徴的な学部として人気が出ています。
学部生も実際に街へ出て、都市生活を改善するための社会実験を教員と積極的に実施し、実践力を身に着けて社会に羽ばたいていきます。実践的な人財の輩出も学部の特徴です。
西山研究室:http://www.mobility-lab.info/
北海道科学大学 工学部 都市環境学科

公式サイト:https://www.hus.ac.jp/faculty/engineering/civil/
北海道科学大学工学部都市環境学科では、社会インフラの充実や 防災・減災機能の向上、自然環境の保全に寄与する人材を育成しています。 山から海までを対象とし、道路や港湾等の施工管理者などの育成を目指します。
1年次から北海道開発局や札幌市などの行政の協力を得て、 トンネルや橋梁などの工事現場を見学する機会を毎年提供しています。 実践型授業を取り入れ、人と自然が共生するまちづくりに貢献しています。
技術士や土木施工管理技士などの資格取得に向けたサポート塾や、 手厚い就職指導を実施しており、2025年度の就職率は100%です。 建設業や公務員をはじめ、幅広い領域へ卒業生を輩出しています。
また、企業と連携した施工管理の講義や、ドローンを活用した地域活性化・人材育成も行っています。 全員が参加する雪かき等のボランティアなど、地域貢献の取り組みも豊富です。
最新の実験施設を備え、熱意ある教員のもとで専門知識や技能を修得し、 地域社会の多様な課題に対応できる実践的な技術者の養成を推進しています。
北海道科学大学 工学部 建築学科

公式サイト:https://www.hus.ac.jp/faculty/engineering/arch/
北海道科学大学工学部建築学科では、積雪寒冷地である 北海道の地域課題や多様なニーズに対応し、安全で快適な生活空間を実現する建築設計者や建築技術者を養成しています。
カリキュラムは、1・2年次に専門知識や技術的スキルの基礎・基盤を構築してから、3年次以降に計画、意匠、構造、設備などの専門性の高い科目に取り組む構成です。CADやBIMなどのデジタルツールを使った演習も導入されています。
寒地建築設計、建築と省エネルギー、雪が建築に及ぼす影響などの講義に加え、 全国に2台しかない本格的な風洞実験装置をはじめとする最新の研究設備を備え、積雪寒冷地に特化したユニークな講義・演習内容を用意しています。
指導面では意匠・構造・設備の専門家から学べる環境が整うほか、 公営住宅や空き家のリノベーション、 歴史的建築物・都市や大規模建築物の視察を行う「建築ツーリズム」の講義など、実践的取り組みも豊富です。
卒業時には一級建築士の受験資格取得に対応し、2025年度の就職率は100%を達成しています。施工管理や設計、住宅系、 公務員など建築関連の幅広い分野へ卒業生を輩出しています。
武蔵野大学 工学部建築デザイン学科 太田裕通研究室(建築・都市デザイン研究室)

公式サイト:https://otalab.info/
武蔵野大学工学部建築デザイン学科の太田研究室は、「対話を軸とする社会プロセスとしての建築・都市デザイン」をテーマに、地域や人と共につくる空間実践と研究に取り組んでいます。
建物や空間そのもののデザインだけでなく、住民・行政・他団体との対話や協働を通じて生まれる「プロセス」に着目し、それを可視化・共有することで、地域に「小さな公共性」や「自己組織性」が育まれる仕組みを探究しています。
具体的には、群馬県みどり市で住民や子どもたちとつくる私設公園「わがままパーク」、官学連携によるウォーカブルなまち育て、東京都豊島区南池袋で築50年のアパートの一室を解体・仮設ギャラリー化するDIYリノベーションなど、地域の状況に応じた実践を展開しています。
また、新しい都市デザインが進む前橋市や大規模再開発が進む西新宿3丁目では、地域に蓄積された記憶や語りを集めるコミュニティアーカイブにも取り組んでいます。
デザインを「ものをつくる行為」に限定せず、人・地域・社会との関係をつくる実践として捉え、現場から建築・都市デザインの新たな可能性を探究する研究室です。
名古屋工業大学 社会工学科環境都市分野 海岸工学研究室

公式サイト:https://suiko.web.nitech.ac.jp/coast/
名古屋工業大学 社会工学科環境都市分野 海岸工学研究室(略して、海岸研)では、沿岸部に来襲する津波、高潮、高波から街を守るために、来襲外力規模の算定や浸水状況の予測に関わる研究に取り組んでいます。
来襲外力規模の算定については、防波堤設計のために、50年最大の高波や100年に平均1回の希少確率で生じる高潮潮位偏差を求める統計手法の開発をしています。最近は気候変動により非定常であり、被災後の復旧を考えると、異なる外力同士の従属性や空間相関も考慮に入れる必要性もあり、高度な極値統計理論の応用が要求されています(図1右は、多変量従属を視覚化したもの)。

浸水状況の予測については、津波や高潮が沿岸の市街地にどのように流れ込み、どこまで広がるのかを数値シミュレーションによって明らかにする研究を進めています。特に、建物の配置や形状が浸水深や流速に与える影響を適切に取り入れ、高い予測精度と計算効率を両立した浸水モデルの開発に取り組んでいます(図1左は、高潮浸水予測の一例)。開発した浸水モデルは、気候変動下における津波・高潮浸水リスク評価や、それに対する適応策の検討に活用しています。
近年では、気候変動による外力特性が変化しつつあり、それに応じて、浸水リスク対策も新たなステージで取り組む必要があります。
極大外力を多元的な確率評価を得意とする北野と、より現実的な浸水プロセスを組み込みつつもできるかぎり計算負荷の少ない浸水モデルの開発と現地適用に取り組む福井が、それぞれの得意分野を活かしながら協力し、海岸研として指導する大学院生ならびに卒論生とともに、沿岸防災の新たな展開に挑戦しています。
ものつくり大学 技能工芸学部 建設学科

公式サイト:https://www.iot.ac.jp/faculty/building/
人口減少やインフラの老朽化、脱炭素社会への移行など、これからの社会は多くの課題に直面しています。ものつくり大学 建設学科では、こうした課題に対し「つくる力」と「考える力」の両方を身につけながら、持続可能な都市や社会基盤の実現をめざす人材を育成しています。
学びの特徴は、設計・施工・維持管理からリノベーションまでを実践的に学べることです。建築や土木の基礎知識に加え、BIM、ドローン、環境設計などの先端技術を活用し、次世代の建設現場を支える技術力を養います。また、実際に手を動かして建物や構造物をつくる実習を通じて、現場で求められる課題解決力やマネジメント力も身につけます。
未来のインフラ整備や災害に強いまちづくり、環境に配慮した建築・都市空間の創造など、建設分野が担う役割はますます大きくなっています。ものつくり大学 建設学科は、最先端の技術と実践教育を融合し、社会の未来を支える技術者を育てます。






