見積書には予備費という項目が設けられるのが一般的です。
建物の新築や改修工事などにあたり、予備費は何を意味しているのでしょうか。
外部業者に工事を発注する際はもちろん、注文を受ける立場になった時にも押さえておきたい項目です。お客様に説明を求められる場合もあります。
ここでは、予備費の役割と注意点などを解説していきます。
見積書に予備費の記載がない場合、それが望ましいことなのかも確認し、採るべき対応もご案内します。
見積書の予備費とは
建物の新築工事やリフォーム工事をはじめ、建築業における見積書には一般的に予備費が計上されます。
予備費とは文字通り予備の費用で、本来必要な費用に加えて、工事を完成させるまでの間に必要が生じた場合に備えて、余分に見積もっておく費用です。
そのため、必ず使われるわけではありません。
また、使われたとしても全額が使用されるとは限りません。
建築工事においては、追加の工事が必要となることがあります。
施主などの希望によって施工途中で追加工事や仕様変更、グレードアップが求められることも少なくありません。
その時に備え、あらかじめ予算を見積もっておけば、いざという時に費用が足りないからできないなどの事態を防げます。
建築工事の費用は小さな追加工事や設備、資材のグレードアップでも、相応の金額になることが多いです。
予算不足を防いで、スムーズに工事を進めていくうえで、あらかじめ依頼主と施工業者で合意された予算があると安心です。
予備費の役割
予備費は、当初の設計や仕様にもとづく費用では賄えない事態が生じた時のために備えておく費用です。
思わぬ不具合やトラブルなどの解決をはじめ、仕様変更やグレードアップなど、さまざまな事態に対処できます。
たとえば、建物を建設するにあたって土地を造成している最中に、事前調査では発見できなかった残存物が見つかったとしましょう。
それを撤去するための費用が発生した場合に使用できます。
また、築年数が経過した古い建物のリノベーションやリフォームの工事を進める時にも、予備費があると安心です。
たとえば、床や天井が想定以上に朽ちており、余分に補修工事が必要となる場合もすぐに対応できるからです。
新築、リフォーム問わず、施工の途中でデザイン変更や設備のグレードアップなどを求められた場合にも使うことができます。
工事を発注するにあたっては、あらかじめの見積もりを検討して、この金額ならとゴーサインを出します。
ギリギリの予算で行われるケースや資金の追加が厳しい場合も少なくありません。
予備費を含む余裕を持った金額で合意しておくことで、施工途中でも速やかな対応ができます。
工事を途中で頓挫させることや完成できなくなるリスクを防ぐことが可能です。
見積書の書き方についてはこちら
予備費が記載されていない場合
見積書には予備費を計上するのが基本ですが、予備費が記載されていない場合も散見されます。
建築業界に入ったばかりの方であれば、予備費という漠然とした費用が計上されているより、精緻に計算されている感じがするかもしれません。
ですが、予備費がないと思わぬ追加工事や補修工事、仕様変更などに迅速に対応できなくなるので注意が必要です。
業者によっては予備費ではなく、諸経費といった項目に計上しているケースもあります。
気を付けたいのは予備費と別項目を設けるのではなく、特定の項目に上乗せした場合や全体の費用を引き上げている場合です。
予備費という項目であれば、使用されなかった場合、支払金額の減額や返金が受けられます。
一方、予備費が本来必要な費用に上乗せされてしまっていると、その分受注業者や中間業者の利益として取られてしまうことになります。
上乗せされていないかをしっかり確かめることが必要です。
また、予備費の計上を忘れている場合も注意しなくてはなりません。
万が一、途中で追加費用が発生する場合、資金を急いで準備することや融資を受けるといった事態もあり得るからです。
資金の工面が難しければ、その時点で工事が止まってしまうおそれもあります。
予備費が記載されていない場合には、なんらかの追加工事や変更が生じた時、どのように対処するのかを確認し、費用の点でしっかりと合意形成を図りましょう。
諸経費についてはこちら
費用内訳の説明を受けよう
費用内訳の説明は、見積時、予備費を使う際、実際の工事が完了した時点で受けることが必要です。
見積時、契約前までに、予備費が充てられるのはどういったケースが対象となるか確認を取りましょう。
ケースによっては予備費ではなく、瑕疵担保責任などによる損害賠償金を充てるべきケースもあるからです。
施工中に予備費を使う必要が生じた場合、「●●の理由で、▲▲にいくら充てます。」といった打診を受け、合意することが大切です。
実際に工事が完了した時には、予備費が使われたのか、使われなかったのかの報告を受けることが欠かせません。
何にいくら使われたのか、費用内訳の説明を受けましょう。
予備費は使う機会がない場合や一部しか使わないのであれば、最終的に精算されます。
その分、支払額が減り、すでに支払っている場合には返金されます。
具体的かつ明確な費用の内訳を確認しないと、納得のいく支払いができません。
万が一、使用していない予備費まで代金として請求されても支払ってしまわないように、事前、使用前、使用後の報告と確認がおすすめです。
なお、工事費と予備費の額が適正か見極めるためにも、複数業者から見積もりを取り、費用内訳の説明を受けるようにしましょう。
まとめ
見積書の予備費とは建築工事中に、当初予定していないトラブルや不測の事態などが生じた際に備えて、あらかじめ確保していく費用の予算です。
施工中に変更や修正を依頼したい際などにも、使うことが可能です。
予備費が記載されていない場合は、アクシデントや不具合が起きた時、速やかに対処できません。
その時点で対応しようとすると、予算オーバーになるおそれがあるので注意が必要です。
実際に工事が完了した時点で、予備費が何に使われたのか費用内訳の説明を受けましょう。
使用していない部分は精算したうえで正確な支払代金を決めます。
すでに全額支払っているような場合は、返金を受けましょう。
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