建設業界では、より高品質で効率的な施工を実現するために、日々さまざまな新技術が開発されています。
国土交通省が推進する「NETIS(New Technology Information System/ネティス)」は、そうした民間の新技術を広く共有し、公共工事などでの活用を促進するための情報提供システムです。
NETISに登録された技術は、全国の発注機関や建設会社が自由に閲覧・検討でき、優れた技術であれば公共工事での採用や評価の対象にもなります。
つまり、技術開発者にとっては新たなビジネスチャンスを生み出す仕組みであり、発注者や施工者にとってはコスト削減・品質向上を実現できるツールでもあります。
本記事では、NETISの概要や目的、仕組み、そして活用することで得られるメリットについて、初めての方にもわかりやすく解説します。
NETISとは
「NETIS(New Technology Information System)」とは、国土交通省が運営する新技術情報提供システムのことを指します。NETISは「ネティス」と読みます。
民間企業や研究機関などが開発した新しい技術を、誰でも閲覧・検討できるようにするために、国土交通省が整備した建設分野の技術データベースです。
この仕組みは1998年に運用が開始され、平成13年(2001年)にはインターネット上で一般公開されました。
現在では、法人・個人を問わず、全国の誰でも新技術の情報を自由に検索・閲覧することができます。
また、NETISに登録された新技術は、登録から5年間情報が公開されます。
さらに、性能や有用性が高いと評価された技術については、最大で10年間閲覧できる仕組みとなっています。
NETISはこちら
NETISの目的
NETIS(New Technology Information System)は、国土交通省が運営する新技術情報提供システムで、建設分野における新技術の活用促進と情報共有を目的としています。
建設業界全体の生産性向上やコスト縮減、安全性の確保を目指し、次の3つの観点から運用されています。
① 新技術の活用促進
民間企業や研究機関が開発した新しい工法・材料・機器を公共工事に積極的に導入することで、作業効率の向上やコスト削減、安全性の確保などを図ります。
これにより、現場の課題を解決し、より高品質な施工を実現することが目的です。
② 情報の共有と透明化
全国の発注者・施工者が、実際に活用された新技術の事例や評価結果を共有できるようにすることで、技術選定の判断を合理的かつ透明に行えるようにしています。
情報のオープン化により、新技術の信頼性を高める役割も担っています。
③ 技術開発の促進
登録制度や評価制度を通じて、優れた技術が公共工事で採用される機会を増やし、民間企業の開発意欲を高めます。
これにより、建設業界全体の技術革新を促進し、より効率的で持続可能な社会基盤整備を支援しています。
NETISの仕組み

さて、次はNETISの仕組みについて説明します。
NETISの主な仕組みは以下の通りです。
- 公共工事等に関する実用化された新技術を、NETISに申請、登録を行う。
(各地方整備局・技術事務所にて申請を受付) - 審査が通ると公共工事等で、条件に合う新技術が活用される。
- 実際に技術が活用され、産学官での評価会議にて新技術の効果や性能を、5件以上獲得した場合、NETISに評価情報が掲載される。
NETISはこのような仕組みとなっており、評価情報が掲載されることで、高性能な技術の普及や更なる技術の開発・改良が狙えます。
新技術の中でも、より優れた技術であることが認められると、「有用な新技術」と認定され、活用されやすくなります。
これにより、新技術を活用することで業務の効率化や工事における品質や安全性の向上などに繋がるのです。
業務効率化に関する記事はこちら
NETIS活用のメリットとは?
では、NETISを活用することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。
開発者側と施工者側にわけてご説明します。
開発者側のメリット
開発者側は新技術をNETISに申請し、登録することで得られるメリットは2つあります。
MERIT01 技術が活用される機会が増える
NETISに登録されると、国及び地方公共団体、施工業者、コンサルタント等に情報が提供されます。そのことによって、開発した技術の活用される機会が増えることが期待できます。
MERIT02 「有用とされる技術」に選定
NETISに登録した技術が公共工事で活用され、技術の性能や効果が優れていることが評価されると、「有用とされる技術」に認定されます。
「有用な技術」に選定されると、NETISの評価情報で公開されるため、工事成績評定へ加点され、工事現場での新技術の普及が促進されます。
施工者側のメリット
新技術を活用することで、業務の効率化や品質・安全性の向上だけでなく、入札の際に有利になる加点対象になっているのです。
MERIT01 技術評価点の向上
「総合評価落札方式」において、NETIS登録技術を使った技術提案を行うことで、技術評価点の向上が見込めます。
MERIT02 工事成績評定点の向上
NETIS登録技術を活用して施工を行うと、工事が完成した段階で工事成績評表定点の加点対象になります。
また、施工においてコストが削減できたり、工期を短縮できたなど質の高い施工実績を残すことで、次回入札に有利になる評価に繋がります。
新技術を活用する5つの方式とは
NETISの登録から活用されるプロセスには、5つの方式があります。
それぞれ事後評価を受けるまでのプロセスは異なっており、試行申請型や発注者指定型などがあります。
ここではどのようなものがあるか、簡単にお伝えします。

試行申請型
NETISに登録されているものの、まだ事後評価が行われていない技術を対象とする方式です。
技術の有効性や成立性を確認するために、実際の工事現場で試行・評価を行います。
いわば、新技術の実証段階にあたる方式です。
フィールド提供型
現場や行政のニーズ等によって、具体的にフィールドで求める技術要件を明確にし、技術を開発した民間事業者等から技術提案の募集を行います。
そして、応募されたNETIST登録技術を審査・選考し、工事での発注者がこの選定された新技術を指定し、工事で試行した後に事後評価を行う型式です。
テーマ設定型
地方整備局などが、現場や行政のニーズに沿った特定のテーマ(例:省力化、安全性向上など)を設定し、該当する技術を公募する方式です。
採択された技術は、工事発注時に発注者が指定して活用し、その後評価が行われます。
施工者希望型
受注者(施工者)が自らの施工計画の中で新技術の活用を提案し、採用される方式です。
入札・契約後に施工者が技術提案を行い、NETIS登録技術を活用します。
現場からの自主的な技術活用を促す柔軟な仕組みといえます。
発注者指定型
発注者が、現場や行政の課題に対応するために特定のNETIS登録技術をあらかじめ指定して発注する方式です。
特記仕様書などに新技術の活用を明示し、工事での採用を義務づけます。
行政主導で新技術の導入を進める際に多く用いられます。
事後評価の加点の基準
新技術活用によって、複数の技術の評価が可能ですが、最大3点までと決められています。
加点対象となる項目は以下のとおりです。

NETISの種類とは?
NETISには、登録された技術の評価状況や活用段階によって、いくつかの種類が存在します。
これらは「識別記号」と呼ばれるアルファベットで区分されており、現在は主に「A」「V」「VE」「VR」の4種類に分類されています。
それぞれの識別記号には、技術の評価段階を示す明確な意味があります。
種類01 NETIS-「A」
識別記号が「A」と表示されているものは、NETISに登録済みではあるものの、まだ評価情報が掲載されていない技術です。
すなわち、実際の活用や評価がこれから行われる段階の新技術を指します。
種類02 NETIS-「V」
識別記号が「V」の技術は、従来の実施要領に基づいて評価が行われた技術です。
過去から登録されており、既に一定の評価を受けている技術がこの区分に含まれます。
種類03 NETIS-「VE」
識別記号が「VE」と表示されているものは、今後の継続的な調査が不要と判断された技術を意味します。
つまり、活用実績や性能評価が十分に蓄積され、高性能で有用と認められた技術です。
種類04 NETIS-「VR」
識別記号が「VR」と表示されているものは、引き続き調査・検証が必要と判断された技術を指します。
今後も活用結果や効果を確認しながら、継続的に評価が行われる段階の技術です。
NETISに関するよくある質問
- NETISに登録できる技術にはどのようなものがありますか?
-
建設分野における工法・材料・機械・システム・施工管理手法などが対象です。
たとえば、省力化や安全性の向上、環境負荷の低減など、公共工事の品質や効率を改善できる技術が登録対象になります。 - NETISに登録するにはどのような手続きが必要ですか?
-
技術開発者(民間企業や団体など)が、地方整備局または国土交通省本省へ申請書類を提出することで登録申請が可能です。
登録後は、実際の工事現場での試行・評価を経て、事後評価結果が公表されます。 - NETISに登録された情報はどのくらいの期間閲覧できますか?
-
登録から5年間はNETISデータベース上で一般公開されます。
ただし、性能や効果が高く評価された場合は、最大10年間の公開が延長されることもあります。 - NETISの情報は誰でも閲覧できますか?
-
はい、NETISの公式サイト(国土交通省「新技術情報提供システム」)から、法人・個人問わず無料で閲覧可能です。
技術名称・分野・評価結果などで検索でき、誰でも簡単に情報を確認できます。
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まとめ
NETISは、工事において業務の効率化や品質・安全性の向上、工期の短縮のため、新技術を誰でも閲覧・検討できるように情報提供データーベースということが分かりました。
また、NETISを活用する施工者だけでなく、新技術を開発した登録者にもメリットがあります。
土木や建築業界では、技術者の高齢化や若年層の不足が大きな課題になっていますが、NETISを活用することで、より効率的でより安全性の高い工事が期待できます。
誰でも無料で閲覧することができるため、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
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