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建設業法で定められた見積期間とは?違反とみなされるケースを解説

建設業法で定められた見積期間とは?違反とみなされるケースを解説

建設業の見積期間には法律による定めがあります。
元請業者が安易に下請業者に期日を限定した見積提出を求めると、思いがけず建設業法違反になるおそれがあることはご存知でしょうか。
ここでは、建設業法が定める見積期間の概要、違反とみなされるリスクのあるケースを解説します。

目次

建設業法で定められた見積期間とは?

建設業法で定められた見積期間とは?


建設業法では見積期間に関する定めがあります。
発注する側(発注者、元請負人など)が建設業者や下請負人へ見積提出を求めるシチュエーションは日常的にありますが、その作成期間には明確な法的ルールが存在します。

この規定は、双方不利益にならないよう取引を適正に行うためですが、認識が曖昧だと大きなトラブルに発展するおそれがあるので注意が必要です。

工事の発注予定価格に応じた見積期間

建設業法が定める見積期間は、発注予定価格に応じて明確に決められています。
やむを得ない事情などで変動する場合もありますが、基本的な認識として押さえておきましょう。

500万円未満

見積期間は「1日以上」と定められています。
この場合、発注元が急かしたとしても、即日その場で見積書の提出を求めでもしない限り、大きな問題にはなりにくいでしょう。

500万以上5,000万円未満

見積期間は「10日以上」と定められています。

ここにはイレギュラーがあり、やむを得ない事情がある時に限っては、見積期間を5日以内に限り短縮することが可能となっています。
例えば、下請業者から14日間の要望があった際にも、やむを得ない事情があれば最大5日短縮し、9日間で提出を求めても違法ではありません。

5,000万円以上

見積期間は「15日以上」と定められています。
金額が大きい分、2週間以上の猶予を持って見積もりが出せるように配慮されています。

こちらもイレギュラーが認められており、やむを得ない事情がある時に限っては、見積期間を5日以内に限り短縮することが可能です。
例えば、下請業者から15日間の要望があった際にも、やむを得ない事情があれば最大5日短縮し、10日間で提出を求めても違法ではありません。

見積期間が定められている理由

見積期間が定められている理由は、一重に適正な取引が行われるようにするためです。
発注・受注側ともに企業経営に直結する重要事項であり、下請業者が間違いのない判断をするためには確認すべき事項がたくさんあります。

契約の内容や条件に納得がいくかという点も重要ですが、その工事が技術的に自社の能力で請け負える内容か、適正に工事が行えるかも重要です。
つまりこの定めは、請け負う側が不利益を被らないようにするだけでなく、発注側も不利益を被らないようにするために存在します。

工事に関して確認すべき事項は多く、規模が大きければ作業や責任もそれに伴い肥大化するため、見積期間には十分な猶予が必要となります。
肝心の工事でミスが出たり計算違いがあれば、双方にとって大きな損失やトラブルに発展する可能性があります。
こうした問題を未然に防ぐためにも、あらかじめ検討時間を確保するため見積期間が法律で定められています。

見積依頼時に明示すべき事項

元請負人が下請負人へ見積依頼する際に、法律による期間の定めがありますが、そのほかにも明示すべき事項が定められています。
具体的な工事や契約内容について、建設業法で定めのある事項についてまとめてみましょう。

見積依頼者に関する定め

国土交通省が配布している「建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」によると、以下の内容が挙げられています。

  • 工事名称
  • 施工場所
  • 設計図書(数量等を含む)
  • 下請工事の責任施工範囲
  • 下請工事の工程及び下請工事を含む工事の全体工程
  • 見積条件及び他工種との関係部位、特殊部分に関する事項
  • 施工環境、施工制約に関する事項
  • 材料費、労働災害防止対策、産業廃棄物処理等に係る元請下請間の費用負担区分に関する事項

また、工事現場について、配慮が必要な条件、情報がある場合には元請けは下請けへ提示する義務を持ちます。
例えば、土壌汚染の可能性(地盤沈下・埋設物)、工事にあたり周辺環境への配慮(騒音・振動)などがあらかじめわかっている場合、それらの事実も下請けへ提示することが義務です。

見積提出者に関する定め

これに対して、見積書を提出する側にも定めがあります。
下請けは、作業内容を契約内容にあわせて書面化して提示する場合やまだ見積段階で具体的に情報が確定していないことがある場合、その内容を明確に見積書に明示しなければなりません。
つまり、見積書を提出する側もより明確に作業内容を提示し、不明確な部分は不明確であることを明らかにしたうえで、正確な見積書を作成しなければ建設業法違反となります。

見積金額については内訳を明らかにし、 各工事の内容や工程、数量や工程ごとの労務費、事業主負担分の法定福利費なども記載した内訳書を添付する義務を持ちます。
こうした双方の建設業法で定められたルールをしっかり踏まえたうえで書面を取り交わせるよう、十分な見積期間を設けることが重要です。

建設業法に違反するおそれがあるケース

見積期間について必要な法的知識を得たうえでも、思いがけず建設業法に違反してしまうおそれのある行為が発生する場合があります。
日常的に取引のある間柄の場合、曖昧になりがちな点も発生しやすいため、違反を問われないよう十二分に注意してください。

国土交通省が配布している「建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」には、建設業法に違反するおそれのあるケースについて概要がまとめられています。

CASE01 不明確な工事内容を下請業者に提示した場合

前述した通り、元請けは下請けにあらかじめ提示しなければならない事項が多岐にわたり多数あります。
工事内容が未定の状態で見積依頼すること自体、違法性が問われますので注意してください。

CASE02 曖昧な見積条件によって、下請業者に見積もりを行わせた場合

条件は具体的であればあるほど正確な見積もりが可能です。
曖昧なまま見積依頼し、後から難しい条件が追加されるようなことがある場合、違法性が問われます。

CASE03 下請業者に対して、「できるだけ早くして」など曖昧な見積期間を設けた場合

前述した法律の定めよりも短い期間を指定するのは明確に違法ですが、早く提出するよう圧力をかけることにも違法性があります。

CASE04 見積期間を設定せずに、下請業者に見積もりを行わせた場合

反対に、一切見積期間を設定せずに見積もりをさせることにも違法性があります。
受発注契約は適切な取引を行うための行為ですので、正しい期間を設け、双方が明確に認識したうえで実施してください。

CASE05 下請業者から工事内容などの見積条件に関する質問を受けた際に、回答しなかったり回答が曖昧であったりした場合

元請けは知り得る条件情報を適切に提示する義務があります。
正確な見積もりを行う妨げとなるため、見積もりをする上で必要な事項を曖昧にすること違法性があります。

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まとめ

工事見積についての検討事項は多岐にわたり、確認しなければならないことが数多あります。
元請けは、下請けに見積提出を依頼する際、下請けが十二分に工事について検討できる猶予を設けることが何より重要であり、建設業法もそれを実行させるために見積期間を定めています。

注意すべきなのは、元請けが見積期間を短く設定したり、曖昧にしたりして下請けに見積もりをさせることです。
適正な取引を妨げる行為とみなされると、思いがけず建設業法違反に問われることになりますので、十分に注意してください。

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