建設業界では下請契約が慣習となっており、下請構造が複雑化する傾向にあります。
重層的な下請構造においては、下請けが不利な立場に置かれることが多いです。
そうした現状が問題化され、下請契約の適正化を図るため、建設業法や下請法が制定されました。
今回は、下請工事について、その概要や元請けとの違い、契約時の注意点を解説します。
また、下請け・元請けそれぞれのメリット・デメリットもご紹介します。
下請工事とは
下請工事とは、元請け(他の建設業者)から請け負った工事のことです。
通常、下請工事として依頼されるのは、元請けが請け負った工事の一部です。
なお、建設業法においては、
- 下請契約における注文者で建設業者=元請負人
- 下請契約における請負人=下請負人
と定義されています。
本記事では、下請負人の意味で「下請け」を用います。
また、元請負人にあたる立場を「元請け」と表記します。
元請工事との違い
元請工事とは、官公庁や民間企業、個人などの発注者から直接請け負った工事のことです。
つまり、元請工事の契約は、発注者(施主)と建設業者の間で交わされます。
下請工事の場合、契約を締結するのは元請け(発注者から工事を請け負った建設業者)と下請けです。
下請けと発注者の間の契約はありません。
外注との違い
請け負った工事を他の建設業者に依頼するという点で、下請工事と外注はよく似ています。
しかし、下請工事と外注では、指示系統に違いがあります。
下請工事では、下請けが元請けの指示に従って作業を進めるのが一般的です。
一方、外注は、請け負った工事を自社の指示で進めていきます。
ただし、経理処理においては、下請工事も外注とみなします。
税務署における外注の判断基準が、「材料や用具の準備、給料の支払いが独立していること」だからです。
外注工事に関する記事はこちら
下請けのメリット・デメリット
下請工事の概要や元請工事、外注との違いを確認しました。
ここでは、下請けのメリット・デメリットをご紹介します。
下請けのメリット
まず、下請けのメリットをみていきましょう。
自社企画が不要
下請けは、すでに企画された工事を請け負います。
そのため、自社で一から企画や開発を行う必要がありません。
どこで、どのような工事を、どのような工法で行うのかなど、工事計画にかかる労力や費用を削減することができます。
一定の業務を確保できる
下請けは、元請けから一定量の業務を確保することができます。
また、同じ元請けと継続的に取引することで、自社の得意な分野の仕事を回してもらいやすくなります。
企業によっては、専門性の高い工事を行えるにもかかわらず、発注者から直接受注できる機会が少ない場合もあるでしょう。
この場合、下請けとして仕事を受けることで、一定の収益を確保することができます。
広範な営業活動が不要
下請けの場合、広範な営業をせずとも元請けから工事を請け負うことができます。
営業の範囲や対象が絞られるため、宣伝や広告にかかる費用や営業活動にかける時間を削減することが可能です。
企画や営業といった業務を削ることができる分、中心的な業務に集中して取り組むことができるようになります。
人手不足が問題視される建設業界において、主要業務に人員を割くことができるのは、下請けのメリットと言えるでしょう。
下請けのデメリット
次に、下請けのデメリットを確認しましょう。
取引条件の変更ができない
すでに確認した通り、下請けと契約するのは元請けであり、発注者ではありません。
そのため、下請工事の途中で追加費用が発生した場合でも、取引条件を変更することができません。
- 時間外や休日に労働を行った場合の作業員への給与
- 工事で使用する材料費や機材のレンタル費
など、工期に間に合わせるための追加費用は、下請けが負担しなければなりません。
また、工期や工法なども発注者と元請けの間の契約で決定されています。
下請けはこれを踏まえて作業する必要があるため、工期をずらしたり、工法を変更することができません。
元請業者の業績に影響を受ける
下請けは、元請けから仕事を受注します。
そのため、元請けの業績が悪化すれば、仕事が回ってこなくなります。
他の元請けや発注者との取引があれば別ですが、ひとつの元請けに頼っている場合、その企業の業績に直接影響を受けることになります。
請負契約に関する記事はこちら
元請けのメリット・デメリット
下請けのメリット・デメリットを確認しました。
下請けに工事を依頼する側である元請けには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
以下で詳しくみていきましょう。
元請けのメリット
まず、元請けのメリットを確認しましょう。
発注者と直接契約できる
元請けは発注者から直接仕事を受注できます。
そのため、下請けに比べて有利な条件で契約することが可能です。
また、顧客のニーズを詳細に把握できるため、工事の見通しを立てやすいのもメリットです。
受注の幅が広がる
元請けは、自社で対応できない範囲の工事を下請けに依頼することができます。
下請けをうまく活用することで、大規模かつ高い技術力が必要な工事であっても、共同企業体(JV)を形成せずに受注可能です。
受注の幅を広げられるため、売上をアップを見込めます。
固定費を削減できる
元請けは、必要に応じて下請けに仕事を回すことができるため、自社で多くの作業員を雇用する必要がありません。
そのため、基本給や法定福利費の負担分など、雇用にかかる固定費用を削減できます。
作業を効率化できる
元請けは、自社のスケジュールに合った工期を設定することが可能です。
また、機材は自社分だけ用意すれば良いので、コストを抑えられるほか、発注や支払の関連業務も削減できます。
工期や工事の金額を考慮しながら、効率的に作業を進められるのが、元請けのメリットです。
元請けのデメリット
有利な立場で取引を行える元請けですが、受注者としての責任が重いという点は注意が必要です。
たとえば、工事にあたる作業員の労災保険は、下請けの分も負担する必要があります。
- 工事中に発生した事故やミス
- 周辺住民とのトラブル
- 完成後の不具合
なども、すべて元請けが対応しなければなりません。
下請工事に必要な書類に関する記事はこちら
元請けが下請工事を依頼する際の注意点
下請け・元請けそれぞれのメリット・デメリットを確認しました。
下請けと元請けは取引上の立場が不平等であり、下請けが不利な条件を突きつけられる場合が多くあります。
適正な請負契約を結ぶためには、どんなことに注意する必要があるのでしょうか。
金額設定
下請工事の契約を結ぶ場合、下請けにとって無理のない金額を設定する必要があります。
下請工事では、下請けが材料費や経費を負担します。
悪天候などトラブルへの対応にかかる費用も考慮し、下請けが十分に利益を確保できる金額を設定しましょう。
また、支払条件や支払期日を明確に提示することも重要です。
労働条件
元請けが直接作業にあたらない現場であっても、その現場の責任は元請けにあります。
事故やミスの発生確率を減らすため、労働条件を明示している下請けに工事を依頼するようにしましょう。
安全書類の作成をはじめ、安全管理を徹底している下請けを選定すると良いでしょう。
作業人数と技術者の確保
建設工事では、現場に必ず配置すべき資格者や、作業員の数が定められています。
そのため、十分な作業員と適切な技術者が確保できる業者に工事を依頼しましょう。
建設業法と下請法に関する記事はこちら
まとめ
下請工事とは、元請けから請け負った工事のことです。
下請けは、企画や営業にかかるコストを削減しながら一定量の業務を確保できるというメリットがあります。
一方、取引条件の変更ができず、請負契約において不利な立場に置かれる場合が多いです。
元請けは、有利な立場で取引ができ、効率的に作業にあたることが可能です。
しかし、工事全体の責任を負う必要があります。
事故やトラブルを防ぐためにも、料金設定や工期などを下請けと交渉し、適正な契約を締結するよう心がけましょう。
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