建築、土木、電気、造園などの工事を適切に進めていくためには、施工管理が欠かせません。
施工管理にはいろいろな業務がありますが、今回はそのうちの一つである『品質管理』を取り上げて、主な目的、具体的な業務内容、安全管理との違い、必要なスキル・資格などを紹介していきます。
施工管理における品質管理とは
最初に、施工管理における品質管理の概要から見ていきましょう。
施工管理は、建築工事や電気工事などの現場で工事全体を管理することです。
『工程管理』『原価管理』『安全管理』『品質管理』の4つ業務があります。
ちなみに、これらの業務は、『4大管理』と呼ばれています。
どれも各工事現場で欠かすことができない需要な業務です。
この4大管理の一つである品質管理は設計図や仕様書など規格を満すように管理することです。
建設工事現場で用いる材料の寸法、材質、強度、機能などが設計図や仕様書の通りになっているかを調べるために、品質試験を行います。
また、完成した成果物の強度や密度などが基準を満たしているかどうかの確認作業も行います。
品質管理の目的
品質管理の主な目的は、設計図や仕様書の通りに作ることです。
デザイン、強度、寸法、材質、機能などの項目が設計書や仕様書のほかに、国や自治体が定めている基準も満たしているかを確認します。
工事現場では、さまざまなトラブルがつきものです。
適切に品質管理を進めていけば、問題点や改善点などが早期に発見できますし、迅速な対応ができるようになります。
品質管理の目的①:安全かつ安定した工程の確保
工事現場では、決められた工期までに完成させなくてはなりません。
万が一、品質に問題があった場合には、工期に大きな遅れが出てしまいます。
スケジュールの通りに作業を進めていくためにも、工程ごとの品質管理を行い、細かく確認する作業が欠かせないのです。
品質管理の目的②:企業の評判を維持する
もしも、工事現場で勝手に設計図の変更や仕様書以外の作業を行ってしまった場合、成果物の品質に大きな影響を与えてしまいます。
図面と違ったものができあがってしまったら、工事を請け負った企業は依頼先からクレームを受けることにもなりかねません。
品質管理は、企業の評判を維持するためにも、欠かすことができない重要な業務なのです。
品質管理の具体的な業務内容
施工管理における品質管理では、さまざまな業務が発生します。
主な業務としては、工程の写真撮影があります。
各工程の写真を撮る理由は、証拠を残すためです。
設計図や仕様書の通りに作業が進んでいるのか、品質をクリアしているかを記録するために、その現場の写真を撮影しておく必要があるのです。
品質管理担当者は、成果物だけでなく、工事の途中の様子、品質試験などの写真撮影も行います。
設計図書・仕様書に関する記事はこちら
品質管理と安全管理との違い
安全管理も、品質管理と同様に4大管理の一つです。
両者を混同している方もいるかもしれません。
安全管理は、工事に携わるスタッフの安全を確保するための管理です。
具体的には、スタッフへの安全教育や健康管理、手すりや消火設備などの設置、使用する機材の点検、安全パトロールなどに取り組みます。
事故が起きないように、最善の注意を払わなくてはなりません。
一方、品質管理は、設計図や仕様書の通りに品質を満たすために、品質試験や施工状況の記録などの業務に取り組みます。
安全管理に関する記事はこちら
品質管理に必要なスキル
品質管理で求められるスキルは以下の通りです。
品質管理のスキル①:リスクマネジメント
工事現場では、突発的なトラブルが起こることが珍しくありません。
品質管理担当者は、トラブル発生時でも、冷静、かつ柔軟に対応できるスキルが求められます。
また、トラブルを未然に防ぐための察知力も欠かせません。
細かいことにすぐに気がついて、対処できる人材が求められています。
品質管理のスキル②:コミュニケーション能力
工事現場では、さまざまなスタッフとコミュニケーションを取りながら、作業を進めていかなくてはなりません。
自社の社員だけでなく、外注先のスタッフ、取引先などとも関わりますので、リーダーシップ力や交渉力なども必要です。
品質管理のスキル③:写真撮影・図面理解能力
品質管理の業務では、大量の写真を撮影しなくてはなりません。
そのため、担当者はデジタルカメラや一眼レフカメラなどの撮影テクニックが求められます。
品質管理担当者はプロカメラマンではありませんので、かっこいい構図にこだわって撮影をする必要はありません。
いつ、どのようになどといった5W1Hの情報を盛り込んで、現場の様子が伝わる写真を撮るスキルが求められます。
品質管理では、設計図や仕様書の指示に沿うように各工程を進めていかなくてはなりません。
そのため、正確に図面を理解できるスキルも必要です。
工事写真に関する記事はこちら
品質管理に必要・役立つ資格
最後に、品質管理の仕事に携わる際に求められる資格を紹介していきます。
品質管理に必要・役立つ7つの資格
- 建築施工管理技士
- 土木施工管理技士
- 建設機械施工管理技士
- 管工事施工管理技士
- 造園施工管理技士
- 電気工事施工管理技士
- 電気通信工事施工管理技士
品質管理に役立つ資格①:【建築施工管理技士】
建築施工管理技士は、1983年に創設された国土交通大臣管轄の国家資格です。
『1級建築施工管理技士』と『2級建築施工管理技士』の2つの等級があります。
2級建築施工管理技士
2級は、小規模工事に携われる資格です。
建築、躯体、仕上げの3つの区分があります。
これら全ての分野の管理を担当するためには、3種類の試験に合格しなければなりません。
1級建築施工管理技士
1級取得者は、携われる工事規模の上限がありません。
大規模マンション、高層ビル、ショッピングモールなどの大規模な工事にも従事できるようになります。
建築施工管理技士に関する記事はこちら
品質管理に役立つ資格②:【土木施工管理技士】
土木施工管理技士は、道路、鉄道、河川、トンネルなどの土木工事現場の責任者として活躍できる国家資格です。
土木工事の施工計画作成、工程やコスト管理などの業務を担当します。
『1級土木施工管理技士』と『2級土木施工管理技士』の2つの等級に分かれています。
2級土木施工管理技士
2級は、『土木』『鋼構造物塗装』『薬液注入』の3種類の区分があり、各分野の主任技術者として土木工事現場の仕事に従事可能です。
1級土木施工管理技士
1級を取得すると、主任技術者や監理技術者として、大規模な土木工事現場で施工管理業務に携われます。
品質管理に役立つ資格③:【建設機械施工管理技士】
建設機械施工管理技士は、建設機械を用いた工事現場で施工管理者として活躍できる国家資格です。
『1級建設機械施工管理技士』と『2級建設機械施工管理技士』の2つの等級があります。
2級建設機械施工管理技士
2級は、第1種から第6種までの種別があり、各種別によって扱える建設機械が異なっています。
取得した種別の機械の運転のほか、小規模な現場で主任技術者として、施工や安全管理に携わることが可能です。
1級建設機械施工管理技士
1級は、工事現場の監理技術者や主任技術者になれる資格です。
建設機械を用いた施工の指導、監督的業務などの業務にも携わることができます。
2級のように扱える建設機械の制限がありません。
建設機械施工管理技士に関する記事はこちら
品質管理に役立つ資格④:【管工事施工管理技士】
管工事施工管理技士は、ガス配管、水道配管、ダクトなどの管工事の現場で施工管理者として活躍できる国家資格です。
パイプやダクトなどの配管工事の施工計画を作成、配管工事用の資材のコスト管理などの業務を担当します。
『1級管工事施工管理技士』と『2級管工事施工管理技士』の2つの等級があります。
2級管工事施工管理技士
2級は、一般建設業で専任技術者や主任技術者として従事できる資格です。
1級管工事施工管理技士
1級は専任技術者や主任技術者のほかに、専門技術者として働けます。
管工事施工管理技士に関する記事はこちら
品質管理に役立つ資格⑤:【造園施工管理技士】
造園施工管理技士は、庭園、公園、緑地、遊園地などの造園工事現場で施工管理者として活躍できる国家資格です。
造園工事の計画作成、資材やコスト管理、近隣住民への対応などさまざまな業務を担当します。
『1級造園施工管理技士』と『2級造園施工管理技士』の2つの等級があります。
2級造園施工管理技士
2級は一般建設業の現場で主任技術者として活躍できます。
1級造園施工管理技士
1級を取得すると、特定建設業の現場で監理技術者として活躍できるようになります。
造園施工管理技士に関する記事はこちら
品質管理に役立つ資格⑥:【電気工事施工管理技士】
電気工事施工管理技士は、発電、変電、送配電線などの電気工事現場で施工管理者として活躍できる国家資格です。
電気工事の施工計画、工程管理、安全管理などを担当します。
『1級電気工事施工管理技士』と『2級電気工事施工管理技士』の2つの等級があります。
2級電気工事施工管理技士
2級は一般建設業での電気工事において、専任技術者や主任技術者として働ける資格です。
1級電気工事施工管理技士
1級を取得すると、監理技術者になることができ、より規模が大きな電気工事現場で働けます。
なお、電気工事施工管理技士は1級と2級のどちらも施工管理が行える資格ですが、電気工事を行うことはできません。
電気工事の仕事に携わりたい場合には、電気工事士の資格が必要です。
電気工事施工管理技士に関する記事はこちら
品質管理に役立つ資格⑦:【電気通信工事施工管理技士】
電気通信工事施工管理技士は、2019年に新設された国家資格です。
『1級電気通信工事施工管理技士』と『2級電気通信工事施工管理技士』の2つの等級があります。
これらの資格保有者は、携帯電話基地局工事、社内LAN工事、テレビ共聴設備工事、電波障害の調査など幅広い業務に携わることが可能です。
電気通信工事の施工計画の作成、スケジュール管理、安全管理などさまざまな業務を担当します。
電気通信工事施工管理技士は比較的新しい資格なので、資格保有者は就職や転職活動時のアピールポイントにもなることでしょう。
まとめ
品質管理は、施工管理の4大管理の一つです。
設計図や仕様書の通りの品質を満たすために、工事現場の写真撮影や品質試験などを行います。
建築業にかかわらず、どの工事現場でも欠かせない需要な業務です。
品質管理では、リスクマネジメントやコミュニケーションスキルのほかに、カメラの取り扱いや撮影のスキルも求められます。
施工管理のプロとして工事現場で活躍したい方は、建築施工管理技士、土木施工管理技士、建設機械施工管理技士などの国家資格を取得しておくと良いでしょう。
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