杭打ち工事とは？種類や施工の流れを分かりやすくご紹介

杭打ち工事は、建物や構造物の基礎を支える重要な作業であり、安定性や耐久性を確保するために不可欠です。
地盤の強度が不足している場所や、重量の大きな建物を建設する際には、杭を地中に打ち込むことで基礎を強化します。
杭打ち工事には様々な方法があり、現場の条件や建物の要求に応じて最適な手法が選ばれます。
本記事では、杭打ち工事の基本概念から、工法の種類、施工の流れまで詳しく解説します。

杭打ち工事とは？

杭打ち工事とは、建物を支えるために地盤にあらかじめ杭を打ち込む工事のことです。

この工事は、特に地盤が弱い場所や建物が大きく重い場合に重要になります。
地中に杭を打ち込むことで、建物の重量を安定して支え、地盤の強度を補強します。

杭打ち工事の目的

杭打ち工事の目的は、建物や構造物の安定性と安全性を確保することにあります。
特に、地盤が軟弱な場所や地震が頻発する地域においては、場所打ち杭や既製杭の工法を用いることで地盤を強化し、建物の沈下や傾きを防ぎます。
杭打ち工事は、基礎工事の一環として行われ、建物の耐震性や耐久性を向上させる役割を果たします。
また、高層ビルや橋梁などの大型構造物では、杭工事が不可欠となります。
これにより、長期間にわたって安全に使用できる建物を実現します。

杭打ちの工法の種類

杭打ちの工法は、下の図のように分類されます。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

既製杭工法

既製杭工法は、工場であらかじめ製造された杭を建設現場に運び込み、専用の装置を使用して地中に打ち込む工法です。
この工法は、杭の品質が一定であるため、施工の信頼性が高く、迅速な杭工事が可能です。
さらに、天候の影響を受けにくく、工期の短縮が期待できます。

主に以下の3種類があります。

工法名	概要	特徴
埋め込み工法	コンクリート杭を地盤に埋め込む工法。杭を地中に圧入していく。	音が比較的少なく、施工が比較的簡単。一般的にコストパフォーマンスが良い。
打ち込み工法	打ち込みハンマーで杭を地盤に打ち込む工法。	打ち込み時の振動や騒音が大きく、周囲に影響を与える可能性がある。
鋼管回転圧入工法	鋼管杭を回転させながら圧入していく工法。鋼管杭を回転しながら地中に挿入する。	沈下速度が速く、深い層までの施工が可能。埋め込み時に周囲に圧力をかけない。

場所杭打ち工法

場所杭打ち工法は、軟弱地盤から硬質地盤まで対応可能で、作業中の振動や騒音が少ないため、様々な悪条件下でも適用できる画期的な工法です。
主に以下の4つに分類されます。

工法名	概要	特徴
オールケーシング工法	掘削中に地盤の崩壊を防ぐために、鋼管を使用して掘削し、杭を打設する工法。	地盤が硬いときに有効な工法。
アースドリル工法	ドリルを使用して地盤を削ったり掘ったりして、その中に杭を打設する工法。	施工が比較的迅速であるが、振動や騒音が発生することがある。
リバース工法	掘削と同時に杭を埋設し、地盤の掘削により発生した土砂を外に排出しながら杭を打ち込む。	掘削と杭打設を一度に行えるため、施工効率が高い。
深礎工法	掘削した穴に杭を挿入し、コンクリートを注入して杭を形成する方法。	深い埋設が可能だが、施工が難しく、コストや工期が増加する可能性がある。

杭の種類

杭打ち工事において、適切な杭の選定は構造物の安全性と耐久性に直結します。
ここでは、一般的に使用される以下の３種類について、その特徴を紹介します。

木杭

木杭は、古くから杭工事に利用されてきた素材の一つです。
木杭の主な特徴は、環境に優しい素材であり、自然に戻ることができる点です。
木杭は軽量で扱いやすく、運搬や施工が比較的簡単であるため、特に小規模な工事や一時的な構造物の設置に適しています。
木材の特性上、湿気や虫害に対する対策が必要ですが、適切な処理を施すことで耐久性を向上させることができます。

鋼杭

鋼杭は、その優れた強度と耐久性から、杭工事において広く採用されています。
特に、場所打ち杭や既製杭の工法を問わず、高層ビルや橋梁などの重い荷重を支える構造物に必要とされます。
鋼杭の高い引張強度と圧縮強度は、これらの重要な建築プロジェクトにおいて信頼性を提供します。
さらに、鋼杭は腐食に対する耐久性も持ち、地中での長期間の使用にも適しています。

コンクリート杭

コンクリート杭、は、建築物の基礎として非常に重要な役割を果たします。
特に高層ビルや大型施設の基礎としてよく使用され、地震や台風などの自然災害に対しても高い耐久性を持つため、安全性が求められる建築物に最適です。

杭打ち工事が必要な状況

基礎杭打ち工事は、すべての建物に必ずしも必要なわけではありません。
杭打ち工事は、主に軟弱な地盤の補強や建物の耐震性向上を目的としています。

ここでは、杭打ち工事が必要な状況について詳しくご紹介します。

日本における建築時の必要性

日本は地震が多発する国であり、建物の安全性を確保するためには杭工事が非常に重要です。
日本の地盤は地域によって硬さが異なり、特に軟弱地盤の場所では杭工事が不可欠です。
軟弱な地盤は建物の沈下や傾きを引き起こす可能性があるため、杭を打ち込むことで建物の安定性を高めます。

杭打ち工事が不要な場合

杭工事が不要となる状況には、建物の構造や設計が大きく影響します。
例えば、軽量な構造物や小規模な建物であれば、地盤の支持力が十分な場合、杭工事を省略することが可能です。
また、地盤が非常に安定している地域や、地盤改良工事が行われた場所では、杭工事が不要と判断されることもあります。

杭打ち工事の施工手順

杭打ち工事は、構造物の安全性と耐久性を確保するために重要な工程であり、その施工手順は正確さと慎重さが求められます。
具体的には、以下のような流れで杭打ち工事を進めます。

施工手順を段階ごとに詳しく説明します。

手順①試験杭の位置確認

試験杭とは、杭打ち工事の前に地盤の特性を評価するために打設される仮設の杭です。
ボーリング調査で得られた地盤データをもとに、設計図に従って試験杭の設置位置を正確に測量し、指定位置に設置されているかを確認します。
しかしこのデータだけでは、不完全であるため、専用の測量機器やGPS技術を用いて位置確認が行われます。

手順②杭打機の設置

杭打機の設置は、杭打ち工事の効率的かつ安全な施工を確保するために行います。
まず、杭打機を設置する場所を平坦に整地し、機械が安定して設置できるようにします。
その後、杭打機を正確に配置し、必要な調整や固定を行ってから、作業を開始します。
大型で重い機械ですので、取り扱いには十分注意しましょう。

手順③杭の位置決め

まず設計図に基づいて杭の位置を決定し、基準点を用いて現場で測量を行います。
次に、逃げ杭（テスト杭）を打設して地盤の特性や杭の挙動を確認します。
その後、杭打機を設置し、位置と水平を慎重に調整します。
注意点としては、位置決めの誤差を防ぐために細心の注意を払い、測量機器や基準点の確認を徹底することが重要です。

手順④貫入作業

貫入作業では、専用の機械を用いて杭を地中に設置し、所定の深さまで確実に貫入させることが求められます。
杭を正確な位置に配置した後、徐々に力を加えて地中に押し込んでいきます。
その際、地盤の抵抗や杭の変形など様々な要因を考慮しながら進める必要があります。
また、常に計測を行い、設計通りの深さに達したかどうかを確認することが不可欠です。

手順⑤上杭の位置決めと溶接

まず上杭を設置予定の位置に正確に配置し、水平や位置を確認します。
次に、位置が確定したら、上杭を所定の位置に固定し、溶接作業を行います。
溶接の際は、均一な接合を確保するために、接続部分の状態を確認しながら、慎重に進めましょう。

手順⑥貫入作業

まず溶接部の周囲を点検し、問題がないことを確認した後、杭の貫入作業を開始します。
この際、ボーリングデータや管理装置の計測値を確認しながら作業をすることで、地盤条件に適応した正確な貫入を確保し、施工中の問題を迅速に特定・対応することができます。

手順⑦設計深度付近での確認

杭が設計された深度に達しているかを確認します。
設計深度に達していない場合、杭の貫入をさらに進める必要があります。
逆に、設計深度を超えた場合は、杭を引き上げて再調整することが求められます。

また、杭が曲がってしまっていないかも確認しましょう。

手順⑧貫入打ち止め

杭が所定の貫入深度に達したことを確認するために、深度計やセンサーを用いて測定します。
その後、問題がなければ杭打ちを停止し、管理値の設定をします。

まとめ

いかがでしたか？

杭打ち工事は、地盤が弱い場所や重い建物の基礎として、地中に杭を打ち込むことで建物の安定性を確保する重要な工事です。
さまざまな工法や杭の種類があり、それぞれが異なる特性や適用条件を持っています。
工事の際は、地盤の特性や建物の要件に応じて、最適な工法と杭を選定することで、より良い効果的な工事を実現できるでしょう。

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