商品のタグやカタログの価格表示では、消費税を含めた総額表示が義務付けられています。
税込価格は必須で、そのほか本体価格や消費税額を別途、内訳として表示することも可能です。
工事代金にも消費税がかかりますが、見積書を作成する際にも総額を記載しなくてはならないのでしょうか。
見積書に消費税を記載するのは義務なのか、法的根拠や正しい書き方を解説していきます。
見積書における消費税の記載は義務ではない
そもそも、消費税はどういった場合に記載が必要なのでしょうか。
総額表示義務とは
日本では、消費税がかかるもの、かからないものがあるほか、10%の消費税率が適用されるものと、軽減税率8%が適用されるものがあります。
消費税率が上がるにつれ、税抜価格と税込価格の差が大きくなり、買い物のしにくさを感じる方も増えてきました。
そこで、2004年4月1日から価格を表示する際は、消費税額も含めた「総額表示」をするよう義務付けられました。
移行時の特例措置も2021年3月で失効したことで、現在は原則に従い税込価格表示が全事業者の義務になっています。
総額を表示したうえで、別途内訳として本体価格や税額の表示をすることも可能です。
見積書は「総額表示」義務の対象外
法制度上、総額表示が義務付けられたのは、不特定かつ多数の者に対する値札や店内掲示などにおいて、あらかじめ価格を表示する場合です。
チラシや広告、商品カタログもこれに該当します。
これに対して、見積書や契約書、請求書に記載するのは、不特定多数ではなく、見積りを依頼した人や契約者という特定の人に対して提示する価格です。
そのため、総額表示義務の対象外となります。
見積書に「総額表示」が必要な場合
ただし、見積書に総額表示が必要な場合もあります。
それは、チラシやホームページなどにおいて、不特定多数に対し、見積もり例として金額を紹介するようなケースです。
この場合、不特定多数への表示であり、かつ、あらかじめ表示することになるので、総額表示義務の対象となります。
見積書の書き方に関する記事はこちら
見積書に税込価格を記載する場合の書き方
すでに確認した通り、特定の人に提示する見積書には、法的には総額表示は必要ありません。
ただ、特定の方に見積書を提案する場合も、税込価格を提示したほうがわかりやすく、後々のトラブルも防ぐことができます。
特に工事代金は高額になることも多く、それに対する消費税額も高額です。
たとえば、予算1,000万円でリフォームをしたい方が、工事代金1,000万円の見積書に納得して申し込んだとしましょう。
見積書で税抜価格のみを表記していた場合、請求額が1,100万円に増え、話が違うとトラブルになるおそれもあります。
税込価格の記載例
見積書には総額表示義務がないとはいえ、わかりやすい金額を明示して信頼を得るためにも、税込価格を記載するように心がけましょう。
その際の書き方ですが、
- 小計:10,000円
- 消費税(10%):1,000円
- 合計金額:11,000円
のように記載するのが一般的です。
また、「お見積金額」の欄には、税抜価格+消費税である総額表示をすることを基本に、かっこ内に内訳を記載する方式が認められます。
以下のいずれかの記載が認められますが、顧客にとってどれが一番わかりやすく、納得がいくか検討したうえで、統一した記載方法を選びましょう。
- 1,100,000円(税込)
- 1,100,000円(税抜価格1,000,000円)
- 1,100,000円(うち消費税額等100,000円)
- 1,100,000円(税抜価格1,000,000円・消費税額等100,000円)
建築業の見積書の作成方法に関する記事はこちら
見積書の作成方法
見積書はどのように作成していますか。
見積書の作成業務では、金額の計算をスムーズに行い、総額表示などに気を付けながら、見やすく、信頼度の高いものを作成する必要があります。
代表的な作成方法は、見積書テンプレートを用いる方法と見積ソフト(建築見積ソフト)・システムを利用する方法の2つです。
見積書テンプレート
見積書テンプレートは、ワードやエクセルなどで作成されている場合が多いです。
計算式を組み込んで速やかに計算ができるので、エクセルを使う方が多いかもしれません。
インターネット上では、建築業向けをはじめ、多様な見積書テンプレートが公開されています。
多くの場合無料でダウンロードできるため、自社で独自にテンプレートを作成するのが手間に感じる方は、ぜひ活用してみてください。
導入コストがほとんどかからないのがメリットである一方、人為的ミスが発生しやすい、カスタマイズしにくい、といったデメリットもあります。
見積ソフト・システム
見積ソフト・システム(建築見積ソフト)は、自社向けに開発されたもの、市販のソフトや市販のソフトをカスタマイズしたものなどがあります。
利用するには追加でのコストが必要になりますが、必要な項目を入力するだけで、デザイン性の高い見積書が作成できます。
多くの場合自動計算機能が搭載されているので、基本項目に入れる金額や選択項目などを間違えなければ、ヒューマンエラーが起こりにくいです。
また、気軽にオンラインで共有できるのも魅力的です。
見積ソフト・システムに関する記事はこちら
見積書を作成する際の注意点
見積書を作成する際には、金額の表示を相手にわかりやすいよう配慮するとともに、以下の点にも注意しましょう。
有効期限を記載する
見積書に記載したプランや金額が、いつまでの契約なら有効なのか、期限を記載しましょう。
建築資材やエネルギー価格、人件費などは将来的に変動するリスクがあります。
あまりに長期間にわたってその見積書が有効だとすると、市場価格を反映した取引ができず、赤字になるおそれがあります。
また、繁忙期など時期によって同じ価格で対応できない場合もあるでしょう。
「有効期限:○年○月○日まで」のように、具体的に記載するのがおすすめです。
前提条件を備考に記載する
どのようなプランや条件のもとで見積るとその金額になるのか、備考欄に記載しましょう。
たとえば、相談者と「オプションも付けられますよ。」といった話をしていたとします。
このときオプションなしで見積書を提案した場合、相談者はオプション込みの価格と勘違いする可能性があります。
オプションなしなのか、オプションありなのかなど、前提条件を備考欄に記載し、誤解を招かないようにしましょう。
見積書の金額と実際に請求する金額が異なる可能性がある旨や、引き渡し時期、支払い条件などが記載されるケースもあります。
相手の立場にたって考え、必要な情報を簡潔に記載するようにしましょう。
修正前の情報を保存しておく
見積書は、あくまでも契約前の提案書のようなもので、確定事項ではありません。
内容に不満がある場合や、もっとプラスの工事をしたいという場合、逆に予算オーバーだといった場合など、何度もプラン修正を行い、見積額が変わることもあります。
一方、やはり最初の見積書の通りでと言われるケースも少なくありません。
顧客との相談の記録を残し、プランニングや提案のノウハウとして蓄積するためにも、修正前の情報も消さずに保存しておきましょう。
テンプレートを使う場合は、上書きするのではなく、コピーをしたうえで修正を入れるようにします。
見積業務の効率化に関する記事はこちら
まとめ
見積書における消費税の記載は義務ではありません。
ただし、消費税を記載しておくことで、顧客にとって分かりやすい見積書を作成できます。
見積書に税込価格を記載する場合、総額表示を基本に、本体価格や税額などの内訳を併記することも可能です。
見積書テンプレートや、見積ソフト(建築見積ソフト)・システムを活用することで、正確な見積書を効率的に作成できます。
見積書を作成する際には、有効期限を記載すること、前提条件を備考に記載すること、修正前の情報を保存しておくことが大切です。
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