建物の空間を快適かつ安全に利用するために欠かせないのが「設備工事」です。
電気・給排水・空調・通信など、私たちの生活や業務を支えるあらゆる設備は、設備工事によって建物に組み込まれています。
一見すると建設業とは異なる分野のように思われがちですが、設備工事は法律上も建設業の一種として位置づけられており、専門性の高い重要な工事です。
本記事では、建設業の分類における電気設備工事、電気通信工事、管工事を中心に、設備工事の種類や目的、費用の目安、現場が抱える課題までをわかりやすく解説します。
設備工事とは

設備工事とは、建物で使用される各種設備を設置・配線・接続し、正常に機能させるための工事を指します。
電気、ガス、給排水、空調、通信など、建物内で人々が安全かつ快適に生活・業務を行うために欠かせない設備が対象です。
設備工事では、設計図や仕様書に基づいて機器や配管、配線を施工するだけでなく、試運転や点検を行い、設計通りに動作するかを確認します。
また、使用開始後に発生した不具合への修繕や改修を担う点も特徴で、建物の機能維持や長寿命化において重要な役割を果たしています。
設備工事の目的とは
設備工事は、建物の利用者が快適に過ごせるように、コンセントを取り付けやエレベーター・エスカレーターを取り付け、空調を設置など、建物を利用する際の利便性を高め、快適な空間を実現するために行われています。
また、建物の利用者が建物を利用する際に、安全に利用ができるよう安全性を保つために行われるといったことも目的です。
火災の発生時などの役立つ火災報知器の設置や落雷などを避けるための避雷針の設置などがそれにあたります。
衛生設備工事の種類
衛生設備工事は、生活上欠かせないキッチンや洗面台、トイレなどの設備を衛生的に使用するための工事を指します。
たとえば、住宅やビルなどで給水設備や給湯等設備に上水道を引き込む給水工事や生活排水などを公共ますに流すための排水管や汚水ますの設置を行う排水工事などがこれにあたります。
では次に設備工事の種類についてご紹介していきましょう。
衛生設備工事の種類①【電気設備工事】
電気設備工事は、建物で安定して電気を使用することができるようにする工事です。電力を建物内に引き込むことやコンセント、照明、太陽光発電、オール電化などのような電気設備を導入することで安定した電気供給が可能となります。
インターホンや電話、LANなどは通信設備になりますが、これらの工事も電気設備工事にあたります。
電気工事に関する記事はこちら
衛生設備工事の種類②【電気通信工事】
電気通信工事は、電気を情報伝達のために使用することや電力を制御する工事です。
たとえば、テレビやテーブルテレビの設置、インターネットの設置、防犯カメラ、火災報知器、放送設備などの設置やこれらに伴う電気工事を電気通信工事と呼んでいます。
つまり、わかりやすく言うと情報通信のために必要な設備工事が電気通信工事にあたると言えます。
衛生設備工事の種類③【防災設備工事】
防災設備工事は、建物の防災性を高める設備に関する工事です。
例えば、万が一の災害から身を守るため、感知器や警報器、スピーカーの取り付けを行います。
他にも消火器の設置や屋内消火栓設備、ガス漏れ警報器、火災報知機、非常警報、非常用照明、誘導灯などの設置などがこれにあたります。
衛生設備工事の種類④【管工事】
管工事は、空調、給排水、ガス、冷暖房に関する設備や管を使用して水、ガス、油、水蒸気を送るための設備を設置する工事を指しています。
例えば、冷暖房設備工事やガス管配管工事、厨房設備工事、ダクト工事などがこれにあたります。
衛生設備工事の種類⑤【機械器具設置工事】
機械器具設置工事は、機械器具の組み立てなどによって工作物を建設することや工作物に取り付ける工事を指しています。
端的に言えば、建設現場において複数を組み合わせて連動させる工事であり、たとえばプラント設備工事や運搬機器設置工事、立体駐車設備工事、給排気機器設置工事などがこれにあたります。
衛生設備工事に関する記事はこちら
設備工事業の課題は?
設備工事業は、社会インフラや建物の機能を支える重要な役割を担う一方で、いくつかの構造的な課題を抱えています。
ここでは「コスト面」「人材面」「労働環境」の3つの観点から整理して見ていきましょう。
設備工事業の課題①【コスト面】
日本の建設投資額は1992年の84兆円をピークに減少しましたが、近年は都市再開発やインフラ更新需要により、投資額自体は底堅く推移しています。しかし、設備工事業界が直面するコスト構造は、かつてない局面を迎えています。
2025年の大阪・関西万博に向けた建設ラッシュが終了したことで、一部では需要の揺り戻しが懸念される一方、コスト面では「資材価格の高止まり」と「労務費のさらなる上昇」という二重苦が続いています。
特に「建設業の2024年問題」を経て、労働時間の制限に伴う工期延長や人件費の増大が固定化されており、工事原価を強く押し上げています。
今後は、2027年以降に順次開業を控えるリニア中央新幹線関連の大型プロジェクトや、高度経済成長期に整備されたビル・公共インフラの老朽化に伴う大規模修繕・更新が本格化します。
需要は継続するものの、深刻な熟練技術者不足を背景とした外注費の高騰が予想されるため、これまで以上に適正な価格転換と、施工の効率化による収益確保が喫緊の課題となっています。
設備工事業の課題②【人材面】
建設業界全体で就業者数の減少が続く中、設備工事業界でも深刻な人手不足が課題となっています。
特に高齢化が進んでおり、今後数年で多くの60歳以上の熟練技術者が引退することが予想されます。
人材確保のために賃金水準を引き上げる必要がある一方で、人件費の増加は経営に直接的な影響を与えます。
そのため、若手人材の育成に加え、業務効率化やIT・デジタル技術の活用による省人化が不可欠となっています。
設備工事業の課題③【労働環境】
設備工事業を含む建設業では、長時間労働が長年の課題とされてきました。全産業と比較しても労働時間が長い傾向にあり、現場負担の大きさが人材定着を妨げる要因となっています。
こうした背景から、建設業にも2024年より時間外労働の上限規制が適用され、週休2日制の導入や働き方改革が本格化しています。
労働環境の改善は、人材確保だけでなく、生産性向上や業界全体の持続的成長につながる重要な取り組みといえるでしょう。
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設備工事の費用の傾向は?
設備工事の費用を適正に把握するためには、複数の業者から見積もりを取得し、内容を比較検討することが重要です。その際は、工事範囲や仕様、使用する機器やメーカー、工期などの条件をできるだけ具体的に伝えることで、見積もりの精度と比較のしやすさが高まります。
近年は、資材価格の高騰や人手不足による人件費上昇の影響を受け、設備工事全体の費用は上昇傾向にあります。
特に電気設備や空調・給排水設備では価格変動が大きく、見積もり有効期限が短く設定されるケースも増えています
そのため、工事計画時には最新の価格動向を把握し、余裕を持った予算設定を行うことが重要です。
設備工事に関するよくある質問
- 設備工事と建築工事の違いは何ですか?
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建築工事は建物そのもの(躯体・外装・内装など)をつくる工事を指します。一方、設備工事は電気・給排水・空調・通信など、建物を機能させるための設備を設置・整備する工事です。両者は役割が異なりますが、建物を完成させるためにはどちらも欠かせません。
- 設備工事にはどのような種類がありますか?
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主に電気設備工事、管工事(給排水・空調・ガスなど)、電気通信工事、消防設備工事などがあります。建物の用途や規模によって必要な設備工事の種類は異なります。
- 設備工事の費用はどのように決まりますか?
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工事内容、使用する機器や材料、建物の規模、工期などによって費用は大きく変わります。資材価格や人件費の影響も受けやすいため、複数業者から見積もりを取り、内容を比較することが重要です。
- 設備工事には資格や許可が必要ですか?
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工事内容によっては、建設業許可や電気工事士、管工事施工管理技士などの資格が必要です。無資格で行えない工事もあるため、業者選定時には許可や資格の有無を確認しましょう。
- 設備工事後の点検やメンテナンスは必要ですか?
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はい、必要です。設備は経年劣化するため、定期的な点検やメンテナンスを行うことで、故障や事故を未然に防ぎ、設備を長く安全に使用することができます。
まとめ
建設業における設備工事にはあらゆる種類があり、私たちが安全かつ快適に過ごせる環境を整えるために必要な工事になります。
近年の情勢からコスト面や人材面、労働環境における問題を抱えていますので、これらを解決するために積極的にITの推進や労働時間の改善を講じることで、課題解決を目指していくことが必要です。
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