工事の見積もりを見たとき、「直接工事費」とは何か、内訳はどうなっているのか、どのように計算されているのか、疑問に思ったことはありませんか?
直接工事費は、建設プロジェクトのコストを理解する上での重要な要素ですが、詳しく知っている人は意外と少ないものです。
そこで本記事では、直接工事費の基本からその内訳、計算方法までをわかりやすく解説します。
工事費の見積もりを理解することで、無駄なコストを抑え、より効率的なプロジェクト進行が実現できるので、ぜひ参考にしてください。
直接工事費とは
工事価格には、工事原価と一般管理費の2種類があります。
直接工事費とは、工事価格の中で工事原価に含まれる費用を指します。
そもそも、工事価格とはどんなものでしょうか。
直接工事費を理解する前に、まずは工事価格の内訳について説明します。
工事原価に関する記事はこちら
工事価格とは
工事価格とは、工事費として発注元へ請求する費用のことです。
前述した通り、工事価格は工事原価と一般管理費の2つに分かれます。
工事原価とは、経費・材料費・労務費・外注費などの工事にかかる全ての費用のことを指します。
- 直接工事費:労務費、材料費、直接経費 等
- 共通仮設費:建築物などの仮設に必要な費用
- 現場管理費:工事の管理に必要な費用
一般管理費とは、経営維持に必要な費用で、工事とは直接関係のないものです。
共通仮設費、現場管理費、一般管理費といった工事に直接関係しない費用を「間接工事費」と呼びます。
一般管理費・現場管理費に関する記事はこちら
直接工事費の内訳を紹介
工事価格における直接工事費の位置づけを確認しました。
以下では、直接工事費の詳細について説明します。
直接工事費は、主に以下の3つで構成されます。
- 材料費
- 労務費
- 直接経費
直接経費には、水道光熱費や運搬費、機械費などが含まれます。これらの費用は、工事を実施するために必要不可欠な要素です。
こうした直接工事費を算出することを積算といいます。
積算は、算出式や歩掛を明確にした積算基準に基づいて行われます。
一般的には、国土交通省が公開している「公共建築工事積算基準」を使用することが多いですが、地方自治体や業界団体による基準もあります。
それでは、材料費、労務費、直接経費それぞれの概要について詳しく見ていきましょう。
材料費
建設業の積算における材料費は、工事を実施するために必要な資材にかかる費用のことを指します。
この費用には、建設プロジェクトで使用されるさまざまな材料が含まれます。
具体的には、コンクリート、鉄鋼、木材、配管材、電線など、工事の種類に応じて必要な資材が異なります。
材料費は、使用する材料の単価や数量によって変動するため、正確な見積もりが非常に重要です。
また、材料を現場に運ぶ際の運搬費用も材料費に含まれます。
したがって、正確な材料費を算出することは、全体の工事費用に大きく影響します。
そのため、計画段階での詳細な調査と見積もりが求められるのです。
労務費
建設業の積算における労務費とは、工事施工を行う職人の人件費のことを指します。
この費用には、職人や作業員の給与、社会保険料、福利厚生費が含まれますが、施工に関与しない事務職員の給与や人員募集の広告費などの間接費用は含まれません。
労務費には、実際に作業を行う職人の日当や、残業分の割増賃金などが該当し、作業の種類や人数、作業時間によって変動するため、正確な見積もりが求められます。
さらに、労務費は工事の進行状況にも影響を与えるため、適切な人員の配置と管理が重要です。
計画段階での労務費の算出はプロジェクト全体のコスト管理やスケジュール調整において重要な役割を果たすため、労務費を適切に見積もることは工事の成功に直結します。
直接経費
直接経費は、工事を施工するために直接必要となる費用です。
直接経費は以下の3つに分かれます。
- 特許使用料
- 水道光熱電力料
- 機械経費
それぞれの概要について、確認しましょう。
特許使用料
特許使用料とは、施工にあたって特許権や意匠権に関連する施工方法や試験法を使用する際に発生する費用のことを指します。
具体的には特許の使用料や技術者の派遣にかかる費用が含まれます。
水道光熱電力料
水道光熱電力料は、施工に必要な水道用水の使用料や電力使用料が含まれ、投棄料もこの項目に含まれます。
ただし、工事と無関係な水道代は間接工事費の一般管理費に分類されます。
また、基本料金も間接工事費に該当します。
機械経費
機械経費とは、工事を実施する際に必要となる機械の使用に伴う費用のことです。
この費用には、機械の整備や修理費、運転に必要な労務費、そして償却費なども含まれます。
直接工事費の計算方法を紹介
ここでは、直接工事費の計算方法について説明します。
直接工事費を算出する作業は「積算」と呼ばれ、積算は、費用を計算するための式や基準を明確に定めた「積算基準」に基づいて行われます。
一般的に使用されるのは「国土交通省工事積算基準」で、これは国土交通省の公式ウェブサイトから確認できます。
材料費
材料費とは、各仕入先からの仕入れ価格などを指します。
材料費は、「材料の数量」に「材料の単価」をかけて算出します。
材料1つひとつに対してこの計算が必要です。
計算式は以下の通りです。
材料費=所要数量(設計数量+(1+ロス率))×材料単価(購入単価+運搬費)
労務費
労務費とは人件費のことで、歩掛を使用して計算されます。
計算式は以下の通りです。
労務費=所要人数(設計作業量×該当作業の歩掛)×労務単価(基本日額+割増賃金)
歩掛(歩掛)とは、作業ごとの手間を数値化したものを指します。
直接経費
直接経費とは、労務費や材料費を除いた、工事の施工に欠かせない費用を指します。
具体的には、「特許使用料」 「水道光熱電力料」「機械経費」の3種類があります。
特許使用料
特許使用料の算出方法については、国土交通省が発行した「土木工事工事費積算要領及び基準の運用」の改定資料に次のように記されています。
共有特許工法等を使用する場合は、実施契約に基づく、民間企業等が有する特許権の持分に対応した特許使用料を計上し、民間特許工法等を使用する場合は、当該特許工法に係る全ての特許使用料を計上する。
なお、特許権、実用新案権及び意匠権等を用いて施工・製作させた装置等については、特許使用料が含まれている場合があるので留意されたい。
つまり、共有特許工法等を使用する場合と民間特許工法等を使用する場合で、計上する特許使用料に差が生じます。
使用する工法を確認し、特許使用料を算出するようにしましょう。
水道光熱電力料
水道光熱電力料は、水道局や電力会社などの規定に従って算出します。
それぞれの工法や機械で必要な時間当たりの使用料を求めます。
機械経費
機械経費とは、施工に必要な機械の使用に伴って発生する費用のことです。
国土交通省による機械経費の計算方法は、以下の通りです。
機械経費は、工事を施工するために必要な機械の使用に要する経費(材料費、労務費を除く。)で、その算定は請負工事機械経費積算要領に基づいて積算するものとする。
出典:国土交通省「土木工事工事費積算要領及び基準の運用」の改定について (p. 7)
直接工事費の記載方法
これまで、直接工事費の内訳と計算方法について確認してきました。ここでは、直接工事費を見積書に記載する際の方法について説明します。
直接工事費の記載方法には、主に以下の2つの形式があります。
- 材工別単価:直接工事費のうちの「材料費」「労務費」「直接経費」をそれぞれ分けて算出し、一行ごとに記載する方法。
- 複合単価:材料費の中に労務費などの施工費用を加え、材料名ごとに記載する方法。「材工共」と表記される。
特に公共工事の見積書では、複合単価での記載が主流となっています。
直接工事費設定のポイント
直接工事費の設定は非常に重要です。
適切に計算されていない場合、予算オーバーや不測の事態に対応できず、工期や品質に悪影響を及ぼすことがあります。
そこで、ここでは直接工事費を設定する際に押さえておくべき重要なポイントを紹介します。
予備費を設定する
直接工事費の計算方法については前述しましたが、図面通りに計算を行うと、工事中にロスが発生し、損失を被る可能性があります。
粗利を圧迫しないためにも、予備費を含めることで、予期せぬ問題が発生した際にも対応が可能となります。
そのため、予備費を含めた見積を作成するようにしましょう。
予備費についてはこちら
まとめ
今回は、工事価格の中でも直接工事費の内訳、計算方法、そして記載方法について紹介しました。
赤字工事を回避するためには、積算業務が欠かせません。
しかし、多岐にわたる費用を正確に算出し、見積書に記載するのは非常に大変な作業です。計算ミスや記載漏れを防ぐためには、計算ソフトや管理システムの導入を検討することが有効です。
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