建築設備の設計には、建築設備士の資格がなくても対応できる場合もありますが、近年では空調や換気などの快適性や安全性がますます重視されています。
そのため、建築設備士への需要は高まると考えられます。
この記事では、建築設備士の仕事内容や資格試験の難易度などについて解説していきます。
建築設備士の仕事内容とは?
建築設備士とは、空調、換気、給排水衛生、電気などの建築設備全般に関する知識と技能を持つ資格者のことです。
彼らは建築士に対して、複雑化・高度化した建築設備の設計や工事監理に関する適切なアドバイスを提供することができます。
この資格は国土交通大臣によって認定される国家資格です。
技術の進歩に伴い、建築設備はますます高度化・複雑化しています。
建築物の機能性が向上しても、安全性は依然として確保される必要があります。
そのため、建築設備の設計や工事監理の高度化や複雑化に対応する専門家として、建築設備士が設けられました。
主な業務内容
建築設備士は、建物の快適性、安全性、機能性を高めるために不可欠な役割を果たす専門職です。
この資格を取得することで、専門知識と技術を持つことが証明され、キャリアアップや新たなビジネスチャンスの拡大にもつながります。
建築設備士の主な業務は以下の通りです。
設備設計
建築物の目的や使用条件に応じて、空調設備(暖房、換気、空調システム)、衛生設備(給排水設備、ガス設備)、電気設備(電力配線、照明、通信設備)、消防設備(消火システム、警報装置)などを設計します。
CADソフトや専用の設計ツールを使用して、詳細な設計図を作成します。
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施工管理
設計に基づいて実際の設備工事が正確に行われているかを監督します。
工事がスケジュール通りに進行し、品質が確保されるように調整し、現場での問題を解決します。
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技術的アドバイス
設備に関する専門的な助言やコンサルティングを提供します。
新しい技術やエネルギー効率の高い設備の導入を提案し、環境負荷の低減を図ります。
法規制の遵守
建築基準法や関連する法規制に準拠した設備設計を行います。
必要な確認申請や検査対応を行い、法的要件を満たすようにします。
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トラブルシューティング
既存の建物で発生する設備の不具合やトラブルに対処し、迅速に解決します。
保守・管理計画を立て、設備の長寿命化を図ります。
環境配慮
環境に配慮した設計を行い、省エネルギーやエコロジーを重視した計画を立てます。
再生可能エネルギーの利用や省エネルギー機器の導入を推進します。
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建築設備士取得のメリットとは?
建設設備士を取得するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
この章でご紹介します。
一級建築士資格の取得がしやすくなる
将来的に建築士の資格取得を希望する場合、建築設備士資格を取得することで、一級建築士資格の取得がしやすくなるというメリットがあります。
まず、一級建築士や二級建築士になるためには、大学などで指定された科目を履修する必要があります。
一方で、建築設備士資格の受験条件は、建築、機械、または電気に関する課程を修めて卒業することです。
さらに、建築設備士資格を取得し、その後4年以上の実務経験を積むことで、一級建築士の受験資格が得られます。
これにより、建築ではなく機械や電気などの学部や学科を卒業した人でも、改めて建築関連の科目を履修することなく、一級建築士の試験を受けることが可能です。
このメリットは、建築設備士資格と併せて建築士の資格を取得し、幅広く活躍する人が増えていることを示しています。
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設備設計一級建築士資格の取得がしやすくなる
階数3以上かつ床面積の合計5,000平方メートル超の建築物の設備設計や、設備関係規定への適合性の確認を行う資格者が、設備設計一級建築士です。
この資格を取得するためには、一級建築士として5年以上の実務経験を積み、所定の講習を修了する必要があります。
建築設備士資格を持っている場合、設備設計部分の講義と修了考査が免除されるため、設備設計一級建築士資格の取得に有利になります。
専門知識と技術の証明
建築設備士の資格は、設備設計や施工管理に関する高度な知識と技術を有していることの証明です。
これにより、専門性をアピールしやすくなり、業務の信頼性が向上します。
キャリアアップと昇進のチャンス
資格を取得することで、職場でのキャリアアップや昇進の機会が増えます。
建築設備士は専門職としての地位が高いため、管理職やプロジェクトリーダーとしての役割を任されることが多くなります。
仕事の幅が広がる
建築設備士の資格を持つことで、設計事務所や建設会社、設備工事会社など幅広い職場で活躍することができます。
また、新築だけでなくリノベーションや改修工事のプロジェクトにも関わることができ、業務の幅が広がります。
市場価値の向上
資格を持つことで、自身の市場価値が高まり、転職や就職活動において有利になります。
建築設備士の需要は高いため、資格を持つことが職業選択の幅を広げることにもつながります。
独立・起業のチャンス
資格を取得することで、独立して自分の事務所を開業することも可能です。
コンサルタント業務や設計事務所を立ち上げ、自分の技術と知識を活かしてビジネスを展開するチャンスが広がります。
法規制対応の専門家
建築基準法や各種法規制に精通しているため、法的手続きを円滑に進めることができます。
これにより、トラブルを未然に防ぎ、法的な問題に対処する能力が高まります。
信頼性と評価の向上
資格取得により、クライアントや同僚からの信頼性が向上します。
建築設備士の資格は、プロジェクトの品質と信頼性に対する評価を高めるため、仕事の受注にもプラスになります。
ネットワーク構築
資格取得を通じて、業界内のネットワークを広げることができます。
同業者や専門家との交流を深めることで、情報交換や新たなビジネスチャンスの発見につながります。
これらのメリットにより、建築設備士の資格取得は、個人のキャリア形成やプロフェッショナルとしての成長に大いに役立ちます。
建築設備士の難易度とは?
建築設備士の試験は、専門的な知識と技術が求められるため、一般的に高い難易度とされています。
試験の難易度について、以下の点を考慮することができます。
試験の構成
試験は「学科試験」と「設計製図試験」の二つに分かれています。
学科試験では、建築設備に関する基礎知識、法規、設計理論などが問われ、設計製図試験では具体的な設計能力や製図スキルが試されます。
出題範囲の広さ
学科試験では、空調設備、衛生設備、電気設備、環境工学など幅広い分野から出題されます。
各分野の基礎知識だけでなく、実際の設計や施工に関する応用力も必要です。
専門知識の深さ
特に設計製図試験では、具体的な設計図を作成するための高度な専門知識と実践的なスキルが求められます。
これには詳細な計算や正確な図面の作成が含まれます。
合格率
合格率は毎年変動しますが、一般的に低めです。
これは、試験の難易度が高いため、多くの受験者が苦戦することを示しています。
例えば、合格率は20%から30%程度の年が多いとされています。
実務経験の必要性
建築設備士試験の受験資格として、一定の実務経験が必要です。
これは、試験が理論だけでなく実践的な能力も問うためです。
実務経験が豊富であれば、試験に対する理解が深まり、合格の可能性が高まります。
学習時間の確保
試験準備には相当の学習時間が必要です。
特に働きながら試験勉強をする場合、時間の確保が難しく、効率的な学習計画が求められます。
これらの要素から、建築設備士の試験は高難易度とされますが、しっかりと準備をし、専門知識と実践力を身につけることで、合格は十分に可能です。
多くの受験者は予備校や参考書を活用し、体系的な学習を進めています。
建築設備士の試験内容とは?
建築設備士の試験内容は、「学科試験」と「設計製図試験」の二つの主要な部分に分かれています。それぞれの試験の詳細は以下の通りです。
学科試験
学科試験は、建築設備に関する広範な知識を問うもので、次の4つの科目から構成されています:
建築一般
建築の基本的な理論や歴史、構造などの基礎知識。
建築材料や施工方法についての理解。
設備計画
空調設備、給排水設備、電気設備などの計画および設計の基本。
設備の配置や運用に関する知識。
環境工学
室内環境の制御や省エネルギー、環境負荷低減技術。
環境関連の法規や規格に関する知識。
法規
建築基準法や関連する法令、規則。
消防法や電気事業法など、建築設備に関する法律。
各科目は選択問題形式で出題され、合格ラインは各科目で60%以上の得点が求められます。
設計製図試験
設計製図試験は、実践的な設計能力を評価するための試験で、具体的な課題に対して設計図を作成します。以下の内容が含まれます。
課題提示
試験当日に具体的な課題が提示されます。
例えば、特定の建物における空調設備の設計や、給排水設備の配置計画などです。
設計図の作成
指定された条件に基づき、設備の設計図を手書きで作成します。
平面図や断面図、詳細図などを描く必要があります。
設計意図の説明
作成した設計図について、設計意図や選定理由を説明する文章を記述します。
設計製図試験では、正確な図面作成能力、設計の合理性、安全性、そして設計意図の明確な表現が求められます。
試験準備のポイント
効率的な学習を行う為にここからは試験準備のポイントをご紹介します。
参考書や問題集の活用
過去問題集や参考書を使って、出題傾向を把握し、問題に慣れることが重要です。
実務経験の活用
実務で得た経験を活かし、実際の設計や施工に基づいた知識を試験に反映させることが有利です。
予備校や通信講座の利用
専門の予備校や通信講座を利用することで、効率的に学習を進めることができます。
時間管理と計画的学習
働きながらの受験が多いため、計画的な学習スケジュールを立て、継続的に学習することが合格への近道です。
建築設備士の試験は、幅広い知識と高度な技術が求められるため、計画的な学習と実践的なトレーニングが必要です。
※受験資格に関する詳細は、公益財団法人建築技術教育普及センターにて必ずご確認ください。
まとめ
建築設備士の資格は、業務内容を限定するものではありません。また、建築士は建築設備士からのアドバイスなしに設計や工事管理を行うことができます。そのため、「建築設備士資格を取得しても意味がないのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、実際には建築の安全性への関心が高まっており、安全性の確保のために建築設備士からの助言を求める依頼主が増えています。
このため、建築設備士は建物の安全性を確保する上で今後も重要な役割を果たすことが期待されます。さらに、建築設備士資格を取得することで、他の建築関連資格の取得や業務に役立つなどの利点もあります。将来、建築分野でのキャリアを考えるなら、ぜひ取得しておきたい資格です。
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