社員の賃上げや業務効率化を進めるためには、設備投資やシステム導入など、多くの費用がかかる場合があります。
こうした費用を金融機関からの融資などで賄う方法もありますが、国や自治体が一定の要件を満たす事業者に対して費用の一部を支援する「助成金制度」を活用することも可能です。
業務改善助成金は、生産性向上につながる設備投資などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた中小企業・小規模事業者を対象に、設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度です。
本記事では、業務改善助成金の概要や支給要件、助成額、申請の流れ、令和8年度の変更点などをわかりやすく解説します。
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業務改善助成金とは
まずは、厚生労働省の公式情報をもとに、業務改善助成金の概要や支給要件について確認していきましょう。
業務改善助成金の概要
引用:業務改善助成金|厚生労働省『(A4印刷用リーフレット)業務改善助成金のご案内[844KB]』
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者が生産性向上につながる設備投資などを行うとともに、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度です。
支給要件
下記要件のほか、申請のために必要な書類があります。
業務改善助成金の交付要件
次のすべてを満たす中小企業事業者が対象です。
- 日本国内に事業場を設置していること
- 雇入れ後6か月を経過した労働者の事業場内最低賃金を引き上げること
引上げ額は申請コースごとに定められた金額以上- 引上げ後の賃金額を、就業規則等で事業場の最低賃金として定めること
- 交付決定年度の1月31日までに、生産性向上・労働能率向上につながる設備投資等を実施すること
- 助成対象経費を支出すること
特例事業者の場合
特例事業者に該当し、かつ引上げ労働者数が要件を満たす場合は、通常より高い助成上限額が適用されます。
また、物価高騰等要件に該当する事業者は、パソコンやタブレットなど一部設備も助成対象となります。中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)交付要綱 第4条 対象事業者及び交付額 より
助成額
申請コースごとに定める引き上げ額以上に事業場内最低賃金を引き上げた場合、設備投資等にかかった費用の一部を助成します。(上記表参照)
上限額は最低賃金を引き上げた労働者の数や金額によって異なりますが、助成率は事業場内最低賃金によって異なります。
また、助成金額は、「設備投資等にかかった費用×助成率」と「助成上限額」を比較し、いずれか低い額が支給されます。
助成率
| 1,050円未満 | 4/5 |
| 1,050円以上 | 3/4 |
業務改善助成金の目的
業務改善助成金は、「賃上げをした企業に補助金を支給する制度」というイメージを持たれがちですが、単に賃金を引き上げることだけが目的ではありません。
生産性向上につながる設備投資や業務改善を支援することで、企業が無理なく賃上げを実現できる環境を整えることを目的としています。ここでは、業務改善助成金が創設された目的について詳しく解説します。
生産性向上と賃上げを同時に支援すること
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者が生産性向上につながる設備投資や業務改善を行うとともに、事業場内最低賃金の引上げに取り組むことを支援する制度です。
設備投資にかかる費用の一部を助成することで、企業の負担を軽減しながら、生産性の向上と持続的な賃上げの実現を後押しすることを目的としています。
中小企業の経営基盤強化につなげること
近年、中小企業では人手不足や人件費の上昇への対応が大きな課題となっています。業務改善助成金は、設備やシステムの導入によって業務効率を高め、生産性を向上させることで、賃上げを継続しやすい経営基盤の構築を支援することも目的の一つです。
その結果、労働環境の改善や人材の確保・定着につながり、中小企業の持続的な成長を後押しする役割も担っています。以上を引き上げられれば2倍以上の130万円まで助成を受けることが可能です。
業務改善助成金の申請手続きから入金までの流れ
引用:業務改善助成金|厚生労働省『(A4印刷用リーフレット)業務改善助成金のご案内[844KB]』
助成金交付申請書の提出
まずは助成金交付申請書を作成し、提出します。申請書は厚生労働省が提供する以下ページからダウンロード可能です。
「交付要綱・各種様式」から最新様式をダウンロードできます
申請書は複数枚への記入が必要になり、情報整理なども含めるとある程度の作業時間を求められます。複雑な書類作成は苦手であれば、社会保険労務士や行政書士へ相談する方法もあります。
成功報酬として助成額の10%~30%程度の料金がかかりますが、面倒な書類作成作業や情報整理を代行してくれるので業務的な負担を削減することが可能です。採択率を上げる方法なども提案してくれます。
自社で実施する場合は、厚生労働省が提供する記入例に則って作成しましょう。Q&A集もあるので、時間さえあれば準備できます。提出先は、各都道府県労働局です。
助成金交付決定通知
提出した交付申請書が審査に通れば、各都道府県労働局から交付決定通知が届きます。
基本的に書面での通達ですが、審査期間は申請件数などにより異なるため、一律ではありません。
注意
業務改善助成金では、交付決定前に設備の購入や契約、工事などを行った場合、原則として助成対象外となります。
設備投資や業務改善の実施は、必ず交付決定通知を受けてから開始しましょう。
業務改善計画と賃金引上計画の実施
決定通知が届いたら、計画に基づいて設備投資や事業場内最低賃金の引き上げを行います。万が一計画に変更等があった場合、届け出が必要な場合があるので注意してください。
以下は、変更の届出が不要な「軽微な変更」とされるものです。ここに該当しない変更が起こる場合には、事務局に早めの問合せが必要です。
計画変更申請が不要である「軽微な変更」の代表例
- 設備投資等が申請時の見積額より安価になった場合
- 賃金引上げ日が変更される場合で、変更日が事業完了予定期日以内の場合
- 助成対象となる設備機器などの納品時期が変更される場合で、変更日が事業完了予定日以内の場合
事業実績報告書の提出
業務改善計画の実施結果と、賃金引上げの状況を報告します。報告の際は、事業実績報告書(様式第9号)の労働局提出が求められます。
実績報告書は、業務改善計画の完了日から1ヶ月または翌年度4月10日のいずれか早い日までに提出する必要があります。
助成金の額の確定通知
実績報告書の審査後、助成金額の確定通知が労働局から送付されます。事業実施中に賃金の引き下げが発生した場合には不交付になる事があるので、注意が必要です。
助成金の支払い
確定通知書が届いたら、助成金の支払いを受けるために支払請求書を労働局に提出します。支払請求書の提出期限は明記されていませんが、交付要綱には「速やかに」と記載があるので出来るだけ早く提出しておくのが無難です。
申請にあたっての注意点
この章では、申請にあたって注意すべき点をご紹介します。
交付決定通知が届く前に計画を実行してはいけない
業務改善計画の実施は、交付決定通知を受けてから開始しましょう。
交付決定前に設備の購入や契約、工事などを行った場合は、原則として助成対象外となります。
一方、事業場内最低賃金の引上げについては、交付申請後から事業完了期日までの間であれば実施可能です。
事業場内最低賃金が地域別最低賃金より50円を超えて高い場合は申請できない
業務改善助成金は、申請時点の事業場内最低賃金と地域別最低賃金との差額が50円以内であることが要件の一つです。そのため、事業場内最低賃金が地域別最低賃金を50円を超えて上回っている場合は、原則として申請対象外となります。
令和7年度からの主な変更
令和8年度の業務改善助成金は、令和7年度から一部変更がありました。
変更点は以下の通りです。
| 項目 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 賃金引上げコース | 30円・45円・60円・90円 | 50円・70円・90円(30円・45円コース廃止) |
| 助成率の区分 | 事業場内最低賃金1,000円が基準 | 1,050円が基準に変更 |
| 申請開始時期 | 例年4月頃 | 9月1日開始 |
| 申請期限 | 年度内で比較的長い | 地域別最低賃金発効日前日または11月末日の早い方 |
| 対象事業場 | 従来の要件 | 対象範囲を拡大 |
| 年間上限 | なし | 事業主単位の年間上限を新設 |
特に影響が大きい変更点
特に、賃金引上げコースや助成率の適用基準、申請スケジュールなどが見直されているため、前年度の内容を把握している方も改めて確認しておくことが大切です。ここでは特に大きく変更があった点を記載いたします。
① 賃上げコースの見直し
これまでの30円・45円・60円・90円コースから、50円・70円・90円コースへ再編されました。これにより、30円や45円の賃上げでは申請できなくなっています。
② 助成率の基準変更
助成率(4/5または3/4)自体は変わりませんが、その判定基準となる事業場内最低賃金が1,000円から1,050円へ変更されました。
③ 申請スケジュールの変更
令和8年度は9月1日から申請受付となり、申請期限も「地域別最低賃金の発効日前日」または「11月30日」のいずれか早い日までとなっています。例年より申請できる期間が短くなったため、早めの準備が重要です。
まとめ
今回は、業務改善助成金の概要や支給要件、申請の流れ、令和8年度の変更点などについて解説しました。
業務改善助成金は、生産性向上につながる設備投資と事業場内最低賃金の引上げを支援する制度です。設備投資や賃上げを検討している中小企業・小規模事業者にとって、費用負担を軽減できる有効な制度といえるでしょう。
ただし、申請にはさまざまな要件があり、必要書類の準備や申請手続きにも時間を要します。申請期間も限られているため、制度の内容を十分に確認したうえで、余裕を持って準備を進めることをおすすめします。
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