建設現場では、元請事業者と下請事業者など、複数の事業者が同じ場所で作業することがあります。このような現場では、作業間の連絡や調整を行い、労働災害を防止するための安全衛生管理が重要です。
そこで重要な役割を担うのが「安全衛生責任者」です。
安全衛生責任者は、一定の建設現場などで、関係請負人(下請事業者)が選任し、統括安全衛生責任者との連絡や作業間の調整などを行う担当者です。
この記事では、安全衛生責任者の意味や選任要件、具体的な仕事内容、必要な資格・教育について、2026年9月時点の情報をもとに解説します。
安全衛生責任者とは?

安全衛生責任者とは、特定元方事業者が統括安全衛生責任者を選任する必要がある現場で、関係請負人(下請事業者)が選任する担当者です。
建設現場では、元請事業者だけでなく複数の下請事業者が同じ場所で作業することがあります。作業内容や工程が複雑になるほど、事業者間の連絡不足が労働災害につながる可能性があります。
安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者との連絡や、関係者への情報共有、作業間の調整などを行い、混在作業による労働災害を防止するための連携役を担います。
労働安全衛生法における位置づけ
安全衛生責任者は、労働安全衛生法第16条に定められています。
統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人で、その仕事を自ら行うものは、安全衛生責任者を選任し、統括安全衛生責任者との連絡など、法令で定められた事項を行わせなければなりません。
また、安全衛生責任者を選任した関係請負人は、特定元方事業者に対して、遅滞なく選任した旨を通報する必要があります。
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安全衛生責任者の選任要件
安全衛生責任者は、すべての建設現場で一律に選任するものではありません。
特定元方事業者が統括安全衛生責任者を選任する必要がある現場において、関係請負人が安全衛生責任者を選任します。
30人以上・50人以上の現場が対象
建設業における統括安全衛生責任者の選任基準は、工事の種類によって異なります。
- ずい道等の建設、圧気工法による作業、一定の橋梁の建設:常時30人以上
- 上記以外の建設工事:常時50人以上
これらの基準に該当し、元請事業者が統括安全衛生責任者を選任する現場では、関係請負人も安全衛生責任者を選任することになります。
なお、2026年4月1日から施行された改正により、建設現場における安全衛生管理では、労働者だけでなく個人事業者などを含む「作業従事者」を対象とする規定が設けられています。現場の規模を判断する際は、最新の法令・通達を確認しましょう。
安全衛生責任者の選任要件に関する国のサイトはこちら
安全衛生責任者を選任するのは誰?
安全衛生責任者を選任するのは、関係請負人(下請事業者)です。
元請事業者が選任する「統括安全衛生責任者」と、下請事業者が選任する「安全衛生責任者」は、役割が異なります。
- 元請事業者:統括安全衛生責任者を選任し、現場全体の安全衛生管理を統括
- 下請事業者:安全衛生責任者を選任し、自社の作業と他の作業との連絡・調整などを担当
安全衛生責任者に資格は必要?
安全衛生責任者になるための特定の資格・免許は、労働安全衛生法上定められていません。
ただし、安全衛生責任者には、関係する事業者間の連絡調整や作業に伴う危険の確認などが求められます。そのため、厚生労働省は、安全衛生責任者に対して必要な教育を実施するよう求めています。
安全衛生責任者の選任を元請へ報告する
安全衛生責任者を選任した関係請負人は、特定元方事業者に対して、遅滞なくその旨を通報する必要があります。
また、安全衛生責任者がやむを得ない事情で職務を行えない場合には、関係請負人が代理者を選任する必要があります。
安全衛生責任者の仕事内容
安全衛生責任者の具体的な職務は、労働安全衛生規則第19条に定められています。
単に現場を巡回して安全を確認するだけではなく、統括安全衛生責任者との連絡や情報共有、作業間の調整など、複数の事業者が関わる現場の安全衛生管理をつなぐ役割を担います。
①統括安全衛生責任者との連絡
安全衛生責任者の重要な仕事の一つが、統括安全衛生責任者との連絡です。
元請事業者が統括している現場の安全衛生管理について、自社の作業状況や安全上の情報を共有し、必要な連絡を行います。
②連絡を受けた事項を関係者へ伝える
統括安全衛生責任者から受けた安全衛生上の連絡事項を、自社の関係者へ確実に伝達することも重要な職務です。
現場では作業内容や工程が変わることもあるため、変更された内容を作業員に共有し、安全な作業につなげます。
③連絡事項が実施されているか管理する
連絡事項を伝えるだけでなく、自社に関係する事項が適切に実施されているかを管理することも安全衛生責任者の仕事です。
作業員への周知だけで終わらせず、実際の作業に反映されているか確認することが重要です。
④作業計画と全体工程の調整
自社が作成する作業計画と、特定元方事業者が作成する工程に関する計画などについて、整合性を確保するための調整を行います。
複数の事業者が同じ現場で作業する場合、それぞれの作業計画が干渉すると事故につながる可能性があります。そのため、事業者間で工程や作業内容を調整することが重要です。
⑤混在作業による危険の有無を確認する
自社の労働者が行う作業だけでなく、他の事業者が行う作業との関係によって発生する危険がないか確認することも職務の一つです。
例えば、複数の業者が同じ作業場所で異なる作業を行う場合、資材の搬入や重機の使用などが別の作業に影響する可能性があります。
⑥他の請負人との作業間の連絡・調整
自社がさらに別の事業者へ仕事の一部を請け負わせている場合、その事業者の安全衛生責任者とも連絡・調整を行います。
このように安全衛生責任者は、自社だけではなく、現場で関係する複数の事業者をつなぐ役割を担っています。
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安全衛生責任者と職長の違い
建設業では、職長が安全衛生責任者を兼任するケースも多くあります。そのため、「職長と安全衛生責任者は同じもの」と考えてしまうことがありますが、厳密には役割が異なります。
- 職長:作業中の労働者を直接指導・監督する立場
- 安全衛生責任者:関係請負人として、統括安全衛生責任者との連絡や作業間の調整などを担う立場
同じ人物が両方を担当することはありますが、職長としての役割と安全衛生責任者としての役割を分けて理解することが重要です。
安全衛生責任者に必要な教育
安全衛生責任者になるための特定の資格は定められていませんが、安全衛生責任者として適切に職務を行うための教育が重要です。
厚生労働省は、初めて安全衛生責任者として業務に従事する場合や、その後おおむね5年ごと、または機械設備等に大幅な変更があった場合に、能力向上を図るための教育・講習を実施するよう求めています。
職長・安全衛生責任者教育
建設業では、安全衛生責任者に職長が選任されることが多いため、「職長・安全衛生責任者教育」が重要になります。
教育では、職長・安全衛生責任者として労働災害を防止するために必要な知識や、労働者への指導・監督、リスクアセスメントなどについて学びます。
職長・安全衛生責任者教育に関する情報はこちら
おおむね5年ごとの能力向上教育
安全衛生責任者については、初任時だけでなく、職務に従事するようになってからおおむね5年ごと、または機械設備等に大幅な変更があったときに、能力向上教育に準じた教育を受けさせるよう求められています。
教育では、労働災害防止、労働者への指導・監督、危険性・有害性の調査、災害事例研究や危険予知活動など、現場で役立つ内容を学びます。
安全衛生責任者の選任が不要な場合
安全衛生責任者は、すべての事業場やすべての建設現場で選任するものではありません。
安全衛生責任者の選任義務は、特定元方事業者が統括安全衛生責任者を選任する必要がある現場において、関係請負人に生じるものです。
そのため、「従業員数が少ないから安全衛生責任者は不要」と単純に判断するのではなく、工事の種類、現場の規模、元請・下請の関係などを確認する必要があります。
選任義務の有無が判断しにくい場合は、労働基準監督署などに確認するとよいでしょう。
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安全衛生責任者に関するよくある質問
最後に、安全衛生責任者に関するよくある質問を解説します。
安全衛生責任者になるための資格は必要ですか?
安全衛生責任者になるための特定の資格・免許は、労働安全衛生法上定められていません。ただし、安全衛生責任者として適切に職務を行うため、職長・安全衛生責任者教育などの教育を受けることが求められています。
安全衛生責任者は誰が選任しますか?
関係請負人、つまり下請事業者が選任します。選任後は、特定元方事業者に対して遅滞なくその旨を通報する必要があります。
安全衛生責任者と職長は同じですか?
同じではありません。ただし、建設業では職長が安全衛生責任者を兼任するケースが多くあります。職長は作業員を直接指導・監督する立場で、安全衛生責任者は統括安全衛生責任者との連絡や作業間の調整などを担います。
安全衛生責任者は何をする人ですか?
主な職務は、統括安全衛生責任者との連絡、連絡事項の関係者への伝達、自社に関係する事項の実施管理、作業計画の調整、混在作業による危険の確認、他の請負人との作業間の連絡・調整などです。
安全衛生責任者は5年ごとに講習を受ける必要がありますか?
厚生労働省は、初任時に加えて、おおむね5年ごと、または機械設備等に大幅な変更があったときに、能力向上教育に準じた教育を実施するよう求めています。
まとめ|安全衛生責任者は現場の連携を担う重要な役割
安全衛生責任者は、一定の建設現場などにおいて、関係請負人が選任する安全衛生管理上の担当者です。
主な職務は、統括安全衛生責任者との連絡、関係者への情報共有、作業計画の調整、混在作業による危険の確認、他の請負人との連絡・調整などです。
安全衛生責任者になるための特定の資格はありませんが、職長・安全衛生責任者教育などを通じて、安全衛生管理に必要な知識を身につけることが重要です。また、厚生労働省は、おおむね5年ごとなどに能力向上教育に準じた教育を実施するよう求めています。
特に建設現場では複数の事業者が同時に作業するため、「自社の作業だけを見る」のではなく、現場全体の作業との関係を把握し、関係者間の連絡・調整を徹底することが安全衛生管理のポイントです。
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