解体工事では、建物を取り壊す際に木くず、がれき類、金属くずなどの産業廃棄物が発生します。これらを処理業者へ委託する場合に必要になるのが、産業廃棄物管理票(マニフェスト)です。
マニフェストは、産業廃棄物が「どこから排出され、誰が運搬し、どこで処分されたのか」を確認するための仕組みです。不法投棄などの不適正処理を防ぎ、排出事業者が委託した産業廃棄物の処理状況を把握することを目的としています。
本記事では、解体工事におけるマニフェストについて、誰が交付するのか、どのような流れで使用するのか、保管期間や確認すべきポイントなどを分かりやすく解説します。
解体工事のマニフェストとは?

マニフェストとは、正式には「産業廃棄物管理票」と呼ばれる書類です。
解体工事などで発生した産業廃棄物の処理を他の事業者に委託する場合、排出事業者はマニフェストを使用して、廃棄物が適正に処理されたことを確認する必要があります。
マニフェストには、廃棄物の種類や数量、収集運搬業者、処分業者などの情報を記録します。収集運搬や処分が終了すると、それぞれの処理段階について報告が行われるため、廃棄物が最終処分まで適正に処理されたかを確認できます。
マニフェスト制度は、産業廃棄物の流れを把握し、不法投棄などの不適正処理を防止するための重要な仕組みです。
解体工事では誰がマニフェストを交付する?
解体工事で特に注意したいのが、誰がマニフェストを交付するのかという点です。
建設工事では、原則として発注者から直接工事を請け負った元請業者が産業廃棄物の排出事業者となります。
そのため、施主が自らマニフェストを交付するのではなく、原則として元請業者が排出事業者としてマニフェストの交付・管理を行います。
また、実際の解体作業を下請業者が行っている場合でも、建設工事における排出事業者の扱いには請負形態などによる例外があります。工事の契約形態によって扱いが異なる場合があるため、個別の工事については関係法令や自治体のルールを確認することが重要です。
マニフェスト制度の目的
マニフェスト制度の主な目的は、産業廃棄物が適正に処理されたことを確認することです。
- 産業廃棄物の処理の流れを把握する
- 不法投棄などの不適正処理を防止する
- 委託した廃棄物が適正に処理されたことを確認する
- 排出事業者としての処理責任を果たす
マニフェストは単なる書類上の手続きではなく、排出事業者が廃棄物の処理状況を確認するための仕組みです。
解体工事で発生する産業廃棄物とマニフェスト
解体工事では、建物の構造や使用されている建材などによって、さまざまな産業廃棄物が発生します。
- 木くず
- がれき類
- 金属くず
- ガラスくず・コンクリートくず・陶磁器くず
- 廃プラスチック類
- その他の産業廃棄物
産業廃棄物の種類によって処理方法や委託先が異なるため、解体工事では発生する廃棄物を適切に分別し、それぞれの処理方法を確認することが重要です。
また、解体工事では石綿(アスベスト)を含む建材など、特別な対応が必要となる廃棄物が発生する場合があります。通常の産業廃棄物とは異なる規制が適用される場合があるため、事前調査や適切な処理が必要です。
紙マニフェストの仕組みと流れ
紙マニフェストを使用する場合、複写式の管理票を使って産業廃棄物の処理状況を確認します。
基本的な流れは、排出事業者から収集運搬業者、処分業者へ廃棄物が引き渡され、処理が完了すると各段階の報告が排出事業者へ戻ってくるというものです。
- 排出事業者がマニフェストを交付する
- 収集運搬業者が廃棄物を運搬する
- 運搬終了後、運搬終了の報告が行われる
- 処分業者が廃棄物を処分する
- 処分終了後、処分終了の報告が行われる
- 最終処分が終了したことを確認する
このように、マニフェストを確認することで、産業廃棄物がどの段階まで処理されたのかを把握できます。
マニフェストの主な票
紙マニフェストには複数の票があり、それぞれ異なる役割を持っています。
- A票:排出事業者の控え
- B1票:収集運搬業者の控え
- B2票:運搬終了を確認するための票
- C1票:処分業者の控え
- C2票:処分終了を確認するための票
- D票:処分終了を排出事業者が確認するための票
- E票:最終処分終了を排出事業者が確認するための票
なお、実際のマニフェストの運用や票の扱いは、委託する処理の形態によって異なる場合があります。実際に使用する様式や運用方法については、関係機関の最新情報を確認しましょう。
解体工事のマニフェストで確認すべきポイント
解体工事でマニフェストを適切に管理するためには、単に書類を受け取るだけではなく、記載内容や処理状況を確認することが重要です。
廃棄物の種類・数量が正しく記載されているか
まず確認したいのが、実際に発生した産業廃棄物とマニフェストの記載内容が一致しているかです。
廃棄物の種類や数量などに誤りがあると、適正な処理が行われたかどうかを正しく確認できません。解体工事で発生する廃棄物を適切に分別し、マニフェストの内容と照合することが大切です。
収集運搬業者・処分業者が適切か
マニフェストには、産業廃棄物を運搬する業者や処分する業者の情報が記載されます。
委託先が適切な許可を取得しているか、契約した業者とマニフェストに記載された業者が一致しているかなどを確認しましょう。
処理終了の報告が行われているか
マニフェストは交付した時点で完了するものではありません。
運搬終了、処分終了、最終処分終了などの報告を確認し、委託した産業廃棄物が適正に処理されたことを確認する必要があります。
マニフェストの返送期限と保管期間
紙マニフェストでは、処理終了の報告を一定期間内に確認する必要があります。
B2票・D票の確認期限
運搬終了や処分終了の報告については、原則として交付の日から90日以内に確認する必要があります。
特別管理産業廃棄物については、確認期限が60日以内となります。
E票の確認期限
最終処分終了の報告については、原則として交付の日から180日以内に確認する必要があります。
期限内に処理終了の報告がない場合、排出事業者は処理状況を確認し、必要な措置を講じる必要があります。
マニフェストの保管期間
紙マニフェストを使用した場合、排出事業者にはマニフェストの写しを5年間保存する義務があります。
保存したマニフェストは、産業廃棄物が適正に処理されたことを確認するための重要な記録となります。工事ごとに整理し、必要なときに確認できる状態で保管しておきましょう。
電子マニフェストとは?
電子マニフェストとは、紙のマニフェストに記載していた情報を電子化し、排出事業者、収集運搬業者、処分業者の間でネットワークを通じて管理する仕組みです。
公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが情報処理センターとして電子マニフェストシステムを運営しています。
電子マニフェストのメリット
- マニフェスト情報を電子データで一元管理できる
- 処理終了の報告をシステム上で確認できる
- 紙の紛失や破損のリスクを減らせる
- マニフェストの検索・確認がしやすい
- 事務処理の効率化につながる
特に解体工事のように、工事ごとに複数の廃棄物が発生する場合は、電子化によってマニフェスト情報を管理しやすくなります。
紙マニフェストと電子マニフェストの違い
- 紙マニフェスト:紙の管理票を使って各処理段階を管理する
- 電子マニフェスト:マニフェスト情報を電子データで管理する
どちらも産業廃棄物の処理状況を把握するための制度ですが、電子マニフェストでは情報をデータとして管理できるため、事務処理の効率化や情報の共有がしやすいというメリットがあります。
公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター
解体工事で信頼できる業者を選ぶポイント
解体工事を依頼する際は、工事費用だけでなく、産業廃棄物を適正に処理できる体制が整っているかも確認しましょう。
廃棄物の処理方法を説明できるか
解体工事でどのような廃棄物が発生し、どのように処理するのかを説明できる業者か確認しましょう。
見積書に工事費だけでなく廃棄物処理に関する費用が適切に含まれているかを確認することも重要です。
マニフェストについて説明してくれるか
マニフェストについて質問した際に、制度や処理の流れを分かりやすく説明してくれるかも業者選びのポイントです。
工事後に処理終了の確認方法やマニフェストの写しなどについて、あらかじめ確認しておくと安心です。
廃棄物処理を下請業者任せにしていないか
建設工事では、原則として元請業者が排出事業者として廃棄物の適正処理について責任を負います。
そのため、元請業者が廃棄物処理を下請業者に任せきりにするのではなく、処理業者の選定や委託契約、マニフェストの管理まで適切に行っているかを確認することが大切です。
解体工事に関する記事はこちら
解体工事のマニフェストに関するよくある質問
解体工事では必ずマニフェストが必要ですか?
解体工事で発生した産業廃棄物の処理を他の事業者へ委託する場合、原則としてマニフェストまたは電子マニフェストを使用します。
ただし、マニフェスト制度は産業廃棄物を他人に委託して処理する場合に適用される制度です。一般廃棄物や自己処理など、制度の対象外となるケースもあります。
施主がマニフェストを作成する必要はありますか?
原則として、解体工事の施主がマニフェストを作成するわけではありません。
建設工事では、原則として発注者から直接工事を請け負った元請業者が排出事業者となり、マニフェストの交付などを行います。
マニフェストは何年間保管しますか?
紙マニフェストの場合、排出事業者にはマニフェストの写しを5年間保存する義務があります。
マニフェストの処理終了報告が届かない場合はどうしますか?
所定の期間内に運搬終了や処分終了などの報告がない場合、排出事業者は処理状況を確認し、必要な措置を講じる必要があります。
マニフェストを交付した後も、処理が完了するまで適切に管理することが重要です。
電子マニフェストにすると何が変わりますか?
電子マニフェストでは、紙の管理票ではなく電子データでマニフェスト情報を管理します。
処理終了の報告をシステム上で確認できるほか、情報の検索や管理がしやすくなるため、マニフェストに関する事務作業の効率化につながります。
まとめ
解体工事では、木くずやがれき類、金属くずなど、さまざまな産業廃棄物が発生します。これらの処理を他の事業者へ委託する場合に使用するのがマニフェストです。
マニフェストは、産業廃棄物の排出から運搬、処分、最終処分までの流れを把握し、委託した廃棄物が適正に処理されたことを確認するための重要な制度です。
また、建設工事では原則として元請業者が排出事業者となるため、施主と元請業者の役割を正しく理解しておくことも重要です。
解体工事を依頼する際は、工事費用だけでなく、廃棄物の処理方法やマニフェストの管理体制についても確認し、産業廃棄物を適正に処理できる業者を選びましょう。
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