建設現場において、「全体の工程表はあるが、日々の具体的な指示がうまくいかない」「現場で職人の手待ちが発生している」といった課題に直面している現場監督や工務店の経営者は非常に多くいらっしゃいます。
その原因は、工事全体のスケジュールを示す「全体工程表」だけでは足りず、日々の具体的な作業を管理する「作業工程表」が不足しているからかもしれません。
作業工程表を用いることで、日々の工事計画や進捗状況をリアルタイムに把握でき、現場の伝達ミスや「言った・言わない」のトラブルを根本からなくすことが可能です。
本記事では、モノづくりの現場で欠かせない「作業工程表」の基礎知識から、全体の工程表との違い、無いことによるリスク、そして現場監督の負担を減らすための効率的な作成と運用のコツを徹底解説します。現場の生産性を劇的に上げたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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作業工程表とは?全体の工程表との違い
作業工程表とは、全体の工程表(マスター工程表)を元に、モノづくりの各段階(工程)をさらに細分化し、日々の具体的な作業項目、担当者、時間、使用する資材や重機などを時間軸に沿って配置した詳細な計画表のことです。
現場では、施工管理者(現場監督)が、日々の朝礼・夕礼や職人への指示出し、進捗確認に利用します。
全体の工程表が「工事全体の地図」だとすれば、作業工程表は「今日の具体的なルート図」に相当します。
作業工程表を作成し関係者に共有することで、元請け・下請け業者・職人の全員が、その日に行うべき作業内容、場所、時間を具体的に把握できます。
これにより、現場監督は「手待ち」や「作業のバッティング(干渉)」を未然に防ぎ、現場の安全性を確保しつつ、作業効率を最大化させることができます。
「全体工程表」と「作業工程表」の違い
両者の一番の違いは、管理する情報の「詳細さ(粒度)」と「時間軸」です。
| 項目 | 工程表(全体・マスター) | 作業工程表(詳細) |
|---|---|---|
| 管理レベル | マクロ(全体像、主要工程) | ミクロ(日々の作業、時間単位) |
| 時間軸 | 月単位、週単位 | 日単位、時間単位 |
| 目的 | 全体の工期厳守、リソース確保 | 日々の進捗管理、安全確保、効率化 |
| 内容 | 大分類、中分類、着工・竣工日 | 小分類、作業内容、担当者、資材 |
| 利用シーン | お施主様への報告、全体会議 | 日々の朝礼・夕礼、職人への指示 |
| 作成方法の形式 | ガントチャート、バーチャート、ネットワーク図 | バーチャート、時系列リスト |
作業工程表が無いことによる現場の重大なリスク
小規模な現場などでは、「全体の工程表があるから大丈夫」「職人に口頭で指示すれば伝わる」と作業工程表を作成しないケースもありますが、作業工程表がない現場は大きなリスクを抱えることになります。
日々の作業指示があいまいになり、現場の伝達ミスが多発します。
「今日、どの業者にどの作業をしてもらうか」が明確でないため、現場で手待ちが発生したり、逆に複数の業者が同じ場所で作業しようとしてバッティング(干渉)し、手戻りや安全上の問題が生じる恐れもあります。
さらに、全体の進捗とのズレに気づくのが遅れ、工期直前になって突貫工事が発生したり、無駄な残業代(労務費)がかさんだりするかもしれません。
昨今の建設業界で厳しく問われている「2024年問題(時間外労働の上限規制)」に対応するためにも、作業工程表による日々の進捗管理は不可欠です。
作業工程表を作成・運用する実務的な4つのメリット
なぜ忙しい合間を縫ってまで作業工程表を作る必要があるのでしょうか。
ここでは、モノづくりの現場において作業工程表が果たす「4つの重要な役割」について解説します。
1. 日々の進捗を正確に管理し、工期を守る
作業工程表の最も根本的な役割は、日々の作業が計画通りに進んでいるかを確認することです。
細かい作業工程や必要な工数が可視化されているため、「今日、予定に対して進んでいるのか遅れているのか」を常に把握できます。
遅れが生じている場合でも、作業工程表があればリカバリー策を素早く打つことができ、全体の工期を守ることにつながります。
2. 人員・機材・資材を最適化し、効率を最大化する
作業工程表を活用することで、無駄のないスケジュール管理や人員の配置(山積み・山崩し)が可能になります。
「明日、誰が何の作業をするか」が明確になるため、職人の手空き時間や無駄な待機時間をなくすことができます。作業効率が向上すれば生産性が高まり、結果的に工期の短縮にも繋がります。
3. 現場のバッティングを回避し、安全を確保する
建設現場では、天候不良、資材の搬入遅延、他業者の作業の遅れなど、トラブルが日常茶飯事です。
誰がいつ、どこで作業するかを見える化することで、作業のバッティングを避け、重機と人が接触するリスクなどを減らすことができます。
精度の高い作業工程表があれば、イレギュラーなトラブルが発生しても、その日の作業を組み替えるなどの対応がスムーズになります。
4. 無駄なコスト(労務費・現場経費)を削減し利益を残す
作業工程表は、コスト削減にも直結します。
計画通りに作業が進むことで、余分な残業代(労務費)や、レンタル機材・仮設足場の延長費用(現場経費)などを削減できます。
行き当たりばったりの手配ではなく、作業工程表に基づいた計画的な人員・資材手配を行うことが、赤字工事を防ぎ利益(粗利)を確保する絶対条件です。
現場監督の負担を減らす!作業工程表の書き方・5つの手順
ここでは、最も一般的な「バーチャート作業工程表」を作る際の、基本的な書き方の手順を紹介します。
エクセルやシステムに入力する前に、まずは以下の5つのステップで計画を整理することが重要です。
- 施工手順(作業項目・WBS)の洗い出し
- 作業日数(人工)の算出(歩掛)
- 人員・機材・資材配置(山積み・山崩し)
- 工程の矛盾チェックと安全予知(KY)
- 作業工程表フォーマット(エクセル等)への落とし込み
STEP1:施工手順(作業項目・WBS)を洗い出す
全体の工程表を書く際は、最初に工事完成までに必要なすべての作業項目を洗い出します。
全体の工程表よりも細かく、業者や職人が変わる単位、作業スペースが変わる単位で、具体的に書き出すことが重要です(これをWBS:作業分解構成図と呼びます)。
STEP2:作業日数(人工)を算出する(歩掛)
洗い出した各作業項目に対し、それぞれ「何人の職人で」「何日かかるか」を算出します。
自社の歩掛(生産性の基準)データや、現場の環境、投入できる職人のスキルを考慮して、現実的な日数を設定します。
STEP3:人員・機材・資材配置(山積み・山崩し)
算出した日数を、全体の期間の中にパズルのように当てはめていきます。
「どの専門業者にいつ、何人入ってもらうか」「どの重機をいつ使用するか」「資材はいつ、どこに搬入するか」を決定します。特定の日に人員が集中しないよう調整(山積み・山崩し)を行います。
STEP4:工程の矛盾チェックと安全予知(KY)
計画したスケジュールに、矛盾や問題がないかを確認します。
「基礎が終わらないと建て方に入れない」といった前後関係に矛盾がないか、あるいは「同じ日に別の業者が重なって作業スペースや重機を取り合わないか」をチェックします。
また、作業のバッティングによる転落事故などのリスクを予知(KY)し、安全対策を組み込みます。
STEP5:フォーマット(エクセル等)へ落とし込み
スケジュールが固まったら、エクセルや工程管理システムのフォーマットへバー(線)を引いて完成させます。
システム導入(DX)による生産性向上
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建設・工務店で使われる作業工程表の種類
作業工程表にも、表現方法や目的によって様々な種類があります。
プロジェクトの内容にあったものを選択することが大切です。
| 種類 | 分類 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| バーチャート工程表 | 横線式 | 作成が簡単 工程が分かりやすい |
タスク同士の関係性が分かりづらい |
| ガントチャート工程表 | 横線式 | 作成が簡単 工程が分かりやすい |
タスク同士の関係性が分かりづらい |
| ネットワーク工程表 | ネットワーク式 | 作業同士の関連性が明確 | 作成や読み取りに専門知識が必要 進捗度が分かりづらい |
| グラフ式工程表・曲線式工程表 | グラフ式 曲線式 |
作業間の関連性が分かる | 作成方法が複雑 |
1. バーチャート(日単位の管理に最適)
縦軸に作業項目(タスク)、横軸に日付(時間)を記入し、バー(横棒)の長さで作業期間を表す工程表です。
作業日数(期間)が一目でわかるため、日々の現場管理で最も普及しています。
- 簡単に作れて、誰が見てもスケジュールが把握しやすい。
2. ガントチャート(進捗管理に特化)
縦軸に作業項目(タスク)、横軸に達成率(%)を記入し、予定と実績の進捗を管理する工程表です。
建設現場ではバーチャートと混同されることも多いですが、「何%終わっているか」の可視化に優れています。
- 簡単に作れて、誰が見てもスケジュールが把握しやすい。
(バーチャートとガンチャートの呼び方の堺は曖昧だったりします。)
3. ネットワーク工程表(大規模工事向け)
タスクの繋がりや順序が分かるように、番号や矢印等の記号を用いて、作業内容や前後関係を論理的に明確化したタイプのもの。
複雑なマンション建設などで威力を発揮します。
- 複雑な仕事内容でも作業同士の関連性が明確になる。
作業工程表に関するよくある質問(FAQ)
作業工程表の作成や運用に関して、現場からよく寄せられる質問をまとめました。
- 作業工程表はどのくらいの頻度で更新すべきですか?
-
原則として毎日更新し、翌日の朝礼で職人に正確な指示を出せる状態にしておくのが理想です。天候や前工程の遅れなどで予定が変わった場合は、その都度リアルタイムに修正し、関係者に共有する必要があります。
- エクセルでの作成に限界を感じています。ソフト導入の目安は?
-
同時進行の現場が複数になり、職人への共有やスケジュールの修正作業(セルの塗りつぶしなど)に毎日何時間も取られていると感じたら、専用ソフトの導入時です。特にスマホで職人とリアルタイム共有したい場合は、クラウド型のシステムが不可欠です。
中小企業向け施工管理システム「アイピア」で作業工程表作成を効率化
記事内でも触れた通り、現場監督の事務負担を減らし、生産性を向上させるためには、ITツールの活用がカギとなります。しかし、大手向けの多機能なシステムは高額で使いこなせない、という中小建築・工務店の方も多いのではないでしょうか。
中小企業向けクラウドERP「アイピア」は、ITに不慣れな方でも、直感的な操作で見やすい工程表(バーチャート)を作成できます。エクセルのような操作感で、マウス一つでスケジュールの変更(バーの伸縮や移動)が完了します。
最大の特徴は、見積・実行予算と工程表が連動している点です。一度入力したデータを活用して工程表を作成できるため、二重入力の手間をなくし、事務作業を大幅に効率化します。作成した工程表はクラウド上で職人と共有でき、スマホからも確認可能です。
建築業向けの管理システム「アイピア」
アイピアは建築業に特化した一元管理システムであり、顧客情報、見積情報、原価情報、発注情報など工事に関する情報を一括で管理できるため、情報集約の手間が削減されます。
さらに、アイピアはクラウドシステム。外出先からでも作成・変更・確認ができます。
アイピアはここが便利!6つのポイント
まとめ:作業工程表は現場の生産性と利益を守る羅針盤
作業工程表は、全体の工程表を日々の具体的なアクションに落とし込むための「現場の羅針盤」です。手間はかかりますが、作成・運用することで、伝達ミスによる手戻り、手待ち時間をなくし、現場の安全と工期、そして会社の粗利を守ることにつながります。
まずは本記事で紹介した手順で、手書きやエクセルから始めてみるのも良いでしょう。もし、作成負担が大きいと感じたり、よりリアルタイムな共有を目指すなら、中小企業でも導入しやすい施工管理システム「アイピア」のようなツールの活用を、ぜひこの機会にご検討ください。現場のDXを進め、少ない人数でも確実に利益を確保できる強い組織を作りましょう。
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