現代のビジネス環境では、効率的な業務の進行と組織の持続可能性が求められる中、「属人化」や「スペシャリスト」という概念が重要視されています。
これらは似ているようでありながら、組織に与える影響は大きく異なります。
本記事では、属人化とスペシャリストの違いに加え、属人化がどのように発生し、組織にどのようなリスクをもたらすのかについて解説します。
また、属人化のメリットや、それを防ぐための具体的な方法についても考察します。
属人化とは?
「属人化」という言葉は、特定の業務や知識が特定の個人に依存してしまう状態を指します。
これは、組織やプロジェクト内での知識やスキルが共有されず、その個人がいなければ業務が進まなくなる状況を意味します。
属人化が進むと、個人に依存するリスクが高まり、組織全体の効率性や持続可能性に悪影響を及ぼすことがあります。
属人化に関する記事はこちら
スペシャリストとは
「スペシャリスト」は、特定の分野や業務において高度な専門知識やスキルを持っている人のことを指します。
スペシャリストは、その特定分野での深い理解と経験を活かして、問題解決やアドバイスを提供し、効率的に業務を進めることが期待されます。
属人化とスペシャリストの違い
ここまで、属人化とスペシャリストそれぞれの意味を紹介してきました。
この章では、これらの違いについてご紹介します。
定義の違い
- 属人化: 業務や知識が特定の個人に依存してしまい、その人以外が業務をうまく進められない状態。業務がその人に「属している」ため、その人がいなくなると業務が停滞するリスクがある。
- スペシャリスト: 特定の分野において高度な専門知識やスキルを持ち、その分野において他者をリードできる存在。知識や経験が深いプロフェッショナルであり、特定の業務や問題に対して高い付加価値を提供する。
組織への影響
- 属人化: 組織全体に悪影響を与える可能性が高い。個人に業務が集中し、他のメンバーがその仕事を引き継げなければ、業務効率が低下し、リスク管理が難しくなる。
- スペシャリスト: 組織にとってプラスの存在となることが多い。専門性が高いことから、特定の課題を迅速に解決し、他のメンバーに対して指導やサポートを行うことができる。
知識の共有の観点
- 属人化: 知識やスキルが共有されない。個人が持っているノウハウが組織内でオープンになっていないため、業務の透明性が欠如し、他の人がその業務を代行できない。
- スペシャリスト: 専門知識を持ちながらも、知識を他のメンバーと共有することができる。良いスペシャリストは、自身のスキルや知識をチームに伝えることで、組織全体の成長を促進する。
代替可能性
- 属人化: 代替が非常に困難。特定の人がその業務に対する唯一の知識を持っているため、その人がいなくなると業務が停滞してしまう。
- スペシャリスト: 代替が可能な場合がある。彼らの知識は専門的であるが、適切なプロセスや教育が行われていれば、他の人がその業務を引き継ぐことが可能。
リスクと価値の違い
- 属人化: 組織にとってリスク要因であり、業務がその個人に依存することで組織全体の脆弱性が高まる。
- スペシャリスト: その人の専門性が組織にとって価値となり、リーダーシップや問題解決能力が組織の競争力を高める。適切な環境では、スペシャリストはリスクではなく、むしろ競争優位性をもたらす。
属人化の原因は?
ではなぜこうまで悪影響を及ぼす属人化が横行してしまうのでしょう?
属人化が発生・継続してしまう理由として、以下のようなことがあげられます。
自分にしか出来ない仕事を守ろうとする
- ミスをしてもばれにくい
- もともと標準化する意識・仕組みがない
- 忙しさから、引き継ぎの時間を設けられない
- 個々の能力に差異がありすぎるため、依頼先が一か所に集中してしまう
それらは個人の動機によるものや仕事場の環境面など様々ですが、多くの場合改善する余地のある事柄ばかりであると言えます。
さらに、冒頭でもお伝えしたとおり「属人化」=悪 とは限らないのです。
属人化することによるメリットもご説明します。
属人化の脅威とは
まずは属人化がもたらす脅威についてピックアップしてみましょう。
業務効率の低下
特定の人しか知識・スキルを持っておらず、ブラックボックス化して周囲が把握できない状態。
そのため、特定者が退職、あるいは病気やケガによる長期不在となった場合、すべての業務がストップ。
業務効率の低下、会社の信頼の損失などのリスクが発生。
業務量過多によるボトルネックの発生
組織内のある業務が出来る人間がたった1人の場合、その者への業務が1点に集中。
業務量が増え、他の箇所への悪影響が生まれる。
一部のフロー内で業務が滞ることをボトルネックといい、
それらは多くの場合、他者からの不信感を増長させたり業務スピードを低下させたりする危険性がある。
改善・品質維持が出来ない
他の社員への共有不足により、業務手法に不足や蛇足があったとしても詳しい状況が理解できず、他の社員との比較や、改善が難しい。
そのため、上長からの業務評価の適正値がとれない場合や、
連携してプロジェクトを回すサポート社員が業務品質を確認・担保することが出来ない。
ミスの隠蔽
ある一定の業務をその人に任せているために、その範囲内のミスに気づきにくい。
発覚してからではかなり手遅れになる可能性も。
優秀社員への依存の危険性
1人の優秀な社員への依存により、業績の担保ができなくなるリスク。
例えば優秀な営業マンが1人いたとして、会社業績を彼のみで回している場合、
突然の退職・長期不在により業績悪化する可能性が高くなる。
業績悪化に対してのリスクヘッジを常に考慮しておく必要がある。
社内コミュニケーションの悪化
仕事を囲い込みすることにより、他者との関係性や信頼度に悪影響を及ぼす危険性。
「彼が何をやっているかわからないので仕事を頼みにくい」
「周りは自分の仕事内容を知らないから、聞いても仕方がない」
といったように双方での不満が募り、よりコミュニケーションの過疎化を促進させる恐れがある。
属人化のメリット
個人のスキルアップができる
属人化は特定の仕事に対するスペシャリストを生む。
そのスペシャリストのノウハウが特出すればするほど、
仕事の効率が向上したり、利益や売上の向上に繋がる。
企業のブランド力のアップ
個人のスキルやノウハウの上達は、顧客から見た企業のブランド力アップとなる。
例えば、属人化した知識の豊富な営業マンがいるとすると、
顧客からは「あの人に頼めば間違いない」という信頼を得やすくなる。
つまり、自分にしか出来ない仕事を持たせることで個々の責任感・達成感を感じさせ、
生産性向上・やる気の向上・企業力アップに繋げることができます。
「○○好きの□□がいる」とか、「△△に関しては第一人者の××がいるから大丈夫」といったように、
それぞれの「個」を立たせることで、個性的でかつ人を惹きつける企業にすることも出来ます。
例に挙げるとするならば、雑誌や書籍の編集者、アーティスト、タレント、デザイナー、コピーライター、クリエイティブディレクター、美容師…など。
もともと属人化した世界で生きている人々は、その属性で個の強みを活かしています。
極端な属人化を防ぐ方法
とはいえ、やはり見比べると属人化の脅威はそのままにしていいものでは決してありません。
企業にとっては、属人化のメリットを生かしつつ、極端な属人化にならないような情報を共有できる組織作りが必要になります。
役割分担の見直し
個人の責任範囲をすべての業務において洗い出し、属人化している箇所があれば担当者を複数にするかチーム制にします。
複数名所属させることで情報共有が容易くなり、業務の遂行状態も確認しやすくなります。
業務ノウハウのマニュアル化
業務マニュアルを作成することで、最低限の仕事のノウハウや知識は共有できます。
社内ルールであれば社内wikipediaの作成、業務マニュアル作成するのもいいでしょう。
属人化した社員への意識改革
属人化している人は優秀な人材であり、なくてはならない人材の場合が多いです。
担当の見直しやマニュアル化をすることで自身のやる気の低下をさせてしまうリスクを事前に軽減しておく必要があります。
そのため、属人化している人としっかりとミーティングをして、改革後の評価方法や会社が求めていることについて伝え、
話し合っておくことが非常に大切です。
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まとめ
属人化がもたらす脅威は多くありますが、
その反面個々人のやる気の向上や企業ブランドをもたせるなどのメリットもたくさんあることがわかります。
そのちょうどいいバランスを保つには、企業がしっかりと仕組みを作り、
必要な個所でマニュアル化を進めルールを確立させる必要があります。
属人化と標準化のバランスについて、一度考えてみてはいかがでしょうか?
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