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工事の見積書を作成する、労務費という項目をよく目にすると思います。
しかし、労務費は内訳や計算が複雑で良く分からないという方も多いです。
この記事では、労務費の内訳や人件費との違い、労務費や労務費率の算出方法について詳しく解説します。
特に製造業などでは利益にも大きく影響しますので、ぜひ参考にしてください!
労務費とは
労務費とは、製品を製造するときにかかった人件費のうちの一つです。
言い換えると、労務費は製造部門で働く人に対する費用だと考えると分かりやすいでしょう。
一つの製品を製造する際に発生する労働的なコストを金額に換算した費用ですので、モノづくりを中心とした建設業や製造業などでは大事な指標になります。
労務費の内訳
労務費の内訳は、一般的なものと建設業のもので少し違いがあります。
一般的な労務費では、大きく以下の5つに分類できます。
- 賃金
- 雑給
- 従業員賞与手当
- 法定福利費
- 退職給付費用
それぞれ簡単に説明していきます。
賃金
賃金は、正社員や契約社員に支払う給料を指します。
基本給をはじめ、残業代や休日出勤などによる割増分も含みます。
雑給
雑給は、パートやアルバイトなど非正規労働者に支払う給与を指します。
固定の基本給がない雇用形態の方へ支払う給料で、時給や日給などが該当します。
従業員賞与手当
従業員賞与手当は、企業が給料などにプラスして支払うさまざまな手当を指します。
ボーナスをはじめ、通勤手当や住宅手当、資格手当などが該当します。
法定福利費
法定福利費は、給与支給時に企業が負担する健康保険や厚生年金などの社会保険料額のことです。
退職給付費用
退職金制度がある企業において、勤続年数などに応じて積み立てている金額です。
これに対して、建設業における労務費では、現場で作業をしない事務職員の給料は含まれません。
労務費における二つの種類について
労務費は大きく「直接労務費」と「間接労務費」に分けられます。
さらにその内訳が異なります。
詳しく見ていきましょう。
直接労務費とは
直接労務費とは、工事施工に直接関わる作業員の人件費です。
ただ、作業員の中でも現場を監督する立場にある人物は、人件費に含まれません。
交通費や食事代は含まれませんが、日当や残業分の割増賃金が該当します。
間接労務費とは
間接労務費とは、現場で直接作業に携わらない人の人件費です。
事務員や営業職員をはじめ、現場監督や現場事務員の人件費も間接労務費に含めます。
また、間接労務費には「現場管理費」と「一般管理費」が含まれるという点も特徴です。
現場管理費とは?
現場管理費とは、工事現場を維持管理するための費用のことです。
先ほど直接労務費には含めないと説明した作業員の交通費や食事代は、現場管理費に含まれます。
現場事務所の光熱費や通信費をはじめ、作業員以外の現場管理者の人件費や現場の損害保険・火災保険料も現場管理費に含まれます。
一般管理費とは?
一般管理費とは、企業の経営維持に必要な費用のことです。
本社や事務所の光熱費や通信費、事務職員の給料や保険料、固定資産税や広告料などが該当します。
労務費と人件費の違いとは
労務費は、人件費のうちの1つです。
そもそも人件費とは、給与や賞与として企業が従業員に支払う経費のことを言います。
人件費は、以下のように「労務費・販売費・一般管理費」の三つで構成されています。
- 労務費
製品の製造に直接かかる費用 - 販売費
製品の販売や営業などに直接かかる費用 - 一般管理費
会社の経営など全般の管理業務にかかる費用
このように、人件費の中の1つに労務費が分類されているのです。
労務費の算出方法
労務費の算出方法は、直接労務費と間接労務費によってそれぞれ変わってきます。
また、計算する際に歩掛という考え方を知っておかないと、不利益が生じてしまう場合があるので注意が必要です。
それではまず、直接労務費の算出方法から解説していきましょう。
直接労務費の算出方法とは
製造業では、機械工や組立工、試運転工など製品の生産に直接関わっている人達を「直接工」と呼びます。
直接労務費では、そのような直接工が作業を行っている時間へのお金を計算します。
計算式は以下の通りです。
賃率=直接工の賃金÷製品製造の直接作業時間
直接労務費=賃率×製品製造にかかる時間
このように、直接労務費ではまず「賃率」の計算が必須です。
工場では、一人の従業員が複数の生産に関わっている場合が少なくないですよね。
そのため、直接作業時間1単位当たりの賃金を「賃率」として計算することで、直接労務費の計算を正確に行えるのです。
間接労務費の算出方法とは
間接労務費の計算は、直接労務費ほど複雑ではありません。
対象となる項目の金額を足し合わせていくことで、間接労務費を求めることが可能です。
また、以下のように労務費から直接労務費を引いた計算でも同じ結果になります。
間接労務費=労務費ー直接労務費
この二つの方法のうち、ご自身が計算しやすいと感じる方法を使うと良いでしょう。
歩掛について
歩掛(ぶがかり)とは、一つの作業ごとにかかる手間を数値化したものです。
では、このような手間はどのように数値化しているのでしょうか。
毎年、国土交通省が建設工事をはじめ電気工事や機械設備工事などそれぞれにおける標準歩掛を制定しています。
歩掛ではこの数値を参考にして、各工事現場や材料、施工方法などによって調整し用いているのです。
このような歩掛は、労務費の算出方法において重要です。
なぜなら、時間数だけで計算してしまうと、不利益が生じるリスクがあるからです。
例えば、以下のようなケースを考えてみてください。
- ケース1:難易度の差
「難易度は低いのに10時間もかけて行う工事」と、「難易度が高くても5時間で終わらせた工事」を比較してみましょう。
時間数だけで計算してしまうと、素速く工事を終わらせた難易度の高い工事の方が安くなってしまいます。 - ケース2:技術力の差
「熟練の職人がいるため2時間で終わる工事」と、「技術力の低い新人なので4時間かかる工事」を比較してみましょう。
技術の高い職人には高い費用をかけても良いはずですが、時間数だけで計算すると安くなってしまいます。
このように、労務費を算出するにあたって時間数だけで計算すると不利益が生じる場合があります。
そのため、歩掛が重要になるのです。
外注した場合の費用
建設工事をしていくうえで、自社の従業員ではなく、一人親方や下請業者などに外注することも少なくないですよね。
この際の人件費は、労務費には含まれません。
外注した場合の費用は外注費または労務外注費という項目になります。
労務費をはじめとする工事原価に関する記事はこちら
労務費率の算出方法
労務費率とは、建設業など特定の業種で労災保険料を計算する際に用いられる概念です。
特定の業種において、労災保険料を計算する際に、労務費率を請負金額に対する賃金総額の割合を示す数値として用いられます。
なぜ、建設業などの一部の業種でこのような数値を用いる必要があるのでしょうか。
詳しく解説します。
労災保険料について
そもそも労災保険とはどういう制度なのでしょうか。
建築業をはじめ、様々な業界で働く場合、いつ誰が災害に巻き込まれるかわかりません。
もし従業員が就業中や通勤中に病気・ケガをした場合、会社側が補償しなければならない義務があります。
この義務が制度化されたものを、「労災保険」と呼びます。
労災保険料の求め方
一般的な事業においては、労災保険料は以下の方法で求めます。
一般的な事業の労災保険料 = 賃金総額 × 労災保険率
これに対して、建設業における労災保険料を求める式は以下の通りです。
建設業における労災保険料 = 請負金額×労務費率 × 労災保険率
なぜ、このように一般的な事業と建設業で労災保険料の求め方が違うのでしょうか。
建設業では、ジョイントベンチャーや元請け、下請け、孫請けなど複数の請負によって工事が行われるケースが多いです。
そのため、労働者へ支払われる賃金総額の算定が簡単ではありません。
そこで、算定を容易にして労災保険料をスムーズに納付できるように、特例が設けられています。
この特例により、賃金総額の代わりに「請負金額×労務費率」を用いているのです。
労務費率について
労務費率は、厚生労働省の各工事の種類によって決めています。
3年ごとに公表される労務費率調査にもとづき、実際の建設事業の請負金額と賃金総額の割合を鑑みて決定されています。
工事内容による労務費率は以下の通りです。
工事内容 | 労務費率 |
---|---|
水力発電施設、ずい道等新設事業 | 19% |
道路新設事業 | 19% |
舗装工事業 | 17% |
鉄道または軌道新設事業 | 24% |
建築事業(既設建築物設備工事業を除く) | 23% |
既設建築物設備工事業 | 23% |
機械装置の組立てまたは据付けの事業・組立て又は取付けに関するもの | 38% |
機械装置の組立てまたは据付けの事業・その他のもの | 21% |
その他の建設事業 | 24% |
このように、労務費率は実際の工事の内容によって違いがあります。
また更新されることがあるので、常に最新の情報を確認して適切な労務費率を用いることが必要です。
建設工事の分野でもさまざまな工事が行われるため、行っている事業の種類を確認して正しい労務費率を用いましょう。
建設業の保険・労務管理に関する記事はこちら
まとめ
今回の記事では、労務費について解説してきましたがいかがだったでしょうか。
労務費とは、人件費のうち製品を製造するときにかかった費用についてを言います。
労務費は大きく「直接労務費」と「間接労務費」に分けることができ、それぞれの労務費の算出方法についても違いがあります。
しかし、直接労務費や労務費率では少し計算が複雑で難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
特に建設業界ではややこしい計算も多くなってきがちです。
このようなややこしい労務費を効率的に管理したいのであれば、建設業界専用の会計ソフトを導入することがおすすめです。
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