建設業と聞くと、工事現場で活躍する作業員や職人を連想する方が多いのではないでしょうか。
しかし、建設業の仕事は、工事現場での業務だけではありません。
今回は、建設業の仕事の種類を部門別にご紹介します。
それぞれの仕事内容とあわせて、業界の今後についても解説します。
建設業界で働きたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
建設業とは
そもそも建設業とは、どのような業種なのでしょうか。
建設業の職種を紹介する前に、確認しておきましょう。
建設業とは、住宅などの建築物をはじめ、道路やダムなどのインフラ設備をつくる業種です。
また、これらの施設・設備の点検や管理を行うことも、建設業の業務です。
建築業との違い
建設業と建築業はよく似ていますが、両者は異なる意味を持っています。
建築基準法によれば、「建築」とは次の内容を指します。
建築 建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転すること
引用元:建築基準法第二条十三項
つまり建築業とは、家屋やマンション、ビルなどの建築物に関わる業種です。
すでに確認した通り、これらの建築物に加え、インフラ設備を手掛けるのが建設業です。
そのため、建築業は建設業に含まれると考えることができます。
建設業の職種
建設業の職種は、次の7部門に分けられます。
- 施工管理部門
- 設計部門
- 技術部門
- 営業部門
- 事務管理部門
- 情報システム部門
- 安全部門
それぞれの仕事内容を以下で確認しましょう。
建設業法に関する記事はこちら
施工管理部門
施工管理部門とは、様々な工事現場で施工管理を行う部門です。
施工管理の業務は多岐にわたりますが、特に重要なのは次の4つの業務です。
- 工程管理
- 品質管理
- 原価管理
- 安全管理
複数の工事を並行して管理するため、施工管理を行うには、スケジュール管理やマネジメントの能力が必要です。
また、現場の作業員や発注元と連携できるコミュニケーション能力やリーダーシップも求められます。
施工管理部門は、さらに次の3つの工事業種に分けられます。
- 建築
- 土木
- 設備
以下で詳しく確認しましょう。
建築
建築分野の施工管理の対象は、住宅やマンション、教育文化施設や医療福祉施設、商業施設など多岐にわたります。
これらの建築物の設計から竣工後のメンテナンスまで、施工全体の管理を行います。
最近では、BIMやCIMとよばれる3次元立体モデルを活用するなど、業務効率化が目指されています。
建築施工管理の資格
建築施工管理に関する資格には、「建築施工管理技士」があります。
建築施工管理技士は1級と2級の2種類があり、担当できる建物の規模が異なります。
土木
土木分野の施工管理の対象は、道路や鉄道、電力や空港・港湾などのインフラです。
これらの整備に関わる多様な工事の施工管理を担います。
対象となる主な工事の詳細は、次の通りです。
- 道路工事の場合:舗装工事、橋梁工事、擁壁工事、トンネル工事、法面工事など
- 河川工事の場合:水門工事、堤防工事、ダム工事など
- 海岸工事の場合:防波堤工事、護岸工事など
土木施工管理の資格
土木施工管理に関する資格には、「土木施工管理技士」があります。
土木施工管理技士も1級と2級の2等級があり、従事可能な業務の範囲が異なります。
設備
設備分野の施工管理の対象は、電気やガス、給排水、空調などの設備です。
建物の構造や顧客のニーズを考慮した最適な設備を選び、メーカーや専門工事会社と連携して工程管理を行います。
工事完成後、設備の点検や修理、取り換えなどを行うことも重要な業務です。
設備施工管理の資格
設備施工管理に関する資格には、以下のようなものがあります。
設計部門
設計部門とは、顧客のニーズをもとに、建物や設備の図面を作成する部門です。
図面を作成する際は、デザイン性のみならず、利便性や機能性、コストなど様々なことを考慮しなければなりません。
また、他社との競争を勝ち抜くためには、自社の技術をアピールすることも重要です。
設計部門は、主に次の3つに分けられます。
- 意匠設計
- 構造設計
- 設備設計
それぞれの業務内容を確認していきましょう。
意匠設計
意匠設計は、建物の構造や外観、間取り、空間などをデザインする仕事です。
顧客の要望をもとに社内の各専門部署と協議し、図面を作成していきます。
見た目の良さだけでなく、施工やメンテナンスの方法、社会情勢、コストなど様々な条件を考慮する必要があります。
また、自社の技術力を図面に織り込むことも重要です。
意匠設計が質の高い図面を仕上げることで、現場は効率的な施工を実現することができます。
構造設計
デザイン性に優れ、過ごしやすい建築物であっても、設備の重さや自然災害などによって安全性が脅かされる場合があります。
こうした要因から建築物を守り、安全性を確保するための設計を行うことが構造設計の仕事です。
意匠設計をもとに、建築基準法を確認しながら、梁や柱の位置を決定します。
もちろん、顧客のニーズから大きく外れないように設計することも重要です。
設備設計
設備設計は、電気や水道、ガス、空調などの設備を適切に配置するための設計を行う仕事です。
設備設計が作成した図面をもとに、施工管理業者がコンセントや配管の配置を決定します。
省エネや環境にやさしい建築への注目が高まる現在、設備設計の仕事は重要度を増しています。
建物内の設備を正しく、安全に使用するには、設備設計の仕事が欠かせません。
設計部門の資格
設計部門で役立つ資格には、次のようなものがあります。
- 一級建築士
- 二級建築士
- 木造建築士
- 構造設計一級建築士
- 設備設計一級建築士
建築士に関する記事はこちら
技術部門
技術部門は、建設業の土台となる部門です。
建設業は、案件ごとに現場の環境や条件が様々に異なります。
機材や技術を用いて、現場に合わせた作業を行うのが技術部門の仕事です。
技術部門は、職人と技術開発の2つに分けられます。
それぞれ詳しく確認しましょう。
職人
職人は、建設の現場で実際に作業にあたる仕事です。
代表的な職人の職種は、次の通りです。
- 土工事職人:ブルドーザーなどの重機を扱う
- とび職人:高所作業を行う
- 鉄筋工:施工図をもとに鉄筋を配置・固定する
- 大工:建物の骨組みや下地を作る
- 左官工:建物の壁や床、塀などにモルタルや漆喰などを塗る
- 塗装工:壁や外壁、屋根などを塗料で塗る
- 配管工:建物内にガスや水道、空調などの配管を設置する
- 電気工事士:建物内外の電気設備を設計・施工する
- 庭師:庭の設計・施工・管理を行う
- 建具師:ドアやふすま、サッシなどの建具を作る
技術開発
技術開発は、現場ごとに適した技術や機材の提案、新技術の開発などを担っています。
職人がなるべく安全に、効率的に作業を行うために欠かせない仕事です。
また、建設業界は人材不足や高齢化、過酷な労働環境が問題視されています。
安全性を確保したうえでこれらの課題を解決するため、多くの企業がDX化を推進しています。
具体的には、次のようなITやAI技術の開発・導入が進んでいます。
- BIMやCIM
- AIロボット:ドローン、作業・運搬ロボットなど
- タブレット端末
- 現場監視カメラ
- 施工管理システム
建設業のDXに関する記事はこちら
営業部門
営業部門は、顧客のニーズを把握して自社の技術や強みをアピールし、受注につなげる部門です。
各部門と連携し、顧客と各部門との間を結ぶ役割も担います。
営業部門は、官公庁営業と民間営業に分かれます。
それぞれの業務内容を詳しくみていきましょう。
官公庁営業
官公庁営業は、公共工事を受注するための営業を行います。
公共工事は、国や自治体が民間の建設業者へ業務を発注する、入札という手段がとられます。
そのため、自治体の情報や他社の動向を調査し、分析することが重要な業務です。
民間営業
民間営業は、一般企業や個人を対象に工事を受注するための営業を行います。
土地の有効活用を検討し、ビルやマンション、商業施設などの建築計画を提案するのが主な仕事です。
建設業の営業に関する記事はこちら
事務管理部門
事務管理部門は、工事以外の事務的な業務を行う部門です。
経理や総務、人事など、業務の内容は多岐にわたります。
基本的に他業種の事務職と同様の仕事ですが、経理業務はやや特殊です。
- 一つの案件にかかる取引金額が大きい
- 工期が月や年度をまたぐことがあり、計上がややこしい
など、建設業の経理業務は一般企業より複雑だといわれます。
そのため、建設業の経理処理に特化した建設業経理士という資格があります。
建設業の経理に関する記事はこちら
情報システム部門
現在、建設業界は業務効率化を実現するため、積極的にDXに取り組んでいます、
DXの一環として導入されたシステムやIT機器の管理や運用を行うのが、情報システム部門です。
システム内の情報管理や更新作業、経営分析ツールを活用したマネジメントなど、情報システム部門の業務はますます重要視されています。
セキュリティ対策のため、社内で独自に管理システムを開発している企業もあります。
建設業におすすめのシステムに関する記事はこちら
安全部門
安全部門は、工事の現場を安全で快適にするため、職場環境の管理・改善を行う部門です。
建設業は、「きつい・汚い・危険」の3Kとよばれるイメージが根強く残っています。
これを払拭し、誰もが働きやすい職場環境を作ることが、安全部門の重要な業務です。
具体的な業務内容は次の通りです。
- 社員への安全教育
- 工事現場における労働災害の防止
- 下請会社や職人との安全面での連携
建設業の安全管理に関する記事はこちら
建設業の将来性
建設業の職種を7部門に分けてご紹介しました。
ここでは、建設業の今後の動向を確認しましょう。
建設業は、他の多くの業界と同じく、新型コロナウイルス感染拡大の影響を少なからず受けました。
しかし、老朽化した建築物の修繕や解体、空き家の増加、2025年の大阪・関西万博に向けたインフラ整備など、建設業の需要は高まっています。
一方で建設業は、人材不足や若者離れといった課題も抱えています。
こうした状況で、今後特に重宝されるのは、どのような職種なのでしょうか。
今後活躍が期待される職種
建設業で今後活躍が期待されるのは、主に次の職種だといわれています。
- 多能工の職人
- IT技術者
理由をそれぞれ確認しましょう。
多能工の職人
建設業の技能者は人手不足のうえ、高齢化が進んでいます。
そのため、複数の種類の工事を担当できる多能工の職人が注目されています。
もちろん、複数の業務をこなせるようになるためには相応の時間がかかります。
しかし、習得した技術は一生使えるものであり、就職や転職にも有利にはたらきます。
IT技術者
深刻な人手不足のなか、建設業ではICT化が進んでいます。
そのため、IT技術に対応できる人材は、どの部門においても重宝される存在です。
IT技術者は、工事現場から事務まで活躍の場が幅広く、自分に合った働き方を選ぶことができるのが特徴です。
建設業が抱える課題に関する記事はこちら
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まとめ
建築業の職種を、7つの部門に分けてご紹介しました。
建設業は人手不足が深刻であり、特に若年の入職者の確保に力を入れています。
多能工の職人やIT技術者は、今後さらに活躍が期待される職種です。
建設業への就職・転職をお考えの方は、ぜひ業界の動向を詳しく調べてみてください。
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