従業員の有給管理は、企業の労務管理において重要な業務の一つです。
特に、年次有給休暇が10日以上付与される従業員については、基準日から1年以内に5日以上の年次有給休暇を取得させることが使用者に義務付けられています。そのため、従業員ごとの有給休暇の付与日や取得状況を正確に把握しておく必要があります。
その際に重要になるのが「年次有給休暇管理簿」です。
年次有給休暇管理簿には、従業員ごとの基準日・取得日数・取得時季などを記録します。紙やExcelで作成することもできますが、従業員数が多い企業や複数の現場を抱える建設業では、管理方法を工夫することが重要です。
この記事では、年次有給休暇管理簿の記載項目、作成方法、保存期間、年5日の取得義務、有給管理を効率化する方法について詳しく解説します。
年次有給休暇管理簿とは?

年次有給休暇管理簿とは、従業員ごとの年次有給休暇について、基準日・取得日数・取得時季を記録した書類です。
年次有給休暇管理簿は、労働基準法施行規則に基づき、使用者が労働者ごとに作成する必要があります。
年次有給休暇管理簿には決められた様式はありません。そのため、必要な事項が記載されていれば、紙・Excel・クラウドシステムなど、自社に合った方法で管理できます。
また、年次有給休暇管理簿は、労働者名簿や賃金台帳とあわせて作成することも可能です。厚生労働省は、必要なときに出力できる仕組みがあれば、システム上で管理することも認めています。
年次有給休暇とは?
年次有給休暇とは、一定の条件を満たした労働者に対して法律上付与される休暇です。
原則として、労働者が雇入れの日から6か月継続して勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した場合、10日の年次有給休暇が付与されます。
| 継続勤務年数 | 付与日数 |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
また、パート・アルバイトなど、所定労働日数が少ない労働者については、勤務日数に応じて比例付与されます。
したがって、「正社員だけ有給管理をすればよい」というわけではありません。パート・アルバイトや有期雇用労働者についても、付与条件を確認して管理する必要があります。
年5日の年次有給休暇取得義務とは?
2019年4月から、法定の年次有給休暇が10日以上付与される労働者について、使用者は基準日から1年以内に5日の年次有給休暇を確実に取得させることが必要になりました。
対象となるのは正社員だけではありません。管理監督者や有期雇用労働者、一定の条件を満たすパート・アルバイトも対象になります。
なお、年5日の取得は「使用者が5日間を一方的に指定する」という意味ではありません。労働者本人による取得、年次有給休暇の計画的付与、使用者による時季指定などによって5日に達した場合、使用者が追加で時季指定をする必要はありません。
一方、時間単位で取得した年次有給休暇は、この年5日の取得義務に算入できません。
労働基準法に関する記事はこちら
年次有給休暇管理簿の記載項目
年次有給休暇管理簿には、法律上、労働者ごとに「基準日」「取得日数」「取得時季」を明らかにする必要があります。
① 基準日
基準日とは、年次有給休暇を付与した日を指します。
たとえば、入社日が4月1日で、6か月継続勤務などの要件を満たした場合、原則として10月1日が最初の基準日になります。
従業員ごとに基準日が異なる企業では、誰にいつ年次有給休暇が付与されるのかを把握することが重要です。
② 取得日数
取得日数とは、従業員が実際に取得した年次有給休暇の日数です。
年5日の取得義務がある従業員については、基準日から1年間の取得状況を確認する必要があるため、「現在何日取得しているのか」「あと何日取得する必要があるのか」を把握できるようにしておくと便利です。
③ 取得時季
取得時季とは、年次有給休暇を取得した日や時季を記録したものです。
たとえば「2026年5月10日」「2026年7月18日」のように、取得した日を記録します。
年次有給休暇管理簿を確認することで、従業員ごとの取得状況を把握し、年5日の取得が確実に行われているか確認できます。
実務上追加しておくと便利な項目
法律上の必須項目に加えて、日常的な有給管理を行いやすくするため、次の情報を追加する方法もあります。
- 従業員氏名
- 所属部署・所属現場
- 雇用形態
- 付与日数
- 取得日数
- 残日数
- 取得予定日
- 半日単位・時間単位での取得記録
ただし、これらは法令上の年次有給休暇管理簿の必須記載事項と区別して考えることが重要です。
年次有給休暇管理簿の記入例
年次有給休暇管理簿には決められた様式がないため、自社で必要な情報を整理して作成できます。
| 氏名 | 基準日 | 付与日数 | 取得日数 | 取得時季 | 残日数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 山田太郎 | 2026/4/1 | 10日 | 3日 | 5/10、6/20、8/5 | 7日 |
| 佐藤花子 | 2026/4/1 | 10日 | 5日 | 4/15、5/2、7/18、8/30、9/5 | 5日 |
このような表を作成しておけば、従業員ごとの付与・取得状況や残日数を一覧で確認できます。
年次有給休暇管理簿の作成方法
年次有給休暇管理簿は、紙やExcel、勤怠管理システムなどを使って作成できます。
方法① 紙で管理する
紙の管理表を印刷し、従業員ごとに年次有給休暇の取得状況を記録する方法です。
- システム導入費用がかからない
- パソコン操作が苦手でも管理できる
- 少人数の企業でも始めやすい
一方で、従業員数が増えると記入・集計・検索に手間がかかるほか、紛失や記入漏れにも注意が必要です。
方法② Excelで管理する
Excelで年次有給休暇管理表を作成する方法もあります。
関数を利用して取得日数や残日数を自動計算すれば、紙よりも効率的に有給休暇管理を行えます。
- 低コストで始められる
- 自社に合わせて項目を追加できる
- 計算式を使って残日数を管理できる
ただし、ファイルを担当者のパソコンだけで管理すると、最新版が分からなくなったり、誤って上書きしたりするリスクがあります。
方法③ 勤怠管理システムで管理する
従業員数が多い企業や、複数の拠点・現場を抱える企業では、勤怠管理システムを利用して有給休暇を管理する方法もあります。
システムによっては、勤怠情報と年次有給休暇を連携し、付与日数・取得日数・残日数などを自動で管理できます。
- 有給休暇の取得状況を一覧で確認しやすい
- 残日数などの計算を自動化しやすい
- 現場や拠点から申請できる
- 本社と現場で情報を共有しやすい
- 管理データを必要なときに出力できる
特に建設業では、従業員が本社ではなく各現場で勤務するケースもあります。そのため、現場からの休暇申請と本社での有給管理を連携できる仕組みがあると、管理業務を効率化しやすくなります。
年次有給休暇管理の方法を比較
| 管理方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 紙 | 低コストで始められる | 集計・検索・保管に手間がかかる |
| Excel | 自由に項目を設定できる | ファイル管理や更新ミスに注意が必要 |
| 勤怠管理システム | 申請・取得状況・残日数などを一元管理しやすい | 導入費用や操作習得が必要 |
年次有給休暇管理簿の保存期間
年次有給休暇管理簿は、作成したら終わりではありません。法律上、一定期間保存する必要があります。
年次有給休暇管理簿の保存期間は、年休を与えた期間中およびその期間の満了後3年間です。
そのため、「管理簿を作成した日から3年間」と単純に考えるのではなく、年次有給休暇を与えた期間と、その期間満了後3年間を保存する必要があります。
保存方法については、紙だけでなく、必要なときに確認・出力できる仕組みを整えたうえで、電子データとして管理することもできます。
労働者名簿や賃金台帳と一緒に管理できる
年次有給休暇管理簿は、労働者名簿や賃金台帳とあわせて作成することも可能です。
すでに従業員情報をExcelやシステムで管理している場合は、別々に情報を入力するのではなく、関連する情報をまとめて管理することで入力作業を減らせます。
年次有給休暇を管理するときの注意点
年5日の取得状況を従業員ごとに確認する
年次有給休暇が10日以上付与される従業員については、基準日から1年以内に5日以上取得できているか確認する必要があります。
取得日数が不足している従業員を早期に把握できるよう、「あと何日取得が必要なのか」を確認できる有給管理の仕組みを整えておくとよいでしょう。
時間単位年休と年5日取得義務を混同しない
労使協定を締結することで、年5日を限度として時間単位の年次有給休暇を取得できる制度があります。
ただし、時間単位で取得した年次有給休暇は、年5日の確実な取得義務の5日には含まれません。
そのため、有給管理を行う際は、1日単位・半日単位・時間単位の取得を適切に区別して記録することが重要です。
パート・アルバイトも対象になる場合がある
パート・アルバイトであっても、一定の条件を満たせば年次有給休暇が付与されます。
さらに、その年に法定の年次有給休暇が10日以上付与される場合は、年5日の取得義務の対象になります。
「正社員だけを管理すればよい」と考えず、雇用形態や勤務日数を確認したうえで有給管理を行うことが大切です。
建設業では本社と現場の情報を一元化する
建設業では、従業員が本社だけでなく複数の工事現場で勤務することがあります。
現場ごとに紙やExcelで有給管理を行うと、情報が分散し、取得状況の確認や集計に時間がかかる可能性があります。
そのため、本社と現場で同じ情報を確認できる仕組みを整えることが重要です。
休暇届・有給休暇管理表に関する記事はこちら
有給管理を効率化する方法
従業員数が少ないうちは紙やExcelでも有給管理を行えますが、従業員数が増えたり、複数の現場を管理したりするようになると、手作業による管理が負担になりやすくなります。
有給休暇の付与・取得状況を一覧で確認する
まず重要なのは、従業員ごとの基準日や取得状況を一覧で確認できる状態にすることです。
「誰が何日付与されているのか」「何日取得したのか」「年5日の取得状況はどうなっているのか」をすぐ確認できれば、管理担当者の確認作業を減らせます。
申請から承認までを電子化する
紙の休暇届を利用している場合、従業員が申請し、上司が承認し、本社の担当者が有給管理表へ転記するという作業が発生します。
勤怠管理システムなどを利用して申請・承認を電子化すれば、転記作業や記入漏れを減らしやすくなります。
クラウドで本社と現場の情報を共有する
建設業では、現場担当者が本社に戻らずに勤務することも少なくありません。
クラウド型のシステムを利用すれば、現場から申請した休暇情報を本社で確認するなど、場所に左右されない有給管理が可能になります。
年次有給休暇管理簿を必要なときに出力できるようにする
年次有給休暇管理簿は、必要なときに確認・出力できるようにしておくことが重要です。
システムを利用する場合は、単に有給申請ができるだけでなく、年次有給休暇管理簿として必要な情報を確認・出力できるかも確認しておきましょう。
年次有給休暇管理簿に関するよくある質問(FAQ)
- 年次有給休暇管理簿は作成する必要がありますか?
-
はい。使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、必要な期間保存する必要があります。管理簿には、労働者ごとの基準日、取得日数、取得時季を明らかにします。
- 年次有給休暇管理簿の保存期間は何年ですか?
-
年次有給休暇を与えた期間中および、その期間が満了した後3年間保存する必要があります。
- 年次有給休暇管理簿に決まった様式はありますか?
-
法律上の決められた様式はありません。基準日、取得日数、取得時季を労働者ごとに明らかにできれば、紙やExcel、システムなどで管理できます。
- パートやアルバイトも有給管理の対象ですか?
-
はい。パート・アルバイトでも一定の条件を満たせば年次有給休暇が付与されます。また、その年に法定の年次有給休暇が10日以上付与される場合は、年5日の取得義務の対象になります。
- 年5日の有給休暇取得義務は誰が対象ですか?
-
その年に法定の年次有給休暇が10日以上付与される労働者が対象です。正社員だけでなく、条件を満たすパート・アルバイトや有期雇用労働者なども対象になります。
- 時間単位の有給休暇は年5日に含まれますか?
-
いいえ。時間単位の年次有給休暇は、年5日の確実な取得義務における5日には含まれません。
- 年次有給休暇管理簿はExcelで作成できますか?
-
はい。法律で指定された様式はないため、必要な項目を記載できるExcelで管理することもできます。ただし、従業員数が多い場合や複数の現場・拠点がある場合は、ファイルの更新や共有に注意が必要です。
- 建設業の有給管理で注意することはありますか?
-
建設業では従業員が複数の工事現場に分かれて勤務することがあるため、本社と現場で有給休暇の情報が分散しないようにすることが重要です。クラウド型の勤怠管理システムなどを活用し、申請・承認・取得状況を一元管理する方法もあります。
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まとめ
年次有給休暇管理簿は、従業員ごとの基準日・取得日数・取得時季を記録するための重要な労務管理書類です。
特に、年次有給休暇が10日以上付与される労働者については、基準日から1年以内に5日以上の年次有給休暇を取得させる必要があるため、日頃から正確な有給管理を行うことが重要です。
年次有給休暇管理簿は、紙やExcelでも作成できますが、従業員数が多い企業や複数の現場を抱える建設業では、情報の分散や転記作業が負担になることがあります。
そのため、申請・承認・取得状況の確認・管理簿の出力までを一元化できる仕組みを整えることが、有給管理の効率化につながります。
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