家づくりをはじめ、建築の案件は非常に高額になるため、顧客は「より納得がいく、信頼できる業者と契約を締結したい」と慎重になります。そのため、1社だけで即決せず、複数の会社の見積もりを比較検討するケースが少なくありません。
この記事では、建築業向けに相見積もりの目的や、価格競争に陥らずに他社との差をつけるためのポイントを解説します。さらに、2026年現在の改正建設業法やインボイス制度の変更を見据えた「根拠ある見積もりの重要性」についても詳しくお伝えします。
相見積もりとは

「弊社は相見積もり歓迎です。」など、ホームページで謳っている建築業者も多いのではないでしょうか。何気なく使っている言葉でも、顧客が相見積もりをする本当の目的や、比較されるポイントについて改めて考える機会はあまりないかもしれません。
ここではまず、家づくりや建築工事における相見積もりとは何なのか、その目的について確認していきましょう。
建築業における相見積もりとは?
【結論】相見積もりとは、商品やサービスの利用のために、顧客が複数の業者から見積もりを取り寄せることです。建築業や家づくりの際の相見積もりは、各社から「どのようなプランで」「いくらかかるか」「納期はいつか」の提案を受け、比較検討するために行われます。
建築工事は価格が高額にのぼり、数百万〜数千万円の支払いが生じるのが基本です。そのため、後悔のない満足のいく家づくり・工事ができるよう、複数の業者をシビアに比較するケースが多く見られます。
顧客が相見積もりをする目的
顧客が相見積もりをする最大の目的は、「最も満足いく内容を提案してくれる業者を探し出し、納得できる適正価格で工事を行うため」です。
家づくりは、一生に一度の大きな買い物とも言われています。満足がいかなかったからと、すぐに買い替えるわけにもいきません。長く暮らしていく場所、人によっては一生暮らす場所だからこそ、デザインや間取りだけでなく、業者の技術力や担当者の対応など「安心して任せられるか」を見極めようとしています。
また、住宅ローンの長期返済を行うなど、金銭的な負担も長く生じます。そのため顧客は、単に「安いから」という理由だけでなく、品質と価格のバランス(コストパフォーマンス)がとれているかを検討しています。
- 満足のいくプランを予算の範囲で提案してくれる業者を探し出すため
- 高品質な家を納得の適正価格で作ってくれる、コストパフォーマンスに優れた業者を選ぶため
- 担当者の対応力や信頼性(アフターフォローも含めて)を比較するため
このような理由から、相見積もりは日常的に行われています。
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相見積もりで他社と差をつける「営業」の基本ポイント
建築業者からすると、相見積もりは「顧客を獲得できるか、他社に取られるか」の競争の場面です。自社が選ばれるためには、単なる値引き合戦に応じるのではなく、付加価値で勝負することが求められます。ここでは、営業面で他社と差をつける基本ポイントを確認していきましょう。
顧客の悩みに寄り添うヒアリング
相見積もりで競争するとなると、どうしても他社との価格差ばかりを気にしがちです。しかし、「少しでも安くできれば選んでくれる」と思うのは間違いです。
顧客にとっては一番大きな契約となる可能性があるため、価格だけでなく「本当はもっとこうしたい」「他社ではできないと言われたからあきらめた」といった潜在的な悩みがあるかもしれません。顧客の話をしっかりと聞き、要望を引き出し、より快適で安心できる家づくりの提案をすることが、他社より選ばれる最大のポイントです。
予算と納期を踏まえた「代替案」の提示
どんなに素晴らしいプランでも、顧客の予算や納期の希望に見合ってなければ選ばれません。見積もりを提案する前にしっかりとヒアリングを行い、予算や完成時期の希望を確認しましょう。
もし顧客の要望をすべて盛り込むと予算を大幅にオーバーしてしまう場合は、「この素材をこちらに変更すれば、見た目は変わらずに予算内に収まります」といったプロ視点の代替案を提示することで、他社にはない提案力をアピールできます。納期に関しても、間に合わせるための特急料金が発生する場合は事前に丁寧に説明する誠実さが求められます。
誠実でスピーディな対応(ファーストコンタクト)
お問い合わせがあった際のファーストコンタクトや見積書の提出は、できる限りスピーディに対応しましょう。対応が早いほど顧客からの印象が良くなり、「家を建てた後のアフターフォローやトラブル対応も早そう」という安心感を与えます。
反対に、「自社は最初の相談先ではないから、どうせ選ばれないだろう」と手を抜き、見積書だけを送りつけるような対応はNGです。また、他社に取られまいと契約を過度に急かし、しつこく営業することも、顧客の信頼を損なう原因となります。依頼された順番に関わらず、誠実に向き合う姿勢が契約を引き寄せます。
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【2026年最新】価格競争を脱却する「根拠ある見積もり」の提示
相見積もりにおいては「他社と同じ条件での見積もりを提示して比較してもらう」ことが基本ですが、ただ価格を安くして勝負するだけでは利益が残りません。さらに、2026年現在の法制度下では、根拠のない値引きはコンプライアンス上の大きなリスクを伴います。
改正建設業法と「標準労務費」を味方につける
2025年12月12日に完全施行された改正建設業法により、元請・下請間だけでなく、発注者(施主等)による「著しく低い労務費を前提とした見積依頼」なども厳しく制限されるようになりました。
もし相見積もりで他社が不当に安い金額を出してきた場合でも、自社は国土交通省が進める「労務費に関する基準(標準労務費)」や法定福利費を適切に反映した、根拠のある適正な見積もりであることを顧客に堂々と説明しましょう。「安かろう悪かろうではなく、職人に適正な賃金を払い、高品質で安全な工事を保証するための価格である」と伝えることが、最大の差別化に繋がります。
インボイス制度に対応した正確な原価の把握
正確な見積もりをスピーディに提示するためには、自社の原価(材料費、労務費、外注費、経費)を正確に把握しておく必要があります。特に、令和8年度税制改正(2026年3月成立)に伴い、インボイス制度の免税事業者からの仕入税額控除の経過措置は以下のように段階的に縮小することが確定しています。
| 期間 | 免税事業者からの仕入控除割合 |
|---|---|
| ~2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日~2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日~2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日~2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以降 | 0%(経過措置終了) |
2026年10月以降は控除割合が70%へと縮小するため、外注先のインボイス登録状況を踏まえた正確な税抜計算ができなければ、受注後に自社の利益が圧迫されてしまいます。勘やどんぶり勘定での値引きをやめ、建築見積ソフト等を用いて精緻に原価を把握した上で、最適な条件を提示することが好ましいです。
デジタル化・AI導入補助金を活用したソフト導入
相見積もりにおいて「素早く、正確で、見た目も美しい見積書」を提出するためには、エクセルではなく専用システムの活用が有効です。こうしたシステムの初期費用は、「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」を活用することで導入コストを大幅に削減できます。
2026年5月現在、同補助金はすでに交付申請受付が開始されています。活用を検討する場合は、補助金事務局の最新情報を確認のうえ、IT導入支援事業者へ相談してみましょう(※事前着手は補助対象外となるため注意が必要です)。
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相見積もりに関するよくある質問(FAQ)
- Q1:他社が明らかに安すぎる見積もりを出してきた場合、どう対応すべきですか?
-
結論:無理な値引き合戦には付き合わず、自社の見積もりの根拠(適正な材料費・労務費・安全対策費など)を顧客に丁寧に説明しましょう。
理由:安すぎる見積もりは手抜き工事や追加請求のリスクがあること、また改正建設業法において原価割れ受注や不当に低い労務費の見積もりが厳格に規制されているためです。 - Q2:見積書の提出スピードを上げるにはどうすればいいですか?
-
結論:エクセルなどの手作業から脱却し、建築特化型の見積ソフトやクラウド管理システムを導入することが有効です。
理由:単価マスタの自動呼び出しや、過去の類似案件のコピー機能を活用することで、計算ミスを防ぎながら圧倒的なスピードで見積書を作成し、相見積もりで優位に立てるからです。 - Q3:相見積もりで断られた顧客を追客してもよいですか?
-
結論:しつこい営業は避けるべきですが、今後の参考として「失注理由」をヒアリングすることは非常に有益です。
理由:「価格が高かったのか」「提案内容が合わなかったのか」を客観的に分析することで、次回の営業戦略や提案力の改善に活かせるためです。
まとめ
家づくりの際の相見積もりとは、顧客が複数の業者の見積もりを比較検討することです。建築業者の立場からすれば、他社との顧客獲得競争の一環といえます。
顧客が相見積もりをする目的は、最も満足いく内容かつ納得の価格で家づくりができる業者を選び出すためです。相見積もりで他社と差をつけるポイントとして、顧客の悩みに寄り添い、希望する予算と納期を確認して最適な代替案を提案すること、誠実でスピーディな対応をすることが大切です。
しかし、ただ条件を変更したり安くするだけでは、自社の利益になりません。法制度が厳格化する現在において、建築見積ソフト等を用いて正確な原価や適正な労務費を算出し、「根拠ある見積もり」を提示することが、価格競争から抜け出し顧客の信頼を勝ち取る最大の武器となります。
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