工事着工前に作成する安全書類(グリーンファイル)の中の1つに「施工体制台帳」というものが存在します。
この施工体制台帳は、元請けが、工事に関わる全ての企業の施工体制を確実に把握し、工事を進めていくために作成する書類です。
この記事では、施工体制台帳とは何か、なぜ作成するのか、作成義務のある工事や書き方までをわかりやすく解説します。
ぜひ最後までご覧ください。
施工体制台帳とは?
工事に関わる企業の情報や関係を把握し、安全で適切な工事を行うための安全書類(グリーンファイル)のひとつが、「施工体制台帳」です。
施工体制台帳とは、特定の工事に関わる元請けからすべての下請会社情報やそれぞれの関係をまとめたものです。
これは、元請け会社が作成するもので、一定額以上を下請けに出す場合、建築業法で作成の義務が定められています。
一般的に施工体制台帳といえば、「台帳」と「体系図」の2つをセットで指します。
なので、元請け会社は特定の工事において、1次下請以下の下請それぞれが工事に関する情報をまとめた「施工体制台帳」と、それらの下請け会社を組織図のようにした「施工体系図」を作成する必要があります。
施工体系図に関連する記事はこちら
作成義務のある工事
施工体制台帳は、すべての工事で作成する必要があります。
建設業法により作成が義務付けられているのは、民間工事では下請契約の請負代金の総額が4千万円以上(建築一式工事の場合は6千万円以上)の工事です。
公共工事では、入札契約適正化法の規定で、下請契約の金額に関係なくすべての工事で施工体制台帳の作成義務があります。
国土交通省:建設工事の適正な施工を確保するための建設業法 (令和3.3版)
安全書類(グリーンファイル)についての記事
施工体制台帳の提出・保存
この章では、施工体制台帳の提出・保存に関して詳しくご紹介します。
提出先
公共工事の場合、元請けが発注者に施工体制台帳の写しを発注者へ提出することが義務付けられています。
民間工事の場合提出義務はありませんが、発注者から請求されたときに見せる必要があります。
保存
施工体制台帳は、工事目的物を発注者に引き渡すまでの間、工事現場ごとに備え付けることが義務付けられています。
引渡後は、一部抜粋したものを会社で5年間保存する必要があります。
スキャンしての電子化保存も認められています。
施工体制台帳作成の目的
施工体制台帳はなぜ作成する必要があるのでしょうか?
作成する目的とは、施工体制台帳の作成を通じて元請業者が現場の施工体制を把握することで、
- 品質・工程・安全における施工上のトラブルの発生
- 不良不適切業者の参入、建設業法違反
- 安易な重層下請による生産効率低下
を防止しようというものです。
また、施工体制台帳には、各工程の責任者が明記されているため、完成後に不具合があった場合などでも、責任の所在を明確にすることができます。
つまり、全ての下請け業者を把握することで、工事の品質を担保する目的があるのが、施工体制台帳なのです。
施工体制台帳の書き方
施工体制台帳はの書き方は、建築業法などに基づいたものとなります。
元請負人、下請負人から提出された再下請負通知書の内容を基に施工体制台帳を作成します。
元請負人に関する情報、下請負人に関する情報を記入し、必要な書類を添付します。
添付する必要のある書類については後述するのでそちらをご覧ください。
今回は、国土交通省のHPに記載されている、令和2年10月1日以降に契約する建設工事において使用する作成例を用いて施工体制台帳の項目を解説します。
まず、左側は、元請業者の情報を記載します。
会社名・事業者ID
元請け業者の会社名を記入します。
また、建設キャリアアップシステムに登録している場合は事業者IDを記入します。
事業所名・現場ID
工事を担当する事業所名を記入します。
また、工事現場が建設キャリアアップシステムに登録している場合は、現場IDを記載します。
建設業の許可(許可期間5年)
元請業者が所有している建設業の許可を記入します。
「特定建設業許可」「一般建設業許可」の2つの枠があるので、分けて記入します。
許可業種は略儀で記入して問題ありません。
工事名称及び工事内容
元請業者が発注者と締結した契約書に記載されている工事名称とその工事の具体的な内容を記入します。
発注者名および住所
発注者の名称と住所を記入します。
工期・契約日
元請け業者が発注者と締結した契約書に記載された工期、契約日を記入します。
契約営業所
本部に工事が発注された際、各地に支店や営業所がある会社は現場に近い営業所が工事を行う場合があります。
その時は本部と、支店または営業所の間で下請契約を締結することがあります。
ここは、その関係性を把握するための欄です。
- 元請契約・・・工事請負契約書にある会社名と住所を記入
- 下請契約 ・・・下請負契約を締結した支店・営業所の名称と住所(元請契約と同じ場合は「同上」)を記入
健康保険等の加入状況・事業所整理記号等
健康保険、厚生年金保険、雇用保険の各保険の会社加入状況やそれぞれの保険の事業所整理記号及び事業所番号を記入します。
- 加入・・・各保険の適用を受ける営業について届出を行っている
- 未加入・・・届出を行っていない
- 適用除外・・・従業員規模等により各保険の適用が除外されている場合
発注者の監督員名・権限及び意見申出方法
発注者が置いた主任監督員の氏名を記入します。
権限及び意見申出方法は、工事請負契約書に記載されている内容を記載しましょう。
監督員名・権限及び意見申出方法
元請業者に所属する主任監督員の氏名を記入します。
権限及び意見申し出方法は、下請け業者との施工に関する意見のやりとりの方法を記入します。
現場代理人名・権限及び意見申し出方法
元請業者が置いた現場代理人の氏名を記入します。
権限及び意見申し出方法は、直近上位の注文者との施工に関する意見のやりとりの方法を記入します。
監理技術者・主任技術者名
監理技術者または主任技術者の氏名と、専任か非専任かをを記入します。
監理(主任)技術者の資格も記載します。
専門技術者名
元請業者が置いた専門技術者の氏名を記入します。
また、専門技術者の資格、担当する工事も具体的に記載します。
一号特定技能外国人の従事の状況(有無)
一合特定技能外国人とは、特定産業分野において相当程度の知識または経験をもつ外国人のための在留資格を保有する外国人を意味します。
外国人建設就労者の従事の状況(有無)
自社に外国人労働者とは以下の条件に当てはまる外国人のことです。
- 技能実習を修了し引き続き日本に在留する
- 一旦本国へ帰国した後に再入国することが可能
外国人技能実習生の従事の状況(有無)
外国人技能実習生とは先ほどの外国人建設就労者とは違い、日本の企業で技術を学び、母国に戻る外国人のことです。
右側の書き方
右側には、1次下請負業者についての情報を記載します。
各項目は、「再下請負通知書」の1枚目(右側)とほぼ同じ内容なので、そちらについては以下をご参照ください。
再下請負通知書についての記事はこちら
施工体制台帳の添付書類
施工体制台帳は、この記事で紹介した本紙だけではなく、複数の添付書類で構成されています。
作成の際は、添付する書類もしっかりと確認しましょう。
- 施工体制台帳本紙
- 発注者との契約書の写し
- 下請業者が注文者との間で締結した契約書の写し(注文・請書及び基本契約書または約款等の写し)
- 元請業者の配置技術者が主任(管理)技術者資格を有することを証明するもの(監理技術者は、監理技術者資格証の写しに限る
- 監理技術者補佐を置いた場合は、監理技術者補佐資格を有することを証明するもの
- 専門技術者を置いた場合は、資格を有することを証明するもの(国家資格など技術検定合格証明書等の写し
- 主任(管理)技術者、監理技術者補佐及び専門技術者の雇用関係を証明できるものの写し(健康保険初等の写し)
添付書類が多いうえ、どれも個人情報や会社の機密情報になるので取り扱いや管理には十分注意しましょう。
また、直前にすべて揃えるのは大変なのであらかじめ必要書類はコピーを取ってデータ化しておくと作成しやすくなります。
まとめ
施工体制台帳は、作成義務や提出先は工事の規模や発注者によって異なりますが、すべての工事で作成するものです。
記載内容に漏れがないように、また添付書類の添付もしっかりと揃えましょう。
施工体制台帳は大切な書類になりますので、正しく作成して、安全で適切な工事管理を行うようにしましょう。
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