しっかりと資料を作って提案したはずなのに、なぜか契約が取れない、情報の裏付けや相見積もりの相談をされることはありませんか?
そのような場合、営業マンがお客様から「信頼」されていないのかもしれません。
今回は、営業マンが知っておくべき「ラポール」について紹介します。
ラポールとは

ラポールとは、一言でいえば「信頼関係」です。
ただし、その関係性には条件があります。
そもそもラポールは、臨床心理学などで扱われる言葉で、セラピスト(心理士)とクライエント(患者)との良好な関係性のことを指します。
セラピストとクライエントの関係性には様々なものがあり、何をもって良好とするのか、議論が分かれるところではありますが、ラポールは、「お互いが信頼しあって、安心して自由にコミュニケーションが取れる状態」を指します。
つまり、一言に信頼関係と言っても、権威によって成り立つものや相手の言う事を一方的に聞くものではありません。
あくまでお互いが「信頼」「安心」の下でコミュニケーションする状態をラポールと言います。
営業マンが「ラポール」を意識するメリット
先述したように、ラポールは「お互いが「信頼」「安心」の下でコミュニケーションする状態」です。
これが形成されていることで、営業マンとお客様には様々なメリットがあります。
- お互いの会話に説得力が生まれる
- お客様の警戒が解け、本音の部分で課題を引き出すことができる
- 良い提案をしたときに受け入れてもらえる
- 契約に至る課題を一緒に解決するパートナーになれる
とくに営業マンとお客様が「課題を一緒に解決できるパートナー」になれるのはとても重要な部分です。
例えば、お客様自身に決裁権がなく、契約のために、様々な部署や上長を説得・稟議することが必要な場合も、どんなふうに説得するのが良いか等、一緒に相談し合えるのは有利ですよね。
逆にラポールが形成されていなければ、せっかく営業マンが良い提案をしても、信じてもらえなかったり、その裏どりをするための相見積もりをする等、お客様も必要以上の労力を割くことにもなりかねません。
ラポールは様々な場面で物事が有利に働く
ラポールは営業以外の様々な場面でも効果を発揮します。
- マネージャーと部下との個人面談
- 上司への報告や相談
- 会議の場
- 家族とのコミュニケーション
- 新入社員など初対面の相手との会話
良好な人間関係は、お客様だけでなく社内の部下や上司、私生活でのパートナーなどにも良い効果が期待できます。
ラポールを築く手法と具体例
ラポールはお互いが信頼し合うことで生まれる関係性です。
お客様を信じるために、営業マンが観察することもたくさんあります。
ここでは営業マンが、お客様からの信頼を得るためにどのようなことを心がければ良いのか、それぞれの手法とその目的・具体例・注意点をご紹介します。
アイスブレイク
「アイスブレイク」は、商談や対話の冒頭で、緊張感や警戒心をほぐすための「雑談・共通点探し・軽い話題」などを交わすテクニックです。名前の通り「氷を割る」ように、最初の壁を崩す目的があります。
特にはじめての商談では、お互いが初対面ですし、いきなり商品の説明やプレゼンを行うと、「この営業マンは自分が売る事しか考えてないのか」と思われてしまっても仕方ありません。
目的
商談の雰囲気を和らげ、相手が話しやすい・聞きやすい状態を作る。信頼構築の第一歩。
具体例
- 相手の趣味・出身地などの話題:「プロフィール拝見しましたが〇〇のご出身なんですね」
- 天候やニュースに触れて雑談:「今日はすごい雨ですね」
- オフィスの雰囲気に触れる:「すごくきれいな会議室ですね」

イエスセット
「イエスセット」は、相手が「はい」と答えやすい質問を連続して投げかけ、肯定の流れをつくった上で本題・提案に入るテクニックです。心理学的には、連続した「イエス」がその後の同意にもつながりやすくなるという性質を活用しています。
目的
「イエス」を積み重ねることで相手の警戒心を和らげ、提案への受け入れ態勢を整える。
具体例
- 「今日はお忙しい中ありがとうございます(Yes)」
- 「最近はテレワークが増えてきましたよね(Yes)」
- 「それに合わせた業務改善が求められてきていますよね(Yes)」
→ 「そこで、こういったサービスをご提案しています」
ミラーリング
「ミラーリング」は、相手の動作・姿勢・表情・呼吸のリズムなどをさりげなく真似ることで、無意識レベルでの「親近感」「安心感」を引き出すテクニックです。マッチングの中でも特に「身体的な動き」に注目した方法です。
目的
「無意識レベルでの同調」を促し、相手に「この人とは気が合いそう」と感じてもらう。
具体例
- 相手が頷いたら、少し間をおいて自分も頷く
- 相手が前傾姿勢なら、こちらも自然に前かがみになる
- お客様が資料を見ているなら一度説明を止めて待つ
- 悩んでいる様子でお客様が考えているなら、その答えが出るのをじっくり待つ

マッチング
「マッチング」は、相手の「話し方」「声のトーン」「姿勢」「表情」「言葉遣い」「価値観」などに合わせることで、相手に安心感・親近感を与える技術です。
目的
「この人は自分に似ている」と相手に感じさせ、心理的距離を縮めること。これによって信頼関係(ラポール)が生まれやすくなります。
具体例
- 相手が論理的に話すタイプ → 自分も論理的に説明する
- 相手が感情的に話すタイプ → 感情に寄り添って応答する
- 相手が静かで穏やかな話し方 → 同じようなトーンで話す
ペーシング
「ペーシング」は、相手の「会話のスピード」「話し方」「感情」「姿勢」「価値観」などにテンポや内容を合わせていく技術です。“合わせることで信頼を得る”というラポール構築の基本となるスキルです。
マッチングやミラーリングは、ペーシングの一部とも言えます。
目的
相手に「この人は自分を理解してくれている」と感じさせ、心の壁を下げてもらう。違和感をなくし、自然な信頼関係を築くためのベース作り。
具体例
- 相手がゆっくり話す → 自分も落ち着いたトーンで話す
- 相手が論理的に説明してくる → 自分もロジカルに返す
- 相手が悩みを語っている → 同じテンションで共感しながら聴く
- 相手が怒っている → 感情に合わせつつ冷静に受け止める

リーディング
「リーディング」は、信頼関係(ラポール)を築いた上で、相手を自然にこちらの望む方向へ導くコミュニケーション技術です。
ペーシングやマッチングで相手と“同調”した後、自分が主導権を取りつつ、会話の流れや意思決定を促す段階です。
目的
相手に違和感を与えずに、こちらの提案や行動目標に向けて納得感を持って進んでもらうこと。
営業では、ヒアリング→提案→クロージングといった各ステップへ、顧客が自ら動きたくなるように導くために使います。
具定例
- ペーシングで相手のペースに合わせたあと、徐々に話題を提案フェーズへ持っていく
→「〇〇という点がお困りでしたよね(共感) → 実は同じ悩みを持つお客様が、こちらで改善された事例がありまして…」 - 雑談からスムーズに本題へ入る
→「それでは、本日ご用意したご提案についてご説明させていただければと思います」 - 相手が話すテンポやトーンに合わせてから、主導権を持って説明をリードする
→「〇〇とおっしゃっていましたが、実はそれに関連して…」

バックトラッキング
「バックトラッキング」は、相手が言った言葉やキーワードを繰り返し使って返すことで、「しっかり聞いています」「理解しています」と伝えるテクニックです。NLP(神経言語プログラミング)でも使われます。
目的
共感と信頼を生み、相手に安心感を与える。内容の確認にも使える。
具体例
- 相手:「この商品はコストがネックなんです」
→ 自分:「コスト面が一番のポイントなんですね」 - 相手:「なるべく手間がかからない方法がいい」
→ 自分:「手間を最小限にしたいということですね」
それぞれの手法の活用の仕方
これらのテクニックは組み合わせて使うとより効果的です。
たとえば、アイスブレイクで場を温め、ミラーリングで共感を深め、イエスセットで本題へ誘導するという使い方は、会話の導入や信頼構築フェーズで特に力を発揮します。
また、マッチングで信頼を築き、キャリブレーションで相手の状態を観察し、バックトラッキングで共感を深めていく…という流れも効果的です。
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ラポール形成

ラポール形成の大前提は、相手に対して誠実な興味や関心を持つことです。
そのうえで大切なのが「尊重と肯定」「行動の類似性と同調」「ペーシングとリーディング」という3原則の遵守です。
ラポール形成のポイント
無理に合わせすぎない(不自然なペーシングやミラーリング)
相手に合わせることばかり意識すると、わざとらしさや媚びている印象を与え逆効果になります。
あくまで「自然に」「さりげなく」行うことが信頼につながります。
表面的な共感で終わらない
「そうですよね〜」など、内容のない相づちや同意だけでは逆に信用されにくくなります。
共感したら具体的に、「〇〇という状況だと不安になりますよね」と相手の立場を理解していることを伝えると良いです。 距離感を見誤らないようにしましょう。
初対面で馴れ馴れしすぎたり、プライベートに踏み込みすぎると警戒心を強めてしまいます。
相手の反応をキャリブレーションしながら、少しずつ距離を縮めるのが安全です。
相手の価値観を否定しない
自分の提案や考えを押し付けると、ラポールが崩れてしまいます。
たとえ反対意見でも、「なるほど、そう考えられるんですね」と一度受け入れる姿勢が重要です。
表情・声のトーン・姿勢にも注意
言葉だけでなく、表情や声色、アイコンタクトも信頼関係に大きく影響します。
無表情・ monotone・視線を合わせないなどは「興味がない」と誤解されやすいので注意しましょう。
営業目的が前面に出すぎない
最初から「売りたい感」が強すぎると、相手は構えてしまいます。
最初は「話を理解したい」「役に立ちたい」姿勢で信頼を得ることが大切。
ラポールについて よくある質問
- ラポールが築けているかどうかはどう判断するの?
-
以下のようなお客様の反応があると、ラポールが形成されているサインです。
- 表情や口調が柔らかくなる
- 雑談やプライベートの話をしてくれる
- 自分の課題や本音を語ってくれる
- 質問や提案に対して前向きな反応がある
- ラポールを築こうとして、かえって嫌がられたことがあるのですが…?
-
よくある原因は以下の通りです。
- 馴れ馴れしすぎた(距離感のミス)
- 表面的な共感にとどまった
- 不自然な真似や演技(ミラーリングのやりすぎ)
- 営業目的が前面に出すぎた(売り込み臭)
まずはお客様の反応をよく観察(キャリブレーション)することが大切です。
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まとめ
今回は、営業マンが構築するべき「ラポール」とその築き方についてご紹介しました。
手法はあくまで方法として捉え、「お客様とどう信頼し合うのか」に一番のフォーカスあてて行動してみましょう。
お客様が何をどのように解決したいと考えているのか等、お客様目線に立って考えるのもいいかもしれません。
ラポールは営業の土台であり、信頼が築ければ提案も自然と伝わります。
小さな共感の積み重ねが、大きな成果につながることを忘れずに実践していきましょう。
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