地球環境を考えるうえで、大気汚染の改善は喫緊の課題です。
単に環境が悪くなるだけでなく、人間の生活にも直結してきます。
日本では大気汚染をなくすために大気汚染防止法が設けられています。
この記事では、大気汚染防止法の中身やどのようなものが規制されているのかを、建築業者の目線から見ていきます。
大気汚染防止法とは
私たちの生活を成り立たせるためにはさまざまな産業が欠かせません。
物を作るための工場がなければ日々の食事や暮らしは立ち行かないでしょう。
一方で、工場を稼働させるたびにある程度のリスクは生じます。
特に大気を汚染する物質が煙突や廃棄物などから巻き散らかされてしまえば、空気はあっという間に悪くなってしまうでしょう。
そうした大気汚染を防ぐために、大気汚染防止法は存在します。
大気汚染防止法の背景
大気汚染防止法が作られたのは1962年です。
日本国憲法が1945年に制定されているのを考えると、制定されて比較的日が浅い法律と言えるでしょう。
この背景には、戦後急速に復興を遂げていく日本経済と関連があります。
当時の日本では急ピッチで工場が稼働しており、その過程で多くの大気汚染物質が排出されていました。
いわゆる公害なども問題視されはじめ、人々の健康も害すまでに発展してしまったのです。
そこで、政府はまず石炭の燃焼に伴うばい煙の排出を規制するために、大気汚染防止法を制定しました。
もっとも、工場の燃料は石炭に限りません。
技術が進歩するにつれて、石油がエネルギーに代わると別の大気汚染物質が排出されます。
加えて、自動車が一般に普及するようになるとガソリンから排出される排気ガスも問題になりました。
こうした変化に合わせて、大気汚染防止法は規制する対象を増やすために、何度も繰り返し改正されました。
その結果、現在は昔に比べて公害も少なくなり、人々は比較的安全に暮らせるようになりました。
とはいえ、まだまだ大気汚染物質は世の中にたくさん存在しています。
実は2021年にもアスベストを規制するために改正が行われています。
今後も技術の発展に伴って新たな排気物質が増えることが予想されるため、大気汚染防止法は改正され続けるでしょう。
アスベスト法改正に関する記事はこちら
排出規制
大気汚染防止法ではさまざまな物質の排出が規制されています。
では、どのような物質が規制されているのでしょうか。
ここからは一つひとつ規制対象を見ていくとともに、なぜそれが規制されているのかを見ていきましょう。
ばい煙
石炭が燃えると煙が発生しますが、それをばい煙と呼びます。
ばい煙が危険なのは単に煙が発生するだけでなく、それとともに煤が発生するところです。
石炭から発生した煙を吸い込むのと合わせて煤も吸い込んでしまい、肺は汚れてしまいます。
戦後間もない頃には、たくさんの工場から発生したばい煙を吸い込んでしまったことによって、多くの人が喘息を患いました。
これが社会問題化したのが四大公害として有名な四日市ぜんそくです。
公害の影響を踏まえ、現在は燃焼能力1時間あたり50リットルを超えるボイラーは環境汚染を引き起こすばい煙を発生させるとして、規制対象となっています。
揮発性有機化合物
揮発性有機化合物とは蒸発しやすい化合物のことを指します。
代表例としては、ガソリンから発生するトルエンが挙げられるでしょう。
車やバイクなどのエネルギーのもとになるガソリンはあっという間に蒸発し、空気中で気体となってトルエンへと変わります。
トルエンは有毒物質であり、吸うと酩酊状態や幻覚を引き起こしかねません。
また、90年代にはフロンガスが地球規模の問題になりました。
エアコンやヘアスプレーなどから発生するフロンガスは、空気中にあっという間に溶けていきます。
それが大気圏へと昇るにつれて、地球を覆っているオゾン層を溶かしてしまっているのではないか、として大きな問題になりました。
オゾン層がなくなってしまうと太陽からもたらされる紫外線の量が多くなってしまい、人間の健康に影響を及ぼしかねません。
それを踏まえて大気汚染防止法ではフロン類はすべて規制されています。
粉じん
昭和の高度経済成長期においては、工場からの排気ガスだけでなく、工事現場の粉じんも問題になりました。
粉じんは、たとえば鉱石などを掘削する際に発生します。
鉱石を掘削する際にはドリルやショベルカーなどを使って山を削り取らなければいけません。
その際、細かい粒子が大気中に飛び散り、それが大気汚染の原因になってしまいます。
ちなみに、最近は大陸から排出されるPM2.5も問題になっていますが、これも粉じんの一つです。
また、建築業者にとっても粉じんの問題は無縁ではありません。
特に解体現場などにおいては建物を壊す過程で多くの粉じんが発生します。
大気汚染防止法では切断機や破砕機の規制も設けていますので、しっかりと確認するようにしましょう。
特定物質
先ほども述べたように、大気汚染防止法では、当初ばい煙や粉じんなどが規制されていました。
とはいえ、その当時も大気汚染の原因になるさまざまな化学物質が問題になっていました。
ばい煙や粉じんを規制するだけではそれらの物質を規制することはできません。
そこで、「特定物質」という項目を設けてそれらの物質を規制することにしました。
大気汚染防止法では28種類の特定物質を規制対象としています。
一酸化炭素やベンゼンなどといった、明確に人体に危険を及ぼす物質もその中にもちろん含まれています。
また、アンモニアも特定物質の一つです。
アンモニアはご存知の通り人間の尿にも含まれている物質です。
それだけなら特別危険とも言えないのですが、一方でアンモニアの濃度が濃すぎると健康に影響が及ぼしかねません。
具体的には、目や皮膚に損傷を及ぼす可能性もあります。
有害大気汚染物質
特定物質のほかに、大気汚染を促進させる物質として「有害大気汚染物質」も規制対象となっています。
有害大気汚染物質は248種類と多岐にわたっており、それらを網羅するのは難しいです。
一方で、大気汚染を引き起こして人体の健康に影響を及ぼすことが明らかなので、優先取り組み物質として制定されている23物質も存在します。
その中の代表例はダイオキシンでしょう。
昔はあちこちで焚火が起こり、枯れ葉や枝を燃やすついでにゴミも燃やす光景が見られました。
しかし、今ではこうした行為は禁止されています。
なぜかといえば、ゴミを燃やす過程で大気汚染の原因となるダイオキシンが発生するからです。
ダイオキシンは癌の原因になるほか、胎児などにも影響を及ぼすため、現在はさまざまな場所で低減するよう法律で定められています。
自動車排出ガス
自動車はもはや私たちの暮らしになくてはなりません。
遠くの場所にも問題なく行ける道具として自動車は便利な存在です。
しかし一方で、自動車の普及に伴って排気ガスの問題も深刻化してきました。
自動車が吐き出す一酸化炭素や炭化水素は、日本のみならず世界各地で大気汚染を引き起こす物質として規制対象になっています。
大気汚染防止法では規制対象にはなっていませんが、二酸化炭素の排出も見逃せません。
水銀
水銀は古くは四大公害の一つ、水俣病の原因物質となったことで有名です。
水銀を食べた魚を人間が食べることで、深刻な健康被害が起きたことが社会問題にもなりました。
水俣病が引き起こされたことによって、新たに水俣条約というものが制定されます。
この条約では水銀を使った製品などの取引を規制すると定められています。
また、2018年にはそれに伴って大気汚染防止法でも、この条約を推進するために水銀を規制対象とすることが決められました。
建設工事のアスベスト飛散防止対策
ここまで紹介してきた規制物質は、少なからず建築業者にとっても無縁ではないものばかりです。
そして、2021年の改正では建築業者にとって決して無視できない条項が新たに加わりました。
この改正によって、建築業者はアスベストが飛散しないよう対策する必要が出てきました。
アスベスト自体は昔から問題になっていました。
アスベストを使った住宅の住人や建築作業に従事していた作業者にさまざまな健康被害が及んでいました。
これによって、新しく建てられる建物にはアスベストを使わないことが義務付けられています。
一方で、アスベストが規制対象になっていない時代に建てられた建物を解体したりリフォームしたりする際には注意しなくてはいけません。
特に解体の過程でアスベストが飛散すると、解体作業者だけでなく周囲の住民にも影響が及んでしまいます。
これを防ぐために今回改正案でアスベストの飛散対策が設けられました。
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まとめ
地球環境を良くするうえでは、一人の努力では足りません。
あらゆる業界に携わる人間それぞれが努力をしながら、いかに大気汚染の原因となる物質を少なくしていくかが課題となっています。
もちろん、建築業界も例外ではありません。
今回の改正を機に、地球に優しい仕事はできないだろうかと考えていくべきでしょう。
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