【建築業向け】独占禁止法とは?規制内容や違反を防ぐポイントを解説

【建築業向け】独占禁止法とは?規制内容や違反を防ぐポイントを解説

2020年12月より改正独占禁止法が施行されました。
市場において事業者間の公平・自由な競争を阻害する行為を禁止するのが独占禁止法ですが、規制内容は様々であり、改正により新たな制度も加わりました。

そこでこの記事では、独占禁止法について、規制内容や2020年の改正内容を解説していきます。
また、建築業者が独禁法に違反しないためのポイントについてもご説明していきます。

独占禁止法とは

独占禁止法は、消費者の利益を目指し、事業者間の公正・自由な競争を阻害する行為や状態を禁止する法律です。

正式名称を、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といい、独禁法とも略されます。

主な規制内容

独占禁止法では、以下の6つの行為が規制・禁止されています。

  • 私的独占の禁止
  • 不当な取引制限(カルテル)の禁止
  • 事業者団体の規制
  • 企業結合の規制
  • 独占的状態の規制
  • 不公正な取引方法の禁止

それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。

私的独占の禁止

私的独占とは、市場での競争を制限するために、他の事業者を排除したり支配したりする行為を指します。

私的独占は一般的に、「排除型私的独占」と「支配型私的独占」に分けられます。

  • 排除型私的独占
    ある事業者が単独、または共同で、不当な低価格での販売などを行い、競争相手を市場から排除する行為。
    または、新規参入者を妨害する行為。
  • 支配型私的独占
    ある事業者が単独、または共同で、競争相手の事業活動に制約を与えることにより市場を支配する行為。

以上のような私的独占の行為が、独占禁止法第3条において禁止されています。

不当な取引制限の禁止

不当な取引制限も、独占禁止法第3条で禁止されています。
ここでの不当な取引制限は、「カルテル」「入札談合」を指します。

カルテル

本来、商品の価格や生産する数量は、販売する企業がそれぞれ個別に定めるべきものです。
にも関わらず、複数の企業が話し合い、商品価格や生産数量を共同で取り決めてしまう行為をカルテルといい、禁止行為とされています。

入札談合

入札談合とは、公共工事を入札する際に、本来価格競争すべき事業者同士が事前に話し合い、受注金額や受注事業者を決めてしまう行為です。

大手ゼネコンが談合行為を行ったとして事件になったことも、記憶に新しいかと思います。

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事業者団体の規制

独占禁止法第8条では、事業者団体の規制が明記されています。
独占禁止法において事業者団体は、「事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする2以上の事業者の結合体又はその連合体」と定義されています。

このような事業者団体による、実質的な競争の制限や、会員事業者や組合員の機能または活動の不当な制限、さらには事業者に不当な取引行為をさせる行為などが禁止されています。

企業結合の規制

複数の企業が、合併や株式保有などにより結合することを、独占禁止法では企業統合と呼んでいます。
企業統合が有益に働くケースもあるため、すべての企業結合が禁止されているわけではありません。

しかし、過度な事業支配力の集中や、実質的な競争の制限を招き得る場合に関しては、企業結合は禁止されています。

また、一定の要件に該当する企業結合がされる場合には、公正取引委員会への届出・報告が必要です。

独占的状態の規制

ある市場で50%を超えるシェアを持つ事業者がいる状態を、独占的状態と言います。

独占状態にある市場において、需要やコストが変化しても商品の価格が下がらず、その独占状態を打破するのが難しい場合、公正取引委員会による措置の対象となります。

不公正な取引方法の禁止

独占禁止法第19条において、不公正な取引方法が禁止されています。

不公正な取引方法とは、

  • 自由な競争が制限されるおそれがあること
  • 競争手段が公正とはいえないこと
  • 自由な競争の基盤を侵害するおそがあること

などの行為を示しており、これらの行為が規制されています。

参考元:公正取引委員会「独占禁止法の概要」

下請代金支払遅延等防止法

独禁法を補完する法律として、下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)があります。
下請法は下請業者への不当な取り扱いを規制する法律です。

市場における公正かつ自由な競争の阻害は、親事業者による下請事業者への抑圧行為によっても起こります。
搾取にさらされやすい下請事業者を守り、親事業者による搾取行為を規制するため、下請法が制定されました。

CHECK!

建築業は適応外?

実は、建築業界では下請法は適応されません。
なぜなら、建築業者には建設業法が適応されるからです。

建設業法は、発注業者に対して弱い立場に置かれやすい元請業者や下請業者を、不当な扱いから守る役割も担っています。

元請業者と下請業者の公正な取引を目的に、国土交通省から「建設業法遵守ガイドライン」が設けられています。

国土交通省「建設業法遵守ガイドライン」

  • 施工管理システム

2020年の改正内容

独占禁止法は2019年から2020年にかけて改正され、改正独占禁止法が施行されています。
ここでは、独禁法が改正されたことによりどのような変更があったのか、詳しく解説していきます。

課徴金減免制度の見直し

まず、改正独占禁止法では、課徴金減免制度の見直しがされました。
課徴金減免制度とは、談合をした企業が自主的に、公正取引委員会に報告することで、課徴金が免除される制度です。

この課徴金減免制度が今回の改正により見直され、

  1. 課徴金の計算方法の変更
  2. 調査協力減算制度の導入

が新たに行われました。

課徴金の計算方法の変更

今回の独禁法の改正では、より適切な課徴金を違反者に課すために課徴金の計算方法が変更されました。
ここでは、主な計算内容の変更点について確認していきます。

算定期間の延長

従来は調査開始日からさかのぼって最長3年とされていた算定期間が、改正後は10年まで延長されました

算定基礎の追加

以下の3つの項目が、課徴金の算定基礎に追加されました。

  • 対象商品や役務を供給しないことの見返りとして受けた経済的利益
  • 対象商品や役務に密接に関連する業務によって生じた売上額
  • 違反事業者から指示や情報を受けた一定のグループ企業の売上額

調査開始日前に違反事業を継承した子会社等への課徴金の賦課

改正前は調査開始日以降の継承のみが対象でしたが、改正によって制裁の対象が拡大され、調査開始日前に継承された場合にも賦課の対象となります。

算定率の変更

業種別の算定率が廃止され、基本算定率に一本化されました。
中小企業に対する軽減算定率は維持されています。

調査協力減算制度の導入

これまでの課徴金減免制度では、申請の順位に応じた減免率が与えられていました。
今回の改正ではそれに加えて、事業者の実態解明への協力度合いに応じた減算率も付与されるようになりました。

また、申請者数の上限も撤廃されたため、実質的にすべての調査対象事業者に自主的な調査協力の機会が与えられました。

弁護士・依頼者間の秘匿特権への対応

弁護士や依頼者の秘匿特権が実質的に認められるようになりました。
改正前は、法的相談をする弁護士と事業者のやり取り文書が、証拠とされてしまう可能性がありました。

しかし今回の改正を経て、ある一定の要件を満たせば、外部の弁護士から法的な助言を得るために行われた秘密のやり取りは、審査官に開示されることなく保護されます。

  • 施工管理システム

独禁法に違反した場合

独占禁止法について解説してきました。
では、もし独禁法に違反してしまった場合には、どのような刑罰が課されるのでしょうか。

刑事罰・過料

独禁法への違反行為は、刑事罰や過料の対象とされています。

主な量刑としては、

  • 5年以下の懲役または500万円以下の罰金(※法人・団体は5億円以下の罰金)
  • 2年以下の懲役または300万円以下の罰金(※法人・団体は3億円以下の罰金)
  • 50万円以下の過料

があります。

課徴金の納付

刑事罰や過料とは別に、公正取引員会に課徴金の納付が命令される場合もあります。

課徴金の金額は、

課徴金額=違反期間中の対象商品の売上額または購入額×課徴金算定率

以上のように算出することができます。

課徴金の対処となる行為によって、課徴金の算定率も異なるため確認しておきましょう。

また、先ほどご説明したように、事前に公正取引員会に自主的に報告した場合には、課徴金の減免が認められる場合があります。

建築業者が独禁法違反にならないために

ここでは、建築業者が独禁法に誤って違反しないために気を付けるべき点についてご説明していきます。
建築業界独特の元請と下請の関係性や、インボイス制度について、以下で見ていきます。

元請と下請との関係性

建築業界における取引では、元請が下請に仕事を依頼する重層下請構造が一般的です。
この取引関係では、元請が強い力を持っており、下請側は弱い立場に置かれています。

そのため、強い立場を利用した元請業者が、下請にある行為を強要したり、不利益を課したりする危険性があります。
こうした行為は優越的地位の濫用と呼ばれ、独占禁止法により禁止されています。

この優越的地位の濫用の行為には、

  • 特定の会社からの資材の購入の命令
  • 酒食の接待の強要

などが挙げられます。

インボイス制度の強要も違反に!

2023年10月から施行されるインボイス制度ですが、インボイスの発行や発行事業者への登録を取引先へ強要することも、独占禁止法違反にあたります。

インボイス制度において、買い手が仕入税額控除を受けるには、適格請求書の発行事業者として登録した売り手業者からのインボイス(適格請求書)が必要です。
控除を受けるために、買い手が売り手に「〇日までに適格請求書の発行事業者の登録をしなければ契約を打ち切る」などと一方的な圧力をかける行為は、先ほどの優越的地位の濫用行為にあたります。

優越的な立場を利用して、取引先にある行為を強要することは独禁法や建設業法の違反行為にあたりますので、十分に注意するようにしましょう。

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まとめ

独占禁止法についてご説明してきました。

独占禁止法は、事業者間の公正かつ自由な競争を保障するための法律です。
建築業に深く関わりのあるものだと、入札談合の禁止などが挙げられます。

重層下請構造をもつ建築業界においては、元請が下請に対してある行為を強要したり、圧力をかけたりすることも独禁法や下請法の違反にあたりますので、十分に注意しましょう。

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AIPPEAR NET 編集部

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