お客様に提案する際の課題発掘や、社内の改善を行うための問題発掘を行うのにどんな進め方をしていますか?
それぞれがやりたいことや希望だけを伝えていても本質的な課題・問題はなかなか見えてきません。
今回は、そんなときに最適な「GROWモデル」というコーチングスキルを紹介します。
GROWモデルとは

GROW(グロー)モデルとはコーチングや目標達成のフレームワークの一つで、Goal(目標)、Reality(現状)、Options(選択肢)、Will(意志・行動計画)の4つのステップから構成されます。
ゴールを見据えて現状を分析したり、現状に即した手段を選ぶ議論をするのに適しています。
- G:ゴール(Goal)、会話の終着点
- R:現状(Reality)の明確化、資源(Resource)の発見
- O:選択肢(Options)の選択
- W:本人の意思決定(Will)
GROWモデル①「ゴール(Goal)」
1つ目の「ゴール(Goal)」は議論を始める前に、まずは何を議論するのか、つまり「会話の終着点」を全員で共有することです。
例えば、社内で「業務改善」というテーマで会議をしていたとしても、それぞれが別々のアプローチについて考えていては結論がまとまりません。
大きなテーマを、範囲を絞って議論することで内容の正確さを高めることができます。
初めに必ず議題を整理してから、議論をしましょう。
GROWモデル②「現状(Reality)の明確化、資源(Resource)の発見」
Rは、「現状(Reality)の明確化」「資源(Resource)の発見」2つの「R」が含まれています。
現状と理想を洗い出すことで、そこにはどのような「ギャップ」があるのかを明確にすることが、「R」で行うべき議論です。
順に詳しく見ていきましょう。
現状(Reality)
現状(Reality)は、「どうすればいいか?」を議論する前に、現状の把握をする段階です。
例えば営業パーソンの営業成績を上げるための議論であるならば、現状の営業パーソンの成果はどの程度なのか、あるいは
もっと上手くやりたいのに出来ず、結果的にどんな行動に陥っているのか、現状の成果を上げるためにどんな行動をしているのか、など現状の行動を整理してみましょう。
次は資源(Resource)
現状の把握ができれば、次は資源(Resource)の発見、つまり「本当はこうありたい、という理想像を思い描く」段階です。
先ほどの営業パーソンの例でいえば、理想としてはどんな結果を生み出したいのか、どんな働き方をすべきなのか、などの理想を洗い出します。
GROWモデル③「選択肢(Options)の選択」
3つ目のO「選択肢(Options)の選択」は2つのRのギャップを埋める手段にはどんなものがあるのかを洗い出すのが目的です。
例えば、営業パーソンが月に10件の契約を取りたいという理想があるのに、実際には5件しか取れていなかったり、そもそも商談件数が少なかったりするのであれば、先輩営業パーソンに同行を依頼して商談技術のスキルアップを図ったり、あるいは件数そのものを上げるためにテレアポを行ったりするのが選択肢になるかもしれません。
このように、現状と理想のギャップを埋めるために、どんなことを行うのかを洗い出すのが重要なのですが、これの品質を高めるためには、2つ目のRでしっかりと現状と理想のリストアップを終えていることが重要です。
GROWモデル④「本人の意思決定(Will)」
最後は「本人の意思決定(Will)」つまり、「選択肢(Options)の選択」で選択したものの中からどれを実行していくのかを選びます。
その際に大切なのは、選択したものを「本気でやる」と決めることです。
要するに「いつから始めるのか」「いつまでに達成するのか」という期日を決めたり「しっかり達成しているかの進捗報告をどうやって行うか」「誰にどんな協力をしてもらうのか」などそれを実行するために必要な周辺情報を整理する段階です。
あとは、それを実行する人が周囲の人々に「やる」と宣言をして議論を終了します。
GROWモデルを利用するメリット
GROWモデルを取り入れるメリットは以下の通りです。
目標達成のプロセスが明確になる
GROWモデルを使うことで、単に「目標を立てる」だけでなく、現状分析 → 選択肢の検討 → 行動計画の策定という流れが整理され、目標達成に向けた道筋がクリアになります。
課題を客観的に分析できる
多くの人が「目標を立てる」ことには慣れていますが、「現状分析」を飛ばしがちです。
GROWモデルでは、Reality(現状)のステップで客観的に現状を把握するため、
- 何がうまくいっていないのか
- どのリソースが不足しているのか
を明確にできます。
多角的なアプローチが可能になる
Oのステップで複数の解決策を検討するため、視野が広がります。
1つの方法にこだわらず、柔軟な戦略を立てられるのが強みです。
例えば、SEOの改善なら「新規記事を増やす」以外にも「内部リンクを強化する」「過去記事をリライトする」などの選択肢が考えられます。
実行力が高まる
最後のWill(意志・行動計画)のステップで、
- いつまでに何をするのか
- 誰が担当するのか
- どのように進捗を管理するのか
を決めることで、実行に移しやすくなります。
チームでの目標管理に活用できる
個人の目標設定だけでなく、チームのマネジメントにも活用できます。
例えば、SEOマーケティングチームで「流入増加」を目指す場合、GROWモデルを使って議論すると、
- メンバーが共通認識を持ちやすくなる
- 各自の役割が明確になる
- 進捗を確認しながら軌道修正しやすい
といったメリットがあります。
GROWモデルの活用方法
ここからはGROWモデルの活用方法についてご紹介します。
- 行動改善・会議に使用する
- お客様の「課題」を明らかにすることに使用する
行動改善・会議に使用する
GROWモデルは、もともとコーチングのスキルです。
上司やリーダーが、そこに所属する後輩たち、メンバーたちの行動改善を行うためにも使えますし、意見が入り組んでしまいやすい会議などでも活用することができます。
お客様の「課題」を明らかにすることに使用する
また、営業パーソンがお客様の「課題」を明らかにすることにも利用が可能です。
「R」でお客様の現状と理想を明らかにすれば、そこに生まれるギャップが「解決すべき課題」です。
「O」で出てくる選択肢で、営業パーソンが提案できるサービスが選ばれればあとは契約するだけにもなります。
GROWモデルの実践に必要なスキルはある?
GROWモデルを実践する為に必要なスキルはあります。
- 目標設定スキル(Goal)
- 分析力・現状把握スキル(Reality)
- 創造力・問題解決スキル(Options)
- 計画立案・実行力(Will)
- コミュニケーションスキル(チーム運用の場合)
目標設定スキル(Goal)
目標設定のステップでは、達成したいことを明確にし、それを具体的な形に落とし込むスキルが求められます。
単に「売上を伸ばしたい」や「SEOの成果を上げたい」といった漠然とした目標ではなく、測定可能で実現可能な形にすることが重要です。
有効な目標設定のためには、SMARTの原則(Specific=具体的、Measurable=測定可能、Achievable=達成可能、Relevant=関連性がある、Time-bound=期限がある)を意識するとよいでしょう。
例えば、「3か月以内にWebサイトのオーガニック流入を20%増やす」といった具体的な目標を立てることで、行動の方向性が明確になります。
2. 分析力・現状把握スキル(Reality)
現状を正しく把握することは、適切な行動計画を立てるための重要なステップです。この段階では、データをもとに現状を分析し、課題や強み・弱みを明確にするスキルが必要です。
例えば、SEO施策を考える場合、
- 現在のWebサイトのアクセス数やキーワードランキングを把握する
- 競合サイトと比較して、自社サイトに足りない要素を特定する
- これまでの施策がどのような成果を出しているかを評価する
といった分析を行うことで、的確なアクションにつなげることができます。現状を客観的に見ることで、何が目標達成の障害になっているのかを明確にし、適切な戦略を立てやすくなります。
3. 創造力・問題解決スキル(Options)
課題が明確になったら、それを解決するための選択肢を考えるフェーズです。この段階では、多角的な視点でアイデアを出す力が求められます。
例えば、SEOの流入を増やすために考えられる施策として、
- 新しいSEO記事を作成する
- 既存のコンテンツをリライトする
- 内部リンクの最適化を行う
- SNSと連携して流入経路を増やす
といったさまざまな選択肢が考えられます。重要なのは、1つの方法にこだわらず、複数のアプローチを検討することです。柔軟な思考を持つことで、より効果的な戦略を見つけやすくなります。
また、選択肢の中から最適なものを選ぶ意思決定力も重要です。メリット・デメリットを比較しながら、実現可能性の高い施策を選びましょう。
4. 計画立案・実行力(Will)
選択肢を検討した後は、具体的な行動計画を立てて実行に移します。ここでは、以下のスキルが求められます。
- アクションプランの設計力(何を・いつ・どのように実行するかを決める)
- スケジュール管理能力(タスクを適切に配分し、進捗を管理する)
- 実行力(決めたことを確実に実行し、継続する)
例えば、「1か月以内に3本のリライトを完了し、2か月以内に新規記事を5本公開する」といった具体的なスケジュールを立てることで、計画が実行しやすくなります。
また、計画を実行しながら進捗を確認し、必要に応じて修正を加えることも大切です。行動しながら学び、改善を繰り返すことで、より良い成果につなげることができます。
5. コミュニケーションスキル(チーム運用の場合)
GROWモデルは個人の目標達成だけでなく、チームのマネジメントにも活用できます。その場合、メンバーと協力しながら目標を達成するためのコミュニケーションスキルが必要になります。
特に重要なのは、
- チーム内で目標を共有する力(メンバー全員が同じ方向を向けるようにする)
- 適切なフィードバックを行う力(進捗を確認し、改善点を指摘する)
- モチベーションを維持する力(メンバーのやる気を引き出す)
例えば、SEO施策をチームで進める場合、「各メンバーがどの施策を担当するのか」を明確にし、定期的に進捗を共有することで、スムーズな運用が可能になります。
また、定期的に成果を振り返り、「どの施策がうまくいったのか」「どこを改善すべきか」を話し合うことで、チーム全体の成長につながります。
GROWモデルを活用する際の注意点
GROWモデルを活用する際の重要な注意点は、上司やリーダーがメンバーの行動改善をする際や営業パーソンがお客様の課題発掘する際に、GROWモデルのそれぞれを「相手に言わせる」ということです。
GROWモデルが元来コーチングスキルであることは再三申し上げた通りですが、4つ目のWが「本気でやると決められる」のは、コーチングを受けている人がGROWそれぞれを自分で考え、話し、決められるからです。
メンバーがリーダーに、あるいはお客様が営業パーソンに言われるだけでは、議論は整理されるかもしれませんが、本人が本心で納得できず「そういうことらしい」で、終わってしまう可能性があるので注意が必要です。
まとめ
今回は、コーチングスキルである「GROWモデル」を紹介しました。
GROWモデルを自由に扱うことができるようになれば、部下やお客様とのやり取りが
スムーズに、かつ高いモチベーションで遂行することができます。
ぜひ一度お試しください。
業務改善を進めるポイントはこちら
- 業務改善を効率的に進めるポイントとは?
- 【工務店の業務改善】施工管理の効率化方法と効率化のメリットとは
- 【超初級】業務改善報告書の基本的な書き方とは?テンプレート例つき
- 【最新版】業務改善助成金とは?簡単な申請方法から注意点まで
- 業務効率化とは?具体策と進める際のポイントを解説
- 業務効率化とは?具体策と進める際のポイントを解説
ツールを使った業務改善ならこちら
36協定に関する記事はこちら
“社内のデータを一元管理”工務店・リフォーム会社が選ぶ!