こんなお悩みを持っている方がよく読まれています。
- 建設業界の今後の動向を知りたい方
- 今後建築業界に参入しようと考えている企業
- 建築業界の課題や対策を具体的に知りたい方
2010年以降、東京オリンピック・パラリンピックに伴うインフラ整備をはじめ、建設業の需要はおおむね上昇傾向にあります。
建設需要は今後も高まると予想され、好況に思える建設業ですが、早期解決が求められる課題を複数抱えています。
そこで今回は、建設業の抱える課題を整理します。
建設業の現状や今後の動向、課題解決にむけた具体的な取り組みも解説します。
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建設業の現状
復興工事や東京オリンピック・パラリンピック関連工事など、2010年以降、建設業界の需要は高まっています。
国土交通省の発表によれば、2022年度の建設投資は66兆9,900億円となる見通しです。
前年度と比べて0.6%増えており、民間投資のうち「民間非住宅建設投資」の伸び率は7.2%と予想されています。
コロナの影響
一方で建設業は、他の業界と同様、新型コロナウイルス感染拡大の影響を少なからず受けています。
東京商工リサーチによれば、建設業のコロナ破たんは2020年4月に発生して以降増え続けており、2022年3月時点で318件を記録しました。
業種別でみた場合、建設業のコロナ破たんは飲食業に次ぐ件数です。
建設業のなかでも、建築工事、建築リフォーム工事、内装工事の破たんが顕著です。
建設業コロナ破たんの主な原因は、次の通りです。
- 建材・部材などのサプライチェーン寸断による納期のずれ
- 納期のずれによる工期の変更
- 建設資材や燃料の高騰
- 人手不足
建設業の今後
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたとはいえ、建設需要は今後も高まるといわれています。
ここでは、建設業の今後の動向について確認しましょう。
老朽化対策
日本のインフラは、高度経済成長期に集中的に整備されました。
特に道路橋やトンネル、河川や下水道、港湾などは、建設後50年以上経過する割合が急激に高まっています。
建造物の老朽化が進むということは、それらを維持・管理、また、更新するための建築需要が見込まれるということです。
2018年度には5.2兆円と推計されたインフラの維持管理・更新費は、20、30年後に約1.3倍まで膨れ上がると国土交通省は予想しています。
防災対策
インフラの維持管理・更新の目的は、人々の生活基盤の維持や景観の保護だけでなく、防災対策にもあります。
国は、大規模地震や気候変動に伴う渇水などに備え、様々な防災対策を策定しています。
代表的な計画は、次の通りです。
- 国土強靭化基本計画
- 防災基本計画
- 南海トラフ地震対策推進基本計画
これらの計画を遂行するためには、土木工事をはじめ、建設業の仕事が欠かせません。
また、これまでに地震や台風による甚大な被害を受けた地域の復興事業も、引き続き行われます。
大規模な建築プロジェクト
東京オリンピック・パラリンピックを終え、大規模な建築プロジェクトはひと段落したようにも思えます。
しかし、首都圏・近畿圏を中心に、建設業が活躍するプロジェクトがまだまだ控えています。
主なプロジェクトは次の通りです。
- 北陸新幹線延伸(金沢‐敦賀間:2024年予定、敦賀‐新大阪:未定)
- 大阪・関西万博開催(2025年予定)
- リニア中央新幹線開業(品川‐名古屋間:2027年予定)
- 大阪IR開業(2029年予定)
脱炭素化への取り組み
2015年にパリ協定が採択されて以降、地球温暖化への取り組みが全世界規模で本格化しています。
脱炭素への消極的な姿勢を国際的に批判されている日本ですが、2021年には「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定しました。
「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」には、日本における長期的な地球温暖化対策が次のように明示されています。
2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち、「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指す。
引用元:「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」
脱炭素社会に向けた建設業の取り組みは、大きく分けて次の2つです。
- 施工段階における二酸化炭素の排出抑制
- 設計段階における運用時二酸化炭素の排出抑制
それぞれ詳しくみていきましょう。
CHECK!
施工段階における二酸化炭素の排出抑制
日本建設業連合会によると、建設業は施工段階において次のような対策を講じています。
- 省燃費運転研修
- 燃費効率の高い重機の採用
- バイオディーゼル燃料の使用
- 高効率証明の採用
- 再生可能エネルギーの導入
CHECK!
設計段階における運用時二酸化炭素の排出抑制
現在、国土交通省は建築物や住宅の省エネ化を目指し、様々な支援や制度を創設しています。
特に力を入れているのが、LCCM住宅やZEHの普及促進です。
「グリーン住宅ポイント制度」などにより、省エネ化のための新築工事・リフォーム工事の需要は今後も増え続けると予想されます。
建設業の課題
東京オリンピック・パラリンピック以降も、建設業の需要は高まる傾向にあることを確認しました。
しかし、高まる需要に対応できるかどうかが問題視されています。
ここでは、建設業、特に建設現場が抱える課題を整理します。
人手不足
建設業の就業者は、1997年の685万人をピークに減少し続けています。
少子化による労働人口の減少などの社会背景を考えれば、就業者の減少は建設業に限った話ではありません。
しかし、建設業は他産業に比べて離職率が高いことが特徴です。
特に1年目の離職者の割合が高く、就業者が定着しないことが問題視されています。
そもそも就業者が少ないことに加え、離職率が高いため、建設業は慢性的な人手不足に悩まされています。
高齢化
建設業はまた、就業者の高齢化という課題も抱えています。
特に、技能者の高齢化が顕著で、技能者全体の約4分の1が60歳以上です。
この大半が10年後には引退すると予想されており、人手不足はますます深刻化します。
高齢の技能者が引退すれば、実際の建設業務だけでなく、技術の継承や若年者の育成も滞ってしまいます。
長時間労働
人手不足の状況では、必然的に一人当たりがこなすべき仕事の量が増えます。
そのため、建設業では長年、長時間労働が解決されずにいます。
厚生労働省の調査によれば、2021年度の全産業の年間実労働時間は、20年ほど前と比べて約255時間減少しています。
一方で、建設業の推移は48時間減にとどまっています。
また、現在4週8休を取得している技術者は、建設業全体で2割程度です。
2024年問題
長時間労働や休日の取得状況がなかなか改善されない建設業ですが、2024年4月から「働き方改革関連法」が適用されます。
「働き方改革関連法」にはいくつかのポイントがありますが、労働時間法制の見直しは特に重要です。
労働基準法が改正され、時間外労働の上限が罰則付きで規制されました。
この法律は2019年に施行されましたが、建設業には適用までに5年間の猶予が与えられています。
しかし、5年後である2024年は目前に迫っており、早急な対応が求められています。
賃金が低い
建設業の賃金は、近年上昇傾向にあります。
2019年には、建設業男性全労働者の賃金が製造業男性全労働者、全産業男性労働者の賃金を上回りました。
しかし、生産労働者の賃金は、建設業が製造業より低いままです。
生産労働者とは、物の生産現場や建設作業現場などにおいて作業に従事する労働者を指します。
賃金のピーク年齢が若い
建設業就業者・建設業生産労働者の賃金のピークは、ともに45~49歳です。
一方、他産業の賃金のピークは50代といわれています。
建設業は、他産業と比べると賃金のピーク年齢が若く、体力のピークが賃金のピークであることが問題視されています。
建築資材の高騰
日本は、建築資材の多くを輸入に頼っているため、価格や供給量が世界情勢に左右されがちです。
- 新型コロナウイルスの感染拡大
- 自然災害
- ウクライナ危機
- 米中貿易摩擦
など、様々な要因からサプライチェーンの混乱や価格の上昇が発生します。
最近は落ち着いてきましたが、ウッドショックや半導体ショックの影響を受けた企業も多いのではないでしょうか。
2023年2月時点の調査によると、セメントと生コンクリートの価格がやや上昇しています。
建築資材のに関する記事はこちら
課題解決のための具対策
建設業が抱える課題を整理しました。
ここでは、課題を解決するための具体的な対策を確認しましょう。
長時間労働の是正
すでに確認した通り、2024年4月から建設業にも「働き方改革関連法」が適用されます。
国土交通省は「建設業働き方改革加速化プログラム」を作成し、長時間労働を是正するための具体的な取り組みを明示しています。
以下で詳しくみていきましょう。
CHECK!
週休2日制の導入
週休2日制の導入を後押しするために、以下のような取り組みが進められています。
- 公共工事における週休2日工事の実施団体・件数を大幅に拡大
- 民間工事においてもモデル工事を試行
- 公共工事の週休2日工事における労務費などの補正を導入、共通仮設費・現場管理費の補正率見直し
- 働き方改革に積極的に取り組む企業、週休2日制を実施している現場を評価
また、建設業で週休2日制を導入する際、技能者の多くが日給月給であることに留意するよう注意を促しています。
CHECK!
工期設定の適正化
国土交通省は、「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」を策定し、工期設定の適正化を推進しています。
このガイドラインには、時間外労働の上限規制適用に向けた取り組みとして、以下のことが示されています。
- 適正な工期設定・施工時期の平準化
- 必要経費へのしわ寄せ防止の徹底
- 生産性向上
- 下請契約における取組
- 適正な工期設定等に向けた発注者支援の活用
給与体系の改善
給与体系の改善のための主な取り組みは、次の2点です。
- 建設キャリアアップシステムの構築
- 社会保険への加入徹底
以下で詳しくみていきましょう。
CHECK!
建設キャリアアップシステム
「建設キャリアアップシステム(CCUS)」とは、技能者の資格、社会保険加入状況、現場の就業履歴などを、業界横断的に登録・蓄積する仕組みです。
現在、建設業の各団体と国が連携してシステムへの登録、現場での利用を促進しています。
建設キャリアアップシステムは、次の3つのことを目的として作られました。
- 若い世代がキャリアパスや処遇の見通しを持てる環境を整える
- 技能・経験に応じて給与を引き上げる
- 技能者を雇用・育成する企業が伸びる環境を整える
すでに確認した通り、建設業は比較的離職率の高い業界です。
このシステムの構築・運用により、特に若年層の定着率向上が期待されています。
CHECK!
社会保険への加入
国土交通省はまた、社会保険への加入促進のための取り組みも行っています。
建設業における社会保険加入率は年々改善していますが、工事の下請企業の加入割合が低い傾向にあるようです。
社会保険加入率を上げるための具体的な取り組みは次の通りです。
- 工事施工について、社会保険加入業者(下請を含む)に限定するよう、すべての発注者に要請する
- 社会保険未加入の建設企業は、建設業の許可・更新を認めない仕組みを構築する
生産性向上
人手不足のなか、長時間労働を是正することは、非常に困難です。
そこで、限られた人材・資機材で効率的に作業を行うため、ICTの活用などによる生産性の向上が推進されています。
以下で具体的な取り組みを確認しましょう。
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DX化
国土交通省は、2016年から「i-Construction(アイ・コンストラクション)」という取り組みを進めています。
- ドローン・スキャナーなどによる3次元測量
- ICT建機の活用
- CIM/BIMの導入
- 施行管理、情報共有システムの活用
など、建設業のDX化は現場作業から事務仕事まで幅広く実現可能です。
建設業のDX化は、業務効率化・生産性向上につながるほか、イメージアップにも役立ちます。
建設業は、「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージがなかなか払拭できていません。
ICT活用で作業を安全に、快適に行えることが分かれば、建設業のイメージが変化し、より多くの人が目指しやすい業界になるでしょう。
多様な人材の採用
長時間労働の是正や給与体系の改善、DX化などによって労働環境が改善できれば、建設業はより多様な人が働きやすい業界になります。
ここでは、外国人労働者、女性労働者に対する具体的な取り組みをご紹介します。
CHECK!
外国人労働者の増加
建設業で活躍する外国人労働者は、2021年時点で約11万人を記録し、全産業の約6.4%を占めています。
在留資格としては技能実習生が最多で、年々増加しています。
しかし建設業は、以前から外国人労働者への劣悪な処遇が問題視されていました。
技能実習生への労働法令違反率は8割にのぼり、失踪者全体の過半数が建設業の実習生だといわれています。
建設業における外国人材の適正かつ円滑な受入れを実現するため、2019年にはJAC(特定技能外国人受入事業実施法人)が設立されました。
- 建設技能者全体の処遇改善
- ブラック企業の排除
- 失踪・不法就労の防止
を目的とし、適正就労監理や紹介事業、教育訓練などを実施しています。
CHECK!
女性の活躍推進
2020年、国土交通省は「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画~働きつづけられる建設産業を目指して~Plan for Diverse Construction Industry where no one is left behind」を策定しました。
建設業における女性の定着促進を目的とする取り組みです。
- 建設現場における「快適トイレ」の設置
- 建設業で働く女性のキャリアパス・ロールモデル集作成
- 建設産業女性定着支援ネットワー設立
など、女性が継続的に働くことのできる環境づくりが目指されています。
建設業のDXに関する記事はこちら
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まとめ
建設業の課題と今後、課題解決に向けた取り組みについて解説しました。
建設業では、女性や外国人労働者をはじめ、多様な人材が働きやすい環境づくりが進められています。
今回は、制度の見直しや支援機関の設立といった業界をあげての改革をご紹介しました。
しかし、これらと並行して行うべきは、現場単位での意識改革です。
建設業で働く・働きたい人々が、性別や国籍、経歴などを理由に不自由を感じることのないよう、様々な人の意見に耳を傾け、労働環境の是正に取り組みましょう。
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