工事をするにあたってはトラブルが避けられません。
こういったトラブルが起きた時にどのように対処をするのかをあらかじめ決めておくのが契約書です。
事前に作っておくべき契約書は、工事の種類によって変わってきます。
今回は解体工事を事例にしながら、どんな契約書が必要なのか、どこに注意しながら契約書を作るべきなのかを見ていきましょう。
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解体工事に契約書は必要?
そもそも、解体工事をするにあたってはどんな契約書が必要なのでしょうか。
もし契約書がなかったらどんなことが起こるのか、といったこととあわせて解説していきます。
工事請負契約書が必要
基本的に解体工事は、建物の所有者が業者に依頼するという形を取ります。
これを専門用語でいうと「請負」というのですが、実際に工事をする前に工事請負契約書を作らなければいけません。
ここでは、誰がどの業者に依頼したかという責任主体が明確にされます。
契約書がないとどうなる?
万が一契約書を事前に作らないと、発注者とのトラブルになるばかりか、建設業法違反とみなされかねません。
建設業法違反になる
工事請負契約書の作成は建設業法で義務付けられています。
これに違反すると、国土交通省から指導が来る場合や行政処分が下る可能性が否めません。
そうなると数年の免許取り消しや罰金が科せられてしまいますので、くれぐれも注意しましょう。
建設業法はこちら
トラブルになるリスクがある
そもそも、契約書をなぜ作る必要があるのかといえば、後でトラブルになる可能性を未然に防いでおく意味合いがあります。
たとえば、契約書なしで1,000万円の工事を受注したとしましょう。
その後、発注者から500万円しか入金されなかったとしたら、具体的な証拠がないのでお金の催促ができなくなってしまいます。
こういった事態を避けるためにも契約書は欠かせません。
小規模工事では必要ない場合も
とはいえ、すべての工事で工事請負契約書が必要というわけでもないです。
小規模な工事、たとえば数時間程度で終わるような簡単な作業でいちいち工事請負契約書を作るのは手間でしょう。
この場合は、簡単な請求書を書く程度で済ましても問題ありません。
契約書を交わすタイミング
契約書は必ず交わさなければいけないものではありますが、いつまでに作らなければいけないという決まりはありません。
もっとも、基本的には1ヶ月程度前に作っておくべき、というのが業界の常識です。
工事を請け負う業者はほかにも仕事を抱えていることが珍しくありません。
そのため、早めに契約を結んでおいて必ず仕事してもらうように予約しておきます。
解体工事における契約の流れは?
工事請負契約書の必要性を確認したところで、ここからは実際に契約書を作る流れを確認していきましょう。
約款部分の説明を受ける
契約書を作るうえでは数行にわたる約款が欠かせません。
約款では、この契約をするにあたってはどういうことを守るべきか、もし契約が不履行になったらどうするか、といったことが確認事項として記されます。
煩瑣な記述になりがちな約款ではありますが、確認をおろそかにするとトラブルになりかねませんので、しっかりと説明を受けるようにしましょう。
約款に関する記事はこちら
工事内容を確認する
工事請負契約書を作るにあたって最も重要な部分は工事内容です。
解体工事ならば、どの部分を解体するのか、解体した資材はどうするのかといったことを記さなくてはいけません。
ここの認識が食い違っていると工事がスムーズに進みませんから、事前にすり合わせを行っておくことが大切です。
契約書に署名・捺印する
契約交わす当事者が本人であることを証明するために署名と捺印は欠かせません。
解体工事の契約書における9つのチェックポイント
先程工事請負契約書は、法律で義務と定められているという話をしました。
それを決めているのは建設業法第19条なのですが、実はその中には契約書の中では以下の項目を必ず盛り込むべし、といった文言も含まれています。
そのため、契約書を作るうえでは、必要な項目がしっかり満たされているかもチェックしなくてはいけません。
ここからは、そのチェックポイントを一つひとつ解説していきます。
具体的な工事内容
どんな工事をするかを明確にしておくことは契約書を作るにあたっての必須事項です。
ここが曖昧だったり、抽象的だったりすると、そもそもどんな工事かわからないまま話が進んでしまいます。
契約書に工事内容を書く際は、解体工事ならば建物全体の解体といった具合に具体的に記すようにしましょう。
工事代金と支払い条件
お金はトラブルの火種になりやすいです。
ですが、契約書をあらかじめ作っておけば諍いに発展する可能性はありません。
今回の工事で発注側はいくら払うか、いつまでにどういった手段でお金を払うかといったことをここで記してください。
工期の目安
解体工事は、その後更地になった土地に新しい建物を建てるケースも珍しくありません。
そのためノロノロと作業を進めるよりも、スピーディーに解体を進めるほうが望ましいです。
いつからいつまでに工事を終えるという工期を書くことは欠かせません。
工事完了基準
発注側と受注側が何をもって工事完了とするかの認識が食い違っているようではいけません。
建物全部を解体したら工事完了なのか、それとも今回は部分的な解体で済ますのか、といったことをここで記しましょう。
損害賠償・瑕疵保険責任
工事は時に事故が避けられません。
本当ならば解体すべきでなかったところを損傷させてしまったり、工事の過程で近隣住民に損害を与えたり、といった事態が起こる可能性は十分にあり得ます。
その際に賠償責任を負うのが発注側なのか、それとも受注側なのかをここで明確にしておかなければいけません。
契約の解除
契約書では不測の事態に備えて契約解除条件を合わせて記しておくべきです。
指定の内容通りに工事が進まなかったり、逆に途中で工事内容を変更したり、といった時にお互い契約を解除できるといった文言を記しておくようにしましょう。
契約不適合責任
契約書に記している工事内容にそぐわない工事が行われた場合、発注者は契約不適合責任を受注側に申し立てることができます。
とはいえ、工事が終わってから数年経っても不適合責任を受注側に求められるわけではありません。
たとえば、建物を作った数年後に不備が見つかっても、工事の責任なのか、経年劣化なのかの区別をつけるのは難しいです。
そのため、請求期間は一般的には1年、もしくは2年と定められています。
ここでは、工事完了後いつまでに請求が認められるということを記しましょう。
その他
工事は繊細な作業が求められるため、些細な原因でトラブルが起こることが避けられません。
そのため、工事請負契約書ではほかにも、細かなトラブルが起こった時にどう対応するかといった文言を盛り込んでおくべきです。
天候等不可抗力の影響
たとえば、解体工事期間中に大地震が起こったとしましょう。
その場合は、当然解体工事を進めることはできないので、工事がストップしてしまいます。
こうした事態に備えて、工事請負契約書には天災などで工事に遅れが生じた時は工事の延期を認めるなどといった文言を付け加えておかなくてはいけません。
紛争解決の方法
実際に発注側と受注側でトラブルが起きた場合、素直にどちらかが非を認めて謝罪するといったケースは少ないです。
結局、両方がお互いの言い分を通そうとして裁判になるケースもしばしばあります。
こうした紛争が起きてしまった場合に、どのような手段を介して解決するかといったことも契約書の中には記さなくてはいけません。
たとえば、どの裁判所に申し立てをするかといったことも双方の合意のうえで決める必要があります。
解体工事における契約書の罰則
契約書の契約内容には一定の罰則規定があります。
罰則が発生するケース①:工事前に書面にて契約を行わない場合
建設業法においては、工事開始前に書面(電子契約)にて契約書を交わす必要があります。
口頭での契約や工事開始後の契約の場合、受注者と発注者の場合で認識の齟齬でのトラブルが発生しやすくなります。
こうしたトラブルの防止のため、建設業法において契約の方法が定められています。
罰則が発生するケース②:見積条件を明確に提示しない場合
受注者は、諸経費を含む内訳や支払条件、工期といった見積条件を明示した見積書を提出する必要があります。
施主が不利になることがないよう、見積条件をあいまいに提示した場合は、罰則が科せられます。
罰則が発生するケース③:工事変更に関しての契約を行わない場合
工事の開始前に交わした契約書に加え、追加で費用の発生する工事が発生した場合は、必ず工事変更(金額変更)の契約書を交わす必要があります。
こちらも通常の契約書と同様、追加工事の開始前に変更契約書を交わす必要があります。
罰則が発生するケース④:工期に対して適切な価格で提示しない場合
受注者は、工期に対して適切な価格で契約を交わす必要があります。
工期変更を行ったにもかかわらず、変更契約を行わない場合や、短い工期に対して高額な工事費用を請求する場合、罰則が科せられます。
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まとめ
今回見てきたように、工事請負契約書を作るためにはさまざまな条件をクリアしなければいけません。
単に項目を埋めるだけならともかく、発注側と受注側の合意のうえで決めなければいけない事項も存在するので、契約書を作るまでには相当な労力がかかります。
とはいえ、こうした契約書があってこそ双方の信頼にもとづいた工事につながりますので、くれぐれも疎かにすることがないようにしましょう。
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