建設現場にはさまざまな危険が存在し、一歩間違えれば大きな事故や怪我につながってしまうことも否定できません。
安全に工事を行うためにも、工事を請け負った業者は現場に出入りする協力会社に対して安全教育を実施し、その旨を記録しておくことが求められます。
ここでは、安全教育を実施した証明となる新規入場時等教育実施報告書の書き方について詳しく紹介します。
新規入場時等教育実施報告書とは
労働者の安全と衛生を守る労働安全衛生法は、元請業者は現場に新規に入場する下請業者に対して安全衛生教育を実施する責任があると定めています。
そして、下請業者は現場に入場する前に元請業者に対して安全衛生教育を受けたことを証明・報告しなければなりません。
この証明・報告を行うために作成される書類が新規入場時等教育実施報告書です。
新規入場時等教育実施報告書の保存期間は5年です。
新規入場時等教育実施報告書の項目別記入方法(欄外)
新規入場時等教育実施報告書は、一般社団法人『全国建設業協会』の定める全建統一参考様式第7号のフォーマットに則った形で作成されるのが一般的です。
A4サイズの用紙を縦向きに用いた時と同じサイズのフォーマットです。
このフォーマットでは、冒頭の欄外部分に
- 安全衛生教育の名称や実施した日付
- 安全衛生教育を受けた会社名や責任者
などを記入します。
どれも重要な情報となるので、間違いのないように記入しましょう。
以下に各項目の具体的な記入方法を紹介します。
日付
欄外の右最上部に日付を記入する欄があります。
ここには、新規入場時等教育実施報告書を提出する日付を記入します。
安全衛生教育が実施された日付や、新規入場時等教育実施報告書を記入した日付と間違えやすいので、注意が必要です。
必ず提出日を記入するようにしましょう。
名称
事業所の名称を記入します。
事業所とは元請会社の事業所名ということではなく、工事現場の名称のことです。
例:「◯◯マンション新築工事」、「△△地下鉄ビル改修工事」
所長名
工事現場の責任者である所長の名前を記入します。
記入するのは現場監督者の名前ではなく、あくまでも経営者、もしくは経営者から選任された現場代理人の名前です。
建設業界では元請けが一次請け・二次請けに仕事を委託することも珍しくありません。
この場合でも、一次・二次の会社の所長名ではなく元請会社の所長名を記入しなければなりません。
会社名
「株式会社◯◯工務店」のように自社(安全衛生教育を受けた下請業者)の会社名を記入します。
元請けの会社名ではありません。
現場代理人
欄外の右下部、会社名の下には自社の現場代理人の名前を記入しましょう。
ただし、現場代理人は法律で定義されている役職ではありませんし、建設業法で配置が義務付けられているわけでもありません。
現場代理人が存在しない工事現場もあります。
また、業者によっては現場代理人ではなく現場所長や現場責任者、工事責任者といった名称が使われることもあります。
このような場合は、現場における自社の最高責任者の名前を記入するようにします。
新規入場時等教育実施報告書の項目別記入方法(欄内)
これまで、新規入場時等教育実施報告書の欄外に記入する項目を確認してきました。
以下では、欄内に記入する項目について詳しく解説します。
教育の種類
新規入場時等教育実施報告書の全建統一参考様式第7号フォーマットでは、教育の種類として以下の4種類が列記されています。
- 新規入場時
- 雇入時
- 作業変更時
- 送り出し時
新規入場時についての安全衛生教育を受けたのであれば、「新規入場時」の文字を◯で囲みます。
実施日時
安全衛生教育が行われた日付を記入します。
例:「2021年10月20日 17時00分~18時20分(80分)」
年号は西暦・和暦どちらでもかまいません。
所要時間も忘れずに記入するようにしましょう。
実施場所
安全衛生教育が実施された場所を記入します。
できるだけ詳しく記入しましょう。
×:「○○建設株式会社」、「△△ビル改修工事現場」
〇:「○○建設株式会社 第一会議室」、「△△ビル改修工事現場 詰め所」
教育方法
どのような方法で安全衛生教育を実施したのかについて詳しく記入します。
講義による教育を行った場合には「講義」、スライドを使用したならば「スライド」と記入しましょう。
最近は映像を使って安全衛生教育を実施するケースも見られます。
その場合は「映像」や「ビデオ」「DVD」などと記入します。
教育内容
安全衛生教育では一般的に、以下のような講義を受けます。
- 作業所の概要と規則について
- 安全な作業のための服装や保護具について
- 機械や資機材などの取り扱い及び点検作業について
- 担当する工事の作業内容や工期について
- 緊急時の対応や連絡先の確認について
- 有害な物質を扱うときの注意事項について
教育内容が多岐にわたり、指定の用紙内に書ききれない場合には「別紙添付の通り」と記入し、資料として詳しい内容を添付するようにします。
講師
安全衛生教育を行った講師の会社名、役職名、氏名を記入します。
例:「○○工務店株式会社 安全衛生管理者 鈴木太郎」
複数の講師が安全衛生教育を行った場合は、それぞれの会社名、役職名、氏名を記入しましょう。
受講者氏名
安全衛生教育の受講者すべての氏名を記入します。
近年はエクセルを使用して新規入場時等教育実施報告書を作成することが増え、受講者の氏名をPCを使って記入するケースも多く見られます。
しかし、元請企業の中には受講者本人の直筆でなければ認めないとするところもあるので注意が必要です。
また、受講者が多く書ききれない場合は「別紙添付の通り」と記入して、資料として受講者全員の氏名を添付するようにします。
資料
安全衛生教育で使用された資料名を記入します。
テキストを使用した場合は「安全管理マニュアル」などテキストの名前を、スライドを使用した場合は「安全な作業のために」などスライドのタイトルを記入しましょう。
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まとめ
安全衛生教育は工事現場での安全な作業に不可欠なものであり、労働災害のリスクを最小限に抑えるための指針となるものです。
また、安全衛生教育を通じて安全性についての十分な知識や技能を有することは、作業員のモチベーションアップ、さらには職場の活性化にもつながります。
新規入場時等教育実施報告書は、安全な職場の実現のために重要な書類です。
作成の頻度も比較的高いので、正しい記入方法を理解しておきましょう。
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