見積書は単なる見積もりではなく、取り引きを行った重要な証拠書類となります。
そのため、見積書を発行した側も、受け取った側も、後日のトラブル防止や税務調査などに備えて、保管をしておくことが必要です。
本記事では、見積書の保管期間や管理方法、電子保存の方法をご紹介していきます。
見積書を保管する際は、ぜひ参考にしてください。
見積書の保管は義務?
見積書は、取り引きの証拠となる書類です。
見積書はあくまでも見積もりで、正式に契約書を取り交わす場合や請求書を発行する場合もあります。
しかし、見積書の金額や内容に相手が合意すれば、契約書や請求書を兼ねるというケースも少なくありません。
そのため、見積書は取り引きの重要な証拠書類として保管することが求められます。
法人は法人税法で、個人事業主は所得税法で保管が義務付けられています。
税金の申告や税制の適用を受けるうえで、後日提出を求められることがあるためです。
また、税務調査などの対象になった際、保管している書類をすべて調べられることもあります。
見積書の書き方に関する記事はこちら
見積書の保管期間
では、見積書はどのくらいの期間保管が義務付けられているのでしょうか。
保管期間は法人と個人事業主で異なり、それぞれケースによって原則と例外があります。
どのケースに該当するかよく確認しましょう。
法人の場合
法人の場合、法人税法にもとづき、見積書の保管期間は原則7年と義務付けられています。
例外として、繰越欠損金が生じた場合、つまり赤字決算の場合は10年です。
法人税法では、一定の要件を満たすと、欠損金について10年の繰り越し控除が認められます。
そのため、その期間は証拠として保管が義務付けられます。
個人事業主の場合
個人事業主の場合は、確定申告の場面で保管が求められ、原則として5年の保管が求められます。
ただし、消費税の課税事業者となる個人事業主の場合は、消費税法にもとづき、見積書の保管期間は7年間です。
前々年度の課税売上高が1,000万円以上であれば、消費税の課税事業者となりますし、自ら課税事業者になると申し出た場合も同様です。
見積書の値引き表記や有効期限に関する記事はこちら
見積書を紙で保管する方法
見積書を紙で発行している企業や個人事業主、紙で受け取っている企業や個人事業主が、そのまま紙で保管する場合、どのように保管していけば良いでしょうか。
頻繁に見積書を授受している、複数の法人や個人事業主と見積書をやりとりしている場合、受け取った順にどんどんファイリングしていくだけでは、後から見直すことが難しくなります。
見直したい見積書をすぐに探し出せないばかりか、保管期間が経過し、廃棄しても問題ない状態になっても積もっていくばかりです。
管理しやすい方法としては、事業年度ごとと、取引先ごとの分類が考えられます。
事業年度ごとに分類する
事業年度ごとに分類することで、いつまで保管すべきかを管理しやすくなります。
法人なら原則として7年、個人事業主なら原則として5年、消費税の課税事業者なら7年で廃棄することも可能です。
欠損金が生じた時を踏まえ、法人の場合、一律10年の経過で廃棄するといった方法も採れます。
いずれにしても、保管期間が何年経過したかがわかりやすい方法です。
さらに、検索しやすいように月ごとに分類することや取引企業ごとのインデックスを付けるなどの工夫もしましょう。
取引先ごとに分類する
取引先が固定的である場合や、毎月のように継続的に取り引きしている企業が多いケースなら、取引先ごとに分類する方法があります。
取引先ごとに年度、月でファイリングしていき、保管期間が過ぎた分から外して廃棄するといった形です。
1回だけなど、ほとんど取り引きがない相手については、その他の企業でまとめます。
ただし、社内で認識を共有しておかないと、
- どの取引先のファイルを作成するかを決めるのが難しくなる
- 取引先のファイルがあるのに、その他ファイルにファイリングされてしまう
- 別の取引先のファイルに間違えてファイリングされる
などの混乱が起きるので気を付けましょう。
ファイリングする部署や課、担当者を決めておいたほうが安心です。
見積書の送付に関する記事はこちら
見積書を紙で保管する場合の注意点
見積書を紙で保管する場合の注意点について見ていきましょう。
受領した紙の見積書は原本を保管
受領した紙の見積書は、原本を保管してください。
コピーでは、証拠として認められません。
たとえば、見積書には赤い朱肉で印鑑が押されているのが、コピーをすると黒くなってしまうのですぐにわかります。
念のためにコピーをとっていたものと、原本を取り違えて保管しないように気を付けましょう。
電子取引データの紙での保管が不可に
電子取引データで見積書を受け取った場合には、それをプリントアウトして紙で保管することは認められません。
電子取引データで受け取った見積書は、電子データとして保管することが求められますので注意しましょう。
見積書の電子化に関する記事はこちら
見積書を電子データで保管する方法
見積書を電子データで保管する方法には、大きく分けて次の3つの方法があります。
- 電子帳簿保存
- スキャナ保存
- 電子データ保存
いずれの方法においても、保管にあたっては、電子帳簿保存法における真実性確保と可視性確保の要件を満たさなくてはなりません。
真実性と可視性の要件
データの真実性を担保する措置として、次のいずれかのシステムを導入することが必要です。
- データの訂正削除をしたとしても、その記録が残るシステム
- 訂正や削除ができないシステム
また、訂正削除の防止に関する事務処理規程を備え付けなくてはなりません。
電子データを保管するシステムに関し、システムマニュアルも備え付け、適切に使えるようにしておくことも必要です。
見読可能装置として、ディスプレイやプリンタなども完備しなくてはなりません。
また、保管したデータをすぐに探せるよう、検索機能が確保されていることも大切です。
近年では、電子帳簿の要件に加え他の機能が備わった、「建築見積ソフト」や「施工管理システム」などもあります。
要件が全て揃っているか、または電子帳簿が使えるシステムと連携しているかについては「建築見積ソフト」や「施工管理システム」の提供元に確認が必要です。
電子帳簿保存
電子帳簿保存とは、電子的に作成した見積書をそのままの形で保存することです。
作成したデータ、受け取ったデータをそのまま保存しておきます。
スキャナ保存
スキャナ保存が適用されるのは、紙で作成あるいは受領した見積書の場合です。
紙の見積書をスキャナでスキャンしたうえで、画像データに変換し、そのデータを保存します。
スキャニングや変換などの手間がかかりますが、紙で保管するより場所を取られず、検索性も向上しやすいのがメリットです。
電子データ保存
電子データ保存とは、電子的に授受した見積書をデータで保存することです。
たとえば、見積書がPDFファイルで送られてきた場合や、オンライン上のマイページに表示されたものをダウンロードして保存するようなケースです。
まとめ
見積書の保管は、税法などで義務付けられています。
保管期間は、法人の場合は原則として7年、赤字決算の場合は10年です。
個人事業主の場合は原則5年ですが、消費税の課税業者の場合は7年です。
見積書を紙で保管する方法として、事業年度ごとに分類する方法や、取引先ごとに分類する方法が考えられます。
電子データで保管する方法としては、電子帳簿保存、スキャナ保存、電子データ保存があります。
それぞれケースや方法が異なりますので、適切な保存方法を選びましょう。
近年では、電子帳簿の要件に加え他の機能が備わった、「建築見積ソフト」や「施工管理システム」などもあります。
自社だけでの管理では難しい場合は、ソフトを上手く活用しましょう。
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