建築工事において欠かせない図面のひとつに「矩計図(かなばかりず)」があります。
しかし、建築関係者以外にはその意味や役割があまり知られていません。
本記事では、矩計図の基本的な意味や他の図面との違い、確認すべき重要ポイントまでわかりやすく解説します。
矩計図とは?

矩計図は、建物の一部を垂直に切断した断面図のことです。
一般的に、20分の1~50分の1の縮尺でかかれます。
部材の種類、床や屋根の高さ、下地などが記入されているため、矩計図を見ると、その住宅の性能が分かります。
そのため、矩計図が示す情報は、工事にとって非常に重要な断面図の1つだと言えます。
矩計図の読み方
矩計図は「かなばかりず」と読みます。
「矩(かね)」は直角や水平・垂直を示す大工用語で、建物の垂直方向の情報を正確に表す図面であることからこの名が付きました。
施工図・設計図書に関する記事はこちら
矩計図でわかること
詳細な情報を示す矩計図ですが、具体的にどのような情報を示すのでしょうか。
以下で詳しく見ていきましょう。
①建物の高さや構造を視覚的に理解
矩計図を活用することで、建物の高さや構造の違いを一目で把握できます。
- 階高、天井高さ、床の高さ
- 屋根勾配や屋根裏の寸法
- 壁や柱の構造位置
矩計図は建物の垂直方向の断面図を示し、階高や天井高さ、床の高さなどの情報を詳細に描き出します。
この図面を通じて、住宅の内部構造や高さの関係性を視覚的に理解することができます。
②居住スペースの快適性や性能を確認
矩計図は、建物の高さや構造、材料の詳細などを視覚的に把握するためのものです。
特に居住空間における天井高や窓の配置、自然光の入り具合などは、快適性に大きく影響します。
- 天井高や窓の位置による採光・通風
- 断熱材の位置や厚み
- 防音仕様
図面を見れば、窓からの採光や通風の状況も確認でき、季節ごとの快適な住環境を設計段階から考慮することが可能です。
また、断熱材の配置や厚み、防音性能なども確認できるため、居住スペース全体の快適性を総合的に評価することができます。
施工時とリフォーム時に役立つ図面
建物の詳細な設計情報を提供する矩計図は、施工業者とリフォーム業者が正確に作業を進めるための指針となります。
具体的には、壁や天井の内部構造、配管や電気配線の位置などの必要な情報を提供し、誤解やミスを防ぎます。
- 下地材の種類と厚み
- 床下や天井裏の空間寸法
- 配管や電気配線スペース
また、リフォーム時には既存の構造を理解し、適切な改修計画を立てるために役立ちます。
矩計図があれば、構造の詳細や部材の種類を確認できるため、解体して確認する必要がありません。
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矩計図と断面図との違い
建築には矩計図以外にも様々な図面が使われており、図面の名称や尺度が、建築工事設計図書作成基準に示されています。
その中でも断面図は、建物を垂直に切断した図面という共通点があり、住宅設計において非常に重要な役割を果たします。
しかし矩計図と断面図は、その情報量には明確な違いがあります。
ここでは断面図との違いについて詳しく解説します。
国土交通省
断面図
断面図は建物全体の大まかな高さや構造を把握するための図面です。
断面図の縮図や記される内容は以下の通りです。
縮図 | 100分の1から200分の1 |
---|---|
内容 | 床や建物の高さ |
用途 | 全体構造の把握 |
矩計図
矩計図は施工に必要な詳細寸法や仕様を示す図面です。
矩計図の縮図や記される内容は以下の通りです。
縮図 | 20分の1から50分の1 |
---|---|
内容 | 床や建物の高さ・部材の種類・床下、天井裏などの高さや寸法 |
用途 | 詳細な施工指示、性能確認 |
このように矩計図は、断面図より大きな縮尺で描かれており、詳細で情報量が多いことが特徴として挙げられます。
その他の図面
工事では、矩計図や断面図以外にも様々な図面を使用しています。
ここでは以下の3つの図面について紹介します。
平面図
平面図とは、床下1m程の高さで建物を水平に切断し、上から見た図面のことを指します。
平面図は建物の各階のレイアウトを上から見たもので、部屋の配置、壁の位置、寸法などが細かく記されています。
立面図
立面図とは、建物や構造物を真横から見た図面のことを指します。
外壁の素材や扉・窓の配置を確認するのに有用です。
配置図
配置図とは、建物の位置関係を示した図面のことを指します。
境界や道路との位置関係も明確にします。
主に建築やインテリアデザイン、都市計画などの分野で使用される図面です。
図面に関する記事はこちら
矩計図を確認する際のポイント
ここでは、矩計図を確認するタイミングと見逃してはいけないポイントについて詳しく解説します。
矩計図を確認するのはいつ?
一般的には、契約後に仕様や間取りが確定した段階で矩計図が提示されます。
この時点での確認が重要で、施工開始後の変更はコストや工期に影響するため、早期のチェックと合意形成が求められます。
また、渡された矩計図やその他の図面は必ず保管しておきましょう。
見返すことは少ないですが、将来リフォームするときに役立ちます。
矩計図のチェックポイント
矩計図を確認する際は、以下の点を重点的にチェックしましょう。
- 基礎の構造と高さ
- 断熱材の仕様と厚み
- 採光・通風に関わる窓の位置
- こだわり仕様(造作、特注部材)が反映されているか
施工者と設計者が矩計図を共通認識として持つことで、施工ミスや後戻り作業を防げます。
矩計図に関するよくある質問
最後に、矩計図に関するよくある質問に答えていきます。
- 矩計図はいつ作成されますか?
-
一般的には、基本設計・実施設計の後半段階で作成されます。
契約後、仕様や間取りが確定した段階で提示され、施工開始前の最終確認に使われます。 - 矩計図は誰が使いますか?
-
設計者・施工管理者・大工・設備工事業者など、建築に関わる全ての技術者が使用します。
特に施工現場では、断熱や防音、配管ルートの確認に不可欠です。 - 施主(お客様)も矩計図を見る必要がありますか?
-
はい。専門的な部分もありますが、天井高や窓位置、断熱仕様など、居住性や快適性に直結する要素が含まれます。
引き渡し後のリフォームや修繕でも役立つため、必ず保管しておきましょう。 - 矩計図はリフォームでも使えますか?
-
はい。解体しなくても内部構造を把握できるため、配管・配線や断熱改修の計画に有用です。
ただし、図面が古い場合は現況と異なる可能性があるため、現地調査もあわせて行います。 - 矩計図はどうやって保管すればいいですか?
-
紙の図面は折り目が劣化の原因になるため、筒状に巻いて保存するのが理想です。
また、PDFなどのデジタルデータも保管しておくと、リフォーム業者とのやり取りがスムーズです。
建築業向けの管理システム「アイピア」
アイピアは建築業に特化した一元管理システムであり、顧客情報、見積情報、原価情報、発注情報など工事に関する情報を一括で管理できるため、情報集約の手間が削減されます。
さらに、アイピアはクラウドシステム。外出先からでも作成・変更・確認ができます。
アイピアはここが便利!6つのポイント
まとめ
矩計図は、建物の一部を垂直に切断した断面図のことを指し、建設工事において不可欠な図面です。
部材の種類、床や屋根の高さ、下地などが詳しく記されているため、矩計図を見ると住宅の性能が分かります。
そしてこのような詳しい情報が記されているため、リフォーム時や売却時に役立ちます。
必ず保管しておきましょう。
また矩計図を見せてもらった時は、基礎の高さや断熱仕様、設計意図の反映などを重点的にチェックしましょう。
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