ビジネスの様々な場面で取り上げられる「生産性」というキーワード。
いまいちその意味が統一されていなかったり、
中にはもう生産性という言葉そのものにうんざりしている方も多いのではないでしょうか。
「生産性 きらい」「生産性 うざい」等でGoogle検索する方もいるようです。
確かに、最近は生産性という言葉に対する解釈も各社異なってきているようです。
今回はそんな「生産性」という言葉が一人歩きしてしまっている今だからこそ
そもそも生産性とはどういう目的で生まれた、どんな言葉だったのか
「過去」にフォーカスして振り返ってみようと思います。
生産性とは
我が国には、「公益財団法人日本生産性本部」という
日本国内で生産性が謂われ始めた時に作られた組織があります。
そこで指す代表的な定義では、
「生産性とは、生産諸要素の有効利用の度合いである」というものです。
どんなものであれ、何かを生み出す(生産する)ためには
機械設備や土地などの環境を整えたり材料を用意することが必要です。
それらの「生産する為に必要となるもの」を「生産要素」と呼び、
生産性とは生産要素を使って得られる産出物との相対的な割合をさします。
つまり、「何かを生み出すために生産要素を”どれくらい効果的に”使えたか」が
生産性の高さ・低さを意味する、ということになります。
生み出せるかどうか、というよりも
それが効果的かどうかにフォーカスしているという点が重要ですね。
生産性運動とは
生産性が言葉として確立されたのは、1950年ごろのことです。
第二次世界大戦後、西欧諸国の経済復興を目的とした経済援助「ヨーロッパ復興援助計画」が
アメリカによって実施されました。
この際、西欧諸国の経済復興のために「アメリカ産業が高い生産性を誇る秘密」を
解明し、戦争で荒廃した産業を蘇らせる試みとして各所で起こったのが生産性運動です。
アメリカからの資金援助も日に日に少なくなっていく中、
限られた生産要素をいかに効果的に・効率的に使えるかを考える生産性運動は
その時代にとってとても重要だったことは推して知るべしところですね。
ここで重要なのは、この生産性運動の目的です。
生産性運動は戦争復興をきっかけにして始まっていることにあって、
大きな目的は「国民の生活水準の向上」です。
生産性三原則とは
そんな生産運動が日本でも1955年ごろに始まりました。
この生産性運動は前述した日本生産性本部を主導に始められたものですが、
特徴的なのは、生産性運動の具体的な運動展開に関する基本的な考え方、
いわゆる「生産性運動に関する三原則」を設定したことです。
生 産 性 三 原 則 2.労使の協力と協議 3.成果の公正な分配 |
この生産性三原則が提唱された1955年といえば第二次世界大戦終結からちょうど10年、
日本がまだまだ「経済の自立」「生活水準の向上」を目指していた時代です。
今よりもっと産業の生産性向上が社会的に急務だったこともあり、
「いかに資源・労働力・設備を有効活用して生産コストを下げるか」
「市場の拡大・雇用の増大・実質賃金や生活水準の向上」
の2点に注力していました。そのための三原則だったんですね。
最近よく聞く「生産性向上」とどこか違いはあるでしょうか?
生産性の先にどんなゴールがあるのか?
今回は、日本生産本部の情報を中心にお伝えしていきました。
ここまで見ていると、最近謳われる生産性に対して
違和感や不快感を覚える方がいる理由が見えてくるような気がしてきます。
かつて提唱された生産性運動、生産性三原則の根底には
「生活水準の向上」という明確な目的がありました。
今、生産性を高めた先にどんなゴールが待っているか伝えることができるでしょうか?
昨今求められている生産性向上にどのような目的があるのかを、
それが従業員の皆さんにとってどんなメリットであるのかを、
改めて共有しあう必要があるのかもしれません。