建設業をはじめとするプロジェクト管理の現場において、「工程表通りに進めたいのに特定の日に職人が足りない」「複数の現場が重なって、機材の手配が間に合わない」といった課題が日常的に発生していませんか?
こうした人員や作業負荷の偏りを「見える化」し、最適なバランスへと調整するために不可欠なのが「山積み工程表」と「山崩し」という管理手法です。
本記事では、山積み工程表の基本的な考え方やガントチャートとの違いをはじめ、エクセルでの具体的な作り方から実務における限界まで、初心者にもわかりやすく徹底解説します。現場の生産性を劇的に改善したい方は、ぜひ参考にしてください。
山積み工程表とは?「山崩し」とのセットで理解する

山積み工程表(リソースヒストグラム)とは、建設業や製造業において、タスクや作業の負荷(いわゆる“山”)を時間軸に沿って可視化する工程管理の手法です。
縦軸に「必要な作業量や人員数」、横軸に「時間(日付)」を取り、日ごとの必要リソースを棒グラフのように積み上げて表現します。
例えば、Aの作業で2人、同じ日にBの作業で3人必要な場合、その日の人員の「山」は5人分となります。このグラフにより、「いつ・どこで・どれだけの人員(人工)が必要か」「どこに負荷が集中しているか」が一目でわかるのが最大の特徴です。
「山崩し(平準化)」とは
山積み工程表を作成した結果、自社が手配できる人員の上限(例:1日最大4人まで)を超えてしまう日が発生することがあります。
このとき、上限を超えた作業の開始日を前後にズラし、人員の上限内に収まるようスケジュールを調整(平準化)する作業を「山崩し」と呼びます。突出した山を崩して、余裕のある谷へ埋めていくイメージです。
実務においては、「山積み」と「山崩し」は必ずセットで行われます。
一般的な工程表(ガントチャート)との違い
通常のガントチャートは、タスクのスケジュール(開始日・終了日)を視覚的に示すツールであり、「スケジュールの流れ(時間)」を管理することに主眼が置かれています。
一方、山積み工程表は「作業の量(リソース)」や「負荷のバランス」にフォーカスしており、以下の点を明らかにするために特化しています。
- 同じ期間にタスクが集中して人員が不足(パンク)していないか
- 逆に、職人の手待ち(人員の余り)が発生していないか
- 誰にどれだけの負荷がかかっているか
クリティカルパス法(CPM)との違い
クリティカルパス法は、プロジェクトを最短で完了させるための重要タスクの経路(絶対に遅れてはいけない工程)を見つける手法です。
プロジェクト全体の遅延リスクを測るには有効ですが、リソースの配分や過不足を調整する機能はありません。実務では、クリティカルパス上の作業は動かさず、それ以外の作業を動かして「山崩し」を行うのが一般的です。
工程表に関する記事はこちら
山積み工程表を作成・運用する4つのメリット
山積み工程表には、単なるスケジュール管理を超えた「見える化」+「コスト削減ツール」としての強みがあります。
ここでは、建設現場やプロジェクト管理の実務における代表的なメリットを紹介します。
1. 職人や機材の「不足・バッティング」を未然に防ぐ
最も大きなメリットは、「この日、大工さんが足りない!」「クレーン車が別の現場に出払っている!」といった手配漏れやバッティングを、工事が始まる前に発見できることです。
直前になって人員不足に気づき、慌てて高い費用で応援を呼ぶといった事態(利益の圧迫)を回避できます。
2. 手待ち時間をなくし、無駄なコスト(人工代)を削減
山積み工程表を見ると、逆に「山が極端に低い日(=職人が余っている日)」も一目でわかります。
このような日は、現場で「手待ち(作業がない待機時間)」が発生する可能性が高く、無駄な労務費を払うことになります。山崩しを行って作業を平準化することで、職人の稼働率を最大化し、会社の利益(粗利)を守ることができます。
3. 無理のないスケジュールで安全と品質を守る
特定の日に作業が集中しすぎると、現場が混雑して作業効率が落ちるだけでなく、転落事故などの労働災害のリスクが高まります。
また、無理な突貫工事は施工不良(品質低下)の原因となります。山崩しによって適正な人員配置を行うことは、現場の安全と品質を担保するうえで非常に重要です。
4. 現場間の透明性向上とモチベーションアップ
山積み工程表は、誰が見ても状況がひと目でわかる形式のため、現場・管理者・協力会社間の情報共有がスムーズになります。
「なぜこの日に作業をしなければならないのか」「どこで負荷が集中しているか」という全体像を共有することで、チーム全体のモチベーション向上や、責任感の醸成にもつながります。
工程表の種類に関する記事はこちら
山積み工程表の作成手順(山積み〜山崩しまで)

山積み工程表を効果的に活用するには、正しく「山を積み」、適切に「山を崩す」プロセスが必要です。実務で役立つ作成手順をわかりやすくご紹介します。
1. タスクの洗い出しと所要時間(歩掛)の算出
まず最初に、プロジェクトに必要なタスク(WBS)をすべて洗い出します。続いて、各タスクにかかる工数や日数(人工)を見積もります。
過去の実績(歩掛データ)をもとに、「基礎工事:計10人工」のように現実的な数値を設定することが出発点です。
2. スケジュール(ガントチャート)への配置
洗い出したタスクを、時間軸(カレンダー)に沿って配置していきます。
スケジュールの立て方には、開始日から順にタスクを配置していく「フォワード方式」と、絶対に動かせない完了日(納期)から逆算して配置していく「バック方式」があります。プロジェクトの性質に応じて使い分けましょう。
3. 日ごとのリソースを集計する(山積み)
スケジュールに配置した各タスクに必要な人員(または機材)の数を、日ごとに縦に足し合わせて(積み上げて)合計します。
これが「山積み」された状態です。エクセル等で作成する場合は、最下部に合計行を設けてSUM関数で集計します。
4. オーバーした部分のスケジュール調整(山崩し)
自社で手配できる職人の上限(リソース上限)を設定し、STEP3で集計した合計値が上限を超えている日を探します。
上限を超えている日があれば、クリティカルパス以外の作業の開始日をずらしたり、期間を延ばしたりして、毎日の合計値が上限内に収まるように「山崩し(平準化)」を行います。
工程表の作成方法に関する記事はこちら
山積み工程表の作成に役立つツールとテンプレート
山積み工程表をゼロから作成するのは非常に手間がかかるため、まずは適切なツールと無料テンプレートを活用することをおすすめします。
1. 無料の工程表テンプレート(Excel)を活用する
インターネット上には、建設業や工務店向けに特化した無料のExcel(エクセル)テンプレートが多数配布されています。
あらかじめ関数(SUM関数など)が組み込まれているものを選べば、入力するだけで自動的に「山積み」が計算されるため、作業時間を大幅に短縮できます。
弊社でも、すぐに実務で使えるエクセル形式の工程表テンプレートをご用意しております。以下のリンクから無料でダウンロード可能ですので、自社の現場に合わせてご自由にご活用ください。
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2. エクセル・スプレッドシートで自作する場合のコツ
自社の業務に合わせてMicrosoft ExcelやGoogle Sheets(スプレッドシート)で自作する場合、以下のポイントを押さえると使いやすい山積み工程表になります。
- タスクの配置:行(縦)に作業項目と担当者、列(横)に日付を設定する。
- 作業量の入力:セルを色で塗りつぶすだけでなく、必ず「人数(工数)」を数値で入力する。
- 自動集計の設定:最下部に「合計行」を作り、SUM関数で日ごとのリソースを縦に集計する。
- アラート機能(条件付き書式):合計値が「自社の上限」を超えた場合、セルが赤く光るように条件付き書式を設定し、山崩しが必要な日を視覚化する。
工程表管理に関する記事はこちら
エクセルで作る山積み工程表の限界と解決策
中小企業や初めて導入する現場では、無料テンプレートを活用してMicrosoft ExcelやGoogle Sheetsで山積み工程表を作成するのが主流です。
エクセルのフィルター機能や条件付き書式(一定の数字を超えたらセルを赤くするなど)を使えば、簡易的な管理は可能です。
しかし、現実の工務店や建設会社では、「エクセルでの山積み・山崩しは実務では使い物にならない(管理しきれない)」という限界にすぐに直面します。
複数現場(全体工程)での山積みが困難
決定的な弱点がこれです。職人や重機は「1つの現場」だけで動いているわけではありません。
現場Aのエクセル工程表の中だけで山崩しができても、「現場Bや現場Cの工程表と照らし合わせたら、結局同じ日に同じ職人を手配していた(バッティングしていた)」ということが多発します。
複数のエクセルファイルをまたいで、全社のリソースを正確に山積み計算することは、人間の手作業では事実上不可能です。
変更時の修正が地獄(数式・レイアウト崩れ)
現場は天候不良などで常にスケジュールが変わります。
予定がズレるたびに、エクセルのセルをコピペして移動させ、その結果「別の日の山が上限をオーバーしたから、さらに別の作業を動かす…」という終わりのないパズルゲームを強いられます。
これを繰り返すうちに最新版がどれか分からなくなり、現場監督の事務負担を激増させます。
複数現場の山積みも一瞬!建築業向けシステム「アイピア」
アイピアは建築業に特化した一元管理システムであり、顧客情報、見積情報、原価情報、発注情報など工事に関する情報を一括で管理できるため、情報集約の手間が削減されます。
さらに、アイピアはクラウドシステム。外出先からでも作成・変更・確認ができます。
アイピアはここが便利!6つのポイント
「会社全体で複数の現場が動いており、誰がいつ空いているのか把握できない」「予定変更のたびにエクセルを修正する時間がもったいない」。
そんな限界を感じている企業様には、クラウド型の一元管理システム「アイピア」の導入がおすすめです。
社内で動いているすべての現場のスケジュールを一つの画面(全体工程表)で統合管理できるため、複数現場をまたいだリソースの空き状況が一目でわかり、ドラッグ&ドロップの直感操作で一瞬で山崩しが完了します。
山積み工程表に関するよくある質問(FAQ)
最後に、山積み工程表に関するよくある質問に答えていきます。
- 「山積み」と「山崩し」はどちらを先にやるべきですか?
-
必ず「山積み」が先です。まずは最短工期を目指して理想的なスケジュールを引き、そこに必要なリソースをすべて積み上げます。その後、手配できる上限を超えてしまった部分(実現不可能な部分)を見つけてから、「山崩し」を行って現実的なスケジュールへと調整します。
- 山積み工程表を作るときの注意点は何ですか?
-
過去データ(歩掛)に基づいた正確な工数見積もりを行うことと、タスク間の依存関係(Aが終わらないとBが始められない等)を無視して山崩しを行わないことです。また、ギリギリの上限で組むのではなく、天候不良などに備えた「予備日(バッファ)」を持たせることも重要です。
- 山崩しをしても、どうしても工期に間に合いません。どうすればいいですか?
-
自社のリソース上限内で山崩しをした結果、要求されている納期(工期)をオーバーしてしまう場合は、「外部のリソースを追加する(応援を呼ぶ、外注費を増やす)」「残業や休日出勤で1日の上限人工を増やす」あるいは「施主へ工期延長の交渉を行う」のいずれかの判断が必要になります。山積み工程表があれば、この交渉を「根拠のある数字」で行うことができます。
- 山積み工程表は小規模な工事や短期プロジェクトにも有効ですか?
-
はい、有効です。小規模であっても「複数の職人が日程的に重なる」「狭い現場で作業スペースを取り合う」ようなケースでは、山積み工程表を使うことでバッティングを未然に防ぐことができます。
まとめ
山積み工程表とは、プロジェクト管理や生産管理において、タスクに必要なリソース(人員・機材)を時間軸に沿って積み上げ、負荷の偏りを視覚的に管理するためのツールです。
この表をもとに「山崩し(平準化)」を行うことで、職人の手持ちや手配漏れを防ぎ、現場の利益と安全を守ることが可能になります。
しかし、複数現場が同時に動く環境において、エクセルで山積み調整を続けるのは現場監督にとって大きな負担です。
業務効率化や2024年問題への対応が急務となる中、複雑な全体工程の調整を直感的に行える「アイピア」などのクラウドシステムを導入し、現場のDX化を推し進めてみてはいかがでしょうか。
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