溶接工事は、建設現場でも多くのニーズがある工事の一つです。
火気を扱うため、高度な技術が求められます。
溶接工事といっても、その工法には豊富な種類があります。
ここでは、溶接工事の特徴や種類について紹介していきます。
同時に、溶接工事の会社を立ち上げる場合や会社の規模を大きくしていくにあたり、取得すべき建設業の許可についても確認していきましょう。
溶接工事とは
溶接工事とは、加工したい鉄骨や鉄材などに熱や圧力を加えることで、つなぎ合わせるなどし、一体化させる加工法のことです。
溶接のための機器や道具を用いて作業します。
ボルトやナットなどを用いてつなぎ合わせる機械的接合の場合、多くの部品を用意して切断や加工、ボルトやネジを締める作業などが必要です。
これに対して溶接加工を行えば、作業工程が少なく、ボルトやネジなどの部品も必要ありません。
溶接工事のメリット
溶接工事は、作業工程が少なく、ボルトやナットなどの部品が必要ないことを確認しました。
そのほかのメリットについて、以下でご紹介します。
溶接工事は、金属パーツ同士を熱で融解して一体化させるので、ボルトやネジでつなぐ場合と比べて、つなぎ目がなくシームレスな仕上がりになります。
気密性が高まり、水漏れのリスクを低減し、外部から水や異物などが混入するリスクも防げるのがメリットです。
また、ボルトやナットなどの部品が不要なので、溶接によって加工されたアイテムは、より軽量化が可能です。
建物への負担を軽くしたい時などにも、適した工法です。
ボルトやネジなどでつなぎ合わせる工法と違って、自由度も高く、複雑な形状の加工にも適しています。
鍛冶工事との違い
鍛冶工事は、鉄骨を溶接によって変形、加工させる工事のことです。
鉄骨の柱の制作や階段の手すりなどを取り付けるなど、建設現場でもニーズの高い工事です。
鍛冶工事でも溶接工事を行いますが、鍛冶工事はさらに作業が幅広く、溶接しながら足場を組み立てたりパーツの組み立てなども行います。
これに対して、溶接工事は溶接作業のみを指すのが一般的です。
つまり、鍛冶工事の一環として溶接工事が位置づけられるイメージです。
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溶接工事の種類
溶接工事の種類は多様な方法があり、細かく分けると60種類以上にものぼります。
多くの種類がある中で、大きく種類分けした際、3つに分けることが可能です。
その3種類とは、融接・圧接・ろう接です。
それぞれの工法について見ていきましょう。
融接
接合したい対象物を融かす、また、対象物を接合するための溶接棒と対象物を融かしてから接合する方法です。
一旦は融解してから接合するので、幅広いものの加工に対応できます。
厚みがあるもの、大型のものなど、柔軟に対応できるので、溶接法の種類の中でも最も多用されています。
よく利用されているアーク溶接、レーザー溶接、ティグ溶接も融接の工法の一つです。
一度融解して接合するので、対象物同士が一体化します。
そのため、結合強度を高めることができます。
また、ほかの工法に比べても工程数が少なく済み、短時間での加工が可能です。
一方、短時間で接合することから、溶接の欠陥が生じることや短期間で材質が変化しやすいという欠点も存在します。
この欠点を防ぐには、溶接工の技術の高さや経験が求められます。
逆にいうと、溶接工の技量により、施工品質にばらつきが生じるおそれがある方法です。
圧接(加圧溶接)
金属同士の表面を密着させ、そのつなぎ目に超音波による熱や圧力、摩擦などを加えます。
その後、つなぎ目部分を溶解させて一体的に接合する方法です。
加圧する際は機械を用いることが多く、工場内での作業となるケースも少なくありません。
機械のオートメーション化が進み、機械で数値を制御することで品質の安定化を図ることが可能です。
熟練の溶接工でなくても高品質な加工ができるので、スピーディーかつ効率的に、大量生産したい時に適しています。
融接のように一旦融かして液化することなく、個体のままで接合できるので、材料のダメージを抑えられるのがメリットです。
薄板の加工に適する一方、厚板の加工は難しく、圧力が一定に加えられない複雑な形状の加工には向いていません。
ろう接
ろう接は伝統的な溶接法です。
ガスバーナーなどでつなぎ目の役割を果たす部材を融かし、それを接着剤のように用いて部材同士を接着させる工法です。
接合したい部材の種類が異なっても接合させることができ、互いの厚みが異なっても接合させることが可能です。
ろう接のカギとなる接着剤の役割を果たす溶加材は合金が用いられます。
溶加材として用いる合金は、接合したい金属より融点が低いものを用いることが必要です。
これにより、接合する金属を融かすことなく、性質を保ったままで接合することができるからです。
ろう接の工法は、複雑な形状の部品をつなぎ合わせたい時や一度に多くの部分をつなぎ合わせたい時にも有効となります。
また、金属同士の接合に限らず、金属と非金属を接合させることもできます。
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溶接工事に必要な建設業許可
溶接工事を行う会社を立ち上げたい時、どのような種類の建設業の許可を受けなくてはならないのでしょうか。
結論から言うと、溶接工事を行うにあたって建設業の許可は不要です。
しかし、取引先から信頼を得て、より大きな工事の依頼を受けるためや会社の規模を大きくしていくうえでは、建設業の許可を得ておくのが理想です。
では、どのような種類の建設業の許可を得るべきでしょうか。
溶接工事が行われる業種
建設業の許可の種類を検討するには、自社がどのような業種の溶接工事に対応しているかを検討することが必要です。
大きく分けると、3つの業種が考えられます。
トビ・土工・工事業
1つ目は、トビ・土工・工事業の建設業許可です。
鉄骨や鋼板の溶接、工事現場で加工された鉄骨などを組み立てる工事のみに対応するなら、トビ・土工・工事業の建設業の許可を申請しましょう。
鋼構造物工事業
2つ目は、鋼構造物工事業の建設業許可です。
鉄骨などの制作や加工から、組み立てまで一貫して請け負う場合には、鋼構造物工事業の許可を申請しましょう。
鉄筋工事業
3つ目は鉄筋工事業の建設業許可です。
鉄筋の溶接に対応するなら、鉄筋工事業の許可を取得しておくのがおすすめです。
許可取得の方法
では、許可取得の方法を見ていきましょう。
まずは許可を得るための要件を満たしているかの確認が必要です。
要件を満たさない部分があれば、満たすようにしましょう。
そのうえで、必要書類などを準備し、申請を行いましょう。
単独で申請が難しい場合は、建設業の許可取得に強い行政書士に相談するのがおすすめです。
許可申請の要件
3種類の許可に共通する要件は以下の通りです。
- 経営を行う管理責任者および、専門の資格を持つ技術者がいること
- 請け負う契約に誠実性があり、財産的基礎や金銭的な信用があること
- 経営を行う管理責任者は許可を得たい業種で5年以上の経験がある、または、それ以外の建設業で6年以上の経験があること
専門の資格を持つ技術者とは、要件はいろいろありますが、代表的なのは1級土木施工管理技士や1級建築施工管理技士などです。
申請の流れ
複数の都道府県で営業所を置くなどして事業を行う時には、国土交通大臣許可が必要です。
この場合の申請先は、管轄する地域の地方整備局です。
1つの都道府県のみで事業を行う場合には、都道府県知事の許可が必要になります。
各県庁の建設部や土木部の管轄部署に申請を行います。
申請の流れは以下の通りです。
- 許可申請に必要な書類を手に入れる
- 申請書を作成するとともに、必要書類や添付書類を準備する
- 担当窓口へ書類を提出し、事前審査を依頼する
- 事前審査に通ったら、正式に申請を行い手数料を支払う
- 審査結果が届くのを待つ
都道府県によって申請の流れや内容が異なる場合があるため、確認するようにしましょう。
東京都は事前審査を必ず受けなくてはなりません。
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まとめ
溶接工事は、建物の建設や足場組みなど、幅広い場面でニーズがあります。
工法の種類も豊富ですが、大きく分けると融接、圧接、ろう接があります。
溶接工事を行ううえで、取得しなくてはならない建設業の許可はありません。
ですが、会社としての信頼を得ることや大規模な工事を請け負っていけるよう、提供する工事のジャンルに応じて建設業の許可を取得しておくのがおすすめです。
考えられる主なジャンルとして、トビ・土工・工事業の許可、鋼構造物工事業の許可、鉄筋工事業の許可が挙げられます。
許可の申請を行うには、それぞれの許可に求められる要件を満たすことが必要です。
そのうえで必要な申請書類を作成し、添付書類を準備し、事前審査を依頼します。
事前審査に通ったら正式な申請を行い、手数料を払って審査結果を待ちましょう。
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