建設業を始めるにあたっては、国に許可を届け出なくてはいけません。
正式な許可をもらうためにはたくさんの手順を踏む必要があります。
またそれだけではなく、さまざまな要件もクリアしなくてはいけません。
今回は、それらの要件や手順を詳しく解説していきましょう。
建設業許可とは
日本では、あらゆる業種を始めるためには許可をもらう必要があります。
逆に許可をもらわないまま営業を行うと犯罪にあたり、逮捕されてしまう可能性もあるでしょう。
たとえば、飲食業を始めるためには飲食業許可をもらわなくてはいけません。
同じように、建設業では建設業許可が必要です。
軽微な建設工事とは
このように、建設業許可は業者にとって不可欠と言えるものなのですが、例外も存在します。
国土交通省では、「軽微な建設工事」の場合は建設業許可は必要ないと定めています。
では、軽微な建設工事とは具体的にどういったケースを言うのでしょうか。
国土交通省では、工事代金が1,500万円以上、もしくは工事面積が150平方メートル以上だった場合は建設業許可が必要になると明示しています。
逆に言えば、これらの条件を超えない限りは「軽微な建設工事」の範囲内です。
建設業許可の種類
建設業許可は一律ではありません。
これからどんな形態で営業を続けていくかによって、もらうべき許可が変わってきます。
自分がやろうとしている事業がどんなものなのかを見直したうえで、もらうべき許可を選ぶようにしましょう。
大臣許可と知事許可
通常、拠点を置いている場所だけで細々と営業を続けていく場合には、わざわざ国に許可をもらいに行く必要はありません。
県に許可をもらいに行く知事許可だけで十分です。
一方、大きな建設業者になれば、拠点を置いている場所から他県に行って建設工事を行うケースもあるでしょう。
その場合は、しっかりと国に申請を行い、大臣許可をもらう必要があります。
一般建設業と特定建設業
建設業は発注業者からもらう建設代金の多寡によって、一般建設業と特定建設業に分かれます。
工事代金が4,500万円を超えない場合は、特定建設業として扱われます。
一方で、これを超えた場合は一般建設業です。
業種
これからどんな種類の工事を行おうとしているかによってももらうべき許可は変わってきます。
逆に言えば、以下に記されている許可をもらっていない場合は工事をすることはできません。
たとえば、専門工事の中で、ガラス工事の許可をもらったとしましょう。
その場合は、ガラス工事だけは請け負うことはできますが、ほかの工事は請け負うことはできません。
仮に解体工事も合わせて引き受けようと思ったのならば、別途解体工事の許可をもらう必要があります。
一式工事
- 建築一式工事
- 土木一式工事
専門工事
- ガラス工事
- 造園工事
- 浚渫工事
- 管工事
- 左官工事
- 機械器具設置工事
- 解体工事
- 清掃施設工事
- 消防施設工事
- 水道施設工事
- 塗装工事
- 内装仕上げ工事
- 舗装工事
- 屋根工事
- 電気工事
- 電気通信工事
- 大工工事
- とび・大工工事
- 鑿井工事
- 鉄筋工事
- 板金工事
- 建具工事
- タイル・レンガ・ブロック工事
- 石工事
- 鋼構造物工事
- 熱絶縁工事
- 防水工事
建設業許可の要件
建設業許可をもらうためには、ただ申請をすれば良いというものでもありません。
申請しただけで許可がもらえるなら、あらゆる業者がチェックなしに営業できるようになってしまいます。
中には悪徳業者も混ざってしまって、歯止めがかかりません。
それを防ぐために、事前チェックとしてさまざまな要件が設けられています。
建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者
ずぶの素人がいきなり建設会社を立ち上げてもすぐに倒産するのがオチでしょう。
それを防ぐためにも、ある程度の能力を備えているかどうかをチェックされる必要があります。
といっても、建設現場で働いている様子を調査されて能力を見極められるというわけではありません。
経営業務の管理責任者等の設置
経営をするうえでは、社長やCEOのような管理責任者を置くことが欠かせません。
もっとも、誰でも管理責任者になれるというものではなく、会社を作る前に一定期間管理責任者として働いた経験を持っていることが必須条件になります。
具体的な期間は5年で、ほかにも役員経験が5年、管理責任者の補佐経験が6年などの条件が設けられています。
裏を返せばこれまで一度も建設業に携わったことのない人は建設業許可をもらうことはできません。
建設管理責任者は一人いれば十分です。
適正な社会保険への加入
これに加えて、会社自体が社会保険に加入している必要があります。
特に建設業のような危険を伴う業界では、いつ労災が起こるとも限りません。
そういった事故がいつ起きてもしっかりと保証できるような体制を整えておく必要があります。
専任技術者
建設業のように専門的な技術を要する業界の場合は、さらに専任技術者が在籍している必要があります。
全体の業務を技術的観点から監督できる専任技術者がいないと建設はできないでしょう。
ちなみに、専任技術者とみなされる条件は一般建設業と特定建設業で変わってくるので注意してください。
一般建設業の場合
代金が高額の工事を請け負う一般建設業の場合、専任技術者になれるかどうかは実務経験が欠かせません。
たとえば、専門学校を卒業したのち、5年以上実務経験があれば専任技術者とみなされます。
このほか、高卒もしくは大卒かなどで必要な実務経験の期間は変わってくるので、必ずチェックするようにしましょう。
特定建設業の場合
工事代金の少ない特定建設業の場合は、年数ではなく資格を持っているかが欠かせません。
このほか、大臣特別認定者も専任技術者になれます。
専任技術者に関する記事はこちら
誠実性
ややアバウトな要件ではありますが、誠実に業務をこなせるかどうかも許可をもらううえでは重要です。
この点は申請を丁寧に行っているか、そのほかの要件をしっかり満たしているかなどで測られるでしょう。
財産的基礎等
会社を作るうえでは元手となる資本金が欠かせません。
ただ、建設業の場合は、この資本金が一定以上を超えていない場合は許可をもらえない可能性があります。
一般建設業
一般建設業の許可をもらうために必要な自己資本金は500万円以上です。
ただ、許可をもらう段階で500万円以上お金を持っている必要はありません。
銀行などからの融資で今後500万円以上の資金が調達できる見込みがあると保証できれば要件はクリアできます。
特定建設業
特定建設業の場合、必要な自己資本金は一般建設業に比べてやや高く、2,000万円以上4,000万円以下となっています。
建設業界の法律・制度に関連する記事はこちら
建設業許可の欠格要件
以上、建設業許可をもらううえで必要なさまざまな要件を見てきました。
ただ、場合によってはこれらの要件をクリアしていても許可をもらえないケースが存在します。
たとえばこれまで建設業許可をもらっていたものの、なんらかの不祥事を起こした結果、許可を剥奪された会社があるとしましょう。
こういった会社は、いかに要件をクリアしていても5年間改めて許可を申請することはできません。
こういった阻害要因を欠格要件と呼びます。
ほかにも、経営者が逮捕されていたり、暴力団関係者だったりといったケースが欠格要件として定められています。
建設業許可申請の手順
自分たちがどんな業種の許可を取るべきなのか、あるいは許可をもらうための要件を満たしているかは確認できたでしょうか。
それが終わったらいよいよ建設業許可を申請しにいきましょう。
許可の申請書はどこでもらいに行けば良いか、手数料は必要なのかといったことも解説していきます。
許可申請書と添付書類の準備
そもそも、建設業許可の申請は行政許可庁という機関に届け出なくてはいけません。
許可申請書もそれぞれの地域に設けられている行政許可庁にもらいに行く必要があります。
もっとも、行政許可庁は47都道府県すべてにあるわけではありません。
そのため、最寄りに行政許可庁がない場合は、ホームページを活用してテンプレートをダウンロードしましょう。
また、建設業許可をもらうためには申請書だけでなく、添付書類を用意する必要があります。
添付書類は膨大で、誓約書、工事経歴書などたくさんの書類を用意しなくてはいけません。
予備審査・申請書の提出
通常行政関係の書類は、提出したら後は審査に任せるだけです。
一方で、建設業許可の場合は提出とともに予備審査を受けなくてはいけません。
申請書類や添付書類に記されている内容が本当に正しいのかどうかをここでチェックされます。
仮に虚偽の内容が記されていたら欠格要件とみなされるので、くれぐれも事前にチェックするようにしましょう。
手数料の納入
申請書の提出とあわせて、許可をもらうためには手数料を支払わなくてはいけません。
手数料の額は大臣許可と知事許可で変わってきます。
大臣許可の場合
大臣許可の場合は、15万円の手数料を用意する必要があります。
ちなみに、こういった手続きをする場合は現金ではなく収入印紙で支払わなくてはいけません。
郵便局に行ってあらかじめ買っておくようにしましょう。
知事許可の場合
知事許可の場合は、大臣許可よりも少なく、9万円の手数料で済みます。
また、大臣許可と知事許可にかかわらず、諸々の事務手数料として余計に3,000円支払わなくてはいけません。
建設業許可を申請する際の注意点
ここまで、建設業許可をもらうために必要なさまざまな条件を見てきました。
要件を満たし、必要な書類を一式提出できれば、おおむね許可はもらうことができるでしょう。
ただ、書類を提出すればもう一安心というわけではありません。
建設業許可には、さまざまな注意点がありますので、最後にこれらを確認しておきましょう。
有効期限は5年
建設業許可は、一度もらったら後は会社が倒産しない限り永久に営業できるというものではありません。
許可証には有効期限があり、5年ごとに更新する必要があります。
有効期限が来るのを見落としたまま更新を怠った場合は罰せられる可能性もあるので、絶対に忘れないようにしましょう。
申請から取得までは1~3ヶ月
先ほども紹介したように、建設業許可をもらうためには大量の添付書類を提出しなくてはいけません。
申請が一件しかないならともかく、行政許可庁には日々たくさんの申請が寄せられています。
そのため、それらの書類に不備がないかどうかを確認する作業には相当な時間をかけなければいけません。
許可証を取得するためには、だいたい1ヶ月から3ヶ月かかると見込んでおきましょう。
当然ながら、その間工事を受注することはできません。
許可証をもらう前に工事に手をつけることがないようスケジュール調整をしっかりと行っておきましょう。
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まとめ
今回見てきたように、建設業許可をもらうためには大変困難な手続きを経なくてはいけません。
それも当然で、建設業は時に命に関わる業務を行う必要があります。
こういった膨大な手続きは、責任の重大さを理解しているかどうかを測るためのテストとも言えるでしょう。
事の重大さを理解しながら申請書を書くようにしましょう。
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