【2023年最新】アスベスト法改正で何が変わる?背景や改正内容について解説

【2023年最新】アスベスト法改正で何が変わる?背景や改正内容について解説

かつて多くの建物に使用されていたアスベストについてご存知でしょうか。
アスベストによる健康被害が社会問題化したことなどを受け、アスベスト法が制定されました。
今回は、アスベスト法や2023年の法改正について、詳しく説明していきます。

アスベストとは


アスベストとは、石綿とも呼ばれる、天然の「繊維状ケイ酸塩鉱物」の総称です。

アスベストの繊維は非常に細く、周囲に広がり、人々が吸いこんでしまうおそれがあります。
吸い込まれたアスベストは、肺がんや悪性中皮腫などの健康上の悪影響を及ぼすことで知られています。

そのため、日本国内では、労働安全衛生法により2006年9月から、石綿及び石綿をその重量の0.1%を超えて含有するすべての物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が認められていません。

e-Gov法令検索『労働安全衛生法』

アスベストに関連する法律

アスベストは深刻な健康被害で知られるため、多くの法律で取り扱いが厳重に定められています。
アスベストについて定める内容のある法令として、以下が挙げられます。

  • 労働安全衛生法・同施行令・労働安全衛生規則
  • 石綿障害予防規則
  • 大気汚染防止法・同施行令・同施行規則の概要
  • 作業環境測定法・同施行令・同施行規則
  • じん肺法・同施行規則
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)・同施行令・同施行規則
  • 建築基準法
  • 宅地建物取引業法・同施行規則
  • 建築リサイクル法

  • 施工管理システム

アスベスト調査の義務化

アスベストが及ぼす健康被害の懸念から、『大気汚染防止法の一部を改正する法律(改正大気汚染防止法)』が2021年4月に施行され、建築物の解体工事の際にはアスベスト調査が義務化されることとなりました。

e-Gov法令検索『大気汚染防止法』

アスベスト調査義務化の背景

アスベスト調査の義務化の詳細な背景について、みていきましょう。

健康被害の深刻化

石綿による健康被害の深刻化は、最も大きな要因であると言えるでしょう。
前述の通り、吸い込まれた石綿は肺に蓄積し、肺がんや悪性中皮腫、石綿肺を引き起こします。

更に困難なことに、石綿を吸い込んでから症状が現れるまでにはおよそ30~40年かかると言われています。
忘れた頃にやってくる健康被害を防ぐためにも、アスベスト調査は必須です。

解体回収工事の増加

2020年代以降は、高度経済成長期に建てられたアスベストを含む建物が耐用年数を迎え、解体工事の急増が予想されます。
アスベストが相次いで飛散しては困るので、あらかじめ防ぐことは必須だと言えるでしょう。

過去の改正内容

大気汚染防止法の一部を改正する法律(改正大気汚染防止法)の過去の改正内容をみていきましょう。

2021年の改正内容

2021年の主な改正内容は、以下の通りです。

  • 調査方法の明確化:書面調査と目視調査、有無が不明な場合は分析調査が必要。
  • 調査結果の保存:調査結果の記録と3年間の保存が必須。
  • 調査結果の掲示・説明:調査結果を作業現場に掲示し、発注者にも説明する。
  • 作業計画・作業記録の作成:作業計画、作業後の記録・保存、その発注者への報告が義務。

2022年の改正内容

2022年4月には、電子システムを利用して事前調査の結果を行政へ報告することが義務化されました。

以下に当てはまる工事は、アスベストの有無に関わらず、報告が必要です。

  1. 解体部分の床面積が80m2以上の建築物の解体工事
  2. 請負⾦額が税込100万円以上の建築物の改修工事
  3. 請負⾦額が税込100万円以上の特定の工作物の解体工事・改修工事
環境省『改正大気汚染防止法について(令和2年度)』

2023年の法改正

大気汚染防止法の新たな改正内容が、2023年10月より施行されています。
どのように改正されたのかみていきましょう。

有資格者による調査が必須に

2023年10月1日以降に着工の工事では、建築物の解体等の作業を行うときは、建築物石綿含有建材調査者、もしくは2023年9月30日以前に日本アスベスト調査診断協会に登録された者による事前調査が行われる必要があります。

厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト『建築物石綿含有建材調査者』

これまでは、無資格者であっても調査が可能でしたが、2023年10月1日以降は、無資格による事前調査は違法です。

また、建築物石綿有建材調査者に関連して、現場作業をうけもつ石綿作業主任者の設置、石綿取扱作業従事者への特別教育も法律により定められています。
彼らは事前調査の資格はもちませんが、工事に必要な存在です。

建築物石綿含有建材調査者の種類

建築物石綿有建材調査者には、以下の種類があります。

  • 一般建築物石綿含有建材調査者:一般建築物石綿含有建材調査者講習を修了した者で、全ての建築物の調査を行う資格をもつ。
  • 一戸建て等石綿含有建材調査者:一戸建て住宅および共同住宅の内部に限った調査(共有部分は除く)を行う資格をもつ。
  • 特定建築物石綿含有建材調査者:一般建築物石綿含有建材調査者の講習に加えて、実地研修や、口述試験を行った者で、全ての建築物の調査を行う資格をもつ。

建築物石綿含有建材調査者になるには

建築物石綿含有建材調査者の資格を取得するには、建築物石綿含有建材調査者講習を受講し、修了する必要があります。

建築物石綿含有建材調査者講習は、建築物石綿含有建材調査者講習登録規程に基づき、都道府県労働局に登録された機関で実施されます。

厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト『講習会情報』

規制対象が拡大

また、規制対象も新たに拡大されることとなりました。
アスベスト含有の建材は、以下の3つにレベル分けされています。

  • 【レベル1】石綿含有吹付け材
  • 【レベル2】石綿含有断熱材・石綿含有保温材・石綿含有耐火被覆材
  • 【レベル3】石綿含有建材(成形板・仕上げ塗材)

これまで、規制の対象となったのは、レベル1とレベル2でした。
しかし、2023年10月の法改正により、対象外だったレベル3も調査報告が必要となります。
これにより、一般の戸建住宅もアスベスト法の対象となりました。

  • 施工管理システム

アスベスト調査・除去工事の流れ

解体工事を行う際は、事前にアスベスト調査をし、その後、アスベストが含有されている場合は除去工事を行います。
それぞれ手順がありますので、よく確認してください。

アスベスト調査の流れ

実際にアスベスト調査をどのような流れで行うのか、みていきましょう。

必要に応じて専門家に依頼

アスベスト事前調査は、アスベストの知識と建物の調査に精通した専門家が行わなければなりません。
自社にそのような人材がいない場合は、外部の有資格者に依頼します。

具体的には、建築物石綿含有建材調査者、一般社団法人日本アスベスト調査診断協会に登録された者などが当てはまります。

書面調査および目視調査

対象となる建築物の施工図・設計図書などを用いた書面調査をまず行います。
建築された年によっては、アスベストの規制開始後かどうか照らし合わせることで、アスベスト使用の有無が分かることもあります。

目視による現地調査

書類へのアスベスト使用の記載がなかったり、改修・補修工事を行った際にアスベストを使用していたりする可能性もあるでしょう。

そのような可能性も踏まえ、現地での目視の調査も行う必要があります。
部屋ごと・部位ごとに細かく確認しましょう。

場合によっては、現地で採取したものを分析し、アスベストが含まれているか調べることも必要です。

報告と発注者への説明

調査結果をもとに報告書を作成し、労働基準監督署と地方公共団体に提出します。
オンラインでの提出が可能です。

発注者への説明工事開始の14日前までに行いましょう。
また、報告書は3年間の保存が義務づけられています。

アスベスト除去工事の流れ

事前調査が完了し、アスベストが含まれていた場合には、アスベスト除去工事を行います。
アスベスト除去工事の流れをご紹介します。

必要書類の届け出

事前調査の報告書のほかにも、届け出が必要なものがあります。
届け出の種類と期限は以下の通りです。

  • 建築物解体等作業届:工事の開始日まで
  • 特定粉じん排出等作業実施届:工事開始の14日前まで
  • 工事計画届:工事開始の14日前まで

近隣住民への挨拶

後のトラブルを防止するためにも、近隣住民への挨拶は欠かさず行いましょう。
挨拶の際には、工事内容についても説明します。

除去工事の実施

準備が完了したら、除去工事を実施します。

工事中は、すべての建材についてアスベスト含有の有無を工事現場に掲示しなければなりません。
もしアスベストが無かったとしても、調査結果を掲示します。
掲示は、施主ではなく元請業者が担当します。

廃棄

除去したアスベストは、特別管理産業廃物の「廃石綿等」として処理します。
収集や運搬、処分の方法が定められており、通常の廃棄物とは扱いが異なるため注意しましょう。

作業記録の作成・保管

除去工事にともない、作業記録を作成し、保管します。
1カ月以内ごとに記録を作成する必要があるため注意しましょう。
また、労働者が常時作業に従事しないこととなった日から、40年間保存しなければなりません。

アスベスト法改正の注意点

最後に、アスベストに係る法改正の注意点をご紹介します。

罰則に注意

アスベスト調査報告を怠ると、罰金などの罰則の対象となります。
アスベスト事前調査の報告を怠ると30万円以下の罰金、また、違法なアスベスト除去作業を行った場合も3月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されます。

また、後ほど説明する補助金制度にも申請できなくなるため、調査報告は必ず行うようにしましょう。

今後の法改正も要確認

今後の法改正の動きについても確認しておきましょう。
2024年4月1日より、石綿障害予防規則の一部が改正、施行されます。
「除じん性能を有する電動工具に関する措置の見直し」に関するものです。

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課『石綿障害予防規則の一部を改正する省令案の概要について(除じん性能を有する電動工具に係る措置の見直し関係)』

また、その他のアスベスト関連法も改正を繰り返しており、今後さらに改正がなされる可能性があります。
常に最新の情報を確認するようにしましょう。

補助金を活用しよう

アスベスト調査とアスベスト除去工事に対して、国が補助金制度を設けています。
補助金制度の有無や内容は、地方公共団体によって異なりますので、各自で確認してください。

厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト『補助金制度』

  • 施工管理システム

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まとめ

アスベストは、石綿とも呼ばれる天然の「繊維状ケイ酸塩鉱物」の総称で、深刻な健康被害を及ぼしうる大変危険なものです。

人々の健康と安全を守るため、多くの法律によって、扱いが定められています。
自分や周囲の人々を守るためにも、解体工事を行う際は定められた手続きに則って、適切な調査・工事を実施しましょう。

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AIPPEAR NET 編集部

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