業務において、できることなら避けたい状態の代表例が「属人化」です。
経営者やコンサルタントから1度くらい「属人化した現状を改善する!」「誰にでも仕事が出来るようマニュアルを作るように!」など指摘されたことがあるのではないでしょうか。
そこで今回は、属人化の原因と、属人化が起こることで発生するデメリット、さらに属人化の解消方法をご紹介します。
そもそも「属人化」とは?
属人化とは、特定の業務や知識が特定の個人に依存してしまい、その人でなければ対応できない状態になることを指します。
もともとシステム開発におけるプロジェクト管理や、運用保守などの現場で使われることの多かった言葉ですが、最近は業種を問わず、「この業務は○○さんじゃないと出来ない!」「今日は○○さんが休みだからこの業務には対応できない!」というようなケースを指して属人化と言われます。
属人化に関する記事はこちら
「属人化」によるリスクとデメリットとは?
属人化は言葉のとおり、「業務が特定の誰かにしか分からない状態」を作り出します。
その業務に関する情報やスキルを一部の担当者だけが持っていることになるので、様々な問題が発生します。
業務効率が下がる
属人化してしまった業務は、担当者の不在によってすべてストップします。
業務が進まなくなることは当然のこと、その担当者が急に退職してしまったら対処のしようがありません。
業務の品質を管理できない
属人化している業務のことは他の社員には共有されていないので、担当者以外詳しい状況が理解できません。
そのため、業務評価を下す上司や、同じプロジェクトを連携してサポートする社員が業務の品質を確認することができなくなります。
社内コミュニケーションの悪化
属人的な業務をしてしまっている場合、その担当者に対する不満があっても業務が分からないために伝えることが難しくなります。
結果として部署全体の風通しが悪くなってしまうケースがあるので、マネージャーにとってあまり良い状態とはいえません。
「属人化」の原因は?

ここまで属人化の概要とデメリットをご紹介しました。
ではなぜ、属人化が発生してしまうのでしょうか。属人化の発生要因は以下の3つが挙げられます。
- 高度な業務であるため対応できる人が限られる
- 多忙のため振り返る時間がない
- 属人化することで地位を守りたい
順に詳しく見ていきましょう。
原因①:高度な業務であるため対応できる人が限られる
一つ目の原因は、高度な業務や緊急性の高い業務である為、対応できる人が限られる点にあります。
顧客へのクレーム対応や緊急メンテナンスなどの業務は、素早い対応が求められるので「分かる人」が対応せざるを得ないことがあります。
その都度情報を蓄積できればある程度までは対応できますが、内容がテンプレート化できないような高度な知識が必要な場合、やむをえず属人化するケースがあります。
原因②:多忙のため振り返る時間がない
2つ目の要因は、担当者が多忙であるため、結果として属人化しているケースがあります。
時間さえあればマニュアル作成や作業方法の共有といった標準化を行うことができますが、このような時間を十分に確保できず、属人化してしまいます。
原因③:属人化することで地位を守りたい
稀ですが、自身の業務をあえて属人化することで現時点の立場・地位を守ろうとする担当者がいるケースもあります。
上記の場合、新しい社員を育てることが難しく、もし出来ても優秀な社員は住みよい職場を求めて退職してしまいます。
属人化しているために担当者のミスも見えづらく評価が下がりにくいため、担当者自身が属人化を改善しようとはしない悪循環に陥ってしまいます。
「属人化」の解消方法とは?
ここまで、属人化が発生する理由を見てきました。
発生した属人化を解消する為には以下のような対策方法があります。
- 業務フローを「見える化」する
- マニュアルを作成する
- 適切な情報共有が出来るツールを用意する
- 責任を分散する
これらの対策方法について詳しく見ていきましょう。
属人化の解消方法について更に詳しい記事はこちら
業務フローを「見える化」する
一つ目に有効な手段は、業務フローを「見える化(可視化)」することです。
まずは全体の業務フローを洗い出して、どの部分がブラックボックス化しているかを確認しましょう。
業務別にフローチャートを作成するのも有効です。
マニュアルを作成する
業務フローを可視化したら、標準化したい業務ごとにマニュアルを作成しましょう。
まずは簡易的なマニュアルで構いません。
業務にあたる担当者との共有方法を明確にしておけば、マニュアル初稿のブラッシュアップを通じて少しずつ業務の標準化を行うことが可能です。
Excel等のツールは活用スキルにばらつきが生じる為、マニュアル作成としては不向きです。
クラウドツールなど、様々なマニュアル作成ツールを活用してみましょう。
マニュアル作成に関する記事はこちら
適切な情報共有が出来るツールを用意する
業務を管理する上で、クラウドツールといった情報共有に適したツールを導入すると、更に属人化の解消につながります。
マニュアルを作成しても、それが適切に行われているかをアナログで管理していては、また属人化・ブラックボックス化が再発します。
こうした状況を防ぐために、業務に関する情報(ノウハウ・進捗状況など)を適切に共有できる管理システムを用意することをおすすめします。
情報共有ツールに関する記事はこちら
責任を分散する
最後の解消方法は、責任や権限を分散し、特定の人にしかできない業務を減らすことです。
業務が属人化するきっかけの1つに、権限が集中しているせいで当事者しか業務が行えないというものがあります。
このケースは、同時に「権限がない社員が改善に乗り出さない」という意味でもあります。
業務の責任を分担して、半強制的に改善に乗り出しましょう。
また、業務に関わる全員で「振り返り会議」を行うことも有効です。
振り返りを行っていけば、議題は自ずと属人的な業務に関することになります。
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属人化によるメリットはある?全て解消すべき?
ここまで属人化について、要因や解消方法を述べてきました。
様々な経営者やコンサルタントはこれらの情報をもとに「もっと標準化すべき!」と説きます。
様々なマニュアルを用意したり、特定の社員に業務が集中しないようマネジメントしたり、次世代が育ちやすい社内教育制度を充実させたりと、やれることはたくさんあります。
でも、属人化された業務は本当にすべて「標準化」してしまうべきなのでしょうか?
実際のところ、属人化にも良いものと悪いものがあり、良いものは標準化を試みればむしろ業務効率が下がってしまうことがあります。
属人化が効果を発揮するケース
業務が個人に属していることで効果を発揮するケースは以下の通りです。
【属人化が望まれる条件】
・知識やスキルに専門性があり、習得に時間がかかる業務
・個人の「個性」が効果を発揮する業務
・その場その場で対応が変わる不確定要素が多い業務
【具体例】
・接客、販売
・設計
・高度な技術を要するシステム開発・保守など
これらのケースでは、標準化しようにも基本業務からイレギュラー対応まで様々な条件を洗い出す必要があるため数週間~1か月かかることもざらで、仮に標準化できたとしても業務の質が下がってしまいます。
属人化状態で生産性が上がる業務に関しては無理に標準化を試みるのではなく、属人的な業務を担当するスタッフをどうフォローするか考えましょう。
業務の引継ぎは常に意識すること
上記のように効果的なケースでも、今担当している社員が生涯ずっと同じ業務を出来る保証もありません。
業務の質的に膨大な情報を引き継ぐことが想定されます。
急なトラブル等で急な担当変更に追われないように、業務引継ぎのための情報蓄積は日ごろから行うように心がけましょう。
属人化で効率が下がるケース
業務が個人に属していることで効率が下がったり、お客様に迷惑をかけてしまうものは積極的な標準化が必要です。
そのような「悪い属人化」の条件は以下の通りです。
【属人化を改善すべき業務】
・業務手順が明確で変更の無いもの
・専門性や個性などに業務が左右されないもの
・各所の連携が必要でブラックボックス化が許されないもの
【具体例】
・ルーティンワークが含まれる事務業務
・承認フロー
・固定できる見積作成など
属人化で最も気を付けるべき「ブラックボックス化」
ブラックボックスとは、一言で言えば「業務そのものは遂行できるものの”どうやって遂行しているか”が見えない状態」です。属人化することで「この業務はあの人しかやり方や状況を知らない」状態になることをブラックボックス化している状態と言います。
ブラックボックス化=情報の囲い込みこそが属人化において最も気を付けるべき事態です。これが発生してしまうと、業務によっては様々なトラブルが発生します。
【ブラックボックス化した職場で起きうるトラブル】
・社内情報の共有不足による、お客様への対応スピード低下
・経理処理の遅延
・サービス提供内容や品質が担当者毎に違ってしまう
ブラックボックス化現象を発生させないためにも、属人化を防ぐ取り組みは大いに有効です。
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まとめ
今回は、業務において有効に働く属人化とそうでない属人化の両方を紹介しました。
この点を知らずに属人化をすべて悪と断じてしまうと、場合によっては「現場を知らないマネージャー」の烙印を押されてしまうかもしれません。
まずは、業務をフローチャートで見える化してから、属人化しているものをあぶり出しましょう。
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