「工事担任者」という資格をご存知でしょうか。
聞いたことはあっても、どのような資格で、資格を取得することで何ができるのかについて知っている人はあまり多くないかもしれません。
ここでは、工事担任者という資格の概要や取得することのメリットをご紹介します。
工事担任者とは
「工事担任者」とは、電気通信設備や通信端末設備などの配線接続工事を行うことができ、また工事の監督責任者になることができることを証明する国家資格です。
工事担任者は略称であり、正式には「電気通信設備工事担任者」という資格です。
具体的には、
- 企業や家庭の通信機器をインターネットに接続するための光ファイバーケーブルの回線工事
- ケーブルテレビの回線工事
- 企業内のLANケーブルネットワークの配線工事
などを行うことができます。
ネットワーク工事は、近年のデジタル化が進む社会においては欠かすことのできない工事です。
つまり、工事を実施・監督する工事担任者の必要性は高まる一方です。
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工事担任者の資格者証の種類

工事担任者の資格者証は5つに分類され、それぞれに担当できる工事・監督の範囲が異なります。
工事担任者資格試験は、2021年4月から新しい制度のもとで実施されるようになりました。
これに伴い、各資格者証の名称も変更しているので注意しましょう。
第一級アナログ通信(旧:AI第一種)
以下の工事や監督を行う際に必要な資格です。
- アナログ信号の入出力を行う電気通信機器設備(アナログ伝送路設備)を端末設備等に接続するための工事
- 総合デジタル通信設備を端末設備等に接続するための工事
第二級アナログ通信(旧:AI第三種)
第一級アナログ通信の下位資格で、基本的には第一級アナログ通信と同じ工事・監督を行うことができます。
ただし、アナログ伝送路設備、総合デジタル通信設備端末設備のどちらについても、収容される電気通信回線の数が1つのものに限られます。
第一級デジタル通信(旧:DD第一種)
デジタル信号を入出力することができる電気通信回路設備(デジタル伝送路設備)を端末設備等に接続するための工事・監督が行えます。
ただし、総合デジタル通信設備には端末設備等を接続することはできません。
第二級デジタル通信(旧:DD第三種)
第一級デジタル通信と同様、デジタル信号を入出力することができる電気通信回路設備(デジタル伝送路設備)を端末設備等に接続するための工事・監督が行えます。
しかし、信号の入出力速度が毎秒1ギガビット以下でインターネット接続のための回線工事に限られます。
また、総合デジタル通信設備には端末設備等を接続することはできません。
総合通信(旧:AI・DD総合種)
デジタル伝送路設備、またはアナログ伝送路設備に端末設備などをつなぐ工事を実施・監督することができます。
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工事担任者資格取得のメリット
現在電気通信サービスに携わっている、または将来関わりたいと考えている人も多いでしょう。
このような人が工事担任者の資格を取得することによって、どのようなメリットがあるのでしょうか。
技術力に対する信頼を得られる
工事担任者の資格を保有しているということは、取りも直さず通信設備や通信回線に関して十分な知識やスキルを持っていることの証明となります。
顧客側から見れば、工事を依頼する時に工事担任者資格を保持している工事者とそうでない工事者であれば、前者に工事を依頼したいと思うのは当然のことでしょう。
顧客に安心感や信頼感を与え、事業者としてアピールすることができるというのは、資格を取得することによって得られる大きなメリットです。
昇進・転職に有利
社会的にデジタル化が急速に進む中で、電気通信工事に携わることのできる工事担任者のニーズは右肩上がりです。
そのため、魅力的な条件で転職できるチャンスも今後さらに増えていくと考えられます。
工事担任者の資格を持っていれば、他業界からの転職でも不利になることはないでしょう。
また、そのような人材であれば、当然ながら現在在籍している会社としても確保しておきたいはずです。
そのため、キャリアアップや待遇アップにもつながりやすくなります。
情報通信エンジニアの受験資格を得られる
情報通信に関わる高い技術を持っていることを証明できる資格に「情報通信エンジニア」という資格があります。
この資格は、工事担任者の地位や技術の向上を目的とした認定資格であり、工事担任者の資格を保有していることが受験資格です。
情報通信エンジニア資格の取得を目指すのであれば、工事担任者の資格を取得することはメリットになります。
主任技術者の要件を満たすことができる
「主任技術者」は、工事現場で施工管理や監督にあたる技術者のことです。
主任技術者になるためには、担当する工種に応じた1級もしくは2級国家資格、あるいは一定以上の実務経験があるなどの要件を満たすことが必要です。
2021年度から工事担任者は、要件を満たすことで主任技術者となることができるようになりました。
適用のための3つの要件
主任技術者としての適用条件は次の3つです。
- 工事担任者の5つの資格者証のうち「総合通信」又は「第一級アナログ通信及び第一級デジタル通信」の資格者証を保有していること
- 令和3年4月1日以降(全科目免除申請の場合は令和3年2月分申請以降)に合格し、交付を受けた者
- 「総合通信」は交付日以降、「第一級アナログ通信及び第一級デジタル通信」は直近の交付日以降において3年間の実務経験を有する者
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工事担任者 定期試験の概要
工事担任者定期試験は、次の通りに実施されます。
試験種別
- 総合通信
- 第一級アナログ通信
- 第一級デジタル通信
試験日
第1回 | 令和7年5月25日(日) |
---|---|
第2回 | 令和7年11月23日(日) |
申請受付期間
第1回 | 令和7年2月1日(土)~2月21日(金) |
---|---|
第2回 | 令和7年8月1日(金)~8月21日(木) |
試験手数料
14,600円 (1試験種別当たり)
全科目免除の場合は9,400円
試験科目・出題方式
試験科目 | ①電気通信技術の基礎 ②端末設備の接続のための技術及び理論 ③端末設備の接続に関する法規 |
---|---|
出題方式 | 択一方式(マークシート方式) |
試験地
以下の16地区で実施されます。
札幌、青森、仙台、さいたま、東京、横浜、新潟(第2回のみ)、金沢、長野(第1回のみ)、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇
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CBT方式による工事担任者試験の概要
CBT(Computer Based Testing)方式とは、コンピューターを使った試験方法です。
試験の概要を、以下で確認していきましょう。
試験種別
- 第二級アナログ通信
- 第二級デジタル通信
試験日
令和5年4月1日から令和6年3月31日まで通年で実施されます。
ただし、確認票(受験票)発行日から90日以内に受験する必要があります。
申請受付期間
通年(年末年始を除く)で24時間受付されています。
試験手数料
9,800円 (1試験種別当たり)
全科目免除の場合は6,300円
試験科目・出題方式
試験科目 | ①電気通信技術の基礎 ②端末設備の接続のための技術及び理論 ③端末設備の接続に関する法規 |
---|---|
出題方式 | 択一方式 |
試験地
全国47都道府県の約300の試験会場から選択できます。
受験者は、ホームページから試験会場を選択します。
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工事担任者試験の合格率・難易度
工事担任者試験の合格率は以下の通りです。
年度 試験種別 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和6年度 第1回 | 3,671 | 952 | 25.9% |
令和6年度 CBT上期 | 2,019 | 1,050 | 52.0% |
令和6年度 第2回 | 4,063 | 990 | 24.4% |
CBT試験は比較的合格率が高く、合格しやすくなっています。
施工管理技士試験などの試験合格率が、40~50%程度であるのと比較すると、定期試験に関してはやや合格率が低く、難易度が高い試験であるといえるでしょう。
工事担任者に関するよくある質問
- 資格には有効期限がありますか?
-
いいえ。一度取得すれば更新の必要はありません。ただし、技術や法律の変化に対応するため、継続的な学習が推奨されます。
- 資格の勉強時間はどのくらいですか?
-
工事担任者試験の勉強時間は、DD第三種で30~50時間、DD第一種で100~150時間が目安です。過去問の反復とスキマ時間の活用が合格の鍵です。
- 試験の勉強方法にはどんなものがありますか?
-
過去問演習、参考書、通信講座、YouTube解説動画などがあります。特に過去問の反復練習が重要です。
まとめ
デジタル化する通信社会において、工事担任者の社会的役割は非常に大きく、活躍できるフィールドも広がっていくでしょう。
将来電気通信事業に関わる仕事に転職したいと考えている人にはおすすめの資格です。
また、資格を取得することで社内の地位や待遇のアップにもつながります。
機会があればチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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