建築設備の設計には、建築設備士の資格がなくても対応できる場合もありますが、近年では空調や換気などの快適性や安全性がますます重視されています。
そのため、建築設備士への需要は高まると考えられます。
この記事では、建築設備士の仕事内容や資格試験の難易度などについて解説していきます。
建築設備士の仕事内容とは?
建築設備士とは、空調、換気、給排水衛生、電気などの建築設備全般に関する高度な知識と技能を持つ資格者です。
建築士に対して、専門的な立場から設備設計や工事監理に関する助言・意見交換を行うことができる国家資格であり、国土交通大臣によって認定されています。
近年の建築分野では、単なる「設備の高度化」にとどまらず、省エネ・脱炭素化への対応や、健康・安全性の確保といった社会的要請が急速に高まっています。
その中で建築設備士は、以下のような重要な役割を担っています。
- 建築物の省エネルギー性能を確保するための「省エネ計算」や「BELS申請」の支援
- ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)実現に向けた設備計画の立案
- 感染症対策として重要視される換気・空調設計の高度化
- 建築士との連携による設備計画の最適化
また、建築士法第20条第5項に基づき、建築設備士の意見を聴いて設計が行われた場合には、その旨を確認申請書等に記載することが可能です。
これは、建築設備士の関与が公的に評価される仕組みであり、専門家としての価値を示す重要なポイントです。
主な業務内容
建築設備士は、建物の快適性・安全性・環境性能を高いレベルで実現する専門職です。
特に近年は、省エネ性能や室内環境の質が重視される中で、その役割はますます重要になっています。
建築設備士の主な業務は以下の通りです。
設備設計
建築物の用途や条件に応じて、以下の設備を総合的に設計します。
- 空調・換気設備(温熱環境・空気質の最適化、感染症対策を含む)
- 衛生設備(給排水・ガス設備)
- 電気設備(電力・照明・通信)
- 消防設備(消火・警報システム)
また、近年は以下のような業務も重要です。
- 省エネ計算(外皮性能・一次エネルギー消費量の算定)
- BELS申請や各種省エネ認証のサポート
- ZEB化に向けた設備計画
CADソフトや専用の設計ツールを用いて、詳細な図面・シミュレーションを作成します。
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施工管理
設計図に基づき、設備工事が適切に施工されているかを確認・監督します。
品質・工程・安全の管理に加え、現場で発生する課題への技術的対応も行います。
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技術的アドバイス・意見交換
建築士や関係者に対して、設備に関する専門的な助言を行います。
特に、省エネ性能や環境負荷低減、快適性向上に関する提案が重要です。
また、建築設備士の意見を反映した設計は、確認申請において明示することができ、プロジェクトの信頼性向上にも寄与します。
法規制の遵守
建築基準法や建築物省エネ法などの法令に基づき、適合性を満たした設備設計を行います。
- 省エネ適合判定への対応
- 各種申請・届出業務
- 検査対応
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トラブルシューティング・維持管理
既存建物における設備トラブルの原因を特定し、改善策を提案します。
また、保守・更新計画を策定し、設備の長寿命化と性能維持を図ります。
環境配慮・脱炭素対応
環境負荷の低減を目的とした設備計画を行います。
- ZEB・省エネ建築の推進
- 高効率機器の導入
- 再生可能エネルギーの活用
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建築設備士取得のメリットとは?
建築設備士を取得するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
この章では、近年の法改正や業界動向を踏まえて解説します。
一級建築士資格の取得がしやすくなる
将来的に一級建築士の取得を目指す場合、建築設備士資格は大きなメリットとなります。
従来は、建築設備士資格取得後に4年以上の実務経験を積まなければ一級建築士試験を受験できませんでした。
しかし、令和2年(2020年)の法改正により制度が見直され、現在は建築設備士資格を取得すれば、実務経験がなくても一級建築士試験の受験が可能となっています。
※なお、一級建築士として登録するためには、引き続き実務経験が必要です。
この改正により、試験への挑戦時期を早めることができ、キャリア形成のスピードを大きく高められるようになりました。
また、建築設備士は機械系・電気系出身者でも取得可能なため、非建築系から一級建築士を目指せるルートとしても有効です。
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設備設計一級建築士への“時短ルート”になる
設備設計一級建築士は、大規模建築物の設備設計に関わる高度資格であり、取得には以下が必要です。
- 一級建築士の資格取得
- 取得後5年以上の実務経験
- 所定講習の修了
建築設備士資格を保有している場合、設備設計に関する講義および修了考査の一部が免除されます。
これにより、学習負担を軽減しながら資格取得を目指すことができ、効率的にステップアップできる“時短ルート”として活用できます。
公共工事で有利になり、企業からの需要が高い
建築設備士は、建設業における経営事項審査(経審)で加点対象となる資格です。
企業にとっては、技術力評価の向上や入札時の競争力強化につながるため、建築設備士を保有する人材の需要は非常に高い傾向にあります。
そのため、転職市場での評価向上や社内での待遇改善といったメリットも期待できます。
専門性の証明となり、キャリアアップにつながる
建築設備士は、設備設計や施工管理に関する高度な知識と技術を有していることを証明する資格です。
そのため、社内外からの信頼性が高まり、プロジェクトリーダーや管理職など、より責任あるポジションを任される可能性が高まります。
仕事の幅が広がり、市場価値が向上する
建築設備士の資格を持つことで、設計事務所・建設会社・設備工事会社など幅広い分野で活躍できます。
さらに近年は、省エネ改修やZEB化といった需要の拡大により、専門人材としての価値が高まっています。
その結果、転職や独立といったキャリアの選択肢も広がります。
建築設備士の難易度とは?
建築設備士試験は、専門的な知識と実務に基づく設計力の両方が求められるため、国家資格の中でも難関の部類とされています。
試験の構成
試験は「学科試験」と「設計製図試験」の2段階で構成されています。
学科試験では、空調設備・衛生設備・電気設備・環境工学・法規など幅広い分野の知識が問われ、設計製図試験では、実務を想定した設備設計力や図面作成能力が評価されます。
特に設計製図試験は難易度が高く、単なる知識だけでなく、応用力や判断力、実務的な理解が求められる点が特徴です。
合格率(最新動向)
直近(令和5年度・6年度付近)の試験データでは、
最終合格率(設計製図試験まで含む)はおおむね15%〜20%前後で推移しています。
以前は20%〜30%程度とされることもありましたが、現在はそれよりも低い水準となっており、難易度の高さがより明確になっています。
建築設備士 合格率推移

| 年度 | 実受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和3年 | 3,217 | 606 | 18.8% |
| 令和4年 | 3,183 | 516 | 16.2% |
| 令和5年 | 3,302 | 632 | 19.1% |
| 令和6年 | 3,403 | 732 | 21.5% |
| 令和7年 | 3,584 | 563 | 15.7% |
出題範囲と専門性の高さ
学科試験では、
- 空調設備
- 給排水衛生設備
- 電気設備
- 建築環境工学
など複数分野にまたがる知識が必要です。
さらに、単なる暗記ではなく、設計や施工を前提とした理解が求められるため、専門性の深さも難易度を高める要因となっています。
受験者層の変化(若手の増加)
令和2年以降の制度改正により、機械系・電気系など建築以外の分野からも実務経験を満たせば受験しやすくなりました。
その結果、若手技術者の受験者が増加している傾向があります。
一方で、建築分野の知識を新たに習得する必要があるため、より体系的な学習が重要になっています。
難関資格だが対策次第で合格可能
建築設備士試験は難易度が高い一方で、出題傾向を把握し、計画的に学習を進めることで十分に合格を目指すことが可能です。
特に、実務経験と結びつけて理解を深めることが、合格への近道となります。
建築設備士の試験内容とは?
建築設備士の試験は、「学科試験」と「設計製図試験」の2段階で実施されます。
それぞれで求められる能力が異なり、知識と実務的な設計力の両方が問われる試験となっています。
試験スケジュール(学科→製図の流れ)
建築設備士試験は、例年以下のスケジュールで実施されます。
- 学科試験:6月頃
- 設計製図試験:8月頃
学科試験に合格した受験者のみが設計製図試験に進むことができます。
そのため、一般的には半年〜1年程度の準備期間を確保し、段階的に対策を進めることが重要です。
学科試験
学科試験は、建築設備に関する広範な知識を問うもので、次の4つの科目から構成されています:
建築一般
建築の基本的な理論や歴史、構造などの基礎知識。
建築材料や施工方法についての理解。
設備計画
空調設備、給排水設備、電気設備などの計画および設計の基本。
設備の配置や運用に関する知識。
環境工学
室内環境の制御や省エネルギー、環境負荷低減技術。
環境関連の法規や規格に関する知識。
法規
建築基準法や関連する法令、規則。
消防法や電気事業法など、建築設備に関する法律。
各科目は選択問題形式で出題され、合格ラインは各科目で60%以上の得点が求められます。
設計製図試験
設計製図試験は、実践的な設計能力を評価するための試験で、具体的な課題に対して設計図を作成します。以下の内容が含まれます。
課題提示
試験当日に具体的な課題が提示されます。
例えば、特定の建物における空調設備の設計や、給排水設備の配置計画などです。
設計図の作成
指定された条件に基づき、設備の設計図を手書きで作成します。
平面図や断面図、詳細図などを描く必要があります。
設計意図の説明
作成した設計図について、設計意図や選定理由を説明する文章を記述します。
設計製図試験では、正確な図面作成能力、設計の合理性、安全性、そして設計意図の明確な表現が求められます。
試験準備のポイント
効率的な学習を行う為にここからは試験準備のポイントをご紹介します。
参考書や問題集の活用
過去問題集や参考書を使って、出題傾向を把握し、問題に慣れることが重要です。
実務経験の活用
実務で得た経験を活かし、実際の設計や施工に基づいた知識を試験に反映させることが有利です。
予備校や通信講座の利用
専門の予備校や通信講座を利用することで、効率的に学習を進めることができます。
時間管理と計画的学習
働きながらの受験が多いため、計画的な学習スケジュールを立て、継続的に学習することが合格への近道です。
建築設備士の試験は、幅広い知識と高度な技術が求められるため、計画的な学習と実践的なトレーニングが必要です。
※受験資格に関する詳細は、公益財団法人建築技術教育普及センターにて必ずご確認ください。
まとめ
建築設備士の資格は、業務内容を限定するものではありません。また、建築士は建築設備士からのアドバイスなしに設計や工事管理を行うことができます。そのため、「建築設備士資格を取得しても意味がないのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、実際には建築の安全性への関心が高まっており、安全性の確保のために建築設備士からの助言を求める依頼主が増えています。
このため、建築設備士は建物の安全性を確保する上で今後も重要な役割を果たすことが期待されます。さらに、建築設備士資格を取得することで、他の建築関連資格の取得や業務に役立つなどの利点もあります。将来、建築分野でのキャリアを考えるなら、ぜひ取得しておきたい資格です。
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