建物の建築や維持、メンテナンスにあたっては、消防法や建築基準法の規定に沿う必要があります。
具体的には、法律にもとづいた各種届け出や点検、報告などが義務付けられています。
火災や災害予防関連で登場することが多いこの二大法規は、それぞれ違う観点の法律です。
ただし、相互にリンクし合いながら建物の安全や火災の予防に役立っています。
消防法と建築基準法の違いはなんなのか、目的や対象の違いなどを見ていきましょう。
建築業における二大法規
建物の敷地の選定の段階から、設計、建築中、完成後の維持やメンテナンスに至るまで大きく影響してくるのが、消防法や建築基準法の規定です。
建築業における二大法規と言われる法律について、改めて確認していきましょう。
消防法とは
消防法が制定されたのは、1948(昭和23)年で、戦後すぐのことです。
火災の発生の予防や、火災などの災害による被害の拡大を防止し、人命や財産を保護するために行うべき措置が定められています。
多くの人が利用したり、勤務したり、居住する建物の管理者は、専門知識を持つ有資格者や、研修を受講した人を防火管理者として選任しなくてはなりません。
防火管理者は、消防計画の作成や届け出、避難訓練の実施などを行うことが必要です。
各建物の大きさや用途などに合わせ、消防法に定められる消火設備や警報設備、避難設備を設置する必要があります。
また、それらの設備が確実に作動するよう定期的に点検を行い、整備や消防署長へ報告することなども義務付けられます。
さらに、消防署などの立ち入り検査や、違反した場合の措置命令の規定も定められています。
人命や財産を守るため、消防機関が消火活動時にその場で即時に強制できる権限として、緊急通行や立ち入り制限、土地や水利の使用なども定められている法律です。
建築基準法とは
建築基準法は、1950(昭和25)年に制定された法律です。
国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地や設備・構造・用途について最低限守るべき基準を定めたものです。
都市計画法と連携することや消防法を建築面から支える側面もあります。
災害や被害の実情、建築資材や技術の進化などに合わせて改正も行われ、耐震基準や防火基準などは新たな基準へと見直しがなされてきました。
建築基準法では、敷地の使い方や建物の安全性などを担保するための規定を設けるほか、火災から人命を保護する目的で防耐火・避難規定も定められています。
この点が消防法とリンクし、消防法では対象にならない建物でも、建築基準法では規定による対策が必要になるなど、違いが生まれることがあるので注意しましょう。
CHECK!
防耐火・避難規定の概要
建築基準法では、
- 延焼の防止
- 火災による倒壊の防止
- 火災の伝播・拡大の防止
- 火災の発生の抑制・防止
- 避難安全の確保
- 消防・救助活動の円滑化
を図るため、以下のような規定が設けられています。
- 延焼のおそれのある部分の防火制限
- 主要構造部の防火制限
- 防火区画の設置
- 内装材料の制限
- 避難施設の設置
- 排煙設備の設置
- 非常用進入口・エレベーターの設置
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消防法と建築基準法の違いとは?
消防法も建築基準法も、建物の敷地の選定の段階から設計、工事、完成後とずっと関わっていく法律であり、いずれもしっかりと守らなくてはなりません。
もっとも、規定の対象が異なる部分もあり、目的が違うので監督官庁も異なります。
消防法は総務省の管轄で、消防署や市区町村役場などが直接的な規制を行います。
一方、建築基準法は国土交通省の管轄で、都道府県や市区町村役場の建築課などが監督を行っています。
目的と対象という観点から、それぞれの違いを見ていきましょう。
目的の違い
消防法の目的は、火災の発生予防や火災による被害の拡大を防止し、消火活動をスムーズに行うことで、人の生命や財産を保護することです。
建築基準法の目的も、国民の生命・健康・財産の保護ですが、それは建物の建築や構造、用途などを通じてになります。
建築基準法が求めるのは火災の防止だけではありません。
建物そのものが倒壊のリスクなどなく安全に建つことや、室内に最低限の広さや設備が備わっているなど、安心して生活ができることなども求めています。
建築基準法は、周囲の建物との関係や接する道路との関係など、住む人の利便性から地域社会との関係に至るまでをカバーした法律です。
また、石綿の禁止など、健康を害するような資材を使わないといったことも定めています。
建築基準法は、建築に関する幅広い規制を網羅するのに対し、消防法は火災や災害の予防に重点を置く点で違いがあります。
対象の違い
消防法の規制の対象を受けるのは、主として防火対象物です。
これに対して、建築基準法は基本的にすべての建物が該当します。
建物を建てるにあたっては、基本的に建築士が設計を行い、役所に建築確認の申請を行います。
建築主事または指定確認検査機関が、建築基準法その他の関連法令に適合していることを確認し、確認済証が発行されないと建築工事に着手できません。
これは、ビルやマンションなどの大きな建築物だけでなく、一般個人が建てる戸建て住宅も対象です。
これに対して消防法の規制対象は、基本的に防火対象物です。
防火対象物とは、不特定多数の人が出入りしたり、多くの人が集まったり勤務したり、居住するような建物で、火災が発生すると甚大な被害が予想されるような建物のことです。
たとえば、以下のような建物が対象になります。
- 幼稚園や学校
- 病院や老人ホーム
- 映画館や百貨店
- ホテルや旅館
- 飲食店やパチンコ店
- 各種事務所や地下街 など
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まとめ
消防法と建築基準法は、建築業における二大法規です。
それぞれ目的と対象に違いがあるものの、お互いが連携する形で、火災の予防や被害の拡大防止に役立てられています。
消防法の目的は、火災の発生の予防や被害の拡大を防止し、人の生命や財産を保護することです。
火災発生や被害のリスクが高い、不特定多数の方が利用したり居住する建物や逃げにくい建物などを防火対象物として規制対象にしています。
これに対して建築基準法は、火災の予防や被害防止を含め、建築に関する幅広い規制を行います。
建物の安全性の確保、人が安心して生活を送れること、周囲に影響を及ぼさないことなど、幅広い見地から建築の安全性や技術的な基準を定めた法律です。
これにより、国民の生命、健康、財産などを守ることが目的です。
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