建設業界で「マーケティング分析」と聞くと、どこか遠い世界の話に聞こえるかもしれません。「長年の経験と勘が頼り」「目の前の現場をこなすので精一杯」というのが、多くの経営者や現場監督の本音ではないでしょうか。
しかし、人手不足や資材価格の高騰、そして激化する競争といった厳しい環境を乗り越え、持続的に成長していくためには、データに基づいた客観的な意思決定が不可欠です。
本記事では、多忙な建設業の皆様に向けて、マーケティング分析の基本から、明日からでも始められる具体的な手法、さらには業界の成功事例まで、分かりやすく一から解説していきます。
なぜ今、建設業でマーケティング分析が必要なのか?
建設業界は今、深刻な人手不足、資材価格の変動、そして地域内での競争激化といった、多くの課題に直面しています。こうした不確実性の高い時代において、過去の成功体験が必ずしも通用するとは限りません。
どの案件が利益を生み、どの顧客が将来にわたって優良な関係を築けるのかを正確に把握すること、いわゆる「どんぶり勘定」からの脱却が、企業の生き残りを左右すると言っても過言ではないでしょう。
マーケティング分析は、受注データや顧客情報、さらには市場の動向を分析することで、自社の強みを活かせる領域や、利益率の高い案件の傾向を可視化します。これにより、新規顧客の獲得戦略を効率化し、同時にリピートや紹介につながる優良顧客との関係を深めるための具体的な施策を導き出すことが可能になります。
また、近年注目される「建設DX(デジタルトランスフォーメーション)」も、マーケティング分析と無関係ではありません。
業務効率化のために導入したITツールに蓄積されるデータを分析し、経営戦略に活かしてこそ、真のDXは実現します。
マーケティング分析は、まさに建設DXを推進するための第一歩であり、データという新たな資源を企業の成長エンジンへと転換させるための重要な鍵なのです。
マーケティング分析手法とは?
そもそも「マーケティング」とはどういう意味でしょうか?
辞典を調べてみると、以下のような書かれています。
マーケティング 【marketing】
消費者の求めている商品・サービスを調査し,供給する商品や販売活動の方法などを決定することで,生産者から消費者への流通を円滑にする活動。
要約すると、マーケティングとは消費者を知り、消費者に伝わりやすい最適なアプローチ方法は何かを考える仕事というところでしょうか。
当然これはマーケティングの一側面でしかありませんが、今回はこの「消費者を知り」「最適なアプローチを考える」というマーケティングの基本かつ真髄を実現する方法として、分析手法をご案内します。
株式会社ニュートラルワークスでは、『マーケティング分析とは?フレームワークのやり方や種類を解説』という記事にて、マーケティング分析の基本を紹介しています。
ビジネスへの活用方法も学べるため、あわせて読むとより理解が深まります。
ぜひ参考にしてみてください。
分析の目的を明確にしよう
マーケティングの分析手法にはさまざまな方法があります。
SWOT分析や3C分析など名前を聞いたことのあるものもあるかもしれません。
自社の強みや弱みを知る、競合他社や外部環境を調べる、など様々な用途によって様々な分析手法があります。
まずご注意いただきたいことは、分析手法は単品で用いてもあまり効果を発揮しないということです。
何のためにその分析手法を使うのか、そこで明確になった情報を次にどう活かすのか、常にゴールを意識した分析を行うことでマーケティングが効果を発揮します。

今回は、分析手法を「自社を知る」「他社やお客様を知る」「お客様へのアプローチを考える」という3段構造にし、7つのSTEPで分析手法をご案内します。
最終的な目的は、「お客様を知り、最適なアプローチを考えだす」ということです。
【STEP1】3C分析で自社環境を確認しよう

最適なアプローチを考えるために、いきなりアプローチ方法から決めることはできません。
どんなに素晴らしい、画期的なアプローチを思いついたとしても「それが自社に出来ることか」が分からないからです。
マーケティングでは、まずは徹底した自社分析を行うことが鉄則です。
3C分析とは、自社(Company)、市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)から成る3つの因子を分析することで自社を取り巻く環境を理解するための分析手法です。
後々に各因子をより細かく掘り下げていくので、この段階ではまだ概要でOKです。
【STEP2】VRIO分析で、自社を深く理解する

VRIO分析は、3C分析でいう自社(Company)の分析を行うために使われます。
自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間・情報)を想像しながら、経済価値→希少性→模倣困難性→組織力の順番に、それぞれの質問へYesかNoで答えていきます。
回答結果によって、自社が今優位な状態にあるのか、優位な状態が一時的なものか持続可能なものかを位置づけることができます。
【STEP3】PEST分析で、外部環境を把握する

PEST分析は、3C分析でいう市場(Customer)の分析に用います。
自社の取り巻く環境を、「政治面」「経済面」「社会面」「技術面」の4点から分析します。
それぞれの項目が自社にどのような影響を及ぼすか?という観点でリストアップします。
これを通じて、自社がどんな環境に身を置いているのかを理解するとともに、この後の分析で「競合他社はこの環境にどう対処しているのか?」を考えることができるようになります。
【STEP4】ファイブフォース分析で、業界の競争関係を理解しよう


ファイブフォース分析は、3C分析でいえば競合(Competitor)の分析にあたります。
自社が所属する業界において、「売り手(自社)の交渉力はあるか?」「買い手(お客様)はどのような要望を出しているか?」「代替品(競合他社やサービス)はあるか?」「新規参入業者はどのくらいいて、脅威に成りうるか?」を分析し、業界でどんな競争が起こっていて自社はどの程度の立ち位置にいるのか、自社よりも優位または今はまだ劣位な競合他社がどれくらいいるのかを確認していきます。
【STEP5】SWOT分析で自社の立ち位置を知り、「自分たちは何者か」を知ろう

ここまで、様々な分析手法を用いて「自社について」「取り巻く環境について」「競合やその他競争関係について」を明確にしてきました。
SWOT分析では、これまでの情報をもとに、「自社が活かすべき強み」「克服すべき弱点」「新たに獲得できそうな市場機会」「回避するべき脅威」を明確にします。
これまでに行ってきた分析結果をもとに情報を当てはめていきましょう。
【STEP6】STP分析を使って、「お客様が誰か」をハッキリさせよう
自社がどこにいて、競合はだれで、どんな強みを持っているのかがハッキリしました。
それらの情報をもとに、自社のお客様を分析していきましょう。
マーケティング分析において、お客様の分析は最も重要なポイントです。
ここがずれていると戦略はすべて外れてしまいます。
STP分析では、自社が属する市場を細かく区分し(セグメンテーション)、それぞれの区分から自社が関わるポイントを選別し(ターゲティング)、伝わりやすい形で自社製品をアピールする方法を考えます(ポジショニング)。
STP分析は「ターゲットマーケティング」とも呼ばれ、容易に取り組めて効果も高い分析手法として人気です。
【STEP7】4P分析を使って、具体的なマーケティング戦略を考えよう
ここまで多くの分析手法を使って、「自社を知る」「他社やお客様を知る」ことに取り組んできました。
いよいよ「お客様へのアプローチを考える」段階です。
4P分析は、製品(Product)、価格(Price)、流通方法(Place)、宣伝・プロモーション(Promotion)の4つの観点から、
お客様にどうアプローチするかを検討するのに役立つ分析手法です。
マーケティング担当者が読んでおきたい記事はこちら
建設業におけるマーケティング分析の成功事例
フレームワークや分析手法を学んでも、実際に自社でどのように活用すれば良いのか、具体的なイメージが湧きにくいかもしれません。
そこで、ここではマーケティング分析を活用して経営課題を解決し、成長を遂げた建設業の成功事例を2つご紹介します。
自社の状況と照らし合わせながら、ヒントを探してみてください。
事例1:地域密着型工務店(下請けからの脱却)
ある地域密着型の工務店は、長年、大手ハウスメーカーの下請け工事を中心に事業を行っていましたが、利益率の低さや不安定な受注状況に課題を抱えていました。
そこで、元請け案件の比率を高めることを目標に、本格的なマーケティング分析に着手しました。
まず、3C分析とSWOT分析を用いて自社の現状を徹底的に分析しました。
その結果、地域での長年の実績から「丁寧な施工とアフターフォロー」が高い評価を得ていること(強み)、一方で「営業力や情報発信力が弱い」こと(弱み)が明らかになりました。
また、市場環境として、デザイン性の高い注文住宅へのニーズが高まっていること(機会)を捉えました。
これらの分析結果から、「デザイン性と品質を両立した家づくり」を自社の新たなポジショニングと定め、ウェブサイトやSNSで具体的な施工事例や顧客の声を積極的に発信する戦略に転換しました。
すると、徐々にデザインにこだわる個人顧客からの直接の問い合わせが増え始め、数年後には元請け案件の比率を大幅に向上させることに成功しました。
事例2:中堅ゼネコン(新規事業の創出)
ある中堅ゼネコンは、公共事業の減少や競争の激化により、既存事業だけでは将来的な成長が見込めないという危機感を抱いていました。新たな収益の柱となる新規事業を模索するため、マクロな視点での環境分析からスタートしました。
PEST分析を行ったところ、世界的な環境意識の高まりや政府の政策支援を背景に、「再生可能エネルギー分野」が今後大きく成長する市場であると予測しました。自社の持つ土木・建築技術との親和性も高いと判断し、太陽光発電所の建設事業への参入を決定しました。
参入にあたっては、バリューチェーン分析を用いて、事業のどの部分を自社で行い、どの部分をパートナー企業と連携するかを詳細に検討しました。設計から施工、メンテナンスまで一貫して手掛ける体制を構築し、品質の高さをアピールすることで、後発ながらも多くの実績を積み上げていきました。
結果として、この新規事業は数年で同社の収益の大きな柱の一つに成長し、企業全体の持続的な成長に貢献しています。
マーケティング分析を加速させるツール紹介
これまで紹介してきたマーケティング分析は、手作業でも実践可能ですが、より効率的かつ高度な分析を行うためには、ツールの活用が欠かせません。
ここでは、企業の規模や目的に合わせて導入を検討できる代表的なツールをご紹介します。自社の状況に合わせて、最適なツールを選ぶ際の参考にしてください。
ExcelやGoogleスプレッドシート
まず、最も手軽に始められるのがExcelやGoogleスプレッドシートです。
顧客リストや受注履歴といった既存のデータを入力し、グラフ機能やピボットテーブル機能を使えば、RFM分析や簡単な傾向分析は十分に可能です。
特別な費用もかからず、多くの企業で既に導入されているため、まずはここからデータ分析に慣れ親しむのが良いでしょう。
SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)
次に、営業活動の効率化と顧客情報の一元管理を目指すなら、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)の導入が有効です。
これらのツールは、顧客情報、商談の進捗、過去の取引履歴などを一元的に管理し、営業チーム全体で共有することができます。
蓄積されたデータを分析することで、優良顧客の特定や、受注・失注の要因分析が容易になります。
BI(ビジネスインテリジェンス)ツール
さらに、社内に散在する様々なデータを統合し、経営判断に活かしたいという高度なニーズには、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールが応えます。
会計システム、販売管理システム、そしてSFA/CRMなどのデータを連携させ、ダッシュボード上で視覚的に分析することが可能です。
専門的な知識がなくても、直感的な操作で多角的な分析ができるため、データに基づいた迅速な意思決定をサポートします。
建設業向け工事管理システム
そして、特に建設業特有の複雑な業務プロセス全体を効率化したい場合には、建設業向けに開発された工事管理システムが最適です。
顧客管理や見積もり作成から、実行予算、工程管理、原価管理、入出金管理まで、建設業の業務に必要な機能が網羅されています。
これらのシステムに蓄積されたデータを分析することで、案件ごとの正確な利益率を把握したり、業務プロセスのボトルネックを特定したりと、より精度の高い経営分析が可能になります。
工事管理システムに関する記事はこちら
マーケ分析に関するよくある質問
マーケティング分析の重要性は理解できたものの、実際に始めるとなると、様々な疑問や不安が浮かんでくるかもしれません。ここでは、建設業の方々からよく寄せられる質問とその回答をご紹介します。
- ITに詳しくないのですが、マーケティング分析はできますか?
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はい、もちろんです。マーケティング分析は、必ずしも高度なITスキルや専門知識が必要なわけではありません。まずは本記事で紹介した「3C分析」や「SWOT分析」といったフレームワークを使い、紙とペンで自社の状況を整理してみることから始めるのがおすすめです。
また、Excelやスプレッドシートを使えば、簡単な顧客データや売上データをまとめるだけで、これまで見えていなかった傾向を発見できることも少なくありません。大切なのは、最初から完璧を目指すのではなく、できる範囲でデータと向き合う習慣をつけることです。
- 分析にはどのくらいの費用がかかりますか?
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費用をかけずに始める方法はたくさんあります。前述の通り、Excelなどの既存のツールを使えば、追加の費用は一切かかりません。まずは手元にある請求書や顧客リストを整理し、分析してみることから始めましょう。
将来的に、より本格的な分析や営業活動の効率化を目指す段階になった際に、SFA/CRMや建設業向けの管理システムといったツールの導入を検討すれば十分です。最近では、月額数万円程度から利用できるクラウド型のサービスも多く、企業の規模に合わせてスモールスタートを切ることが可能です。
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アイピアは建築業に特化した一元管理システムであり、顧客情報、見積情報、原価情報、発注情報など工事に関する情報を一括で管理できるため、情報集約の手間が削減されます。
さらに、アイピアはクラウドシステム。外出先からでも作成・変更・確認ができます。
アイピアはここが便利!6つのポイント
まとめ
今回は、「お客様を知り、最適なアプローチを考えだす」ための分析手法を7つのSTEPに分けてご案内しました。
皆さまにぜひ大切にしていただきたいのは、
これら分析手法は単品で使うのではなく順番にひとつずつ解決しながら利用していただきたいという点です。
今回ご案内した内容を実践していただき、マーケティングの基本思想をご理解いただければ幸いです。
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