ネットワーク工程表とは?専門用語や書き方を徹底解説!

ネットワーク工程表とは?専門用語や書き方を徹底解説!

建築工事の工程管理には、工程表が欠かせません。
工程表には、いくつか種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
重要なのは、目的に合った工程表を選択することです。

今回は、工事の全体像を把握でき、効率的なスケジュールを立てるために最適なネットワーク工程表についてご紹介します。
特に、ネットワーク工程表の専門用語やルールについて詳しく解説します。
ネットワーク工程表を作成する際は、ぜひ本記事をお役立てください。

ネットワーク工程表とは

ネットワーク工程表は、関連する作業項目をつなぎ、工事全体の流れを明確に示す工程表です。
作業ごとの余裕日数を割り出すことができ、無駄のない工程管理を行うことができます。

ただし、ネットワーク工程表を作成する際は、専門用語やルールを押さえておく必要があります。
そのため、土木施工管理技士の試験に出題されることも多いようです。

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ネットワーク工程表の特徴

ネットワーク工程表には、以下のような特徴があります。

  • 「〇」や「→」などの記号を使い、工程を視覚化する
  • 工事全体の流れが分かりやすい
  • 最も時間が必要な工事ルートを求められる
  • 各工事の関連性が明確になる

  • 施工管理システム

ネットワーク工程表のメリット

ネットワーク工程表には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
以下では、5つのメリットについて解説します。

工事全体のスケジュールを可視化できる

ネットワーク工程表は、作業工程を明確に示すことができます。
そのため、工事関係者全員が工事の全体像を把握しやすくなります。

工程表作成者や現場のリーダーはもちろんのこと、関係者全員が工事の全体像を把握しておくことで、効率よく作業にあたることができます。

各工事に必要な日数が明確になる

ネットワーク工程表は、各工事が要する日数を可視化します。

工事の規模が大きくなれば、工程は複雑化し、複数の作業を同時に進めることが多くなります。
このような場合、工事日数が最長となるルートを徹底的に管理すれば、工事期間を正確に見積もることができます。

工事の順番が明確になる

ネットワーク工程表では、各工事の順番が示されます。
そのため、各工事の関連を把握しやすくなり、複数の作業を同時に進める場合の手順も明確になります。

また、工事同士の関連を把握しておけば、それぞれの進捗状況に合わせて柔軟に作業を進めることができます。

工事の進捗のコントロールが容易になる

予定通りに作業が進捗しない場合、工程表を見直す必要があります。
現場の状況に合わせて工程表を修正することで、作業の遅れに対応することが可能です。

すでに確認した通り、ネットワーク工程表は工事同士の関連性を把握することができます。
そのため、進捗状況に合わせて、効率的に工程表の見直しを行えます。

工期短縮・コスト削減につながる

ネットワーク工程表を活用し作業の停滞時間を減らすことで、工期の短縮を図ることができます。
工期を短縮できれば、機械のレンタル料や人件費など、様々な面でのコスト削減を見込めます。

また、工事による通行止めや騒音なども止むため、周辺住民にとってもプラスの効果があります。

ネットワーク工程表のデメリット

ネットワーク工程表のデメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。

  • 各作業の歩掛などが正確でなければ、全体の精度が下がる
  • 工程表の作成に多くのデータが必要となる
  • 専門用語やルールが存在し、他の工程表に比べて作成が難しい

ネットワーク工程表を作成する際は、用語やルールをしっかり押さえておくようにしましょう。
また、作成者だけでなく、ネットワーク工程表に沿って作業にあたる全員に、工程表の見方を説明しておくことも重要です。

  • 施工管理システム

ネットワーク工程表で使用する用語

ネットワーク工程表を作成するには、専門用語やルールを押さえておく必要があります。
以下ではまず、ネットワーク工程表で使用する用語とその意味についてご紹介します。

イベント

イベントは、数字の書かれた「〇」のことで、各作業の結合点を意味します。
「〇」の中の整数は、「①→②→③」のように左から右に向かって、作業の流れに沿って大きくなります。

番号が重複しないよう、注意が必要です。

用語イベント
記号
意味各作業の結合点

アクティビティー

アクティビティーは、「〇」と「〇」をつなぐ「→」を指します。
作業の開始から終了までを表しており、「→」の上に作業番号、下に作業日数を書き込みます。

用語アクティビティー
記号
意味作業の開始から終了

ダミー

ダミーは、「‐‐>」で表します。
所要時間が0の擬似作業であり、作業の順序を規制するために用います。

用語ダミー
記号‐‐>
意味所要時間が0の擬似作業

最早開始時刻(日)

最早開始時刻(日)

最早開始時刻とは、当該作業に最も早く着手できる時刻のことです。
作業開始から所要日数を足していき、各結合点における最早開始時刻を算出します。
結合点に複数の先行作業がある場合、所要日数の大きい方を採用します。

例えば、上図の⑥における最早開始時刻を考えてみましょう。
作業 CD と作業 EF は同時進行するため、⑥に至るまでには以下の2つのルートがあります。

ルート1:A(5日)+B(5日)+C(7日)+D(6日)=23日
ルート2:A(5日)+B(5日)+E(6日)+F(5日)=21日

A~Fのすべての作業が終わらなければ次の作業に進めないため、23日が⑥における最早開始時刻となります。

最遅終了時刻

最遅終了時刻

最遅終了時刻とは、工期全体に遅れが発生しないよう、当該作業を終えておかなければならない時刻のことです。
最終結合点から所要日数を引いていき、各結合点における最遅終了時刻を算出します。

結合点に複数の作業がある場合、所要日数の小さい方を採用します。
最早開始時刻の求め方とは逆です。

例えば、上図③における最遅終了時刻を考えてみましょう。
⑩から③までを逆にたどるには、以下の2つのルートがあります。

ルート1:最終結合点(25日)-J(2日)-D(6日)-C(7日)=10日
ルート2:最終結合点(25日)-J(2日)-F(5日)-E(6日)=12日

値の小さい方を採用するため、③における最遅終了時刻は10日となります。
12日の方を採用してしまうと、ルート1の作業が工事全体の終了時刻をオーバーしてしまうおそれがあるため、注意が必要です。

トータルフロート

トータルフロート

トータルフロートは、作業が遅れた場合でも、工期に影響しない日数を指します。
例えば、作業Eを見てみましょう。

作業Eの最遅終了時刻は18日であり、最早開始時刻は10日です。
つまり、工事の開始から10日目には始められる作業であり、18日目には終わっておくべき作業であることが分かります。

このことから、作業Eに割ける時間は、18日ー10日=8日間です。
本来、作業Eの所要日数は6日ですが、2日間(8日ー6日)の余裕日数があると分かります。

この2日間が作業Eのトータルフロートです。
トータルフロートが0のアクティビティーもあり、これを結んだ経路をクリティカルパスと呼びます。

フリーフロート

フリーフロート

フリーフロートは、作業が遅れた場合でも、次の作業に影響しない日数を指します。
ここでは作業Fを見てみましょう。

作業Fを最早開始時刻の16日で開始した場合、次の作業Jの最早開始時刻までには7日間(23日ー16日)の猶予があります。
本来、作業Fの所要日数は5日間ですが、2日間遅れて作業に7日かかったとしても、次の作業に影響を及ぼすことはありません。

この2日間がフリーフロートです。
フリーフロートは、必ずトータルフロートの値よりも小さい、または等しくなるため注意が必要です。

クリティカルパス

クリティカルパス

クリティカルパスは、トータルフロートが0のアクティビティーをつないだ経路です。
つまり、開始点から最終結合点に至るまでのすべてのルートの中で、最も日数がかかる経路のことです。
上図の場合、 A→B→C→D→J がクリティカルパスです。

作業が遅れてはならない経路なので、注意深く管理する必要があります。
また、クリティカルパスは1ルートだけとは限りません。

  • 作業番号(アルファベットや数字など)は、アクティビティー「→」の上に記入する
  • 作業日数は、アクティビティー「→」の下に記入する
  • アクティビティー「→」は、作業の進行方向(左から右、上から下など)を表す
  • イベント番号は、作業が進むほど大きくする
  • アクティビティーが完了しなければ、次のアクティビティーに着手できない
  • 同一のイベントの間に2つ以上のアクティビティーを書き込むことはできない
    (同じイベント番号は存在しない)

用語早見表

ネットワーク工程表で使用される用語を一覧でまとめました。ぜひご参照ください。

作業番号【記号】アルファベットor数字
【意味】アクティビティー「→」の上に記入する
作業日数【記号】数字
【意味】アクティビティー「→」の上に記入する
イベント【記号】
【意味】各作業の結合点を意味する
    左から右に向かって、作業の流れに沿って大きくなる
アクティビティー【記号】
【意味】「〇」と「〇」をつなぐ「➡」を指す
    「➡」の上に作業番号、下に作業日数を書き込む
ダミー【記号】‐‐>
【意味】所要時間が0の擬似作業
    作業の順序を規制するために用いる
最早開始時刻(日)【記号】数字
【意味】当該作業に最も早く着手できる時刻のこと
    作業開始から所要日数を足し、各結合点における最早開始時刻を算出
    所要日数の大きい方を採用する
最遅終了時刻【記号】数字
【意味】当該作業を終えておかなければならない時刻のこと
    最終結合点から所要日数を引き、各結合点における最遅終了時刻を算出
    所要日数の小さい方を採用する
トータルフロート【記号】数字
【意味】作業が遅れた場合でも、工期に影響しない日数のこと
フリーフロート【記号】数字
【意味】次の作業に影響しない日数のこと
    必ずトータルフロートの値よりも小さい(または等しい)
クリティカルパス【記号】数字
【意味】最も日数がかかる経路のこと
    クリティカルパスは1ルートだけとは限らない

ネットワーク工程表のルール

ネットワーク工程表で使用する用語について解説しました。
ここでは、ネットワーク工程表を作成するうえでのルールをご紹介します。

ネットワーク工程表の基本的なルールは、以下の通りです。

  • 作業番号(アルファベットや数字など)は、アクティビティー「→」の上に記入する
  • 作業日数は、アクティビティー「→」の下に記入する
  • アクティビティー「→」は、作業の進行方向(左から右、上から下など)を表す
  • イベント番号は、作業が進むほど大きくする
  • アクティビティーが完了しなければ、次のアクティビティーに着手できない
  • 同一のイベントの間に2つ以上のアクティビティーを書き込むことはできない
    (同じイベント番号は存在しない)

  • 施工管理システム

ネットワーク工程表の作成手順

これまでネットワーク工程表の用語やルールを確認してきました。
以下では、具体的な作成手順を説明します。

STEP1 工事内容を確認

ネットワーク工程表を作成するためには、まず工事内容を確認し、行うべき作業を明らかにする必要があります。
複数の企業が関わる工事の場合、専門工事ごとに分けて考えると作業を拾い出しやすくなります。

ここで作業の拾い漏れやミスがあると、工程表全体にズレが生じます。
工事内容の確認は入念に行うようにしましょう。

STEP2 各工事の依存関係を確認

各工事の依存関係

次に、拾い出した工事の依存関係を確認します。
依存関係を確認した後、工事同士をアクティビティー「→」で結びます。

同時に複数の工事を進める場合、工事間に依存関係がある場合はイベント間をダミー「‐‐>」でつなぎます。
例えば上図の場合、⑤と⑧がダミーで結ばれています。
つまり、作業Hが完了した場合でも、作業Eが完了していなければ作業Iには進めません。

STEP3 各工事の所要日数を算出

予定の工期中に完成できるよう、それぞれの工事の標準所要日数を算出します。
この時、各工事の関連性を十分に考慮するようにしましょう。

ルートが複数存在し、それぞれに所要日数が異なる場合は、値が大きい方のルートを採用します。
ルートごとの最長所要日数をもとに調整し、工事全体の所要日数を割り出します。

割り出した値はアクティビティー「→」の下に記入します。

STEP4 無駄/無理のない配置

工事内容や所要日数、工事原価などをふまえ、適切な人材や機材を配置します。
人材や機材を過不足なく配置することで、効率的に作業を進めることができます。

適切な配置を行うための方法には、以下の2つがあります。

  • 山積み・山崩し
  • エキストラコスト

それぞれ詳しくみていきましょう。

CASE1

山積み・山崩し

山積みとは、負荷(仕事量)を期間別に積み重ねていくことです。
横軸に期間、縦軸に工程別の負荷を示すグラフを作成し、全体の負荷を割り出します。

次に、期間ごとの生産能力を示す能力線を引きます。
この能力線を超過した部分を崩し、能力線を下回る部分へ割り当てることを山崩しといいます。

生産能力に対する負荷を均等に振り分けることで、適切な人材配置を行うことができます。

CASE2

エキストラコスト

エキストラコストは、工期の短縮に役立ちます。
標準作業時間を極限まで短縮した特急作業時間(クラッシュ・タイム)を用い、各作業の1日短縮当たりの費用増を計算します。

1日短縮当たりの費用増=(特急費用ー標準費用)÷(標準作業時間ー特急作業時間)

この値をもとに、工期を短縮する場合に増加する費用の最小値を割り出すことができます。

STEP5 フォローアップ

フォローアップとは、計画の修正作業です。
いくら綿密な計画を立てても、実際に工事を開始すると天候や設計変更などによる遅延が発生する場合があります。
そのため、工事の進捗状況に応じて、柔軟にフォローアップを行うことが重要です。

フォローアップの内容としては、

  • 各アクティビティーの所要日数を見直す
  • 作業順序を変更する
  • アクティビティーを追加する

といったことが挙げられます。

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まとめ

ネットワーク工程表は、関連する作業項目をつなぎ、工事全体の流れを可視化します。
工事完成までの最短期間を割り出すことができ、無駄のない工程管理を実現できます。

作成に手間がかかる工程表ですが、用語やルールを把握しておけば、適切に作成することができます。
ネットワーク工程表を作成する際は、ぜひ本記事をご参照ください。

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