工務店の業務改善を行うには、施工管理を効率化させる必要があります。
施工管理の業務は、工事のスケジュール管理や工事に必要な資材や人件費などにおける原価管理、従業員や近隣住民への安全管理など多岐にわたります。
施工管理を効率化させることで、工務店の業務改善につながり、生産性向上やコスト削減などのメリットが得られます。
本記事では、工務店が業務改善を行うメリットや、業務改善を行うポイントを詳しくお伝えしていきます。
施工管理の効率化が必要な背景
工務店をはじめとする建設業は、産業別にみてもテレワークの導入状況は低い状態にあります。工事を進行させるにあたって、膨大な業務量によって、従業員の長時間労働や、書類の作成ミスによる時間のロス、情報伝達ミスによる施工ミスでお困りの工務店さまも多いのではないでしょうか。
ここでは、工務店が業務改善するべき背景についてお伝えします。
背景①建設業における36協定
多くの企業に業務改善を急かす要因の一つに、36協定の存在があります。
36協定とは、労働者が時間外労働をする際に結ばなければならない協定で、2018年に大きく改正されました。
これまで除外されてきた建設業界も、2024年4月から改正後のルールが適用されます。
改正後のポイントは以下の通りです。
- 時間外労働の上限:月45時間・年360時間
- 罰則:違反した際に6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 例外:災害の復旧など特別な事情がある場合は、年720時間が上限
これにより、かねてより長時間労働の問題を抱えている建築業界も早急な対応を迫られることになりました。
背景②生産性の低下
施工管理における業務では、まだまだ紙や電話、エクセルなどアナログなやり取りを行っているというような企業さまが多いのではないでしょうか。
アナログなやり取りを行っている場合、リアルタイムな情報共有や複数人との情報交換ができない、といったことや情報の紛失や情報の共有漏れが起きる場合があります。
例えば、建設現場では、工程の進捗情報の管理や施工情報の記録として写真を撮影し保存をしますが、工事の現場が大きくなればなるほど写真の枚数が増え、数百枚、数千枚に上ることがあります。
また、複数の工事案件の写真をエクセルやファイルで保存していると、管理するのに手間と時間がかかります。
施工管理の仕事は、見積書作成や工程表の作成など多くの事務作業がある為、アナログで対応している場合、生産性が低下してしまいます。
また、現場への指示やスケジュールの変更など、情報が正しくリアルタイムに共有できていないと、施工ミスや工期の遅れにもつながります。
こういったアナログなやり取りでのトラブルや生産性が低下している場合は、施工管理システム(工事管理システム)などのアプリやシステムを使用することで改善することが出来ます。
背景③建設現場における人手不足
昨今、建設現場で働く人口は年々減少しています。
人手不足によって、職人の労務費が上昇し続け、建設コストが増加しています。また、「仕事はあるけど、人が足りない」といった事態に陥っているのです。
実際どれほど建設現場の人口は減少しているのでしょうか。
このグラフを見ると、2000年あたりから建築業に就く人口が減少し続けているのが分かります。
原因としては以下のことが挙げられます。
- 若年層の建築在職者の減少
- リーマンショック以降の「職人離れ」が激化
現段階では、工事現場で実際に工事を進行させる職人、工事監理によって職人をマネジメントする技術者どちらも不足しています。よって、工事現場において職人の長時間労働や人で不足による生産性の低下が問題となっています。
これらの問題を解決するためには、工務店をはじめとする建築業の業務改善が必要となってきます。
問題を解決するためには、若年層の雇用促進が重要になってきます。
また、システムやアプリなどを導入し、DXを推進させることで在職人の負担を減らすことが出来ます。
施工管理に施工管理システム(工事管理システム)を導入することで、工事のデータを一元管理でき、適正な会計処理や迅速な経営判断に繋がります。
背景④顧客とのコミュニケ―ションが取りづらくなっている
工事を成功させるには、顧客との情報共有は欠かせません。円滑な工事の進行や要望通りに建築物を完成させるには、お客様と入念にやり取りをする必要がある為です。
昨今新型コロナウイルスの影響で、対面での商談が厳しくなっており、その中で、お客様の要望通り工事を完成させるには、オンラインでの商談に対応する必要があります。
2025年の壁と言われている中、工務店をはじめとする建築業が生き残るためには、社会、顧客のニーズに合わせて変化しなければいけません。
お客様との商談をオンラインで行うには、アプリやサービスを活用することで、迅速な対応に繋がります。
アプリやサービスで出来る主な機能は以下の通りです。
- 顧客や物件情報を一括で管理できる顧客・物件管理機能
- 職人と顧客が連絡の取れるチャット機能
- 工事の進捗情報を顧客とアプリ内で共有できる機能
これらの機能は一例ではありますが、顧客とリアルタイムな情報共有が出来るため、迅速な対応が可能になります。
こういったオンラインでも商談が可能な環境を整えることで、顧客の要望通りの工事を完成でき、顧客満足度向上につながります。
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施工管理の業務改善・効率化を推進するメリットは?
工務店が業務改善を行うことで、「ムリ」「ムダ」「ムラ」を削減でき、業務の効率化につながります。
工務店における「ムリ」「ムダ」「ムラ」の一例として以下のものが挙げられます。
- 「ムリ」:無理なスケジュール、無理な仕事量
- 「ムダ」:無駄な会議、無駄な業務、無駄遣い
- 「ムラ」:忙しさのムラ、業務負担のムラ
これらを削減することで、コスト削減・生産性の向上・ワークライフバランスの実現が可能になります。
メリット①コスト削減
工務店が業務改善を行うことで得られる大きなメリットの1つとして、コストの削減が挙げられます。
たとえば、施工管理システム(工事管理システム)を導入し、工事管理に必要な事務業務の手間を省くことが出来ると、従業員の労働時間を削減でき、人件費の削減につながります。
また、原価管理が適正にできるため、余計なコストを可視化でき、迅速な経営判断につながる為、コストの削減が可能になります。
メリット②生産性の向上
業務改善によって、「ムリ」「ムダ」「ムラ」を削減することで、生産性を向上させることが出来ます。
例えば、これまで事務作業に充てていた時間を削減できるため、工事案件を増加させることが出来ます。
また、従業員においても無駄な業務を省くことができ、少ない労力で工事を行うことが出来るため、職場環境の改善につながります。結果として、生産性が向上し、会社の利益に繋がるでしょう。
メリット③ワークライフバランスの実現
これまでアナログで行っていた、工事管理に必要な業務を効率化させることで、従業員の残業時間を削減でき、ワークライフバランスの実現が可能になるでしょう。
過酷な労働時間の中、工事を行ってきた職人にとってプライベートの時間を確保できると、仕事への意欲を高めることが出来るでしょう。
業務改善報告書のテンプレートはこちら
メリット④品質の向上
最新の施工管理技術を導入に効率化させることで、多くの利点が得られます。
以下に、その具体的なメリットをいくつかご紹介します。
- 建設工事の施工品質を一段と向上させることができます。
- 施工プロセスを可視化することで、潜在的な問題を早期に特定し、迅速に対応策を講じることが可能です。
- 品質管理データに基づいた改善活動を行うことで、継続的な品質向上が実現し、より高い品質基準を維持することができます。
施工管理の効率化を行うポイント
では、実際に工務店が業務改善を行うにあたってのポイントをお伝えします。
ポイントは以下の4点です。
- QCDを意識する
- 業務を可視化する
- チャットやコミュニケーションツールの活用
- クラウドサービスを活用する
ポイント①QCDを意識する
業務を改善する際に意識するべき要素にQCDというものがあります。
QCDとは以下の英単語の頭文字をとってつけられたものです。
Q:Quality(品質)
C:Cost(コスト)
D:Delivery(納期)
それぞれの要素については以下に示していますが、バランスよく向上させることが必要です。
ポイント②業務を可視化する
工務店が業務改善を行うポイントは、「業務を可視化する」ことです。
業務改善を行うにあたって、まず、自社が抱える課題を洗い出す必要がある為です。ただやみくもに行っても、結果には繋がりません。
工事現場におけるシステムや業務フローを見直し、再検討することで、効率化すべき点を見つけることが出来ます。
そして、改善すべき業務に優先順位をつけ、「改善することで高い効果が期待できるもの」を優先的に改善するとよいでしょう。
ポイント③チャット・コミュニケーションツールの活用
業務改善を進めるにあたってのポイントとして、チャットやコミュニケーションツールの活用が有効的です。
社内連絡や工事の進捗情報をリアルタイムで把握することができ、情報格差や情報の見逃しを防ぐことができます。
ビジネス用のチャットやコミュニケーションツールではチャット機能だけでなく、タスク管理や撮影した写真の共有、ファイルの送信など、あらゆる情報をリアルタイムに共有することができます。
ポイント④クラウドサービスを活用する
工務店が業務を効率化するうえで、クラウドサービスを活用することが有効的です。
クラウドサービスには、具体的に以下の機能があります。
- 受注工事管理
- 実行予算管理
- 発注管理
- 請求管理
- 支払管理
- 入金管理
- 工事原価管理
- 工程管理
- 作業日報管理
また、システムを導入することで、情報をリアルタイムで閲覧、編集することができ、これまで時間がかかっていた事務作業を効率化させることができます。
例えば、自動で見積書を作成することができたり、施工の記録としての写真を案件ごとに管理できるため、「ムダ」を省くことができます。
システムについて詳しくはこちら
施工管理業務の効率化によるシステム活用のメリット
上述した業務効率化の方法の中で、最も有効的なものは業務管理ができるクラウドシステムやアプリを導入することです。
建築業界は、他の業界に比べIT化が遅れています。
今後、建築業界で生き残るためには、ITツールをいかに活用できるかが重要になってきます。
では、システムやアプリには具体的にどのような機能があり、導入することでどのような効果が期待できるのかを4つのポイントで見ていきましょう。
メリット①場所と時間を選ばず作業ができる
システムやアプリを使うとなぜ業務が効率化できるのかという理由の一つが、いつでも、どこでも利用することができる点です。
システムやアプリでこれが叶う機能は、以下のようなものです。
- 社内へ一括連絡ができるチャット機能
- 日報や写真台帳がどこでも作成できる機能
- 各案件の進捗状況を一目で確認できる機能
- 社員の勤怠管理機能
クラウドのシステムやアプリを使えば、インターネットの環境さえあればどこでも業務をこなすことができます。
案件や工事について何か変更があった際にも、それぞれがシステム上で情報を更新できるため、わざわざ会社のパソコンで作業をしなくても済みます。
事務業務や経理業務を隙間時間ですることも可能になるので、本来やるべき業務に時間を割くことができます。
メリット②リアルタイムで情報共有
施工における情報をその場で共有できるのもシステム・アプリの特徴です。
リアルタイムで情報共有ができることに特化した機能は以下のようなものです。
- どこでも確認ができる工事写真・資料機能
- 工程表上で写真を添付、進捗報告ができる機能
- 図面の変更・コメントを自動通知する機能
- 各工程の作業終了をチェックできる機能
工程管理をクラウド上で行えば、工事の進捗がリアルタイムで確認できるため、スケジュール管理や現場管理が簡単になります。
工事写真や図面も、その場で共有できるので、カメラやPC、資料を現場に持ち運ぶ手間もなくなります。
さらに、図面や工程表に変更やコメントが発生した際に関係者に通知する機能を搭載したシステム・アプリを使えば、確認漏れを防ぐこともできます。
メリット③簡単に書類作成
業務効率化を図る上で欠かせないのが、書類・帳票の作成や管理などのバックグラウンド業務です。
これを助ける機能は以下のようなものです。
- 見積書や請求書の作成がワンクリックでできる機能
- 原価管理をベースに実行予算を作成できる機能
- 工事台帳を自動で作成できる機能
- 豊富な見積書テンプレート
- システム上で見積もりから請求書の送付まで一括でできる受発注機能
顧客情報と過去の案件を紐付け、そこから見積書や請求書をワンクリックで作成できたり、実行予算を抽出することも可能です。
複雑な原価管理もシステム・アプリ上なら簡単に行えます。
また、エクセルでは一人が作業していたら他の人が使えないところを、クラウド上なら複数人同時に使ってもそれぞれが書類の作成や管理ができるので、無駄がなくなります。
さらに、ペーパーレス化が実現することにより印刷代や人件費などコストの削減、書類をファイルで管理する手間も省くことができます。
メリット④情報を一元管理
工事を円滑に進めるためには、お客様の最新の情報を把握し、素早い対応を取ることが重要です。
そのためには、顧客情報や案件を一元管理することが有効です。
顧客情報の管理に役立つ機能は以下のようなものです。
- 顧客情報と案件を一括で管理できる機能
- お問い合わせの履歴が全て残る機能
- 顧客情報のページを見ると進捗状況が一目でわかる機能
クラウドシステムやアプリを使えば、会社にいないときでもお客様の情報をすぐに探し、確認することができます。
また、社内全体で情報を管理できるので、担当者でなければわからないという属人化を防ぐことも可能です。
変更やトラブルがあった際も、担当者の確認待ち作業の時間を省き対応が可能になるので、顧客満足度の向上にも繋がります。
システムについて詳しくはこちら
まとめ
工務店が業務改善を行うことで、生産性向上やコスト削減、ワークライフバランスを実現させることができます。
建設業の人手不足や生産性の低下を打破するためには、業務改善を行っていくことが求められます。
効率化に必要な業務を洗い出し、業務を可視化することで課題を見つけられることができます。
今回ご紹介したポイントを参考に、業務改善を行ってみてはいかがでしょうか。
国土交通省が推進する「e施工管理」について
国土交通省が推進する「e施工管理」についても少しふれておきます。
e施工管理とは下記のようにITを活用し業務を効率化させることを指します。
施工管理の高度化、効率化を図るためには、ムリやムダを解消することが必要です。「e施工管理」とは、ITの活用による施工管理であり、情報基盤が施工を下支えするものです。これは、近年のITの飛躍的進歩という背景があって可能となったもので、非効率と言われる建設生産の現場を改善する切り札となります。「e施工管理」は、特に少人数現場の多い中小建設業の工事担当者をサポートし、生産効率化に結びつくでしょう。
建設現場に「e施工管理」を導入することで、情報共有が促進され、コミュニケーションが改善されます。
これにより、関係者のチームワークが向上し、協働が進みます。さらに、離れた場所にある建設現場でも企業全体で情報を共有することで、過去の経験を活かしてミスや無駄を削減し、業務の効率化が図れます。結果として、企業全体の共通認識が形成され、チームワークが強化されます。
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アイピアは建築業に特化した一元管理システムであり、顧客情報、見積情報、原価情報、発注情報など工事に関する情報を一括で管理できるため、情報集約の手間が削減されます。
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