建築工事を行ううえで欠かせないのが専任技術です。
専門資格者である専任技術者は、建設業の許可を得るために必要不可欠な存在です。
この記事では、専任技術者とはどのような立場にあるのか、仕事内容をはじめ、専任技術者になるために必要な要件・資格を解説していきます。
専任技術者とは
専任技術者とは、建設業の許可を得るために欠かせない専門資格者です。
営業所ごとに必ず常駐させることが義務付けられています。
主な仕事は、請負契約の適正な締結の管理や、専門知識と経験を活かして工事の履行を技術面から支えることです。
建設業は請負によって仕事を受注する場合や、さらに下請けに出すケースが多くあります。
そこで、自ら受注する請負契約をはじめ、下請契約を発注するにあたり、金額面や安全面、工事の品質が適正に維持されるよう、専任で管理、監督、指導する技術者が求められます。
見積りや入札、請負契約締結といった建設工事を請け負うための一連の手続きは、各営業所で行われるのが基本であるため、建設会社では、営業所ごとに専任技術者を設置しなくてはなりません。
主任技術者との違い
主任技術者は建設業法において、建設工事を実施する工事現場に設置が義務付けられている、技術上の管理をする役割を果たす担当者のことです。
主任技術者と専任技術者は、建設業法において異なる役割を持ちます。
具体的な違いは以下の表の通りです。
項目 | 主任技術者 | 専任技術者 |
---|---|---|
配置・場所 | 工事現場 | 営業所 |
役割 | 工事現場での施工計画の作成、工程管理、品質管理などを担当 | 営業所での建設工事に関する請負契約の適正な締結や履行を確保 |
要件 | 特定の資格や実務経験が必要で、直接的かつ恒常的な雇用関係が求められる | 特定の国家資格や実務経験が必要で、営業所に常勤していることが求められる。出向社員が就任することも可能。ただし、現場に配置する主任技術者、監理技術者については出向者は認められていない。 |
備考 | 全ての工事現場に配置が義務付けられている技術者で、原則として専任技術者と主任技術者は兼任できない。 | 建設業許可を取得・維持するために必須の要件であり、営業所ごとに専任技術者を配置する必要がある。 |
主任技術者に関する記事はこちら
専任技術者に必要な要件
建設工事において、適正な請負契約の締結・履行をするために、建設業許可を受けようとする建設業者には一定の専門知識が求められます。
その証明として、一定の資格もしくは実務経験のある技術者が「専任技術者」として営業所ごとに配置される必要があります。
つまり、専任技術者に選出されるものは、一定の要件があり、誰でもなれるわけではありません。
またこれらの要件は、一般建設業もしくは特定建設業によって異なります。
この章で順にご紹介します。
一般の建設業許可を受けようとする場合の要件
- (1)指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者
(2)指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者 - 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する者
- (1)国家資格者
(2)複数業種に係る実務経験を有する者
特定建設業許可を受けようとする場合の要件
- 国家資格者
- 指導監督的実務経験を有する者
- 大臣特別認定者:建設省告示第128号(平成元年1月30日)の対象者
専任技術者の要件に関する国土交通省のページはこちら
請負契約書に関する記事はこちら
専任技術者に必要な資格・実務経験
専任技術者は、許可を受けようとする建設工事について必要な資格・実務経験を満たさなくてはなることができません。
必要な資格・実務経験は、一般建設業と特定建設業で基準が異なります。
なお、勤務する会社が一般建設業か、特定建設業のいずれの許可を得ているかは、下請契約の規模によって分けられます。
一般建築業
一般建設業の許可で事業ができる建設会社は、発注者から直接請け負う工事1件につき4,500万円未満、建築工事業の場合は7,000万円未満となる下請契約を締結する場合です。
一般建設業において、営業所に常勤させるべき専任技術者の基準は以下の通りとなっています。
いずれかの要件を満たす専任技術者を、営業所ごとに常駐させることが必要です。
国家資格
国土交通省が公表している、一般建設業の営業所専任技術者となり得る国家資格者の一覧に掲げられた国家資格を取得していることが求められます。
一覧に掲げられた主な国家資格としては、1級建築施工管理技士や1級土木施工管理技士など、建設・土木工事関連の技士検定資格をはじめ、1級建築士や2級建築士などが挙げられます。
許可を得ようとする建設業の種類により、認められる国家資格の種類も異なるので注意が必要です。
指定学科の卒業・学歴に応じた実務経験
指定学科とは、建設業法施行規則第1条で規定されている学科のことで、建築学科や土木学科など、建設関連の専門知識や技術を習得できる学科を言います。
許可を得ようとする建設業の種類ごとに、関連する学科が指定されているので、その指定学科を卒業していなくてはなりません。
指定学科かつ高卒か大学卒か専門学校卒かで、求められる実務経験にも違いがあるので注意しましょう。
専任技術者として認められる、指定学科の卒業要件と学歴に応じた実務経験の組み合わせは以下の通りです。
- 指定学科修了者で高卒後5、年以上の実務経験を有する者
- 指定学科修了者で大卒後、3年以上の実務の経験を有する者
- 指定学科修了者で専門学校卒業後、5年以上実務の経験を有する者
- 専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で、かつ、専門士もしくは高度専門士を称する者
10年以上の実務経験
許可を得ようとする建設業に係る建設工事について、10年以上の実務経験を有する者も、専任技術者になることが可能です。
たとえば、指定学科の高校や大学、専門学校を卒業していなくても、建設会社に入り、建設工事において10年以上、実務経験を踏むことで、専門知識や技術、ノウハウなどを得ていれば、専任技術者になれる要件を満たします。
なお、実務経験とは、許可を得ようとする建設工事の技術上の職務経験のことであり、掃除や警備、事務や雑用のアルバイトといった経験では足りません。
また、複数業種で専任技術者になりたい場合に、それぞれの業種で実務経験が10年以上必要となると、専任技術者の要件を満たしにくくなります。
たとえば、2業種を兼ねたい場合は20年、3業種を兼ねたい場合は30年が必要ということになってしまいます。
そこで、複数業種の場合は実務要件緩和の規定が設けられました。
たとえば、大工工事業の許可を得ようとする場合、建設工事業及び大工工事業に関する建設工事か、大工工事業及び内装仕上工事業に関する12年以上の実務経験を有する者のうち、大工工事業に関する建設工事で8年を超える実務経験があれば、要件を満たすと認められます。
特定建設業
特定建設業は、発注者から直接請け負う工事1件につき4,500万円以上、建築工事業の場合は7,000万円以上となる下請契約を締結する場合です。
特定建設業において、営業所に常勤させるべき専任技術者の基準は以下の通りです。
いずれかの要件を満たす専任技術者を、営業所ごとに常駐させることが必要です。
国家資格
国土交通省が公表している、特定建設業の営業所専任技術者となり得る国家資格者の一覧に掲げられた国家資格を取得していることが求められます。
一覧に掲げられた主な国家資格として、1級建築施工管理技士や1級土木施工管理技士など、建設・土木工事関連の技士検定資格をはじめ、1級建築士などの高度な専門資格が必要です。
許可を得ようとする建設業の種類により、認められる国家資格の種類も異なるので注意しましょう。
たとえば、造園業で特定建設業の許可を取りたい場合、専任技術者として認められる国家資格は1級造園施工管理技士となります。
電気工事で特定建設業の許可を取りたい場合、専任技術者として認められる国家資格は、1級電気工事施工管理技士や第1種電気工事士など、関連する国家資格でないと認められません。
一般建築業の要件・2年以上の指導監督的経験
特定建設業の専任技術者として認められるには、まず一般建設業の許可を得たい場合の専任技術者要件を満たしていることが必要です。
それに加えて、許可を得ようとする特定建設業について、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が4,500万円以上である請負工事について2年以上指導監督的な実務経験を有していなくてはなりません。
なお、指導監督的実務経験とは、建設工事の設計及び施工の全般にわたり、工事現場主任者や現場監督者といった立場で、工事の技術面を総合的に指導監督した経験を指します。
工事現場主任者や現場監督者などの立場ではなく、単に先輩として後輩の面倒を見た、育成をしたといった経験では足りません。
現場管理・現場主任に関する記事はこちら
専任技術者に関するよくある質問
- 専任技術者は複数の営業所に配置できますか?
-
いいえ、専任技術者は1人1営業所にしか配置できません。兼任はできません。
- 他の会社と兼務はできますか?
-
原則としてできません。常勤が必要とされているため、他社との兼務は不可です。
- 専任技術者を途中で交代することはできますか?
-
はい、可能ですが、建設業許可を受けている都道府県に変更届出が必要です。
- 専任技術者が退職した場合はどうなりますか?
-
専任技術者がいなくなると建設業許可の要件を満たさなくなるため、速やかに新しい専任技術者を選任し、変更届を提出する必要があります。
- 許可業種ごとに専任技術者は必要ですか?
-
はい、建設業許可を受けている業種ごとに専任技術者の配置が必要です。ただし、複数の業種に対応できる資格・経験を持つ人であれば兼任可能です。
まとめ
専任技術者は建設業の許可を得るうえで、必ず営業所に常駐させることが義務付けられる専任の技術者です。
建設業に特有の請負契約の適正な締結をはじめ、専門知識と経験を活かして工事の履行を技術面から支える役割を果たします。
そのため、専任技術者になるには必要な資格・実務経験を満たさなくてはなりません。
下請規模が小さい一般建築業においては、建設関連の国家資格の取得者か、建設関連の指定学科の卒業・学歴に応じた実務経験を有していることか、10年以上の実務経験が必要です。
発注者から直接請け負う工事1件につき4,500万円以上、建築工事業の場合は7,000万円以上となる下請契約を締結する特定建設業である場合は、建設関連の国家資格取得者か、一般建築業の要件と2年以上の指導監督的経験を有する人が専任技術者になることができます。
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