解体工事をする際などにアスベスト(石綿)という言葉をよく聞きます。
建築物などの解体・改修工事を行う施工業者(元請け事業者)は、該当する工事で「石綿含有有無の事前調査結果」を労働基準監督署に報告することが義務付けられています。
アスベスト(石綿)についてみていきましょう。
アスベスト(石綿)とは?
アスベスト(石綿)は、自然に産出する鉱物繊維の総称で、その耐熱性、耐薬品性、強度、絶縁性などの優れた特性から、建築材料や工業製品に広く使用されてきました。
主な種類には以下の6種類があります。
- クリソタイル(白石綿)
- クロシドライト(青石綿)
- アモサイト(茶石綿)
- トレモライト
- アクチノライト
- アンソフィライト
アスベストは微細な繊維状の形態をしており、これが空気中に浮遊すると吸入されやすく、人体に有害な影響を及ぼします。
特に健康への影響が深刻であり、次のような疾病を引き起こすことが知られています。
アスベストによる健康被害
- アスベスト症(石綿肺)長期間にわたりアスベストを吸入することにより、肺に繊維が蓄積し、肺組織が硬化する疾患です。呼吸困難や咳などの症状を引き起こします。
- 肺がんアスベスト曝露が原因で発生する肺の悪性腫瘍です。
- 中皮腫胸膜や腹膜などの中皮に発生する悪性腫瘍で、アスベスト曝露が唯一の明確な原因とされています。
- 石綿による胸膜プラーク胸膜に繊維状の石綿が付着して硬化することにより、胸膜が厚くなる疾患です。
アスベストの使用は多くの国で規制されており、日本でも2006年にはほぼ全面的に使用が禁止されました。
しかし、過去に使用されたアスベストが建物や製品に残っているため、除去作業や廃棄処理には厳重な対策が必要とされています。
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アスベスト(石綿)はどのようなところで使われる?
アスベスト(石綿)は、その優れた耐熱性、絶縁性、耐薬品性、強度などの特性から、以下のようなさまざまな場所や用途で広く使用されてきました。
建築材料
- 断熱材
建物の壁や天井に使用され、特に高温になる場所での断熱に優れています。 - 耐火材
建物の防火対策として、耐火壁、耐火ドア、スプレー耐火材などに使用されました。 - アスベストセメント
屋根材(スレート)、外壁材、煙突、排水管などに使われ、強度と耐久性が求められる部分に多く使われました。
工業製品
- ブレーキライニングとクラッチフェーシング
自動車のブレーキやクラッチに使用され、摩擦材としての特性を活かしています。 - ガスケットとパッキン
各種機械や配管の接合部に使用され、耐熱性や耐薬品性が求められる箇所で利用されました。
電気製品
- 絶縁材
電気機器の絶縁体として使用され、特に高温になる環境での絶縁性能が評価されていました。 - 電線被覆材
耐熱性と絶縁性を求められる電線やケーブルの被覆材に使用されました。
その他
- 家庭用品
一部の家庭用品、例えば一部のアイロン台の断熱パッドやオーブンミットなどに使われました。 - 船舶や鉄道車両
防火や断熱のため、船舶や鉄道車両の内装材として使用されました。
これらの用途により、アスベストは非常に広範囲にわたって使用されていましたが、健康への悪影響が明らかになるにつれて、多くの国で使用が禁止され、既存のアスベスト含有製品の除去や処理が進められています。
アスベスト(石綿)の危険性とは
アスベスト(石綿)は、その微細な繊維が空気中に浮遊しやすく、吸入することで健康に深刻な悪影響を及ぼします。以下にアスベストの主な危険性について詳しく説明します:
アスベスト症(石綿肺)
アスベスト症(石綿肺)の概要と症状は以下の通りです。
概要
長期間にわたりアスベストを吸入することで、肺にアスベスト繊維が蓄積し、肺組織が硬化する病気です。
症状
呼吸困難、咳、胸痛などが主な症状です。重度の場合、日常生活に支障をきたすことがあります。
肺がん
肺がんの概要と症状は以下の通りです。
概要
アスベスト曝露が原因で発生する肺の悪性腫瘍です。喫煙者がアスベストに曝露されると、発症リスクが大幅に増加します。
症状
咳、血痰、体重減少、呼吸困難、胸痛などがあります。進行すると転移や死に至ることがあります。
中皮腫
中皮腫の概要と症状は以下の通りです。
概要
胸膜や腹膜などの中皮に発生する悪性腫瘍で、アスベスト曝露が唯一の明確な原因とされています。発症までに数十年の潜伏期間があることが多いです。
症状
胸痛、呼吸困難、腹痛、腹部膨満などがあり、進行が早く、治療が難しい病気です。
石綿による胸膜プラーク
石綿による胸膜プラークの概要と症状は以下の通りです。
概要
胸膜にアスベスト繊維が付着し硬化することで、胸膜が厚くなる病気です。一般的には良性ですが、肺機能に影響を及ぼすことがあります。
症状
通常は無症状ですが、進行すると呼吸困難を引き起こすことがあります。
アスベストの危険性を低減するための対策
アスベストの危険性を低減するための対策についてみていきます。
- 使用禁止と規制
多くの国でアスベストの使用が禁止され、厳しい規制が設けられています。日本でも2006年にほぼ全面的に使用が禁止されました。 - 除去と管理
アスベスト含有製品が使用されている建物や設備は、専門業者による安全な除去や適切な管理が必要です。 - 労働者保護
アスベスト作業に従事する労働者は、防塵マスクや防護服を着用し、適切な作業手順に従うことで曝露を防ぐ必要があります。 - 健康診断と監視
アスベストに曝露した可能性のある人々は、定期的な健康診断を受け、早期発見と治療を目指すことが重要です。
アスベストの危険性は深刻であるため、曝露を避けることが最も重要です。建物の改修や解体などでアスベストに触れる可能性がある場合は、専門の業者に相談することが推奨されます。
アスベスト(石綿)に関する法令とは
アスベスト(石綿)に関する法令は、国や地域によって異なりますが、多くの国でアスベストの使用や取り扱いに関する法律や規制が存在します。以下は一般的なアスベストに関する法令の例です。
労働安全衛生法
労働者の健康と安全を保護するための法律で、アスベストの労働環境に関する規定が含まれています。アスベストに関する労働衛生管理や労働者の健康監視などが規定されています。
建築基準法
建築物の耐火性や耐震性などを定める法律で、アスベスト含有材料の使用に関する規制が含まれています。
特に、新築や改築、解体工事などでのアスベストの取り扱いについて詳細が定められています。
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産業廃棄物処理法
産業廃棄物の処理や管理に関する法律で、アスベスト含有廃棄物の処理に関する規定が含まれています。アスベスト含有廃棄物の専用処理場への運搬や処理方法が定められています。
環境基本法
環境の保全や健全な環境の確保を目的とした法律で、アスベストの環境への影響に関する規定が含まれています。アスベストの大気汚染や土壌汚染への対策が規定されています。
特定化学物質等規制法(日本の場合)
特定の有害物質に対する規制を定めた法律で、アスベスト含有製品の製造や販売、使用に関する規制が含まれています。2006年にはアスベストの使用がほぼ全面的に禁止されました。
これらの法令は、アスベストの健康への悪影響を最小限に抑え、労働者や一般市民の安全を保護するために定められています。また、法令の遵守と共に、アスベストに関するリスク評価や管理が重要です。
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まとめ
アスベスト(石綿)についてみてきましたがいかがでしたでしょうか。
アスベストは、飛散した場合に吸入すると健康にリスクを及ぼす可能性が高いため、近隣住民に被害をもたらすことがあります。このため、様々な規制が設けられ、今後さらにその規制が強化される可能性があります。
法令違反を起こさないためにも、また健康への影響を最小限に抑えるためにも、アスベスト解体に関する正しい知識を身につけることが重要です。
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