請負契約は、請負者が注文者からの依頼に基づき、特定の仕事を完成させることを約束する契約です。
この契約では、注文者と業者の間に特定の義務が生じ、一般的な売買契約とは異なるルールが適用されます。
請負契約の解除については、特別なケースが定められており、契約解除の条件や手続きについて理解しておくことが不可欠です。
本記事では、請負契約の基本的なルールから手続き、注意点まで分かりやすくご紹介します。
目次
請負契約を解除する際の基本ルール
請負契約の解除には、基本的に以下の3つのルールに基づいて行われます。
- 合意解除
- 手付解除
- 契約違反による解除
上記のそれぞれのルールについて詳しく解説していきましょう。
合意解除とは?
合意解除とは、買主と売主が合意の上で契約を終了させる方法です。
これは、工事の請負契約などで着工前に解除を希望する場合や、契約内容の変更が必要となった場合に用いられることが一般的です。
合意解除の最大の特徴は、双方の同意が必須である点です。
一方的な通知ではなく、双方が契約を解除することに同意しなければなりません。
手付解除とは?
手付解除とは、契約の一方が手付金を支払うことによって契約が成立し、その後手付金を放棄、または倍返しすることで契約を解除する方法です。
この手付解除は、契約の初期段階で双方にリスクを分散させる役割を持っています。
特に着工前の工事請負契約において、手付解除は重要な役割を果たします。
工事がすでに始まっている場合、請負契約の解除ができません。
民法557条 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後はこの限りでない。
契約違反による解除とは?
契約違反による解除とは、契約の一方が契約内容を守らない場合に、相手方が契約を解除することを指します。
このような解除は、契約不履行が重大なものである場合に限られ、法律や契約書に明記された要件を満たす必要があります。
具体的には、着工前の準備不足や工期の遅延、品質の問題などが契約違反とみなされることがあります。
工事請負契約書に関する記事はこちら
注文者からの解除について
注文者側からの請負契約解除には主に2つのパターンがあります。
- 債務不履行に基づく解除
- 注文者の都合による解除
債務不履行に基づく解除
債務不履行に基づく契約解除は、民法第541条に明記されています。
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
注文者の都合による解除
注文者の都合による契約解除は、民法第641条に明記されています。
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
どちらの場合でも契約解除が可能ですが、「注文者の都合による解除」に比べて「債務不履行に基づく解除」の方が、注文者にとって有利なルールが適用されます。
契約解除の理由によって適用されるルールが大きく異なるため、どちらのケースに該当するかを明確に意識することが重要です。
債務不履行での請負契約解除について
契約上の義務が履行されていないことを確認すれば、施工業者に対し、内容証明郵便で契約上の義務の履行を催告します。
この際、相当の期間を定めることが求められます(民法第541条、民法第559条)。
民法第541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。民法第559条
この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。
ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
催告後、設定した期間内に改善が見られない場合、契約解除を検討します。
改善がなされない場合、正式に契約解除を決定し、解除の理由を明記した書面を相手方に送付します。
自己都合での請負契約解除について
自己都合での請負契約解除は、契約当事者が自身の理由で契約を終了させたい場合に行われるものです。
この場合、解除を申し出た側が違約金を支払う義務を負うことが一般的です。
違約金の金額や条件は、すべて契約書に明記されていることが多いため、事前に契約内容をよく確認することが重要です。
工事が未着手の場合と進行中の場合では、違約金の額や支払い方法が異なることがあります。
合意解除するには
工事請負契約を自己都合で合意解約する際は、まず契約解除の意思を売主に書面で伝え、双方で解約条件を話し合うことが重要です。
その後、合意内容を文書にまとめて合意書を作成し、違約金についても明確に取り決めることで、トラブルを避けることができます。
手付解除するには
着工前の請負契約を解除する際には、手付解除を利用することができます。
この手続きは、合意解約とは異なり、話し合いを行う必要がなく、内容証明郵便を送ることで進めることができます。
内容証明郵便とは、郵便局が提供するサービスの一つで、送付した文書の内容を証明するためのものです。
以下の4点を必ず記載しましょう。
- 契約締結に関する情報:契約の内容や締結日を記載します
- 手付金の交付状況:手付金を支払ったことを明示します
- 契約履行の未着手確認:売主がまだ工事に着手していないことを確認します
- 手付金を放棄して契約を解除する意向:手付解除の意思表示をします
着工前の請負契約を解除する場合の注意点と手続き
着工前は実際の作業や資材の発注が行われておらず、損害が最小限に抑えられるため、工事請負契約を解約する場合、影響は比較的小さいです。
着工前の請負契約を解除する場合の注意点や具体的な手続きについて詳しく解説します。
着工前の請負契約を解除する場合の注意点
以下の点に注意が必要です。
- 合意解約にするのか手付解除にするのか
- 合意解約の場合、違約金が発生する可能性が高い
- 債務不履行による解除の場合は、損害賠償請求をする
合意解除の場合の手続き方法
着工前の工事や建設に関する契約でも、同様に合意解除が適用されることがあります。
合意解除の手続き手順は以下の通りです。
- 契約解除の意思を明確にし、相手方に通知する
- 解除に関する条件や金銭的な精算方法、違約金や利息の取り扱いについて協議し、合意書を作成
- 合意書の内容に基づき、必要な手続きを進める
この合意書には、解除の日時、理由、精算内容などを明記し、双方が署名します。
手付解除の場合の手続き方法
手付解除の手続き手順は以下の通りです。
- 契約書に記載されている手付金の額と解除条件を確認する
- 手付金の返還方法や返還時期について双方で合意し、その内容を文書に残す
- 手付解除に関する法律や規約を確認し、違法性がないことを確かめる
解除の意思を示す際には、口頭だけでなく、書面で通知を行うことが求められます。
債務不履行による解除の場合は、損害賠償請求をする
債務不履行による工事請負契約の解除の場合、損害賠償としては、工事の遅延により今住んでいる賃貸物件の家賃が発生することや、代替業者の手配にかかる追加コストが考えられます。
ただし、これらの損害は通常契約金額に比べて高額にはならないため、具体的な証拠をもとに請求することが重要です。
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着工後に工事請負契約を解除する場合の注意点
ここでは着工後の請負契約を解除する場合の注意点について詳しく解説します。
着工後は実際に作業が進んでいるため、契約解除の手続きが複雑になります。
自己都合での解除は特にリスクが高く、施工業者から高額な損害賠償請求を受ける可能性があります。
以下の点に注意が必要です。
- 施工業者からの高額な損害賠償請求のリスク
着工後に契約を解約・解除した場合、施工業者から高額な損害賠償請求を受けるリスクがあります。特に施主都合での解約・解除の場合、このリスクは高まります。 - 着工後の手付解除の不可
着工後の工事請負契約においては、手付解除は基本的に認められていません。 - 完成度合いに応じた報酬の支払い義務
工事契約において、工事の完成度合いに基づく報酬の支払いは、工事が中途で解約・解除された場合においても適用されることが一般的です。
まとめ
いかがでしたか?
請負契約の解除は、契約内容や締結日、手付金の状況を確認した上で進めるべき重要なプロセスです。
特に、着工前の場合は工事が始まっていないため影響が小さいですが、自己都合で解約したい場合は注意が必要です。
契約解除の手続きを適切に行うことで、後のトラブルを未然に防ぐことができます。
しかし、トラブルは起きかねないため、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
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